律宗の信者の方や、故人が律宗に帰依していた方のなかには、「どのように葬儀を行えばよいのだろう」と迷っている方もいるのではないでしょうか。
律宗は、戒律の研究と実践を重視する奈良仏教系の宗派です。他の宗派のように独自の葬儀儀礼が発達していないため、実際の葬儀では他宗派の僧侶に読経や儀式を依頼することも少なくありません。
本記事では、律宗の教えや特徴を踏まえながら、葬儀の進め方や埋葬方法、他宗派で葬儀を行う際の注意点についてわかりやすく解説します。
この記事を要約すると
- 律宗は戒律を重んじる奈良仏教系の一宗派です。基本的に葬儀は行わず、寺院内に墓所も存在しません。
- 律宗の信者が葬儀を希望する場合は、他の宗教・宗派を頼るか、無宗教葬儀を検討するのが一般的です。埋葬については、宗教・宗派不問の共同墓地や、樹木葬・海洋散骨が選択肢に入ります。
- 他の宗派に葬儀を依頼する際には、その宗派のしきたりに合わせて行動する必要があります。依頼する宗派をスムーズに見つけるためにも、早めに葬儀社に相談するのがおすすめです。
律宗とは?
律宗(りっしゅう)とは、戒律を重んじる奈良仏教系の一宗派です。ここでは、以下のポイントに着目して律宗の概要を解説します。
- 律宗の開祖
- 律宗の本尊
- 律宗の教え・戒律
- 律宗の総本山・おもな寺院
具体的に見ていきましょう。
律宗の開祖
律宗の開祖は、唐の高僧として知られる鑑真(がんじん)です。鑑真は、日本へ戒律を伝えるために来日を志し、度重なる渡海の失敗や失明といった困難を乗り越えた末、753年に来日しました。
来日後は、東大寺に日本初の正式な戒壇(受戒を行うための施設)を設け、多くの人々に戒律を授けました。さらに759年には、戒律を学び実践するための寺院として唐招提寺を創建します。これが日本における律宗の始まりとされています。
当時の日本にも戒律の教え自体は伝わっていましたが、正式な受戒制度は十分に整備されていませんでした。そのため、自ら出家を名乗る「私度僧(しどそう)」も少なくなかったといわれています。
しかし、鑑真によって受戒制度が整えられたことで、正式な手続きを経て僧侶となる仕組みが広まり、日本仏教の基盤づくりに大きな役割を果たしました。
律宗の本尊
律宗には、他の宗派のように共通のご本尊は定められていません。そのため、寺院ごとに異なる仏様をご本尊として祀っています。
例えば、唐招提寺では毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)を、壬生寺では延命地蔵菩薩(えんめいじぞうぼさつ)をご本尊として祀っています。
このように寺院ごとにご本尊が異なるため、参拝の際にはそれぞれの寺院ならではの信仰や歴史に触れられるのも、律宗の特徴のひとつです。
律宗の教え・戒律
律宗では、戒律を守り実践することや、経典の研究を通じて仏の教えを深く学ぶことを重視しています。そのため、学問的な探究や修行の実践に重きを置く宗派として知られています。
また、律宗は南都六宗(なんとりくしゅう)のひとつに数えられます。華厳宗や法相宗など他の奈良仏教系の宗派と同様に、教義の研究や継承を重視する傾向があります。
一般的な仏教宗派のように檀家制度を中心として発展してきたわけではなく、現在も寺院によっては檀家を持たない場合があります。そのため、葬儀や法要についても、他宗派の僧侶に依頼して行われることがあります。
律宗の総本山・おもな寺院
律宗の総本山は、唐招提寺です。境内には国宝に指定されている金堂や講堂、鑑真和上坐像などがあり、「古都奈良の文化財」の構成資産として世界遺産にも登録されています。
また、壬生寺は律宗の大本山として知られています。境内にある壬生塚には新選組隊士の墓があり、多くの参拝者が訪れます。このほか、大覚寺や竹林寺も律宗の主な寺院として挙げられます。
なお、律宗の戒律思想に真言密教の教えを取り入れて発展した真言律宗の総本山は、西大寺です。律宗とは別の宗派であるため、混同しないよう注意しましょう。
律宗の葬儀はどんなもの?
