夫婦や親子など、大切な人を同時に失った悲しみのなかで、葬儀の準備を進めるのは非常に大変なことです。
そこで本記事では、2人同時の葬式における段取りや費用目安・必要な手続きについて詳しく解説します。「世帯が違う場合は?」「宗教や宗派が違う場合は?」といった、よくある疑問にもお答えしているので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を要約すると
- 2人同時の葬式では、遺体安置から火葬まで通常の葬式と同じ流れで進行します。安置室では2つの棺を並べて配置し、祭壇も2人用の特別な配置にするか個別に設けます。通夜・告別式では両故人への焼香を行い、火葬場でも2人分の予約が必要です。
- 費用は葬儀形式により異なります。会場費は1回分ですが棺や火葬料は2人分必要です。
- 費用を削減するには、葬儀内容の見直しや1日葬にすることを検討しましょう。複数の葬儀社から見積もりを取り、公的支援制度を活用するのも効果的です。
二人同時に葬式を執り行うことは可能
2人同時に葬式を執り行うことは可能です。たとえば、事故や災害などで複数の親族が同時に亡くなった場合、葬儀は一度にまとめて執り行えます。
祭壇には、それぞれの棺や遺影を並べ、僧侶の読経も一度で済ませられます。ただし、一台の霊柩車にひとつの棺しか乗せられないため、火葬場に遺体を運ぶ際は人数分の車両が必要です。
世帯が異なる場合は、それぞれ別に葬儀を執り行えますが、遺族の意向や関係性によっては合同で実施することもあります。
葬儀の形式や進行に厳格な決まりはないため、故人や遺族の想いを最優先にして葬儀を執り行いましょう。
二人同時の葬式を挙げるときの段取り
ここでは、遺体の安置から法要までの段取りを5つのステップに分けて解説します。
- 遺体を安置する
- 葬儀内容や日程を打ち合わせる
- 通夜・葬儀・告別式を執り行う
- 出棺・火葬を執り行う
- 法要・精進落としを行う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 遺体を安置する
遺体の搬送は、葬儀社が手配し、病院や施設から自宅または葬儀場の安置室へ運びます。
ドライアイスによる保冷処理は各遺体に対して個別に行い、腐敗を防ぎます。枕飾りは、各棺の頭部側に設置し、線香や花・水などを供えるのが一般的です。
安置期間中も遺族が面会できる葬儀場もありますが、施設ごとに対応は異なるため事前に確認しておきましょう。
2. 葬儀内容や日程を打ち合わせる
2人同時の葬式では、葬儀社との打ち合わせで両故人の関係性や遺族の意向を詳しく伝えることが重要です。
葬儀の形式は、仏式・神式・キリスト教式・無宗教式から選び、宗派が異なる場合は事前に調整できます。祭壇は2人用の特別な配置にするか、個別に設けるかを決めましょう。
葬儀の費用は、基本料金に追加料金が発生する場合が多いため、事前に見積もりを確認することが大切です。
3. 通夜・葬儀・告別式を執り行う
通夜・葬儀・告別式では、会場設営から進行まで通常とは異なる配慮が必要です。
通夜では、2つの祭壇を並列に設置し、参列者が両故人に焼香します。僧侶による読経は、2人分を一度に行うか、それぞれ別々に行うかを事前にお寺と相談して決めましょう。
葬儀では、喪主挨拶を一度にまとめるか個別に行うかを遺族間で話し合っておきます。
弔辞や弔電の読み上げ順序は、故人の年齢や関係性を考慮して決めます。
4. 出棺・火葬を執り行う
出棺の際は、遺族が最後のお別れをする時間を十分に確保しましょう。
棺の順番は、遺族の意向や地域の慣習・故人の年齢や家族構成などを考慮して決めます。火葬場の状況によっては、2人分の火葬炉を同時刻・隣接して予約できる場合もあります。
なお、2人同時にお葬式を挙げた場合でも、骨上げは別々に行うのが一般的です。
5. 法要・精進落としを行う
法要や精進落としなどは、2人分を同時に執り行うのが一般的です。
初七日法要は、葬儀当日に繰り上げて行うケースが多く、僧侶による読経と焼香を2人分続けて行います。法要の際は、故人それぞれの戒名を読み上げ、個別に供養の言葉をいただきます。
精進落としは、葬儀後に行う会食で、参列者への感謝の気持ちを伝える重要な場です。会場はひとつにまとめ、2人の遺影を並べて飾り、それぞれの思い出を語る時間を設けます。
二人同時の葬式を挙げるときの葬儀形式
2人同時の葬式を執り行うときの主な葬儀形式を3つ紹介します。
- 一般葬
- 家族葬
- 直葬
ひとつずつ見ていきましょう。
一般葬
2人同時の葬式における一般葬は、複数の故人を同じ会場で同時に見送る形式です。会場には、1つの祭壇に2つの棺、遺影・供花を並べて配置するのが一般的です。
参列者は、両方の故人に対して焼香を行います。告別式の進行は、基本的に通常の葬儀と同じですが、弔辞や弔電の読み上げは故人ごとに行われるのが一般的です。
火葬場への移動や収骨も続けて実施するのが一般的ですが、火葬炉の空き状況によっては時間帯が多少前後する場合があります。
費用面では、会場使用料や僧侶へのお布施は1回分で済むことが多いものの、棺や火葬料などは人数分必要となるため、詳細な見積もりが必要です。
