「浄土真宗の葬儀はどのような流れで進むの?」「ほかの宗派と違うマナーがあるって本当?。家族や親族が亡くなり浄土真宗の葬儀を執り行うことになったものの、このような疑問や不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
実は、浄土真宗の葬儀には独特の作法やマナーがあり、他宗派とは大きく異なる点があります。
本記事では、浄土真宗の葬儀の流れから香典・お布施のマナー、やってはいけないことまで詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
この記事を要約すると
- 浄土真宗の葬儀は遺体を北枕に安置後、臨終勤行で「南無阿弥陀仏」を唱え、通夜・葬儀で読経と焼香を行い、出棺・火葬では喉仏を本山に分骨する独特の流れで進められます。
- 香典袋は「御仏前」と記載し、焼香時はお香を額まで上げず、お布施は10~30万円が相場で、数珠は左手に持ち右手で包むなど浄土真宗特有のマナーがあります。
- 阿弥陀如来の救いを信じる教えから清めの塩を使わず、末期の水の儀式も行わず、位牌の代わりに法名軸を用いるなど他宗派とは異なる作法があるのが特徴です。
浄土真宗とは?概要を解説
浄土真宗の基本的な概念を理解することは、適切な葬儀マナーを身につけるうえで重要です。ここでは重要なポイントを3つ紹介します。
- 浄土真宗の歴史
- 浄土真宗の教義・特徴
- 現代における浄土真宗
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 浄土真宗の歴史
浄土真宗は、親鸞聖人によって開宗されました。親鸞聖人は平安時代末期の京都に生まれた日本の僧侶で、鎌倉時代中期にかけて90年の生涯を送りました。
比叡山にて20年間の厳しい修行に没頭していましたが、修行を積んでも煩悩が消えることがなく苦しんでいたといいます。その後、比叡山を下り、浄土宗の開祖である法然上人と出会い「南無阿弥陀仏の念仏を唱えることで、誰もが極楽浄土へ往生できる」という専修念仏の教えに感銘を受けました。
親鸞聖人は、法然によって明らかにされた浄土往生を説く真実の教えを継承し、さらに展開させることで浄土真宗を開宗しました。
2. 浄土真宗の教義・特徴
浄土真宗の教えの根本には、他力本願という考え方があります。他力本願とは、人任せや他人依存という意味ではなく、阿弥陀如来の本願に頼って成仏することを指します。
親鸞は自力での成仏を諦め、阿弥陀如来の慈悲にてを委ねることに生涯をかけました。阿弥陀如来は「私を信じるものは一人残らず救う」と誓った仏であり、信心をもって「南無阿弥陀仏」の念仏を称えれば必ず極楽浄土に往生できると説いています。
浄土真宗における重要な教義として、もうひとつ挙げるとするならば「悪人正機」という思想もあります。
悪人正機とは「悪人こそが阿弥陀仏の本願による救済の主正の根機である」という意味で、自らの力で煩悩を振り払えない者のために阿弥陀仏の救いがあることを示しています。
3. 現代における浄土真宗
浄土真宗は、現在の日本において最も信者数が多い仏教宗派です。
真宗十派と呼ばれる代表的な10の宗派に分かれており、なかでも西本願寺を本山とする浄土真宗本願寺派と東本願寺を本山とする真宗大谷派が最大規模の勢力を持ちます。
本願寺派の門徒数は約790万人、大谷派の門徒は約778万人に達しています。浄土真宗は、日本国内における最大の仏教宗派といえるでしょう。
浄土真宗における葬儀までの流れ
効果的な浄土真宗の葬儀を理解するために、次の5つのステップを押さえましょう。
- 遺体を安置する
- 臨終勤行を行う
- お通夜を執り行う
- 葬儀を執り行う
- 出棺し火葬する
各ステップについて詳しく解説します。
1. 遺体を安置する
故人が亡くなったら、まず北枕に寝かせ、枕元に過去帳や法名軸と仏飯を供えます。
安置のあと、清めの儀式である「湯灌(ゆかん)」に移りましょう。湯灌では温かい水で体を拭き、清潔な死装束に着替えさせます。
着替えの際は右側から左側へと着付けるため、通常の着方と逆になる点に注意しましょう。
このように遺体を丁寧に安置することは、故人への最後の敬意を表す大切な儀式です。
ご遺体の安置については、以下の記事も参考にしてみてください。
2. 臨終勤行を行う
臨終勤行は、亡くなった方の魂が安らかに浄土へ旅立つための大切な儀式です。勤行では、僧侶が導師となり浄土真宗のお経である「正信偈」などを読経します。
