故人が生活保護を受給していた場合や、預金がまったくない場合など、経済的な余裕が一切なく、葬儀を行うことが難しいケースもあるでしょう。遺族も経済的に困窮していると、「葬儀を無料で行う方法はないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、葬儀を無料で行うことの可否や、費用を抑えて葬儀を行う方法について解説します。特に生活保護を受けている場合に利用できる「葬祭扶助制度(そうさいふじょせいど)」について、詳しく説明します。
申請方法や注意点についても紹介しますので、ぜひ葬儀を行うときの参考にしてください。
この記事を要約すると
- 故人や遺族が生活保護を受けていると葬祭扶助制度を利用して、無料で葬儀を行うことができる可能性がある。
- 葬祭扶助制度で行う福祉葬は、火葬のみのシンプルな葬儀になる。葬祭扶助制度は事前に役所の福祉係や福祉事務所に申請を行う必要がある。
- 葬祭扶助制度の対象外となる場合、葬儀を無料で行うのは難しいが、給付金を受け取ることや葬儀の形式や規模を検討することで負担額を抑えることができる。
葬儀は無料で執り行える?
経済的に困窮しており利用条件があえば、葬祭扶助制度を利用して負担額をゼロにし、実質無料で葬儀を執り行えます。葬祭扶助制度は、故人や遺族が生活保護を受給している場合や、財産がなく身寄りがない方が亡くなった場合が対象です。
生活保護を受給するほど経済的に苦しいわけではないという場合は、無料で葬儀を行えるような国や自治体の制度はありません。しかし、故人が社会保険や国民健康保険などに加入していた場合、1〜7万円程度の給付金を受け取れる制度があります。
また、手元に費用がない場合でも、故人の口座の預金や生命保険の保険金から支払える場合もあります。ほかにも、無料で行うことは難しくとも葬儀を簡略化することで葬儀費用自体を抑えることもできます。ぜひ経済状況にあった葬儀の方法を選択しましょう。
葬儀費用を安く抑えるための工夫は、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
葬祭扶助制度とは?
葬祭扶助制度とは、生活保護法第18条に基づき、葬儀費用の一部または全部を自治体が負担することで、葬儀を行うことができる制度です。
この制度を利用して行われる葬儀は、「福祉葬」や「生活保護葬」とも呼ばれます。通夜や告別式などを含む一般的な葬儀とは異なり、火葬のみを行う簡素な形式の葬儀となります。
以下の記事では、葬祭扶助制度の基本から申請時のポイントまで詳しく解説しています。ぜひ、あわせてチェックしてみてください。
葬祭扶助制度を利用できる条件
葬祭扶助制度は、経済的に困窮している故人や遺族のための制度で、誰でも利用できるわけではありません。細かな条件は自治体ごとに異なるうえ、審査もありますが、一般的に以下の条件を満たしている方が対象になります。
- 故人が生活保護を受けており、資産を残していない。かつ遺族が生活保護を受けていて費用を支払うことができない。
- 故人が生活保護を受けており、資産を残していない。かつ扶養義務者がいない。
故人が生活保護を受給していても、扶養義務者である遺族に葬儀費用を払える人がいる場合、葬祭扶助制度は利用できません。また、預貯金や資産がある場合は、その資産が葬儀費用に当てられます。
ただし、扶養義務者が生活保護を受けていない場合でも、低所得で経済的な余裕がない場合は、要件によって葬祭扶助制度を利用できる可能性があります。
葬祭扶助制度支給額
葬祭扶助制度により支給される費用は、市町村や世帯の経済状況などによって異なります。厚生労働省の「2024(令和6)年4月1日施行 生活保護実施要領等」によると、支給額の上限は、故人が大人の場合21万5,000円、12歳未満の子どもの場合は17万2,800円です。
これは直葬と呼ばれる火葬だけを行う必要最低限の式を行うための費用で、通夜や告別式の費用は含まれていません。葬祭扶助制度の対象となるのは、以下のとおりです。
- 死亡診断書の発行費用
- 搬送費用(寝台車や霊柩車の費用)
- ご遺体の安置施設の使用料
- 仏衣や棺代
- ドライアイス
- 火葬費用
- 骨壷代
- 白木位牌
僧侶へお布施は含まれておらず、読経や戒名など宗教的な儀式を行うことは難しいと考えておいたほうがよいでしょう。葬儀後のお墓への納骨費用や法要費用も含まれていません。
葬祭扶助制度による葬儀の流れは?
