「遺影にはどんな写真を選べばいいの?」「仏壇に飾るのはタブーって本当?」「処分するときはどうすればいい?」。遺影に関する疑問や不安を抱えている方は少なくありません。
遺影の選び方や扱い方には、配慮すべき点がいくつかあります。しかし、「絶対にこうしなければならない」という厳格なルールは存在しません。重要なのは、故人らしさと家族の気持ちを最優先にすることです。
この記事では、遺影選びで避けたほうがよいとされる写真の特徴、飾る場所や期間の考え方、保管・処分の方法まで、3つの視点から「遺影のタブー」を丁寧に解説します。一般的なマナーを理解した上で、自信を持って一番よい選択ができるよう、具体的な判断基準をお伝えします。
なお「遺影」とはどういうものか、選び方や準備の仕方、費用を詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
この記事を要約すると
- 遺影を選ぶ際の「タブー」として、絶対のルールはありません。若すぎるなど、すぐに故人だとわからないものや、葬儀の場にそぐわないものは避けましょう。遺影は拡大してプリントするので画質も重要です。
- 遺影を飾る場所として、仏壇の中や上、神棚の中や上は避けるべきとされています。写真の色褪せや劣化につながるため、直射日光や湿度にも気を配りましょう。遺影を飾る期間にも決まりはありません。
- 遺影の保管・処分についても各家庭の考え方次第です。小さく作り替えたりデジタル化したり、生活スタイルや供養の方法に合わせるとよいでしょう。処分するのに抵抗がある場合はお焚き上げする方法もあります。
遺影選びのタブー
遺影を選ぶとき、実は「絶対の正解」はありません。
遺影は、故人と最後のお別れの場である葬儀で飾られる写真です。参列者が故人を偲び、思い出を振り返るための手掛かりでもあります。そのため。家族や参列者が違和感なく見られる写真が望ましいとされています。
ここでは、一般的に避けたほうがよいとされる写真の特徴を紹介します。
あまりに若すぎる写真
あまりに若すぎる写真は、参列者が「誰だろう?」と戸惑う原因になることがあります。特に、故人と近年知り合った方や、若い頃を知らない親族にとっては、故人だと認識しづらく、違和感を与えてしまう可能性があります。
一方で、遺影には亡くなる5〜10年前までの写真を選ぶ方が多いようです。誰が見ても故人だとわかり、元気な姿が写っているものが、多くの人にとって受け入れやすいでしょう。
ただし、これもあくまで一般論です。家族全員が納得し、「この写真が一番故人らしい」と感じるのであれば、多少若い頃の写真でも問題ありません。
葬儀の場にそぐわない服装・ポーズ
遺影は葬儀という厳粛な場で飾られるため、カジュアルすぎる服装や派手すぎる衣装、ふざけたポーズの写真は避けるのが無難です。
ただし、「故人らしさ」が最も大切なポイントです。たとえば、スポーツが大好きだった方ならユニフォーム姿、趣味を楽しんでいる姿など、故人の人柄が伝わる写真であれば、必ずしもフォーマルな服装でなくても構いません。
迷った場合は、「参列者が見たときに、温かい気持ちで故人を偲べるかどうか」を基準に考えるとよいでしょう。
プリクラ・強い加工アプリなど
最近では、スマートフォンのアプリで簡単に写真を加工できるようになりました。しかし、プリクラや美肌加工、フィルター加工が強すぎる写真は、以下の理由で遺影には適していません。
- 顔の特徴が大きく変わってしまい、故人だと分かりにくい
- プリクラは画像サイズが小さく、引き伸ばすと画質が粗くなる
- 目を大きくする加工などで、本来の顔立ちと異なってしまう
このような写真は、故人本来の姿ではないため、参列者が違和感を覚えることがあります。
もちろん、明るさの調整や軽い色補正など、自然な範囲での加工は問題ありません。葬儀社や写真館でも、遺影用に写真を補正してくれるサービスがあります。
画質が粗い写真
遺影は葬儀で大きく引き伸ばして飾られるため、元の画像サイズが小さすぎると、画質が粗くなってしまいます。
