天理教で葬儀を行いたいけれど、流れや作法がわからず不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
故人が天理教を信仰していたとしても、遺族が同じとは限らないうえ、周囲に信仰者がいても仏式の葬儀が一般的な日本では、天理教の葬儀に参列した経験がないという方も少なくありません。
天理教は仏式とは死生観も作法も異なります。本記事では、天理教で葬儀を行う際の通夜や告別式の流れ、マナーについてわかりやすく解説します。天理教の葬儀を予定している方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を要約すると
- 天理教は奈良県天理市に本部をおく宗教で、天理教の葬儀は人間の体を神様に返して魂を預かってもらうために行う儀式です。死は生まれ変わるための出発点であるという考えであり、「亡くなる」という言葉は使わず、「出直す」と言います。
- 天理教の葬儀の進行は斎主が行い、焼香ではなく玉串奉献を行います。通夜はみたまうつし(御霊移し)と呼ばれ、告別式よりも重要視されています。
- 仏式と違って霊前に捧げる金銭は香典ではなく「玉串料」と呼ばれ、ろうそくや線香は使用せず、米や野菜、果物などを供物として捧げます。
天理教の葬儀とは?
天理教の葬儀は、仏式とは流れや作法が異なる点が多く、見た目が似ている儀式でも、込められた意味が大きく異なる場合があります。
まずは、天理教がどのような信仰を持つ宗教なのか、そして葬儀に対してどのような考え方をしているのかを紹介します。
天理教について
天理教は、江戸時代後期に中山みきを教祖として誕生した宗教です。
この世を創造したとされる親神(おやがみ)である天理王命(てんりこうのみこと)から啓示を受け、人々にその教えを伝えたことが始まりです。天理教の教えは、「陽気ぐらし」で人々が助け合い、喜びとともに楽しんで暮らすことです。
もともとは神道の一つに数えられていましたが、特定の宗教の派生ではなく、独立した宗教です。奈良県天理市に本部があり、信者は120万人にもなるといわれています。
基本情報 | |
教祖 | 中山みき |
創始 | 1839年 |
本部 | 奈良県天理市 |
天理教の葬儀に対する考え方
人間の体は親神(おやがみ)様から借りているものとされており、亡くなることは、借りていた体を神様に返すことだと考えられています。天理教の葬儀は、神様に感謝を伝え、新しい体が見つかるまでのあいだ魂を神に預けるための儀式とされています。
そして、人の死は再生のきっかけであり、生まれ変わるための出発点であるという考え方です。そのため、「亡くなる」とは表現せず「出直す」と言い、亡くなった日は、「命日」ではなく「出直し日」と言います。
天理教の葬儀の特徴
ここでは、天理教の葬儀の特徴を紹介します。実際に葬儀を執り行う場合や参列する場面をイメージしながら確認すると、より理解しやすくなるでしょう。
葬儀の進行は斎主が行う
天理教の葬儀では、仏式の僧侶にあたる宗教者を「斎主(さいしゅ)」といい、通夜や告別式の進行を担います。斎主の助手は斎員と呼ばれます。
また、天理教では葬儀のあいだに和楽器の演奏を行うため、演奏を担当する楽人と呼ばれる方もいます。ただし最近では、楽人に依頼せずテープを流す場合もあります。
斎主をはじめとした関係者の協力を得て葬儀は進行されるため、喪主は教会長と相談しながら日取りや内容を決めることが大切です。
礼拝の作法は「二礼四拍手一拝」が基本
神様に感謝や祈りを捧げる礼拝では、天理教の場合「二礼四拍手一拝四拍手一礼」の作法が基本とされています。神式の礼拝では拍手を音を立てずに行う「しのび手」が一般的ですが、天理教では小さな音であれば問題ないとされています。
礼拝の基本的な手順は以下のとおりです。
- 祭壇の前にまっすぐに立つ
- お辞儀を2回する
- 静かに4回打つ
- 祭壇に一拝する
- 静かに4回打つ
- 一拝する
玉串奉献では榊を捧げる
玉串奉献(たまぐしほうけん)とは、玉串と呼ばれる榊(さかき)の枝に紙垂(しで)をつけたものを祭壇に捧げる儀式のことです。仏式の焼香のような位置付けの儀式です。
玉串奉献のやり方は、以下のとおりです。
- まず斎主から玉串を両手で受け取る(左手を葉の下に添えるように持つ)
- 祭壇前に進む
- 玉串を置く
- 二礼四拍手一拝、四拍手一礼
- 斎員や遺族に一礼
玉串奉献は神式の葬儀でも行われますが、作法が異なります。天理教の玉串奉献の作法を覚えておくとよいでしょう。
天理教の葬儀の流れ
天理教では、仏式と同じく通夜を行った翌日に告別式を行いますが、意味合いや作法が異なります。ここからは、天理教で執り行う葬儀の流れについて解説します。
通夜の流れ
天理教の通夜は、「みたまうつし(御霊移し)」といわれています。生きているあいだに借りていた体から魂(みたま)を移すという意味であり、告別式より重要な儀式と位置付けられています。
基本的な通夜の流れは、以下のとおりです。
- 参列者が席につく
- 斎主・斎員の入場
- 祓詞奏上(はらえことばそうじょう)。斎主が穢れを祓い清める言葉を唱えて儀式を始める
- みたまうつしの儀。斎主が「うつしの詞」を奏上し、故人の魂を神に託す
- 献餞(けんせん)。神前に供物を捧げる
- 斎主による玉串奉献(たまぐしほうけん)
- しずめの詞奏上
- 斎員による列拝
- 遺族・参列者による玉串奉献と礼拝
- 撤饌(てっせん)。神様に供えた供物をおさげする
- 退場