律宗には、他の宗派のような独自の葬儀儀礼が発達していません。そのため、律宗の信者が亡くなった場合でも、実際の葬儀は他宗派の僧侶に依頼して執り行われることが一般的です。
この背景には、律宗が戒律の研究や実践を重視する宗派であることが挙げられます。律宗では、葬送儀礼そのものよりも、仏の教えを学び実践することに重きが置かれてきました。
また、律宗は奈良時代に伝えられた古い仏教宗派であり、江戸時代に広まった檀家制度を前提として発展してきた宗派ではありません。そのため、他の宗派のように葬儀や墓地管理を中心とした仕組みが形成されなかったと考えられています。
このような理由から、現在でも律宗の葬儀は他宗派の作法に沿って行われることが少なくありません。
律宗の信者が葬儀を行う方法
基本的に葬儀を行わない律宗ですが、希望があれば以下の方法で葬儀が行えます。
- 他の宗教・宗派で葬儀を行う
- 直葬や火葬式などの無宗教葬儀を行う
具体的に見ていきましょう。
他の宗教・宗派で葬儀を行う
律宗の信者が葬儀を希望する場合は、他の宗教・宗派で葬儀を行う方法があります。
律宗では葬儀は行いませんが、葬儀自体を禁止しているわけではありません。信者の希望があれば基本的には自由に葬儀を行ってよいとされているため、他の宗教や宗派に依頼して葬儀を行うことになります。他宗派に依頼する際には、あらかじめ律宗の信者である旨をしっかり伝えておくのが大切です。
注意点としては、葬儀を引き受けてくれる宗教・宗派が限られる点が挙げられます。以前より緩和されてはいるものの、どの宗派でも他宗派の信者を受け入れているわけではありません。葬儀社に相談するなどして、注意深く対応寺院を探す必要があります。
直葬や火葬式などの無宗教葬儀を行う
律宗の方にとっては、直葬や火葬式といったシンプルな葬儀形式を選ぶことも選択肢のひとつです。
直葬は通夜や告別式などの宗教儀礼を行わず、火葬のみを行う葬儀です。一方、火葬式は火葬の前に家族や親族を中心としたお別れの時間を設ける葬儀形式を指します。
いずれも宗教者を招かずに執り行うことができるため、他宗派の作法で葬儀を行うことに抵抗がある場合にも選びやすい方法です。
なお、火葬式では希望に応じて他宗派の僧侶を招き、読経を行ってもらうこともできます。また、後日あらためてお別れ会や偲ぶ会を開き、親族や友人、知人と故人を偲ぶことも可能です。葬儀の形式に決まりはないため、故人の遺志やご家族の考え方に合わせて選ぶとよいでしょう。
直葬と火葬式については、以下の記事で詳しく解説しています。
律宗の遺骨の埋葬方法
埋葬のしきたりのない律宗では、おもに以下の方法で遺骨を埋葬します。
- 宗教・宗派不問の霊園に埋葬する
- 樹木葬・海洋散骨する
詳しく解説していきます。
宗教・宗派不問の霊園に埋葬する
律宗の信者の遺骨を埋葬する場合は、宗教・宗派不問の霊園を選ぶ方法があります。
律宗は檀家制度を前提として発展してきた宗派ではないため、一般的な仏教宗派のように菩提寺の墓地へ納骨する形を取りにくい場合があります。そのため、宗教不問の民間霊園や公営墓地、共同墓地などを検討するとよいでしょう。
また、他宗派の僧侶に葬儀を依頼した場合は、その寺院の墓地に納骨できるケースもあります。ただし、寺院墓地では檀家になることや、その宗派の作法に従うことを求められる場合があります。
故人と遺族の宗派が異なる場合や、先祖代々のお墓に納骨したい場合は、事前に親族や寺院、霊園の管理者へ確認しておくと安心です。
樹木葬・海洋散骨する
樹木葬や海洋散骨も、律宗の信者に限らず近年選ばれることが増えている供養方法です。
樹木葬は、樹木や草花を墓標として遺骨を埋葬する方法です。宗教・宗派を問わず利用できる霊園が多く、永代供養に対応している場合も少なくありません。お墓の管理を家族に負担させにくく、一般的な墓石のお墓に比べて費用を抑えやすい点も特徴です。
一方、海洋散骨は、遺骨を細かく粉末状にしたうえで海へ散骨する供養方法です。船を貸し切って行う方法のほか、複数の家族が同じ船に乗る合同散骨や、業者に散骨を委託する方法もあります。
どちらも自然に還ることを重視した供養方法ですが、海洋散骨を行うと遺骨の大部分は手元に残りません。後からお墓参りをしたいと考える家族もいるため、故人の遺志やご家族の意向を十分に話し合ったうえで選ぶことが大切です。
律宗の人が葬儀を行う際のポイント
律宗の方が葬儀を行う際には、以下の点に配慮が必要です。