以下のような写真は注意が必要です。
- SNSから保存した画像(圧縮されていることが多い)
- スクリーンショットした写真
- 古い携帯電話で撮影した低画質の写真
最近のデジタルカメラやスマートフォンで撮影した写真なら、基本的に解像度が高いため問題ありません。プリント写真しかない場合は、できるだけきれいな状態で保管されているものを選びましょう。
やむを得ず画質が低い写真しかない場合は、葬儀社や専門業者などのプロに相談してみてください。最近では、画像の補正技術も向上しているため、きれいに仕上げてくれます。
顔が隠れている
遺影として最も重要なのは、故人の顔がはっきりと写っていることです。以下のような写真は避けたほうがよいでしょう。
- サングラスや帽子で顔の一部が隠れている
- 髪で顔が大きく覆われている
- 横顔や後ろ姿のみ
- 集合写真で顔が小さくしか写っていない
- ピントが合っていない、ブレている
特に集合写真は、故人の顔だけを切り抜いて使うことになりますが、元々顔が小さく写っている場合、拡大すると画質が落ちてしまいます。
また、写真館での加工技術には限界があるため、サングラスや帽子、髪の毛などで隠れた部分を後から補うのは困難です。
遺影の飾り方・置き場所のタブー
遺影をどこに飾るかは、宗教や宗派、地域の慣習によって考え方が異なります。ここでは、一般的に避けたほうがよいとされる場所や飾り方を紹介します。
ただし、これらもあくまで「一般的な考え方」であり、絶対的なルールではありません。家族の信仰や考え方を優先し、納得できる形を選ぶことが大切です。
仏壇の中や上に飾る
一般的に、仏壇の中や上に遺影を飾るのは避けるべきとされています。
仏壇の中はご本尊(仏様)を祀る場所だという考え方があるため、仏壇の中心はあくまでも仏様であるべきとされています。従って、仏壇の上に遺影を置くことは、ご本尊より上に故人を置くことになります。こうした考えから、仏壇の中や上に遺影を飾るのは避けたほうがよいでしょう。
葬儀後に遺影を飾る場所として、一般的には以下のような場所が推奨されます。
- 仏壇の隣や近くの棚
- 仏壇と同じ部屋の別の場所
- リビングなど、家族が集まる場所
遺影は「故人を偲ぶためのもの」であり、仏壇とは別の役割を持つものとして、仏壇の近くに並べて飾るのが最も一般的です。
ただし、宗派によって考え方が異なる場合もあるため、迷った場合は菩提寺の僧侶に相談すると安心です。
神棚の中や上に飾る
神道の場合も、神棚の中や上に遺影を飾るのは避けるべきとされています。
神道では、神棚は神様を祀る場所であり、故人(祖霊)は祖霊舎という別の場所で祀るという考え方があります。それぞれ役割が異なるため、神棚と遺影は分けて扱うのが一般的です。
神道で遺影を飾る場合は、神棚より低い位置に置くよう注意しましょう。
なおキリスト教では、遺影に関するタブーはありません。故人を偲ぶため自由に飾ることができます。ただし、教会や宗派によって考え方が異なる場合もあるため、不安な場合は教会に確認するとよいでしょう。
直射日光・湿気の多い場所
宗教的な理由だけでなく、写真の保存状態を考えて避けたほうがよい場所があります。
以下のような場所は、避けるとよいでしょう。
- 直射日光が当たる場所:写真の色褪せ・変色の原因になる
- 湿気の多い場所:カビの発生・写真の劣化が起こりやすい
- 窓際:日光と湿度の両方の影響を受けやすい
- キッチンの近く:油煙や湿気で汚れやすい
直射日光を避け、適度な湿度が保たれる場所であれば、どこに飾っても問題ありません。
飾る期間を気にしすぎる必要はない
「遺影はいつまで飾るべきか?」と悩む方も多いですが、飾る期間に明確なルールはありません。
一般的な習慣としては以下の通りです。
- 葬儀から四十九日まで:仏壇のそばや目立つ場所に飾るのが一般的
- 四十九日以降:そのまま飾り続ける家庭もあれば、片付ける家庭もある
- 一周忌、三回忌などの法要の際:再び飾ることもある
