「納棺の儀」を聞いたことはあるものの立ち合う人の範囲やマナーについて理解している人はほとんどいないでしょう。納棺の儀は故人が旅立つ支度をするためのもので、葬儀の1つとして欠かせない儀式のひとつです。
納棺に立ち会う際は、最低限のマナーと儀式の意味を理解しておくことが重要です。この記事では、納棺に立ち会う人の範囲や服装、通夜までの流れについて解説していきます。正しく故人を送り出してあげるためにも、事前に理解しておくようにしましょう。
この記事を要約すると
- 納棺とは通夜前に行う儀式で、末期の水・湯灌・死化粧・納棺の順に故人の旅立ちの支度をします。儀式全体の所要時間は30分〜2時間が目安です。
- 納棺に立ち会う親族の範囲に明確なルールはありませんが、家族や兄弟・孫が立ち会うことが一般的です。親族以外の方の立ち合いは断っても失礼に当たらないですが、納棺前など対面する時間を設けると良いでしょう。
- 湯灌は必須の儀式ではなく、費用相場は10万円程度です。通常は葬儀前日か通夜の直前に行われ、当日に実施することは稀です。
納棺の目的や流れについて
納棺(のうかん)とは、通夜の前に行われる儀式のことを指し、故人が旅立つための支度を目的としています。棺に故人を納めるまでの作業が納棺に該当し、基本的にお通夜の前に実施されます。
納棺は仏教が由来であるものの、宗教を問わずに日本の葬式では広く行われています。故人を棺に納める前には「末期の水」や「死化粧」といったことを行います。
納棺は故人と直に接することのできる最後の時間でもあり、安らかに故人をあの世へ送り出すための大切な儀式です。
納棺の内容とお通夜までの流れ
納棺の儀式では、故人が安心して旅立てるように複数の手順を踏みます。それぞれの行為には意味があるため、事前に理解しておくことで故人を正しく送り出せます。
納棺の儀式は、一般的に以下の4つの手順に分けられます。
- 末期の水
- 湯灌で故人を清める
- 死化粧して死装束を着せる
- 故人を棺に納めて副葬品を入れる
それぞれの時間に明確な基準はなく、儀式全体にかかる時間は30分〜2時間が目安です。お通夜は18時頃に開始となるため、休憩や打ち合わせを踏まえて14〜15時に納棺が行われます。
末期の水を行う
末期(まつご)の水は、茶碗に入れた水で故人の唇を濡らしてあげます。故人が喉の渇きで苦しまないようにするといった意味があります。以前は亡くなった直後やご遺体を安置した際に行っていましたが、近年は納棺の一環となりつつあります。
一般的には割り箸の先にガーゼを括りつけたものを使用しますが、地域によっては菊の葉っぱを用いたり指で直接濡らしてあげたりします。基本的に立ち会った人全員が行います。順番は配偶者・親族・友人・知人の順です。
湯灌で故人を清める
湯灌(ゆかん)では、硬く絞った布で故人の顔や手などを拭いていきます。故人の体を洗うことでこの世のけがれを落とす意味が込められています。また、来世でも穏やかで平和に暮らせるように願う意味もあります。以前は水をお湯で薄めてつくる「逆さ水」で体をきれいにしていましたが、近年はアルコール布を用いることも増えてきています。
湯灌は通常、納棺の直前、葬儀前日または通夜の前に行われ、葬儀当日に実施することは稀です。斎場の設備利用時間によって日程が前後することもあるため、事前に葬儀社に確認しておくと安心です。
洗い清める手順は顔・手・足の順番で、1人ずつ故人の体を拭いて清めていきます。細かい手順があり時間もかかることから納棺師にお願いする人も多い傾向があります。よりきれいに洗い清められるシャワーや浴槽での湯灌や、お化粧付きプランといったさまざまなオプションを弊社ではご用意しております。
死化粧して死装束を着せる
死化粧では、故人が美しく安らかに眠っているようにしていきます。病気でやつれている場合は、頬に綿を含ませて必要に応じてヒゲを剃ったりします。感染症を予防するといった目的もあり、近年は「エンゼルケア」と呼ぶ業者も増えてきました。
死装束とはあの世への旅で身に着ける服装のことで、僧侶の姿になぞらえられたものです。地域によっては愛用していた服を着せてあげたうえで、経帷子(きょうかたびら)という白い着物をかけることもあります。