このとき、参列者は合掌し「南無阿弥陀仏」と念仏を唱和しながら故人の冥福を祈ります。勤行の時間は、通常30分程度ですが、地域や寺院によって異なることもあるでしょう。
臨終勤行は、故人が阿弥陀如来の本願力によって浄土へ往生することを願う浄土真宗の教えに基づいた重要な儀式です。
3. お通夜を執り行う
お通夜は、故人を偲び、親族や友人が集まって読経や念仏を唱える大切な儀式です。
僧侶による読経が行われ「南無阿弥陀仏」の念仏が繰り返し唱えられます。参列者は、焼香を行い、故人への最後の別れを表します。
通夜式のあとには、通夜振る舞いとして簡素な食事を用意するのが一般的です。この場では、故人の思い出話に花を咲かせ、生前の姿を偲ぶ時間となるでしょう。
お通夜は単なる儀式ではなく、故人と生者をつなぐ大切な時間であり、念仏の教えに触れる機会といえます。
一般的なお通夜の段取りについては、以下の記事を参考にしてみてください。
4. 葬儀を執り行う
浄土真宗の葬儀は、故人の極楽往生を願い、阿弥陀如来の救いを祈る儀式です。葬儀当日は、僧侶の到着前に遺族や親族が集合し、最終確認を行います。
僧侶が到着したら、枕経に続いて本堂または式場へ移動し、正式な葬儀が始まります。
葬儀では「正信偈」や「阿弥陀経」の読経が行われるのが一般的な流れです。参列者は焼香を行い、故人への最後の別れを表します。
5. 出棺し火葬する
出棺は、故人との最後のお別れの時間であり、浄土真宗では厳粛かつ簡素に執り行われます。火葬場では、再度僧侶が読経を行い、遺族が最後の焼香をするのが一般的です。
収骨は通常、遺族が中心となって行い、足から頭の順に拾います。火葬後の骨壷は、本堂に安置され、その後の法要へと続いていきます。
火葬については、以下の記事も参考にしてみてください。
浄土真宗の葬儀におけるマナー
浄土真宗の葬儀マナーを適切に理解することは、故人と遺族に敬意を示すうえで重要です。ここでは重要なポイントを5つ紹介します。
- お布施のマナー
- 香典のマナー
- 服装のマナー
- 焼香のマナー
- 数珠のマナー
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. お布施のマナー
浄土真宗の葬儀において、お布施の金額に決まりはありませんが、一般的には以下の金額が目安となります。
儀式 | 相場 |
---|---|
通夜・葬儀 | 10~30万円 |
初七日法要 | 3~5万円 |
四十九日法要 | 3~5万円 |
新盆・初盆法要 | 1~3万円 |
袱紗(ふくさ)に包んだ白封筒に現金を入れ、表書きには「御布施」「御膳料」などと記載します。葬儀の規模や地域の慣習によって金額は変わるため、事前に葬儀社や寺院に相談するとよいでしょう。
お布施を渡す際は、両手で丁寧に「よろしくお願いいたします」と一言添えるのがマナーです。
お布施については、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
2. 香典のマナー
浄土真宗の葬儀における香典は、故人への追悼と遺族への支援の気持ちを表す重要な礼儀です。
香典袋の表書きは「御霊前」ではなく「御仏前」と記すのが浄土真宗の特徴です。このようなルールは、故人がすでに仏になられたという考えに基づいています。
香典の金額は、一般的に親戚の場合は5,000~3万円程度、友人知人の場合は5,000~1万円が目安となりますが、故人との関係性によって適宜判断しましょう。
親族の場合は、弔電や供花ではなく香典を贈ることが一般的です。また、遺族側が香典返しを辞退しているケースもあるため、その際は遺族の意向を尊重しましょう。
3. 服装のマナー
浄土真宗の葬儀では、基本的に喪服(黒の礼服)を着用するのがおすすめです。
男性は黒のスーツに白いワイシャツ、黒のネクタイを合わせます。女性は黒の地味なワンピースやスーツに、パールなどの控えめなアクセサリーを身につけるのが無難です。
親族は、正式な黒の喪服(男性は略礼服、女性は黒の礼服)を着用することが一般的です。靴下・ストッキングは黒色、靴も黒の控えめなものを選びます。化粧は薄めにし、マニキュアは派手な色を避けることも大切です。
アクセサリーは、結婚指輪と真珠の一連程度にとどめましょう。
また、服装のマナーについては以下の記事で詳しく説明しているので、気になる方はチェックしてみてください。
4. 焼香のマナー
浄土真宗の葬儀における焼香は「一礼・焼香・合掌礼拝・一礼」の作法で行います。親指と人差し指、中指の三本で抹香をつまみ、そのまま香炉にくべます。