家族葬
家族葬は、親族や親しい友人のみで執り行う小規模な葬儀形式です。
参列者を限定することで、遺族は周囲への気遣いを最小限に抑えながら、2人の故人との最後の時間を大切に過ごせます。会場は、葬儀場の小規模ホールや自宅・寺院の一室など、人数に応じて選択可能です。
2人分の祭壇を並べて設置するか、ひとつの大きな祭壇に2人の遺影を飾る方法があります。
参列者が少ないため、一人ひとりが焼香や献花の時間を十分に取れるだけでなく、故人との思い出を語り合う時間も確保できます。費用面では、一般葬と比べて会場費や飲食費を抑えられますが、2人分の火葬料や棺などは必要です。
家族葬では、参列を遠慮してもらった人々への対応として、後日お別れ会を開催することもあります。
2人の故人を同時に送る家族葬は、遺族の精神的・経済的負担を軽減しつつも、心のこもった葬儀を実現する選択肢といえます。
家族葬について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
直葬
直葬は、通夜や告別式を行わず火葬のみを執り行う最もシンプルな形式です。
病院や施設から安置所や自宅を経由して火葬場へ移動し、近親者のみで最後のお別れをします。宗教儀式を省略するため、僧侶の読経や焼香などは基本的に行いません。
費用は、1人あたり20~50万円程度で、2人分でも40~100万円に抑えられます。遺骨は骨壺に納められ、その後の供養方法は遺族が自由に選択できます。
直葬は、経済的負担や時間的制約がある場合に選ばれることが多く、故人の遺志を尊重した送り方として近年増加している葬儀形式です。
直葬については、以下の記事を参考にしてみてください。
二人同時に葬式を挙げる際の各種手続き
ここでは、身内がなくなったときに済ませておかなくてはいけない手続きを3つ紹介します。
- 死亡届に関する手続き
- 社会保険や年金に関する手続き
- 相続や財産に関する手続き
それぞれ詳しく見ていきましょう。
死亡届に関する手続き
2人同時に葬式を挙げる場合でも、死亡届は故人ごとに個別に提出する必要があります。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村役場へ提出しなければなりません。届出人は同居の親族、同居していない親族・同居者・家主・地主・家屋管理人・土地管理人などが該当します。
死亡届の用紙は、病院や市区町村役場で入手でき、提出時には死亡診断書または死体検案書を添付します。
届出先は、死亡地・本籍地・届出人の所在地いずれかの市区町村役場です。2人分の死亡届を同時に提出する場合は、それぞれの書類を別々に作成し、必要事項を漏れなく記入しましょう。
火葬許可証の申請も死亡届提出時に同時に行うため、2人分の申請書を準備する必要があります。2人同時の手続きは煩雑になりやすいため、葬儀社のサポートを受けながら進めることで、遺族の負担を軽減できるでしょう。
社会保険や年金に関する手続き
2人同時に葬式を挙げる際の社会保険や年金手続きは、通常の手続きを2人分同時に進める必要があります。
協会けんぽの場合は死亡後5日以内、国民健康保険の場合は14日以内に健康保険証を返却し、被扶養者がいる場合は、国民健康保険等への切り替え手続きを行いましょう。
葬祭費や埋葬料は、国民健康保険なら5万円程度、協会けんぽなら上限5万円の支給を受けられます。
また、故人が年金受給者の場合、死亡届を年金事務所に提出し、未支給年金の請求手続きを行いましょう。遺族年金の申請は、配偶者や18歳未満の子どもがいる場合に該当し、収入要件を満たせば受給できます。
2人分の書類を整理する際は、故人ごとにファイルを分けて管理すると混乱を防げるでしょう。2人同時の手続きは煩雑になるので、必要書類を事前にリスト化し、計画的に進めることが重要です。
相続や財産に関する手続き
2人同時に葬式を挙げる場合、相続や財産に関する手続きは複雑になるため、専門家に相談することを検討しましょう。
まず、相続人の確定作業を行い、それぞれの故人の戸籍謄本を取得して法定相続人を特定します。
次に、遺言書の有無を確認し、公正証書遺言の場合は公証役場で、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所で検認手続きを行います。相続財産の調査では、預貯金・不動産・有価証券・負債などを両名分リストアップしましょう。
相続放棄を検討する場合は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。遺産分割協議では、2つの相続が同時進行するため、相続人間の関係性を整理して協議を進めます。
なお、不動産の相続登記は最近義務化されたため、3年以内に法務局で手続きを完了させなくてはいけないことに注意が必要です。
2人分の相続手続きは煩雑さが倍増するため、司法書士や税理士などの専門家に依頼しましょう。
二人同時の葬式を挙げるときのよくある質問
ここでは、2人同時に葬儀を挙げるときのよくある質問にお答えします。
- 香典は2人分用意する?
