自分の親が亡くなると、葬儀の準備とあわせて多くの手続きを進める必要があります。一般的な流れは似ていますが、生前の状況によって変わるケースもあるため注意が必要です。特に生活保護を受給していた親の場合は、葬祭扶助の利用や自宅の片付けなどで不安を抱える方も少なくありません。
この記事では、生活保護を受給していた親が亡くなった際の葬儀までの段取りや費用の考え方、住まいの整理、死亡後の解約・行政手続き、相続放棄の判断についてわかりやすく解説していきます。
この記事を要約すると
- 生活保護を受給していた親が亡くなった場合、葬儀社への連絡と安置先の確保に加え、葬祭扶助を利用する可能性があるため、早めに福祉事務所へ相談し手続きの可否や必要書類を確認しましょう。
- 葬儀後は住居の退去や遺品整理を進めるが、相続放棄を検討する場合は財産に触れる範囲が制限されるため注意が必要。借金・退去費・保護費の返還の有無も確認し、相続手続きは慎重に進める必要があります。
- 親が生活保護を受給している場合は、葬祭扶助の条件、緊急連絡先、重要書類の保管場所、住まいの整理方針などを事前に家族で共有しておくと、万一の際に慌てず手続きを進めやすくなります。
生活保護受給者の親が亡くなったら最初に行うこと
生活保護を受けている親が亡くなった場合でも、葬儀の流れは一般的なケースと大きく変わりません。ただし、葬祭扶助の申請や役所への連絡など、確認しておくべきことがいくつかあります。ここでは、葬儀の準備を中心に行うことを解説します。
葬儀社へ連絡して搬送・安置を依頼する
親が亡くなった場合、病院の安置室に安置し続けてもらうことはできないため、葬儀社へ連絡し安置先を決めたうえで搬送を行います。生活保護を受けていた場合、あとで「葬祭扶助制度」を利用する可能性があるため、対応している葬儀社かどうかを確認しておくと安心です。
葬祭扶助の範囲外のサービスを選ぶと後から支給の対象にはならないこともあるため、最初の連絡時に扶助を使う予定があると伝えておくと配慮した準備が進められます。搬送後は、葬儀の形式や火葬までの段取りなどを葬儀社と相談しながら決めていきます。
葬祭扶助の対象かどうかを福祉課に確認する
葬儀社への連絡と搬送が済んだ後は、次に役所へ連絡します。生活保護を受給していた親が亡くなった場合は、死亡届の提出とあわせて、生活保護を受けていた事実を伝える必要があります。亡くなってすぐに役所へ向かう必要はなく、安置先での対応が落ち着いた段階となります。
このタイミングで葬祭扶助が利用できるかどうかの確認を行いましょう。葬祭扶助は葬儀前の申請が原則のため、手続きが遅れるほど利用が難しくなります。担当者から申請に必要な書類や進め方の説明を受けることで、葬儀社との打ち合わせも進めやすくなります。
葬儀形式・日程・規模を決める
役所への連絡が済み、葬祭扶助を利用できるかどうかの見通しがついた後は、葬儀の形式や日程を決めていきます。葬祭扶助制度を利用する場合は、一般的な通夜や告別式を行う葬儀は対象外となるため、一般葬や家族葬を選ぶことはできません。
代わりに、生活保護の基準に沿った「生活保護葬(火葬のみで進める形式)」を執り行います。地域によって火葬場の空き状況が異なるため、葬儀社と相談しながら日程を調整しましょう。
葬祭扶助制度を利用しない場合は、通常の葬儀と同じように複数のプランを比較し、費用や家族の希望に合う形式を選べます。
生活保護受給者の親が亡くなった場合の葬儀費用
生活保護を受給していた親が亡くなった場合でも、葬儀費用の考え方は「葬祭扶助を使うかどうか」で大きく変わります。
葬祭扶助制度を利用しない場合は、通常の葬儀と同じように親族が費用を負担する必要があり、直葬のみであれば20〜50万円ほどが一般的ですが、一般葬となると100万円以上になることも珍しくありません。
生活保護を受給しており、葬祭扶助制度を活用することになった場合、火葬費用や棺、搬送などの必要最低限の部分が基準額の範囲内で補われるため、費用はかかりません。どの程度まかなわれるかは地域によって異なるため、福祉課や葬儀社に確認しておきましょう。
生活保護受給者の親が亡くなった場合の葬儀費用の補助
生活保護を受給していた親が亡くなった場合に利用できる葬祭費用の補助が「葬祭扶助制度」です。前述のとおり、補助の範囲は最低限の費用に限られています。飲食の提供や火葬前の読経といった費用は対象外であり、この費用だけ別で払うといったことはできません。
葬儀費用について「死亡一時金」を気にする方もいますが、これは健康保険加入者を対象とした制度であり、生活保護を受けていた期間は国民健康保険を脱退した扱いになるため、支給されません。
