闘病中の家族がいる方のなかには、「お迎え現象」という言葉を耳にしたことがある方がいるかもしれません。お迎え現象は臨終が近い患者によく見られる現象ですが、家族としてどのように受け止めたらよいのか戸惑うこともあるでしょう。
今回は、お迎え現象とは何か、実際に起こるといわれている内容や科学的な見解などをわかりやすく解説します。臨終が近い時期に見られる兆候を知り、家族としてどのように寄り添えばよいのか考えましょう。
この記事を要約すると
- お迎え現象は、死期が近づいている人が体験するといわれている不思議な現象の1つです。すでに亡くなっている人やきれいな景色が目の前に現れたり、穏やかな音楽が聞こえたりするといわれています。
- お迎え現象は病院よりも自宅の方が体験しやすく、亡くなる1〜2週間前から数日前に体験する人が多いといわれています。ただし、現時点では科学的な根拠は解明されていません。
- 闘病中の家族からお迎え現象を体験したことを伝えられたら、否定せずにやさしく話を聞いてあげましょう。家族の心に寄り添うことが何よりも大切です。
お迎え現象とは?
お迎え現象とは、死期が迫っている人が、すでに亡くなっている家族・友人・ペットの姿を見たり、自分がどこかから迎えに来てもらっているように感じたりする体験を指します。終末期医療や在宅介護の現場で広く知られている現象の1つで、「亡くなる前に大切な存在が迎えに来る」という意味合いで使われています。
この現象は亡くなる数日前に体験することが多く、これまで差し迫る死への恐怖を感じていた人が急に安心感や落ち着きを見せることがあります。
お迎え現象で起こるといわれていること
お迎え現象では、本人の記憶や経験などに由来する不思議な体験や感覚を経験するといわれています。
故人となった家族・友人やペットが現れる
お迎え現象のなかで最も多く語られるのが、すでに亡くなっている家族や友人、かわいがっていたペットの姿が見えるという体験です。「母が部屋に立って微笑みかけてきた」「昔飼っていた犬が迎えに来た」など、本人にとって大切だった存在が現れるといわれています。
一見夢や幻覚のように感じられますが、本人にとってはきわめて現実的に感じられていることが多く、懐かしさや安心感を得られているとされています。
美しい景色が見える
花畑・星空・光に包まれた風景・川や山に囲まれた場所など、穏やかで美しい景色が見えると語る人もいます。家族や看護師に対して「目の前が明るい」「きれいな場所が見える」といった表現をすることがあり、不安や恐怖よりも穏やかで晴れやかな気持ちになるケースが多いようです。
美しい音楽や声が聞こえてくる
お迎え現象を経験した人は、誰もいないはずの場所から音楽が聞こえたり、自分の名前を呼びかける声が聞こえたりすると訴えることがあります。懐かしい歌ややさしい声で名前を呼ばれる感覚を覚えることで、気持ちが安らかになることもあるようです。
死への恐怖が和らぎ心が落ち着く
お迎え現象を体験した人の中には、「死が怖くなくなった」「安心した」という変化を見せる人もいます。故人との再会や穏やかな景色によって死に対する不安が和らぎ、穏やかな表情になるとも考えられています。
これまで不安や苦しみを訴えていた人が静かに落ち着いた様子になると、不思議に感じられるかもしれませんが、本人にとっては心が整理されていく過程となっているのでしょう。
お迎え現象に科学的な根拠や研究結果はある?
お迎え現象についてはこれまでさまざまな研究がなされていますが、現時点では明確な科学的根拠は示されていません。断定的な結論はでていませんが、医学的には幻覚や意識状態の変化と位置付ける場合や、脳内物質の影響などが関係している可能性も指摘されています。
一方で、過去に国内で行われたアンケート調査では、終末期患者を看取った家族の約4割が「お迎え現象の体験があった」と回答しています。調査によると、お迎え現象は病院よりも自宅などの慣れ親しんだ環境で起こりやすく、亡くなる1〜2週間前から数日前にかけて体験した方が多いとされています。科学的なメカニズムは解明されていないものの、多くの報告があることは知られています。
お迎え現象とせん妄の違い
お迎え現象と混同されやすい症状に「せん妄」があります。せん妄は、病気の進行・薬の影響・脱水症状・感染症などによって起こる意識障害の1つで、幻覚・錯乱・過度な興奮・不安定な言動をともなうのが特徴です。
一方、お迎え現象といわれる体験は容体が比較的落ち着いた状態で起こることが多く、本人が安心感や懐かしさを感じやすいという違いがあります。本人に強い混乱状態や錯乱状態が続く場合はせん妄の可能性もあるため、医師や看護師に相談することが大切です。
闘病中の家族からお迎え現象を体験したといわれたときの対応
もし闘病中の家族から「お迎えが来た」「誰かが見える」などと打ち明けられたときは、否定せずに受け止める姿勢が大切です。科学的な根拠がないことから体験を否定してしまうと、かえって本人を不安にさせてしまうかもしれません。