このとき、お香を額の高さまで上げることはしません。
浄土真宗では、お香をそのまま香炉に入れる「渡し焼香」という作法を行います。抹香を落とした後は再び軽く一礼し、遺族に向かって会釈をして席に戻ります。
焼香の際は故人を偲び、合掌しながら「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と心のなかで唱えます。
複数人で参列する場合は、年長者や目上の方から順に焼香を行うのがマナーです。浄土真宗の焼香は簡素ながらも、故人への敬意と阿弥陀仏への帰依を表現する大切な儀式です。
5. 数珠のマナー
浄土真宗の葬儀では、数珠の扱い方に独自のマナーがあります。数珠は左手に持ち、右手で軽く包むように持つのが基本です。
葬儀中は、常に数珠を持っているのが望ましいですが、食事の際などは袱紗に包んでおきましょう。
数珠は、仏様とつながる大切な法具であるため、丁寧に扱うことが浄土真宗の教えを尊ぶ姿勢につながります。
浄土真宗の葬儀にかかる費用
浄土真宗の葬儀費用は、一般的に50~200万円程度です。この費用には、お寺へのお布施や戒名料などの宗教者への謝礼が含まれます。
浄土真宗では法名料が比較的安価で、基本的に無料ですが、格式の高い法名の場合は20~50万円程度かかるでしょう。
葬儀社への支払いには、祭壇設営費・火葬料・会場使用料・返礼品代などが含まれ、規模により大きく変動します。親族のみの小規模な葬儀なら総額50万円程度、一般的な葬儀では100万円前後が目安です。
また、浄土真宗では「お斎」と呼ばれる会食を行うことが多く、参列者数によって5~20万円程度の費用がかかります。
事前に寺院や葬儀社に相談し、予算に合わせた葬儀プランを検討することが費用面での不安解消につながるでしょう。
浄土真宗の葬儀でやってはいけないこと・注意点
浄土真宗の葬儀における重要な禁忌事項を理解することは、適切な作法を身につけるうえで欠かせません。ここでは主な注意点を3つ紹介します。
- 清めの塩を使わない
- 末期の水の儀式を行わない
- 位牌を作らない
それぞれ詳しく解説します。
1. 清めの塩を使わない
浄土真宗の葬儀では、清めの塩を使用しません。
他宗派では玄関に塩を置いたり、会葬者に塩をかけたりする習慣がありますが、浄土真宗では行わないことを留意しておきましょう。
浄土真宗では、阿弥陀如来の本願力によって救われるという教えがあり、塩による清めは不要とされています。塩による清めは死や霊を穢れとする考えに基づくものであり、浄土真宗の教義と相容れないためです。
浄土真宗では、死者は阿弥陀如来の本願によってすでに浄土へ往生することが約束されていると考えます。そのため、穢れを払う必要はなく、むしろ感謝の気持ちで葬儀を執り行うことが大切です。
浄土真宗の葬儀に参列する際は、このような教えを理解し、他宗派の習慣と混同しないよう注意しましょう。
2. 末期の水の儀式を行わない
他宗派では、亡くなる直前に水を飲ませる「末期の水」という儀式がありますが、浄土真宗にはこの作法はありません。
末期の水の作法を行わないのは、臨終の際の行為によって救われるのではなく、日々の生活のなかで仏の教えを信じることが大切とされているためです。
浄土真宗の葬儀では、故人が生前に培った阿弥陀如来への信心を尊び、その教えに沿った葬儀を心がけましょう。
3. 位牌を作らない
浄土真宗では、位牌を作らないこともほかの宗派と異なる特徴です。
親鸞聖人の教えでは、亡くなった人は阿弥陀如来の本願力によって浄土に往生するとされています。この教えから、位牌に魂を宿らせて供養する考え方は浄土真宗の教義と相容れません。
位牌の代わりに「法名軸」と呼ばれる故人の法名を記した掛け軸を用います。仏壇には、故人の写真を飾ることはあっても、位牌は置かないのが本来の形です。地域によっては、慣習として位牌を作る場合もありますが、本来の教義に沿うなら必要ありません。浄土真宗の本義に従い、位牌に執着せず阿弥陀如来の救いを信じることが大切です。
浄土真宗の葬儀に参列する際はマナーや作法を意識しましょう
浄土真宗の葬儀は、ほかの宗派とは異なる独特のマナーや作法があることを知ることが大切です。
香典袋の表書きは「御仏前」と記し、焼香の際はお香を額まで上げずにそのまま香炉に入れます。清めの塩を使わず、位牌も作らないなど、他宗派とは大きく異なる特徴があることを留意しておきましょう。
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