経済的な理由や故人の遺言などから、僧侶を呼ばずに火葬のみを行う直葬や、無宗教での葬儀を検討している方もいるのではないでしょうか。
近年では直葬や無宗教葬儀も増えつつあります。しかしお経をあげない葬儀では、故人が成仏できないのではと気になることもあるものです。なかには、罰当たりでたたられるのではと心配している方もいるかもしれません。
本記事では、成仏やお経の意味を確認しながら、お経が故人の成仏に必須のものであるかどうかを深掘りしていきます。お経をあげない葬儀を行う際の注意点もあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
この記事を要約すると
- お経は成仏に必須のものではありません。最も大切なのは、故人を悼み真心を持って弔う気持ちです。
- 直葬や無宗教葬儀であっても、僧侶を呼んで読経してもらうことは可能です。一般的な葬儀と比較し葬儀費用は抑えられるため、迷っているのであれば僧侶の手配を検討してみましょう。
- 僧侶のいない葬儀では、菩提寺や周囲の人間とのトラブルに発展する可能性があります。遺族自身も後悔する可能性があるため、慎重に検討するのが大切です。
そもそも成仏とは?
そもそも仏教における成仏とは、煩悩から解放され、悟りの境地に達して仏になることを指します。本来の意味での成仏に死は必須ではなく、生前の厳しい修行によっても仏陀の境地に至ることが可能です。
しかし、私たちが一般的に成仏という場合、悟りを開くことではなく、死者が安らかな眠りについて極楽浄土に達することを意味することが多いでしょう。
本来の教義からは逸れるものの、これはこれで誤りではありません。宗教や宗派、個人の持つ哲学により、成仏にはさまざまな意味合いがあるのです。
お経のもつ意味
お経はそもそも、お釈迦さまの教えを弟子たちが書き留めた経典です。
本来の仏教の教義では、故人は生前の行いによって成仏するかどうかが決まるとされます。お経は亡くなった方を成仏へと導くものではなく、生者に向けて唱えられるものです。残された遺族に向けて読経し、悲しみを癒すのが本来の姿とされます。
葬儀でお経を唱えるのはこのためです。しかし現代の一般的な葬儀においては、故人の冥福を祈ってお経が唱えられるという解釈も間違いではありません。
お経をあげない葬儀(直葬・無宗教葬儀)だと、成仏できない?
成仏できるかどうかは、あくまで見送る人の気持ち次第といわれています。
供養において最も大切なのは、真心です。心から故人を悼み真心を込めて弔っていれば、亡くなった方は彷徨うことなく死後の世界へ旅立てると考えられています。
そもそもお経はお釈迦さまの教えを記録したものであり、お経=成仏ではありません。仏教にはさまざまな宗派や教えがありますが、元来は故人の生前の行いこそが成仏に関わるとされています。
成仏の考え方は仏教のみで、キリスト教や神道にはない概念です。他の宗教の信徒や、特定の宗教を持たない人はすべて死後の世界で道に迷うというのは、違和感があるのではないでしょうか。災害などで一般的な葬儀を行うのが難しいケースもあります。
僧侶を呼ばずに葬儀を行っても、正しい手順で火葬を行ってさえいれば法律上の問題もありません。事情によりお経をあげられなくても、過剰に心配する必要はないため、誠意をもって故人を送り出しましょう。
なお、神道の葬儀では祭主や神主による祝詞を、キリスト教では神父や牧師による説教を行います。
お経なしだと成仏できないといわれる理由
お経なしだと成仏できないと思えるおもな理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 故人が現世の未練を断ち切れない
- 故人が自分の死に気付かない
- 遺族の信仰心が篤く古来の風習にこだわっている
具体的に見ていきましょう。
故人が現世の未練を断ち切れない
現世に未練を持ったままだと、故人はあの世にたどり着けないという通説があります。自分が死んだことを受け入れられずに浮遊霊になったり、特定の場所に執着してそこを離れられない地縛霊になったりするというものです。
小さなお子さんを残して亡くなった方や、やり残したことがある方の場合、現世の未練をなかなか断ち切れないように感じられます。
しかしこれはあくまで俗説であり、仏教本来の教えではないとされます。大切なのは、誠意を持って弔うことです。
故人が自分の死に気付かない
お経をあげないと、故人は自分が死んだことに気付かないのではと考える方がいます。死に気付かないまま浮遊霊になり、現世をさまよってしまうと思えるのです。
不慮の事故で突然亡くなったようなケースでは、死んだことを理解しないまま生前の生活を続けようとしていると心配になるかもしれません。
しかしこちらも俗説であり、そもそもの仏教の教義ではないといわれています。宗派や個人の持つ世界観にもよりますが、過剰に心配することはないでしょう。
遺族の信仰心が篤く古来の風習にこだわっている
