先祖代々のお墓や位牌を祀り、葬儀や法事の際にお世話になる菩提寺。近年は高齢化や墓じまいなどによって菩提寺を持たない家族も増えています。
今回は、菩提寺がない方が亡くなった際の対応について知りたい方向けに、菩提寺がない方の葬儀の進め方や戒名の授かり方、納骨の方法について詳しく解説します。菩提寺を持つことのメリットや入檀方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を要約すると
- 菩提寺は先祖代々のお墓や位牌を祀る寺院で、菩提寺と契約を結んだ家族を檀家といいます。檀家には、菩提寺を経済的に支援する役割があります。
- 菩提寺がない方が亡くなった場合でも、葬儀社に信頼できる寺院を紹介してもらう方法や、住職派遣サービスなどを利用する方法で僧侶を葬儀に招くことができます。
- 菩提寺がない方の納骨先の選択肢として、霊園・納骨堂・永代供養墓などが挙げられます。遺族の事情に合わせて、適切な納骨方法を選びましょう。
菩提寺とは?
菩提寺とは、先祖代々のお墓や位牌を管理し、葬儀や法要を一任する寺院のことを指します。氏寺や菩提所と呼ばれることもあり、家族が亡くなった際には枕経から依頼するのが一般的です。
江戸時代には、寺請制度によってすべての人が菩提寺を持っていました。現在もその名残で、先祖代々お世話になっている菩提寺を持つ方がいます。
菩提寺を持ち、お墓を祀っている家族は「檀家(だんか)」と呼ばれ、寺院の運営を経済的に支える役割を担っています。檀家と菩提寺は契約関係にあり、ほかの寺院を利用することはマナー違反とみなされるケースがあります。
菩提寺と檀那寺の違い
菩提寺と似た意味を持つ言葉に、「檀那寺(だんなでら)」があります。菩提寺と檀那寺はいずれも先祖代々のお墓や位牌を祀り、葬儀や法要の際に深く関わり合う寺院です。そのなかでも、檀那寺は檀家契約を交わして経済的に支援しているお寺を指します。
ただし、近年は菩提寺と檀那寺に明確な違いがなく、ほぼ同義として捉えられているケースがほとんどです。
菩提寺の確認方法
故人や自分の家の菩提寺がわからない場合は、次のような方法で確認できます。
親族に聞く
まずは、家族や地元に住む親族のなかに、菩提寺について把握している人がいないかどうか確認しましょう。葬儀や法事を取りまとめている人に尋ねれば、情報を得られるかもしれません。
位牌の戒名を調べてお寺に確認する
自宅に仏壇がある方は、仏壇にある位牌の戒名を確認しましょう。位牌の戒名には宗派の特性が反映されていることが多く、それを手がかりにある程度寺院を絞り込むことができます。
地元にある該当の宗派の寺院に問い合わせれば、手がかりが得られるかもしれません。
先祖のお墓があるお寺に確認する
菩提寺と墓地には密接な繋がりがあり、先祖のお墓を菩提寺が管理しているケースは多くあります。先祖のお墓の場所を把握している場合は、墓地を管理している寺院に問い合わせるのもひとつの方法です。
寺院には檀家や没年を記録した「過去帳」という帳簿が保管されているため、家族が檀家として登録されているかどうかを調べてもらえます。
近年は菩提寺がないケースが増えている
近年は、菩提寺や縁のあるお寺がない家庭が増えています。そもそも菩提寺との関わりがないケースはもちろん、すでに墓じまいをしている家庭も多いのではないでしょうか。
なかには、「菩提寺はあるが、関わりたくない」「菩提寺と疎遠になったから新しい寺院を見つけたい」という事情を抱えている家庭もあるかもしれません。しかし、すでに檀家契約を結んでいる菩提寺を勝手に離れることはマナー違反とみなされ、トラブルの原因になりえます。
とくに、先祖のお墓が菩提寺の敷地内にある場合は、正式な離檀手続きを取ってからほかの寺院や霊園に移らなければいけません。
<菩提寺がないと考えられるケース>
- 縁のあるお寺がない
- 調べても菩提寺が見つからなかった
- すでに墓じまいをしている
- 菩提寺と疎遠になっている
菩提寺がない場合の葬儀
菩提寺がない方が亡くなり、仏式で葬儀を行う場合、読経や戒名を授けてくれる僧侶を手配しなければなりません。葬儀の前に新たに檀家になるのもひとつの方法ですが、手間や金銭的な負担がかかります。そのため、近年は入檀せずに葬儀を行うケースがほとんどです。
葬儀社に僧侶を紹介してもらう
ほとんどの葬儀社では、菩提寺を持たない家庭向けに、希望の宗派に応じて近隣の寺院の僧侶を紹介するサービスを行っています。紹介された僧侶には、読経や戒名授与のほか、葬儀後の法要まで対応してもらえます。