ただし、保護を受ける前に健康保険に加入していた期間に未支給分が残っている場合に限り、支給が認められる可能性があるため、市区町村の保険窓口で確認してみましょう。
生活保護世帯で葬儀費用の支援を受ける場合、現実的に利用できるのは葬祭扶助制度が中心です。支給範囲や利用の流れについて正しく理解しておきましょう。
親の住まいの片付けや退去手続きの対応
葬儀を終えた後は、親が暮らしていた住まいの整理や退去の準備が必要になります。これは生活保護の受給にかかわらず必要な流れで、一人暮らしの場合は家賃の発生や現状回復費用などを早めに確認することが大切です。
親が生活保護を受けていた場合も、遺品整理や退去費用は葬祭扶助の対象ではないため、別で対応する必要があります。ここでは、具体的な対応内容について解説します。
遺品整理と室内清掃を行う
遺品整理では親の持ち物を整理し、必要な物と処分するものを仕分ける作業から始めます。自分たちで行うこともできますが、荷物が多い場合や遠方に住んでいる場合は専門業者に依頼するのが一般的です。
一人暮らしで亡くなった場合、発見まで時間があくことで室内の状態が悪化しているケースもあります。これは生活保護に限ったことではなく、高齢の単身世帯では起こり得る状況です。この場合、除菌や消臭を行う「特殊清掃」が必要になることがあり、追加費用が発生します。
遺品整理費用と特殊清掃費用は葬祭扶助制度に含まれず、個別に手配する必要があります。
賃貸物件の場合は退去手続きを行う
賃貸に住んでいた場合は、管理会社や家主に連絡し、退去手続きを進めます。退去が決まるまでは家賃が発生するため、注意が必要です。現状回復費用は5〜9万円ほどが一般的ですが、住まいの状態によっては修繕内容が増えるケースもあります。
故人が賃貸契約をしていた場合、退去費用をだれが負担するかは契約の連帯保証人→相続人→家主の順で判断されます。相続人が負担する場合、費用は相続財産から精算されます。
ただし、相続放棄をすることで費用負担を避けられる場合もあるため、判断に迷うときは早めに家庭裁判所や専門家へ相談するようにしましょう。
親が生活保護受給中に亡くなった際の相続と返還の注意点
生活保護を受給していた親が亡くなった場合、相続の流れは基本的に同じです。ただし、保護費の返還義務や相続放棄する際の判断に注意点があり、対応次第では負担が生じる可能性があります。ここでは、相続を判断する際の注意点について解説します。
相続放棄が必要なケースと判断基準
生活保護を受給していた親に財産がほとんど残っておらず、借金や滞納家賃などの負担がある場合は、相続放棄を検討することがあります。資産より支払いの方が多くなると判断できる場合は、早い段階で相続放棄を前提に状況を整理していきましょう。
【相続放棄を進めるための手順】
1:財産を確認する(処分はしない)
2:福祉事務所へ保護費の受給状況を問い合わせる
3:遺品や通帳は触るだけで整理せずにそのままにしておく
4:相続放棄に必要な書類をそろえる
5:3か月以内に家庭裁判所へ申述する
状況の見極めが難しい場合は早めに専門窓口へ相談するのが安全です。まずは福祉事務所に保護費の受給状況を確認し、借金や財産内容に不安がある場合は、市区町村の無料法律相談や法テラスを利用できます。先に遺品などを処理してしまうと、相続したことになるため注意が必要です。
相続放棄の期限
相続放棄は「亡くなった日を知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申述書を提出する必要があります。3か月以内に手続きを完了させる必要はありません。
ただし、この期間中に遺品を勝手に処分したり、口座からお金を引き出したりした場合、相続したことになり放棄が認められなくなるため、注意が必要です。
生活保護費の過払いがあった場合の返還義務
生活保護費が本来より多く支給されていた場合、福祉事務所から「過払い分を返してください」と案内が届くことがあります。
たとえば収入の申告漏れがあった場合や、資力がある状態で受給が続いていた場合、あるいは死亡後に当月分の保護費が振り込まれていたケースなどです。
この返還義務は、相続人が財産を引き継いだ場合に限り、相続財産の範囲で負担します。一方、相続放棄が認められた場合は、返還義務も引き継ぎません。
ただし、放棄が完了する前に通知が届くこともあるため、その際は福祉事務所へ「相続放棄の手続き中」であることを伝えておきましょう。
生活保護受給者の親の死亡後に、必要な解約・停止・行政手続き
親が亡くなり葬儀や公的な手続きを済ませたあとは、それ以外の契約や支払いの利用停止手続きを行う必要があります。ここでは、主な手続きの進め方について解説します。
携帯・インターネット・クレジットカードの解約