葬祭扶助制度を利用できる可能性がある場合、まずは管轄の役所や福祉事務所に申請を行いましょう。制度を利用した場合の葬儀の流れは以下のとおりです。
- 自治体に制度を利用できるか確認し、申請する
- 葬儀社に連絡する
- お迎え
- ご遺体の安置
- 葬儀社との打ち合わせ(日時や場所の取り決め)
- 福祉葬(火葬式)を行う
- 自治体から葬儀社へ支払い
ご逝去のタイミングによって、お迎えやご遺体の安置と葬祭扶助制度の申請が前後することがあります。ただし、制度利用の申請は必ず火葬前に行う必要があることを覚えておいてください。また、自治体に申請した際に、紹介してもらえる場合もあります。
葬儀の当日、安置場所でご遺体を棺に納めて、直接火葬場へ移送されます。基本的に宗教的な儀式はなく火葬を行ったあと、遺骨を骨壷に納めて葬儀は終了です。
葬儀後、喪主ではなく自治体や福祉事務所に葬儀社から費用の請求が行われ、葬儀社に直接支払いがされます。喪主が一時的に負担する必要はないため、安心してください。
葬祭扶助制度の申請や利用に関する注意点は?
次に、葬祭扶助制度の申請方法や利用についての注意点を解説します。手順を間違えると利用できなくなることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
必ず事前に申請する
葬儀が終わってから葬祭扶助制度を利用したいと思っても、すでに費用の支払いが済んでいる場合は、支払い能力があるとみなされ、支給の対象外となってしまいます。必ず葬儀の前に申請するようにしましょう。
また、葬祭扶助制度に対応していない葬儀社もあるため、利用を検討している場合は、早めに葬儀社へ確認・相談することをおすすめします。
喪主が行えない場合は、ほかの遺族が申請する
申請は、基本的に喪主が行いますが、喪主が申請できない場合には、他の遺族が代わりに行うことも可能です。身寄りのない方の場合は、民生委員や区長が申請を行うこともあります。
また、葬儀社が申請を代行してくれる場合もあるため、遺族が高齢で申請が難しい場合などは、葬儀社に相談してみるとよいでしょう。
申請者の住民票がある自治体に申請する
申請先は、市区町村の役所や福祉事務所です。役所の福祉課や、福祉事務所のケースワーカー、民生委員が窓口となります。
基本的には、故人ではなく申請者の住民票がある自治体で手続きを行います。ただし、念のため亡くなった方の居住地を管轄する自治体にも連絡しておくと安心です。
必要書類は事前に福祉事務所に確認する
申請には、故人の死亡診断書や遺族の収入証明書、戸籍謄本などの書類が必要です。必要な書類は自治体によって異なる場合があるため、事前に福祉事務所に確認しておくと、手続きをスムーズに進めることができます。
葬儀に追加で費用をかけることはできない
葬祭扶助制度は、葬儀費用をまかなうことができない方のための制度であるため、自己資金を加えて装飾を増やしたり、通夜や告別式を行ったりすることはできません。
むしろ、追加で費用を支払える余裕があると判断されると、葬祭扶助の受給資格が認められなくなる可能性もあります。
葬祭扶助制度の対象外の場合に、費用を抑える方法
経済的に苦しいけれど、生活保護を受けるほどではない方は、葬祭扶助制度を利用できないことがほとんどです。ここでは、葬祭扶助制度の対象外になってしまったという方に向けて、葬儀費用を抑える方法をご紹介します。
また、以下の記事でも葬祭扶助制度の対象外の場合の対処方法について解説していますので、併せてチェックしてみてください。
埋葬料や葬祭費を利用する
故人が生活保護を受けていなかった場合でも、故人が社会保険や地方職員共済組合の被保険者であった場合、「埋葬料」または「埋葬費」が支給される可能性があります。
申請者が故人に生計を依存していた場合は、「埋葬料」として一律5万円が支給されます。一方、生計を依存していなかった場合は、「埋葬費」として、実際にかかった費用を基に最大5万円までが支給されます。
また、故人が国民健康保険や国家公務員共済組合に加入していた場合は、「葬祭費」を受け取ることができます。支給額は自治体によって異なりますが、おおよそ1万円〜7万円程度が目安となります。
埋葬費や埋葬料は、火葬費や棺や仏意、霊柩車の費用、お布施代などに当てることができますが、通夜や告別式の費用に当てることはできません。一方葬祭費は、火葬式のみの場合は支給されないことがあります。
埋葬費などの給付金の申請方法については、こちらの記事でも解説しています。
規模の小さな葬儀や市民葬を検討する
通夜と告別式を2日間にわたって行う一般的な葬儀の場合、費用の相場はおおよそ100万〜200万円程度です。
参列者の人数が多い場合や、葬祭用品のグレードを上げた場合には、それに伴って葬儀費用も高くなるため、葬儀の形式や規模について慎重に検討することが大切です。