紹介の際は、葬儀のみで関係が終わるのか、その後も付き合いが必要なのかを確認する必要があります。葬儀を機に檀家になりたい場合は、あらかじめその意向を伝えておくとスムーズです。葬儀社と長年付き合いのある寺院であれば、対応や進行に慣れており、安心して葬儀を任せられるでしょう。
住職派遣サービスを利用する
インターネットから申し込める「住職派遣サービス」を利用するのもひとつの方法です。こちらのサービスはお布施の金額が明確かつ安価なケースが多く、手軽に依頼しやすいのがメリットです。
しかし、葬儀社と付き合いがあるわけではないため、信頼できる寺院かどうかは遺族の判断に委ねられます。サービスを利用する際は、口コミをよく確認して選びましょう。葬儀後の付き合いを望まない方や、葬儀の読経のみを希望する方に向いています。
無宗教形式で葬儀を行う
無宗教形式の葬儀を選択すれば、読経や戒名授与などの仏式の儀式が発生しません。無宗教形式では、僧侶を依頼せずに葬儀を執り行えます。
近年は、故人の好きだった音楽をかけたり友人が手紙を朗読したりする自由葬が人気を集めています。宗教にこだわりのない家庭や堅苦しくない雰囲気を希望する方は、無宗教形式を検討してみてはいかがでしょうか。
菩提寺がない場合の戒名
仏式の葬儀では、故人が極楽浄土に往生できるように戒名を授けるのが一般的です。戒名は本来菩提寺の僧侶が授けるものですが、菩提寺がない場合は、葬儀社に紹介された僧侶に戒名も依頼できます。戒名は宗派や格式によって費用やプランが変動するため、事前に確認しておくと安心です。
また、葬儀社に僧侶を紹介してもらわなかった場合でも、いくつか戒名の選択肢があります。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」でも戒名の授与を承っておりますので、お気軽にご相談ください。読経やお車代や心付けなども全て含まれた全国定額の手配料金ですので、安心してご依頼ください。
お寺に納骨しない場合は戒名不要
戒名は仏教の葬儀において重要な位置付けですが、絶対に必要というわけではありません。納骨先によっては、戒名なしでも受け入れてくれる場合があります。散骨や手元供養を希望する方も、戒名なしで問題ないでしょう。
戒名授与サービスを利用する
近年では、檀家にならずに戒名だけを依頼できる「戒名授与サービス」を利用する家庭が増えています。インターネットから簡単に申し込みができ、費用相場も2〜5万円程度と、菩提寺に依頼する場合よりも非常に安価です。
ただし、後に別の寺院の檀家になる際に、戒名の付け直しを求められる可能性があります。今後どこかのタイミングで入檀する意向がある場合は、慎重に検討しましょう。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」では、手配しましたお坊さんの檀家になる必要はありませんのご安心ください。
自分で戒名を付ける
僧侶に依頼せず、遺族自身で戒名を付ける方法も法律上は問題ありません。ただし、宗派ごとに格式や命名の作法が定められているため、ある程度の専門知識が必要です。
ルールに則さない戒名を行った場合、納骨先によっては受け入れを断られる可能性があるほか、今後新たに菩提寺に入檀した際に戒名し直す必要があるかもしれません。
菩提寺がない場合の四十九日法要
四十九日法要を行う際は、葬儀のときに紹介してもらった寺院に依頼するのが一般的です。参列をお願いしたい場合は、葬儀の際に話を通しておくとスムーズでしょう。
また、近年では、僧侶を招かずに家族だけで法要を行うケースも増えています。
菩提寺がない場合の納骨
菩提寺がない方の納骨先は、必ずしも寺院である必要はありません。菩提寺がない方を納骨する際は、霊園・納骨堂・永代供養墓・手元供養など、さまざまな選択肢から希望に沿った方法を選びましょう。
霊園を利用する
霊園のなかには、宗教や宗派を問わずに誰でも利用できる施設があります。公営と民営の2種類があり、それぞれ費用相場や申し込み条件が異なります。
公営の霊園は安価で納骨できるため倍率が高く、抽選方式を取っている施設がほとんどです。一方、民営の霊園はやや費用が高くなりますが、設備が充実しています。
公営霊園 | 民営霊園 | |
---|---|---|
費用 | 割安 | 割高 |
申込方法 | 抽選方式 | 誰でも申し込める |
その他の条件 | 申込条件が設けられているケースがある | 石材店が指定されている霊園が多い |
納骨堂を利用する
納骨堂は、遺骨を納める室内型の施設です。近年は都市部を中心に利用が増えており、墓じまいをした後の納骨先としても人気を集めています。
お墓の形態はさまざまで、位牌式・ロッカー式・仏壇式・自動搬送式・墓石式などがみられます。納骨人数・お墓参りの頻度・希望の費用などに合わせて、最も適した形式を選びましょう。