- 世帯が違う場合はどうする?
- 宗教や宗派が違う場合は?
- 二人同時の葬儀では、装飾費や式場使用料を節約できる?
ひとつずつ解説します。
香典は2人分用意する?
2人同時の葬式での香典は、故人それぞれに対して別々に用意するのが基本的なマナーです。
香典袋は、故人1人につき1つずつ準備し、それぞれの名前を明記します。香典に包む金額は、親族の場合は1人あたり3~5万円、友人や知人なら5,000~1万円程度が目安です。
受付では、2つの香典袋を同時に渡すか、それぞれの故人の受付が分かれている場合は別々に渡します。芳名帳への記帳も故人ごとに行い、どちらの故人への香典かを明確にしましょう。
2人同時の葬式は特殊な状況ですが、基本的には一人ひとりの故人に対して敬意を表すという原則を守ることが重要です。
香典の一般的な相場については、以下の記事を参考にしてみてください。
世帯が違う場合はどうする?
世帯が異なる2人の合同葬を行う場合は、それぞれの家族の意向を尊重しながら葬儀の形式や費用分担を決める必要があります。
まず、両家で葬儀の規模や宗教・宗派について話し合い、共通の方針を定めます。費用は、葬儀社への支払いを一括にするか別々にするかを決め、香典の管理方法も事前に取り決めておきましょう。
祭壇は、2つ並べる形式と1つの大きな祭壇を共有する形式があり、故人同士の関係性や遺族の希望により選択します。受付は世帯ごとに分けて設置し、香典帳も別々に管理するのが一般的です。
火葬場での収骨は各家族で行い、その後の法要日程も個別に決めましょう。
宗教や宗派が違う場合は?
宗教や宗派が異なる2人の葬式を同時に行う場合は、それぞれの信仰に配慮した形式で執り行います。
会場を2つに分けて、前半と後半で宗教儀式を分ける方法や、共通部分のみ合同で行い宗教的な部分は別々に執り行う方法などがあります。
仏教の場合でも、浄土宗と日蓮宗など宗派が異なるときは、それぞれの僧侶を招いて読経してもらいましょう。
費用面では、複数の宗教者への御布施が必要となるため、単独葬よりも高額になる傾向があります。宗教や宗派の違いは、葬式を執り行ううえでの障害にはなりません。
二人同時の葬儀では、装飾費や式場使用料を節約できる?
2人同時に葬儀を行う場合、一般的に装飾費や式場使用料の面で節約が可能です。
たとえば、祭壇や会場はひとつを共用できるため、個別に2回葬儀を行う場合と比べて、式場の利用料や祭壇の装飾費が抑えられる傾向にあります。
人件費や進行の手間も一度で済むため、全体の費用負担が軽減される点は大きなメリットです。ただし、火葬料や棺・遺影写真など、人数分必要な項目はそれぞれ発生するため、すべての費用が半分になるわけではありません。
故人が2人であっても、式の規模や内容によって節約できる範囲は異なるため、事前に葬儀社と相談し、見積もりを取ることが重要です。葬儀費用を安く抑える方法については、以下の記事を参考にしてみてください。
二人同時に葬式を挙げる場合は葬儀社へご相談ください
2人同時の葬式は、通常の葬式とは異なる準備や手配が必要になるため、経験豊富な葬儀社への相談することが大切です。
葬儀社に相談すれば、祭壇の配置から火葬場の予約・各種手続きのサポートまで提案してくれます。費用面でも複数社から見積もりを取ることで、家族の経済状況に合わせた最適な葬儀プランを選択できます。
故人たちへの感謝の気持ちを込めて心のこもった葬式を執り行うためにも、まずは信頼できる葬儀社に相談してみることから始めましょう。
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