直葬(火葬式)は、福祉葬に限らず、自己負担で執り行うことも可能です。また、告別式のみを行う「一日葬」や、限られた親族だけで行う「家族葬」など、葬儀の形式にもさまざまな選択肢があります。
直葬の相場は20〜50万円、1日葬の相場は30〜50万円、家族葬の相場は72万円です。ただし、地域や葬儀社によって価格が異なります。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」では、全国均一価格で相場より抑えた価格で、葬儀をご提供しております。さらに、事前に問い合わせいただいた方には特別価格でご案内しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
また、葬儀形式ごとの詳しい費用は、以下の記事も確認してみてください。
「区民葬」や「市民葬」も検討する
葬儀費用を抑える方法のひとつとして、自治体が住民サービスの一環として提供している「区民葬」や「市民葬」を利用するという選択肢もあります。これらは、自治体が指定する葬儀社の協力のもと、簡素ながら比較的安価に葬儀を行うことができる制度です。
葬儀は、提携している葬儀社を通じて、公営の葬儀場や公民館などの公共施設で執り行われます。葬儀の進行は一般葬とほぼ同様であることが多いものの、自治体によっては返礼品や料理の提供ができないといった制限がある場合もあります。
故人の資産や生命保険からの支払いを考える
故人の口座に預貯金がある場合は、そのお金を葬儀費用に充てることができます。ただし、口座の名義人である故人が亡くなると、その口座は凍結されてしまいます。そのため、故人の生前に預金を引き出すことは、相続トラブルの原因になる可能性があるため避けたほうがよいでしょう。
口座が凍結された後でも、「預貯金の仮払い制度」を利用すれば、一定額を引き出して葬儀費用に充てることが可能です。
また、故人が生命保険に加入していた場合、保険金は受取人に指定されている方の財産となるため、葬儀費用に充てても問題はありません。ただし、生命保険金を受け取るタイミングには注意が必要です。
葬儀費用の支払期日のほうが保険金の受取日よりも早くなる可能性があるため、事前に保険会社へ確認しておくことをおすすめします。
葬祭扶助制度や福祉葬についてよくある質問
葬儀や葬祭扶助制度の利用は、人生の中で何度も経験するものではないため、実際のところがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。そこでここでは、よくある質問をまとめてご紹介します。
故人の口座に残高はあるが、葬儀費用を賄えるだけあるかわからない
預金を役所に返金して福祉葬を行うか、口座残高から葬儀費用を捻出するか決められるのが一般的です。
とはいえ、葬儀にかかる費用や残高に応じて対応は異なるため、自治体の窓口や福祉事務所に相談してみてください。
香典は受け取ってもよい?
香典を渡されたら受け取って問題ありません。香典は収入とはみなされず、生活保護の受給額も変わらないことがほとんどです。
また、香典は葬儀費用以外に故人や家族のために使ってよいものとされているため、遺骨の供養や遺族の生活にあてても問題ありません。ただし、香典返しの費用は自己負担になるため、香典返しが難しい場合は、あらかじめお断りするのも選択肢のひとつです。
お墓や納骨の費用は負担される?
葬祭扶助制度は葬儀を執り行うためのもので、納骨やお墓、法要の費用に当てることはできません。地域や火葬場によっても異なりますが、遺骨は遺族が引き取るのが一般的です。納骨や供養にかかる費用は自分で準備する必要があります。
ただし、お墓がなく、新たにお墓を準備する費用がない場合もあるでしょう。最近では、お寺や霊園で管理してもらう永代供養や骨壷を納骨堂に納めるという方法もあります。なお、引き取り手のない遺骨は、基本的に自治体が管理している霊園や合葬墓に納骨されます。
火葬後の遺骨がいらない場合の対処法は、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしていてください。
福祉葬を行うなら葬儀社に相談を
大切な方が亡くなったときに、経済的な負担のことまで考えなければならないのは、つらいことかもしれません。葬祭扶助制度が利用できる場合は、葬儀費用を大幅に抑えられますが、事前の申請が必要となるため、できるだけ早めに準備しておきましょう。
葬祭扶助制度の対象外であっても、埋葬費の支給を受けるなどして、できる限り費用を抑える工夫をすることが大切です。
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