なお、2024年2月に葬儀の流れが見直され、儀式の簡略化が進められました。そのため、現在では祓詞奏上や玉串奉献が行われないケースも増えています。
告別式の流れ
告別式の流れは以下のとおりです。
- 斎主の入場
- 献餞(けんせん)
- しのびの詞奏上
- 玉串奉献
- 告別詞奏上
- 斎員列拝
- 玉串奉献
- 遺族・参列者の列拝
- 撤饌(神様に捧げた供物をさげる)
- 退場
天理教の葬儀におけるマナー
挨拶や服装などのマナーは、葬儀を執り行う場合はもちろん、参列者も理解しておく必要があります。ここでは、天理教の葬儀のマナーについて解説します。
服装
天理教の葬儀では、着物の喪服を着ることが一般的です。着物を着る場合は仏式と同じく、男性は羽織袴、女性は喪服の着物を着ます。信者は、ハッピ(法衣)を着用することもあります。
洋装の場合は、一般的なブラックフォーマルを選びます。男性は黒いスーツに黒いネクタイ、女性は黒のアンサンブルやワンピースが適しています。女性は黒のストッキングを着用し、ネックレスは真珠であれば問題ありません。
ただし、仏式とは異なり、天理教の葬儀では数珠は使用しないため、持参しないようにしましょう。
香典や香典返し
天理教の葬儀では、参列者は香典の代わりに「玉串料」を持参します。水引は銀と黄色、または黒と白の結び切りを使用し、表書きには「御玉串料」「御霊前」「御神前」などと書きます。「御仏前」や「御香典」といった仏式の表書きは使用しないよう注意が必要です。
喪主や遺族がお返しとして用意する品には、表書きに「偲び草(しのびぐさ)」と記します。玉串料のお返しの相場は、いただいた金額の3分の1〜半額程度が一般的ですが、地域によって異なることもあるため、事前に教会へ確認しておくと安心です。返礼品は、通夜の直後や五十日祭の際にお渡しすることもあります。
なお、金額の相場は故人との関係性によって異なりますが、一般的には仏式の香典と同程度と考えられています。詳しい相場については、以下の仏式の香典に関する記事も参考になるので、ぜひご覧ください。
挨拶の仕方
天理教では、死は「出直し」と捉えられているため、「お悔やみ」という考え方は用いません。そのため、遺族に対して仏式でよく使われる「お悔やみ申し上げます」という言葉は使わず、「ご冥福」や「成仏」などの仏教用語も避けられています。
また、「ご愁傷様です」も適切ではありません。代わりに「哀悼の意を表します」「安らかなお眠りをお祈りします」といった表現が用いられます。
遺族は基本的に挨拶を受ける立場ですが、挨拶状や連絡文などを出す際には、「葬儀」や「永眠」といった言葉の代わりに、「出直し」という表現を使うのが天理教の習わしです。
よくある質問
天理教について基本的なことがわかったところで、実際に葬儀を執り行う、参列するとなるとわからないことも多いでしょう。ここでは、天理教の葬儀に関連してよくある質問をまとめました。
戒名はある?
仏教における戒名は、仏の弟子となった証として与えられるものですが、天理教では戒名は存在しません。基本的には、生前の名前のまま呼ばれることが多くなっています。
ただし、故人の生前の行いを称える意味で、「諡(おくりな)」が与えられることがあります。この場合、男性には名前の後に「大人(うし)」、女性には「刀自(とじ)」を付け、最後に「命(みこと)」を加える形となります。なお、仏教のように教会に戒名料を支払う必要はありません。
お供物は何を用意する?
天理教でも、仏式や神式と同様に「消え物」がよいとされており、食べ物や飲み物、タオル、洗剤などの日用品が一般的なお供物として選ばれます。
特に天理教では、野菜や果物に加え、お米やお神酒、塩などもよく供えられます。また、故人が生前に好んでいた食べ物をお供えすることもあります。
仏式とは異なり、天理教ではろうそくや線香を使わないため、これらはお供物として適していません。供花についても、白い花だけでなく黄色い花が用いられることがあり、お釈迦様を象徴する蓮の花は避けるのが一般的です。
葬儀後の法要は?
天理教では、故人が亡くなってから50日目に「五十日祭(ごじゅうにちさい)」という法要が執り行われます。これは、亡くなった後の魂が50日間家にとどまり、その後に神様のもとへ向かうとされているためです。
仏教の四十九日法要は、49日目に極楽浄土へ旅立つという考えに基づいて行われます。意味合いは異なりますが、葬儀後の節目として行う点では似た流れとなっています。
五十日祭の儀式が終わると、「直会(なおらい)」と呼ばれる食事の場が設けられ、故人を偲びながら遺族や参列者がひとときを共にします。
天理教で葬儀を行うなら経験豊富な葬儀社に相談を
天理教で葬儀を行う場合は、仏式とは異なる点が多いため、基本の流れや作法を覚えておくことが大切です。しかし、細かいルールは、地域によって異なるため、教会に確認するとよいでしょう。
スムーズに葬儀を行うためには、葬儀社へ天理教で葬儀を行うことを伝えておきましょう。天理教の葬儀の経験のある葬儀社に依頼することをおすすめします。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」では天理教にも対応しておりまして、価格を抑えたプランパックでの葬儀をご用意しています。参列人数に応じた広さの式場で、現代に合わせたシンプルな葬儀を行えます。依頼・相談は24時間365日受け付けているので、興味をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。