生活保護を受けていた世帯では、通信費やカード払いが保護費から引き落とされているケースが多く、死亡後は支払いが止まるため、最もトラブルが起きやすい部分です。
親が亡くなった時点で保護費は停止するため、そのまま放置すると携帯料金や端末代の未払いが発生し、延滞金が加算されることもあります。
そのため、まずは契約者が亡くなったことを携帯会社やプロバイダに伝えることから始めましょう。その後、名義変更と解約のいずれかを選ぶ案内があるため、都合の良い方を選びます。携帯会社は店頭での手続き、インターネット関連は電話やオンラインで完結します。
使用料金が発生し続ける可能性があるため、今後の判断が決まっていない場合もまずは連絡することが大切です。
預金口座の解約と年金の停止手続き
銀行は死亡の連絡を受けると口座を凍結し、出金や自動引き落としがすべて停止します。公共料金やサブスクなどの引き落としも止まるため、契約の整理と同時進行で進める必要があります。口座解約は遺産分割の内容が確定してから行うため、死亡連絡をしてすぐに解約できるわけではありません。
相続する場合は、相続人全員の戸籍謄本や遺産分割協議書を準備し、銀行窓口にて手続きを行います。相続放棄する場合は、銀行には死亡の連絡のみしておけば問題なく、口座の手続きなどは必要ありません。家族全員が相続を放棄した場合、相続人不存在として家庭裁判所が選んだ管理人が手続きを行います。
年金を受給している場合、死亡しても自動で停止されないため、別途「年金受給権者死亡届」を役場の担当窓口に提出します。過払い分がある場合は返還が必要ですが、相続する場合は相続財産から精算され、相続放棄すれば返還義務は発生しません。
親が生活保護の場合でも慌てないための事前準備
生活保護を受給していた親が亡くなった場合、状況に応じて葬祭扶助制度を活用したり、相続放棄を申請したりする必要があります。これらの手続きなどは事前に複数の準備をしておくだけでスムーズに作業を進められます。ここでは、今からできる事前準備について解説します。
葬祭扶助の条件と必要書類を確認しておく
生活保護世帯で葬儀費用を工面できない場合、葬祭扶助制度を利用できます。ただし、誰でも利用できるわけではなく、喪主の収入状況・同居状況などによって可否が判断されます。スムーズに申請できるよう、以下の内容を確認しておきましょう。
- 親が現在どの自治体で生活保護を受けているか
- 担当ケースワーカーの名前と連絡先
- 申請に必要な書類(死亡診断書・申請書式など)
- どの範囲まで費用が出るのか(火葬式が基本)
葬祭扶助制度は葬儀前に申請する必要があるため注意が必要です。不安な場合は、生前から専用窓口(ケースワーカー)に相談することも可能です。
住まいや遺品の整理方針を家族で共有しておく
生活保護世帯では、親族が近くにおらず生活内容を把握していないケースが多く、死亡後の住まいの扱いが大きな負担になりがちです。離れて暮らしている場合などは特に、以下の項目について把握しておくようにしましょう。
- 賃貸の場合:連帯保証人/管理会社/契約内容
- 持ち家の場合:固定資産税・名義・売却の可否
- 遺品整理は誰が主体になるか
- 相続放棄を考える場合、「遺品を勝手に処分しない」ことを家族で共有
相続放棄する可能性がある場合、遺品整理で故人の財産を勝手に処分してはいけません。口座などのお金もそのままにしておくよう親族同士で共有しておくようにしましょう。
緊急連絡先や重要書類の保管場所を把握しておく
親が亡くなった後、最初に必要となるのが「死亡診断書・保険証・年金関係の書類・生活保護関係の書類」です。各手続きをスムーズに済ませるためにも、以下の保管場所を把握しておきましょう。
- 身分証明書
- 生活保護決定通知書
- 保険証
- 銀行通帳・キャッシュカード
- 賃貸契約書
- 年金手帳・年金証書
あわせて、死亡時に誰が動くのか、何を担当するかなどを家族内で共有しておくと、死亡後の混乱を最小限に抑えられます。
生活保護の親が亡くなった後は無理せず一つずつ進めていこう
生活保護を受給していた親が亡くなると、葬祭扶助の申請、相続放棄の判断、住まいの整理、契約の解約など、通常の相続よりも確認すべき点が多くなります。特に、財産に触れてよい範囲や、福祉事務所へ連絡するタイミングなど、生活保護ならではの注意点もあるため、最初から完璧に進めようとする必要はありません。
大切なのは、必要な作業を「順番に」整理し、できることから一つずつ進めることです。判断に迷う場面や不安な点があるときは、無理をせず福祉事務所や専門家へ相談することで、負担を大きく減らすことができます。焦らず、整理できたところから少しずつ進めていきましょう。
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