話を遮らずに静かに耳を傾け、「そうなんだね」「教えてくれてありがとう」などと寄り添う言葉をかけましょう。本人から家族に体験したことを共有することで、本人の心がより落ち着くことも考えられます。
なお、話を聞いたうえで家族として不安を感じる場合は、医師や看護師などの医療従事者に相談するのも1つの方法です。
臨終が近いときのサインはほかにもある
臨終が近づいてくると、お迎え現象のほかにもさまざまな容体の変化や現象がみられることがあります。
目元の印象が変わる
臨終が近づいてくると、目元の印象が大きく変化することがあります。目の色が濁ったように見えたり、逆に不思議と目力が強くなったように感じられたりすることも珍しくありません。また、理由が分からないまま涙を浮かべている、目の下のクマが急に濃くなるというケースもあります。これらの変化は全身の血流や代謝機能が低下することによって起こる変化とされており、家族が容体の異変に気付きやすいサインの一つです。
食事や排泄が困難になる
終末期になると、体力や内臓機能・嚥下機能の低下によって食事量が徐々に減っていき、最終的にはほとんど食べ物を経口摂取できなくなることがあります。水分を取るのも難しくなり、口元を湿らせる程度になる場合もあります。
また、寝たきりになることで排泄の回数が減少したり、自力で排泄できなくなったりすることも珍しくありません。このような症状がみられるときは、医療従事者の指示に従い、適切な処置や治療を選択することが大切です。
体重が減少する
臨終が近づくと、短期間で体重が大幅に減少することがあります。筋肉量や脂肪が落ち、げっそりと痩せた印象になることも少なくありません。これは病気の進行や嚥下機能の低下にともなう栄養摂取量の低下による自然な変化といわれています。この段階では無理して食事を摂ったり体重を増やそうとするより、安楽に過ごせる環境を整えることが大切です。
呼吸が変化する
呼吸の変化も、臨終が近いときに見られる代表的なサインです。この時期になると、呼吸が浅く不規則になったり、一定のリズムで止まるように見えることがあります。
また、口を開けた状態で顎が上下するように呼吸する「下顎呼吸」や、呼吸時に喉に痰が絡んだような音が出る「死前喘鳴」が現れる場合もあります。このような症状は珍しいものではなく、苦しそうな見た目に対して必ずしも強い苦痛を感じているとは限らないといわれています。
肌の色が変色する
臨終が近くなると、血行不良によって肌の色が青白くなり、手足が冷たく感じられるようになります。とくに指先や足先は血行が行き渡りにくくなり、皮膚が青紫に変化したり斑点状に変色したりする「チアノーゼ現象」が起こりやすいといわれています。これらの症状は、体内の循環機能が低下しているサインと考えられています。
睡眠時間が増える
臨終が近付くにつれて目を覚ましている時間が徐々に減っていき、意識が朦朧とするようになったり、ほとんど眠っている状態になったりすることがあります。声をかけても反応が弱い、声かけに返事ができなくなるなどの症状もみられます。
ただし、意識がはっきりしないなかでも聴覚は比較的最後まで残るといわれているため、一見意識がないように見えていても、やさしく声をかけ続けることが大切です。
手のひらをじっと見つめる
終末期の患者のなかには、理由もなく自分の手のひらをじっと見つめたり、手のひらで何かを掴むような動作を繰り返したりすることがあります。「手鏡現象」ともいわれ、「手相が変わった」「手の様子がおかしい」と訴えられるケースも珍しくありません。こちらも科学的なメカニズムは解明されていませんが、臨終が近い人にみられる特徴的な仕草の1つとされています。
中直り現象が起こる
容体が悪化し続けているなかで、一時的に体調が回復したように見えることがあります。これを「中直り現象」といい、急に歩けるようになる・やりたいことを思い出す・食事を少し摂れるようになるなどの兆候が表れます。
中直り現象が起こると、家族は「病状が回復に向かっているのでは」と感じるかもしれませんが、実際に回復しているのではなく、神経物質の分泌の関係上一時的に回復しているように見えているだけとされています。中直り現象の後に急速に状態が悪化するケースも珍しくありません。
家族への感謝を伝える
臨終が近づくと、家族に対してこれまで口にしてこなかった感謝の言葉を伝えることがあります。「ありがとう」「世話になったね」などといった言葉は、本人が心の整理を進めているサインともいわれています。このような言葉を発しているときは、家族にとっても大切な時間となるため、素直に受け止めてあげることが大切です。
お迎え現象や臨終が近いサインが現れたら、悔いのないように寄り添いましょう
お迎え現象は医学的に証明されているものではありませんが、終末期に多くの人が体験するといわれている現象の1つです。家族がお迎え現象を体験したら、その体験を否定せず、本人の言葉や気持ちを受け止めて穏やかに寄り添いましょう。
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