納骨堂のタイプ | 特徴 |
---|---|
位牌式 | 仏壇がないコンパクトな形式安価個別で墓参りできないケースがある |
ロッカー式 | 数人分の遺骨を収められる少ない人数向け |
仏壇式 | 豪華な見た目費用がかかる |
自動搬送式 | 墓参りのとき以外は収納されているお参りのスペースを広く取れる |
墓石式 | 通常のお墓と同じ形式費用がかかる |
永代供養墓を利用する
永代供養墓は、遺族に代わって寺院や霊園が供養・管理を代行してくれる墓地です。宗派を問わず利用できる施設が多く、檀家になる必要がありません。費用も比較的抑えられるため、後継者がいない家族や身寄りの少ない方が利用するケースが増えています。
散骨や手元供養をする
海や山に遺骨を撒く「散骨」や遺骨を自宅に安置して供養する「手元供養」も、納骨の選択肢のひとつです。
散骨を行う場合は、土地所有者の許可を得たうえで、法律に抵触しないように行う必要があります。手元供養は、自宅で継続的に供養を行い続けなければいけません。一般的な納骨の方法とは形態が異なるため、慎重に判断する必要があります。
葬儀後に入檀することもできる
葬儀をきっかけに、紹介された寺院や地域の寺院に入檀することもできます。入檀を希望する場合は、葬儀後に正式な契約を交わしましょう。入檀の際には「入檀料」として10〜30万円程度を納め、墓地契約書などの書類に署名を行います。
現代では、菩提寺を持つかどうかは各家庭の判断に委ねられています。檀家となった場合は今後もその寺院と深く関わり続けることになるため、家族間で話し合いのうえ、慎重に検討してください。
檀家になるメリット
檀家になると、葬儀や法要などで優先的に日程を確保してもらえるというメリットがあります。とくにお盆や年末年始には法要が集中するため、恩恵を感じられやすいでしょう。かかりつけ医のように、仏事に関する悩みごとや相談にも親身に対応してもらえます。
また、檀家のお墓は菩提寺が維持管理して手厚く供養してくれるため、高齢化や遠方に住んでいるなどの事情でなかなかお墓参りに行けない方も、安心してお墓を任せることができます。
<檀家になるメリット>
- 葬儀や法要の際に優先的に出席してもらえる
- 法事や仏事に関する相談をできる
- お墓の管理を任せられる
- お墓に手厚い供養を施してもらえる
檀家になるデメリット
一方で、檀家になると、一定の費用と義務が発生します。10〜30万円程度の入檀料に加えて、年間の管理費や護持会費、法事ごとのお布施など、継続的な支出が必要です。寺院によっては、行事や建物の改修の際に寄付を求められることもあります。
檀家が葬儀や法要を執り行う際は、菩提寺の方針に従うのが一般的です。式の簡略化や自由葬を希望する場合は、菩提寺に許可を得る必要があるかもしれません。また、お墓の維持は代々続いていくため、後継者がいない家庭は将来の管理が負担になる可能性があります。
<檀家になるデメリット>
- 入檀料や墓地の維持管理費が発生する
- 先祖代々お墓を継承・管理し続けなければならない
- 葬儀や法事は菩提寺の意向を優先する必要がある
- 寺院に関わる行事の手伝いを頼まれるケースがある
菩提寺はあるが遠方の場合の対応方法
菩提寺があるものの、引っ越しで遠方になってしまったというケースは珍しくありません。菩提寺が遠方にある方は、まずは僧侶に出張をお願いしてみましょう。交通費や宿泊費を負担する必要がありますが、慣れ親しんだお寺の僧侶に対応してもらえる安心感があります。
出張が難しい場合は、同じ宗派の近隣の寺院に依頼するのもひとつの方法です。その際は、必ず事前に菩提寺に相談し、了承を得ておきましょう。
また、今回の葬儀を機に菩提寺を変更するという選択肢もあります。菩提寺を変更する際は、「離檀」という手続きを踏まなければいけません。離檀には離檀料の支払いや改葬許可証・受け入れ証明書の取得、墓石の解体などが発生するため、慎重に検討しましょう。
<菩提寺が遠方にある場合の対応方法>
- 僧侶に出張してもらう
- 近隣にある同じ宗派の寺院に依頼する
- 菩提寺を変更する(離檀する)
菩提寺がない場合は葬儀社のサービスを利用しましょう
近年は菩提寺を持たない家族が増えていますが、菩提寺がない場合でも、さまざまなサービスを活用することで仏式による葬儀や納骨を行うことができます。
弊社「1日葬・家族葬のこれから」でも、全国一律価格で僧侶を手配いたします。お車代や心付けなども全て含まれた定額の手配料金ですので、安心してご依頼ください。
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