四十九日を過ぎたら必ず片付けなければならないわけではなく、ずっと飾り続けても問題ありません。また早めに片付けることが故人をおろそかにしていると見なされるわけでもありません。
大切なのは、家族の気持ちです。
- 「毎日故人に話しかけたいから、リビングに飾っておきたい」
- 「一周忌まではそばに置いておきたい」
- 「気持ちの整理がついたので、アルバムにしまいたい」
どの選択も正しく、故人への供養になります。家族や親族で話し合い、みんなが納得できる形を選びましょう。
遺影の保管・処分のタブー
遺影をどう保管し、最終的にどう処分するかは多くの遺族が悩む問題です。しかし、遺影の保管や処分について、絶対的なタブーや決まりはありません。
遺影を保管する場合は、以下のような選択肢があります。
- 写真用のアルバムや保存袋を利用する
- デジタル化する
- 小さなサイズに作り替える
また処分する場合、普通のゴミとして捨てるのは心理的に抵抗があると感じる方は少なくありません。以下のような方法があるので、家族が納得できる方法を選びましょう。
- お寺や神社で写真供養やお焚き上げをしてもらう
- 葬儀社に依頼して処分してもらう
- 白い紙などで包んで塩で清めてから、可燃ゴミとして処分する
遺影を処分することに罪悪感を覚える方もいますが、処分すること自体が故人への冒涜になるわけではありません。大切なのは、故人への感謝や思いを持ち続けることです。写真という「物」がなくなっても、心の中で故人を偲び続けることが、本当の意味での供養と言えるでしょう。
タブーにとらわれすぎないために
ここまで、遺影に関するさまざまな「タブー」を紹介してきました。しかし、これらはあくまで一般的な目安やマナーであり、絶対に守らなければならないルールではありません。
故人への思いと、遺族・親族が納得できる選択をすることが大切です。ここでは、遺影選びで迷ったときに心に留めておきたいポイントをお伝えします。
「故人らしさ」と「家族の気持ち」を最優先する
遺影を選ぶ際に最も大切なのは、「この写真が一番故人らしい」と家族が感じられるかどうかです。
たとえば以下のように考えるとよいでしょう。
- 少し若い頃の写真でも、「一番いい笑顔」なら選んでもよい
- フォーマルな服装でなくても、趣味を楽しむ姿が故人らしいなら最適
- 「参列者がどう思うか」より、「家族がどう感じるか」を優先する
一般的なマナーを知った上で判断することは大切ですが、形式やルールに縛られすぎて、故人らしさを失ってしまっては本末転倒です。
遺影は、故人との最後のお別れの場に飾られるだけでなく、その後も家族が故人を偲ぶための大切な存在です。「家族が見るたびに温かい気持ちになれる写真」を選ぶことが重要です。
迷ったら専門家(葬儀社・僧侶)に相談する
「どの写真を選べばいいか分からない」 「宗教的に問題ないか心配」 「親族から何か言われないか不安」といった場合は、専門家に相談するのがおすすめです。
表情・ポーズ・服装に迷った際は多くの事例を知っている葬儀社へ、宗教的に気なることがあれば菩提寺の僧侶や神社に相談すると安心です。
親族が気になる場合は事前に相談しておくと、後から「なぜこの写真を選んだのか」と言われるリスクを減らせるでしょう。
「これが絶対に正しい」という唯一の答えはありません。他人の価値観や一般論に縛られすぎず、故人を偲び、大切に思う気持ちがあれば、それが最高の供養となるでしょう。
遺影のタブーに”絶対”はない。遺族・親族が納得のいく選択肢を
遺影に関するタブーやマナーについて、絶対的なルールはありません。地域や家庭の慣習によっても考え方は異なります。大切なのは、故人らしく、家族が納得できる選択をすることです。
選ぶ際には、遺影を見た人が違和感を感じないものを選ぶとよいでしょう。もし遺影選びで迷ったら、葬儀社や菩提寺、親族に相談してみましょう。専門家の意見や、家族・親族の考えを聞くことで、より納得できる選択ができるはずです。
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