遺族の信仰心が篤く、古来の風習にもこだわりがあるものの、事情により一般的な葬儀を行えない場合、故人が成仏できないのではと不安を覚えるものです。
仏教にはさまざまな宗派や捉え方があり、法要やお経によって死者の魂を正しい道へと導くとする教えもたしかにあります。そのため、お経がないと故人が死後の世界をさまようように思える人もいるようです。
お経は死者の弔いにはなりますが、必要不可欠なものではありません。大切なのは、誠意をもってご供養にのぞむ心と姿勢です。
お経をあげない葬儀(直葬・無宗教葬儀)の特徴
ここからは、お経をあげない代表的な葬儀として、以下の2つについて見ていきましょう。
- 直葬の特徴
- 無宗教葬儀の特徴
具体的な内容は次のとおりです。
直葬の特徴
直葬とは、火葬のみを行う葬儀です。お通夜や告別式をはじめとした宗教儀礼や式典、お別れの会などは一切省きます。
故人が亡くなったあと、ご遺体を火葬場へ直接搬送し、ごく親しい身内のみで故人を送り出します。葬儀中に弔問客を受け入れず、読経や焼香も行いません。
葬儀の規模が小さいため、時間的な拘束や経済的な負担を抑えた葬儀が可能です。
直葬については、以下で詳しく解説しています。
無宗教葬儀の特徴
無宗教葬儀とは、宗教儀礼にとらわれない葬儀です。宗教者を呼ばない状態で、何らかのセレモニーやお別れの会を開いて故人を見送り、その後火葬するのが大きな特徴です。
家族以外の親戚や知人も招き、趣向を凝らした自由な形式で故人を弔います。代表的な無宗教葬儀には、音楽を流して故人を弔う音楽葬が挙げられます。
無宗教葬儀の場合、公序良俗に反しない限り何をやるのも基本的には自由です。故人の趣味などにちなみ、こだわりの詰まった葬儀を行えるメリットがあります。
無宗教葬儀について詳しく知りたい場合には、以下の記事もあわせてご覧ください。
直葬や無宗教葬儀であってもお経はあげられる
直葬や無宗教葬儀を行う場合でも、お経をあげることは可能です。
直葬の場合、ご遺体の安置所などに僧侶を呼べばお経をあげられます。これは純然たる直葬ではなく、火葬式と呼ばれることがあります。
火葬式での読経時間は、安置所で行う場合は10分程度、火葬直前の火葬炉の前で行う場合は5分程度であるのが一般的です。火葬のスケジュールがあり、炉の前ではあまり時間が取れないことが多いため、慌ただしいのが嫌であれば安置所での読経が無難です。
音楽葬など無宗教葬儀であっても、読経や焼香は行えます。無宗教葬儀はやることに制限がないため、一部に仏式の儀式を取り入れるのもまた自由です。気がかりに感じるのであれば、後悔しないためにも読経の依頼を検討するとよいでしょう。
直葬と火葬式の違いについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
お経をあげない葬儀の相場
お経をあげない葬儀の費用感を押さえておくために、以下を説明します。
- 直葬の相場
- 無宗教葬儀の相場
それぞれの相場は次のとおりです。
直葬の相場
直葬にかかる費用の相場は、20万~50万円程度であるといわれています。
葬儀費用は、使用する火葬場や葬儀社の人件費などにより開きが生じます。例えば公営の火葬場の場合、無料から2万円程度で使用可能ですが、民営の場合は5万~10万円程度かかるのが一般的です。
なお火葬式で僧侶を呼ぶ場合、5万~10万円程度のお布施で対応してもらえることが多いようです。火葬式ではそれに加え、控室の使用料や花束代などがかかります。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」でも直葬に対応しております。必要なものが含まれた明瞭のセットプランで、全国対応しております。
無宗教葬儀の相場
無宗教葬儀には、明確な相場はありません。
葬儀内容を自由に設定できるため、特別なこだわりがあれば費用をかけるだけかけられます。
無宗教葬儀の相場をおおまかに把握するには、直葬の費用に加え、セレモニーやお別れの会にかかる会場の使用料や資材費などを加えるとよいでしょう。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」では宗教者を呼ばない無宗教形式の葬儀にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
お経をあげない葬儀をあげる際の注意点
お経をあげない葬儀をあげる際のおもな注意点は、以下の3つです。
- 菩提寺がある場合はもめる可能性が高い
- 親戚から理解されない場合がある
- 遺族自身が後悔する可能性がある
それぞれの注意点について具体的に解説していきます。
菩提寺がある場合はもめる可能性が高い
葬儀でお経をあげないと、菩提寺がある場合はもめる可能性が高いです。