故人を棺に納めて副葬品を入れる
最後は、故人を全員で棺に納めてから、副葬品を入れていきます。主な副葬品には故人が愛用していたものや好きな食べ物があります。のちほど詳しく説明しますが、何でも入れてよいというわけではないため、事前に葬儀業者に確認しておきましょう。
地域によって副葬品には指定があり、故人が寂しがらず周りの人を道連れにしないようにと、家族の爪や髪を入れることもあります。副葬品のサイズが大きい場合は写真にして入れるといった方法もあります。
納棺が終ると棺をお通夜会場へ移動させる
故人を棺に納めて副葬品を入れたあとは、棺のふたを閉じてから最後に合掌します。地域によっては棺のふたに釘打ちすることもあります。ここまでが納棺の儀式となり、全て終ったあとはお通夜に向けた準備を進めていく流れです。
葬儀場で納棺した場合は、そのまま祭壇前までスタッフが移動させます。自宅の場合は車で搬送するため迎えの時間がくるまで安置しておきます。
なお、ここまでは納棺のマナーなどについて解説してきましたが、手順などに関しては納棺師が詳しく説明してくれるため、全て覚えておく必要はありません。
今回は納棺の流れを中心に解説していますが、以下の記事では臨終・葬儀打ち合わせ・納棺・お通夜・葬儀・火葬といった葬儀全体の流れについての記事もあります。気になる方はこちらもチェックしてみてください。
また、弊社「1日葬・家族葬のこれから」では、納棺から通夜式など葬儀に必要なものを含んだセットプランでの葬儀を全国対応しております。納棺に関するご質問だけでなく、葬儀プランについてのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
納棺に立ち会う人の範囲
納棺に立ち会う人の範囲には、基本的なルールがあり誰でも参加できるという分けではありません。これまでに参列したお通夜で納棺に立ち会った経験は少ないはずです。しかしながら、棺に納められる前の故人を見る最後の機会であるため、関わりのあった人になるべく見てもらいたいと考える人もいるでしょう。
ここでは、納棺に立ち会う人の範囲などについて解説していきます。納棺に立ち会うべきか悩んでいる方は参考にしてみてください。
納棺に参加するのは親族のみが基本
納棺は、基本的に故人の家族や兄弟、孫など、親族のみが立ち会います。具体的に何親等まで参加するといった明確な基準は存在しません。親族のみ立ち会う主な理由としては、故人の体を洗って清めたり服を着せたりする際に肌の露出が多いことがあります。
生前に仲の良かった知人などから納棺の立ち合い申し出があった場合、断っても失礼には当たりません。どうしても会いたいとお願いされた場合は、納棺師やスタッフに相談したうえで納棺の儀式が始まる前や納棺前などに時間を設けてもらうのもひとつの方法です。
親族でも必ず立ち会う必要はない
納棺に立ち会うのは親族のみと解説しましたが、必ず立ち会わなければならないといったルールはありません。気持ちの整理が付いていなかったり遺体を見るのがどうしても辛かったりする人もいるでしょう。
無理に立ち会うと後のお通夜などに影響が出てしまいかねないため、辛いと感じた場合は納棺師に相談してみましょう。近年は儀式の前後のみに立ち会い、実際の作業は業者スタッフに全て任せる人も増えてきています。
葬儀業者によっては「立ち会い不要プラン」などが用意されているケースもあるので、事前に確認しておきましょう。
納棺の参加に関する明確なルールはない
前述したとおり納棺に立ち会うのは親族のみが一般的ではあるものの、明確なルールはありません。納棺は故人の旅立ちに向けた身支度であるのと同時に棺に納められる前の最後の時間です。会わせてあげたい人がいる場合には、親族でなくても立ち会えます。
納棺前に一目でも会わせてほしいという知人がいる場合は喪主に相談してみましょう。なかには、どうしてもお通夜に出るのが難しく、納棺時に会って最後の別れを告げたいという人もいます。
納棺師とは?資格は必要?