- 葬儀を依頼する宗教・宗派の作法を守る
- 葬儀社に早めに相談する
具体的な内容は次のとおりです。
葬儀を依頼する宗教・宗派の作法を守る
律宗の信者が他宗派の僧侶に葬儀を依頼する場合は、その宗派の作法やしきたりを尊重することが大切です。
読経の内容や焼香の方法、儀式の進め方などは、宗派によって異なります。律宗の考え方と異なる部分があったとしても、葬儀を執り行う宗派の作法に沿って参列することで、儀式を円滑に進められるでしょう。
不明な点や希望がある場合は、事前に僧侶や葬儀社へ相談しておくことをおすすめします。
葬儀社に早めに相談する
律宗の信者やご家族が葬儀を検討する際は、できるだけ早い段階で葬儀社に相談することをおすすめします。
律宗には独自の葬儀儀礼がないため、他宗派の僧侶に葬儀を依頼するケースも少なくありません。しかし、自分で寺院を探そうとしても、どこに相談すればよいかわからず時間がかかることがあります。
葬儀社であれば、菩提寺がない場合や依頼先の宗派が決まっていない場合でも、提携している寺院を紹介してもらえることがあります。葬儀の規模や希望する地域に応じて相談できるため、寺院探しの負担を軽減しやすいでしょう。
なお、弊社ではお寺との付き合いがない方に向けて、全国一律価格でお坊さんのご手配を承っております。読経代や戒名代、お車代も含めた定額のお布施となっておりますので、安心してご利用いただけます。
また、複数の葬儀社から見積もりを取り、サービス内容や費用を比較することも大切です。事前に相談しておくことで、希望に合った葬儀社や葬儀の進め方を検討しやすくなります。
弊社でも事前のご相談から、お見積もりまで24時間365日無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
葬儀社選びのコツを知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。
律宗の人が葬儀を行う際のよくある質問
律宗の人が葬儀を行う際のよくある質問として、以下の3つを紹介します。
- 律宗の戒名はどうなる?
- 律宗のお布施のマナーは?
- 律宗と真言律宗の違いは?
律宗の戒名はどうなる?
律宗では、戒名の下に「菩薩」を付けるのが一般的です。他の宗派でよく見られる、信士・信女や居士・大姉などの院号や、戒名の上に付ける道号は用いません。
なお、場合によっては埋葬を依頼する別宗派で戒名を依頼する可能性も考えられます。このようなケースでは、親族や信者間でのトラブルを避けるためにも、事前に親族や関係者と話し合っておくことが大切です。
律宗のお布施のマナーは?
律宗のお布施は、以下に合わせて用意します。
- 葬儀を依頼する宗教・宗派・寺院の格
- 葬儀の規模
- 戒名の有無やランク
お布施の相場は、依頼先の寺院によって大きく異なります。葬儀の規模が大きく、戒名のランクが高いほど相場が上がる点にも注意が必要です。もしも迷う場合には、事前に葬儀社に相談しておくとスムーズに対処できるでしょう。
お布施の相場や渡し方などの基本的なマナーについては、以下の記事をご確認ください。
律宗と真言律宗の違いは?
律宗と真言律宗の大きな違いは、真言密教の教えを取り入れているかどうかです。
律宗は、戒律の研究と実践を重視する宗派です。一方、真言律宗は律宗の戒律思想を基盤としながら、空海が伝えた真言密教の教えも取り入れています。
そのため、真言律宗では戒律の実践に加えて密教の修法も重視されており、教義や信仰のあり方に違いがみられます。また、律宗の総本山が唐招提寺であるのに対し、真言律宗の総本山は西大寺です。
なお、両宗派は歴史的なつながりを持ちながらも別の宗派として発展しており、教義や寺院組織も異なります。
律宗の信者が葬儀を希望する場合は早めに葬儀社へ相談しよう
律宗では基本的に葬儀は行わず、独自の墓地もありません。葬儀を希望する場合は、他の宗教・宗派を頼るか、無宗教葬儀を行う必要があります。
葬儀を依頼する寺院のあてがない場合、依頼先の選定に難航する可能性があります。このようなケースでは、葬儀社に相談するのがおすすめです。葬儀社では、多様な寺院や墓所を紹介しています。希望に沿った葬儀をスムーズに行いやすくなるため、気になる方は早めに相談してみましょう。
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