葬儀でお経をあげない場合、僧侶を呼びません。菩提寺があるのにそれを無視し、無断で葬儀を行うことは失礼にあたります。古くから付き合いのある菩提寺側としても不誠実に感じられ、納得がいかないでしょう。
宗教儀礼を省いたことから供養不足として、菩提寺への納骨を断られる恐れもあります。そもそも戒名がないと、特定宗派の墓地への埋葬は難しくなります。その場合、宗教不問の墓地への埋葬や、海洋散骨などを検討することになります。
菩提寺とのトラブルを避け、先祖代々の墓所への納骨を希望する場合は、葬儀前に菩提寺に相談しておきましょう。
親戚から理解されない場合がある
親戚や友人など周囲の人間から理解されない場合があるのも、お経なしの葬儀の注意点です。
近年では直葬や無宗教葬儀など宗教にとらわれない葬儀が増えつつあるとはいえ、昔ながらのしきたりを重んじる人もいます。特に、信心深い方や古来の風習が根強く残る地域では、お経なしの葬儀を受け入れがたい風潮が見受けられます。
親族トラブルを避けるためには、なぜ葬儀に僧侶を呼ばないのかを事前にしっかり説明しておくのが大切です。
遺族自身が後悔する可能性がある
お経をあげない葬儀は、何より遺族自身が後悔する可能性がある点にも注意が必要です。
純然たる直葬の場合、故人とのお別れの場が設けられておらず、いきなり火葬のみを行います。十分な見送りの場がないことから心の整理がつかず、あとになっていたたまれない気持ちにとらわれる可能性があります。
また、音楽葬などの無宗教葬儀では、葬儀の自由度が高すぎることもデメリットです。大切な方を亡くした失意のなか、決めることが多すぎて疲弊したり、結局思った葬儀ができずに後悔したりすることもあります。
故人の遺言や経済的な理由などから僧侶を呼ばないものの、実は気になっているというケースでは、後悔のないようお経の依頼を検討するとよいでしょう。僧侶を呼んで読経してもらうだけであれば、一般葬と比較すると予算や時間的な負担も抑えられます。
簡易的にでも読経を依頼すれば、先に説明した菩提寺や親戚とのもめ事を避けられる可能性もあります。お経をあげない葬儀のメリット・デメリットを把握したうえで、希望に沿った葬儀を行ってください。
なお、お経をあげなかったことに後から後悔しないように以下の記事もチェックして、しっかり検討しましょう。
お経をあげない葬儀や成仏に関するよくある質問
ここからは、お経をあげない葬儀や成仏に関するよくある質問を紹介します。
- 故人が成仏した証拠はある?
- 成仏できないと虫になると言われる理由は?
- 僧侶の代わりに遺族がお経を唱えるのはあり?
それぞれの回答は次のとおりです。
故人が成仏した証拠はある?
故人が成仏したことを科学的に実証するのは難しいといえます。
故人が安らかな眠りについたかどうかは見送る側の心の問題である側面が強く、一般的には物理現象として現れるものではありません。
ただし宗派によっては、ご遺体の死相が白く穏やかであれば成仏しており、黒ずんだ鬼の形相であればそうでないとする説もあります。火葬後に、遺骨の喉仏がきれいに残っていれば極楽浄土に行けるという説もあるようです。
結局は遺族の気の持ちようで、心から冥福を祈っていれば故人も安らかであると考えるのが一般的です。
成仏できないと虫になると言われる理由は?
成仏できないと虫になると言われるのは、六道輪廻(ろくどうりんね)の教えによるものです。
本来の仏教では、悟りの境地である解脱(げだつ)に達しない限りは輪廻転生を繰り返し、生前の行いに従って六道に振り分けられるとされます。
- 地獄道
- 餓鬼道
- 畜生道
- 阿修羅道
- 人間道
- 天道(天上)
「畜生道」は、六道のうち「天上」や「人間」の世界より格下とされる動物の世界です。煩悩にとらわれて欲望のままに生きていた場合は畜生道に落ち、動物の一種である虫となって現れることがあるといわれています。
遺族に何かを伝えるために故人が虫になって現れたとして、丁寧に扱う風習も残っているようです。
僧侶の代わりに遺族がお経を唱えるのはあり?
僧侶の代わりに遺族がお経を唱えても、基本的には問題ないとされます。
お経を唱えることで故人を真摯に弔う気持ちにつながることから、ご供養になるとするのが一般的です。
ただし、お経は意味を把握して唱えるからこそ意味があるともいわれています。素人がお経を唱える場合、恩恵が少ないと考える向きもあります。
お経なしの葬儀でも誠意をもって故人を送り出そう
お経をあげなくても、故人は成仏できると考えられます。成仏は遺族や見送る側の気持ち次第である側面が強く、誠心誠意を持って送り出せば、故人は迷うことなく安らかな眠りにつけることでしょう。
僧侶を葬儀に呼ばない場合、菩提寺や親族とのトラブルになるかもしれません。また、遺族自身が後悔する可能性もあります。直葬や無宗教葬儀でもお経はあげられるため、気になる場合は葬儀社に相談してみてはいかがでしょうか。
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