納棺の儀式、特に湯灌や死化粧を専門に担当するのが「納棺師」です。故人の身体を清め、旅立ちの支度を整える専門職で、遺族に代わって丁寧に故人と向き合う役割を担います。
納棺師になるために法律上必須の資格はありません。葬儀社に就職して現場で経験を積む方法のほか、葬祭関連の専門学校や、納棺師の技術・心構えを専門に学べる養成機関で学ぶ方法もあります。資格がなくても従事できる仕事である一方、遺族の心情に寄り添いながら精緻な技術が求められるため、経験や研修の実績が技術の目安になります。
葬儀社に依頼する際、納棺師の経験や対応実績を確認したい場合は、遠慮なく問い合わせてみましょう。弊社でも、湯灌・納棺の経験を積んだスタッフが対応いたします。女性の納棺師をご希望の場合など、事前にご要望があればお申し付けください。
納棺の費用相場
納棺の費用相場は、おおよそ3万円〜10万円前後が一般的です。ただし、依頼する葬儀社や地域、サービス内容によって金額は大きく異なります。
納棺費用の主な内訳として大きな割合を占めるのが、「湯灌(ゆかん)」です。
湯灌とは、故人を棺に納める前に、髪や体を洗い清めて衣服を整え、必要に応じて化粧を施す一連の儀式です。また、湯灌には大きく2種類あり、「古式湯灌」「普通湯灌」があります。
古式湯灌は、実際に湯船へ入れることはせず、アルコールやぬるま湯を用いてお身体を丁寧に清める方法です。費用の目安は3万円〜5万円程度とされています。
これに対し、普通湯灌は、専用の浴槽やシャワー設備を使用し、全身を洗い清めたうえでお着替えや死化粧まで行います。より本格的な内容となるため、費用相場は10万円前後になることが多くなります。
より詳しい湯灌の費用を知りたい方は以下の記事も併せてお読みください。
なお、弊社でも死化粧を含めた湯灌での納棺にも対応しております。葬儀の事前相談からご依頼まで、葬儀の専門スタッフが24時間365日いつでも受け付けておりますので、些細なことでもご不安ごとありましたらお問い合わせください。
納棺に立ち会う際の服装
納棺に立ち会う際の服装は、お通夜と同様に喪服が基本です。近年は、斎場で儀式を行うことが多く、納棺後にはそのままの格好でお通夜に参加します。ただし、自宅で納棺する場合は平服で立ち会っても問題ありません。
平服とは略礼装のことで色は黒や濃いグレー、柄のない無地のものを選びます。あくまでも私服ではないので注意しましょう。
【喪服・男性の格好】
- 黒のスーツ
- 黒のネクタイ
- 黒の靴と靴下
【喪服・女性の格好】
- 装飾のない黒のスーツかワンピース
- 黒いバッグ
- 黒のパンプスとストッキング(肌色のストッキングでも可)
スーツは光沢のないものを選び、派手な柄のあるものは避けましょう。子供が立ち会う際は、学校の制服で問題ありません。未就学で制服がない場合は、黒・紺・グレーの洋服で光沢のないものを選びます。
より詳細な納棺に立ち会う際の服装については以下の記事をご覧ください。
棺に入れる副葬品
故人との思い出を偲び、棺の中に入れる副葬品ですが、何でも入れてよいわけではありません。副葬品として選ぶものにはおおまかな指定があり、禁止されているものもあります。何も考えずに入れてしまうと、火葬時にトラブルを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
とはいえ棺に入れられる副葬品には限りがあるため、何を入れるべきか判断できない人もいるでしょう。ここでは副葬品の具体例や注意点を解説しているので、事前に理解しておくようにしましょう。
故人の趣味に関する物やお菓子などを入れるのが一般的
副葬品は故人の趣味に関する物やお菓子などが一般的です。趣味以外では仕事熱心だった故人の場合、仕事着を入れることもあります。お菓子やたばこといった嗜好品でも問題ありません。
故人に伝えたいことがある場合は、お別れの手紙を入れる人もいます。ほかには、「あの世で故人を導いてくれるように」と願いを込めて折り鶴を入れる地域もあります。子供でもその場で作れて、棺内を色鮮やかにしてくれるでしょう。生前に犬やネコを飼っていた場合は、折り紙で折ってあげるのもおすすめです。
火葬炉の設備に影響が出るものは入れない
以下のような火葬炉の設備に影響が出るものは入れないように注意しましょう。
【副葬品として入れてはいけないものの例】
- メガネや腕時計、ジュエリー類
- 骨董品やガラス製品
- プラスチックや革製のもの
- スイカなどの大きな果物
- お金やメダルなど
これらのものは、火葬炉の設備に影響を及ぼす可能性があります。また、革製品やプラスチック製品は燃やした際に有害物質が発生する恐れがあり、危険です。果物を入れる場合は、小さく切ってからいれるなど工夫しましょう。
キリスト教や神式の納棺について
ここまで解説してきた納棺の儀式は仏教が由来のものですが、神式やキリスト教にも納棺は存在します。
神式の場合、仏式とほぼ同じ手順で進められますが、死装束が神衣であることと儀式に神官が立ち会うことが主な違いです。キリスト教でも湯灌や死化粧は行います。エンゼルケアの際には、胸の上で手を組ませてロザリオや十字架を持たせてあげます。
生前に葬儀について指示があった場合には、信仰していた宗教に合わせた納棺の儀式を検討してみましょう。
納棺に関するよくある質問
納棺については、「湯灌は必ず必要なのか」「立ち会うのが辛い場合はどうすればいいか」など、ご遺族から実際に多くのご質問をいただきます。ここでは、弊社に寄せられるご相談内容をもとに、よくある疑問にお答えします。
納棺に立ち会う際の持ち物・香典の準備は?
持ち物に特別な指定はなく、納棺後に必要となる数珠などだけ用意していれば問題ありません。香典に関しても同様ですが、納棺に立ち会う場合は先に渡しておくとよいでしょう。
湯灌は必ず行わなければならない?
いいえ、湯灌は必須の儀式ではありません。病院で清拭(体を拭く処置)を受けていれば、衛生面での対応としては十分です。湯灌には「感謝を込めて身を清め、旅立ちの支度を整える」という意味合いもあるため、費用面だけで判断せず、故人やご家族の気持ちに合わせて選ぶとよいでしょう。
病院で処置してもらった場合でも、あらためて湯灌は必要?
必須ではありません。病院での処置(清拭・エンゼルケア)で衛生的な対応は完了しています。そのうえで、湯灌を追加するかどうかはご家族の希望次第です。じっくりお別れの時間を持ちたい場合や、故人により丁寧な形でお見送りしたい場合に選ばれています。
湯灌や納棺はいつ行われる?
通常、納棺は葬儀の前日、通夜の直前に行われるのが一般的です。葬儀当日に納棺から行うケースは稀です。ただし、斎場の設備が使える時間帯や、ご逝去からの日数によって前後することがあるため、葬儀社と日程をよく確認しておきましょう。
納棺師には資格が必要?
法律上必須の資格はありません。葬儀社での実務経験や、専門学校・養成機関での研修を経て技術を身につけるのが一般的です。資格の有無よりも、経験や対応実績を確認したい場合は、依頼先の葬儀社に問い合わせてみるとよいでしょう。
納棺に立ち会うのがどうしても辛い場合はどうしたらいい?
納棺に無理に立ち会う必要はありません。儀式の前後のみ立ち会い、実際の作業はスタッフに任せる方も増えています。葬儀社によっては「立ち会い不要プラン」も用意されているため、事前に相談しておきましょう。
故人が安心して旅立てるように、納棺を通じて最後のお別れをしましょう
納棺とは故人があの世へ旅立つために身支度する儀式のことを指し、末期の水や湯灌、死化粧などを行います。肌の露出が多いこともあり、基本的に親族のみが立ち会いますが、明確なルールはなく親族が合意した場合は知人なども立ち会えます。
納棺後は故人を棺から出すことはありません。故人が安心してあの世へ旅立てるように、なるべく儀式に立ち合い、みんなで故人を弔ってあげましょう。
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