親の葬儀を執り行う際に「葬儀費用が高すぎて払えない」「急な出費でお金が足りない」といった経済的な不安を感じるケースはよくあります。葬儀費用は、平均100万円以上かかることも多く、突然の出費に戸惑うのは当然のことです。
そこで本記事では、親の葬儀代が払えない場合の具体的な対処法や利用できる補助金制度について詳しく解説します。
「葬儀ローンは利用できるの?」「自治体の支援制度はあるの?」といった疑問もお答えしているので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を要約すると
- 親の葬儀代が払えない場合は、まず葬儀プランの見直しから始めましょう。家族葬や直葬を選択することで、費用を大幅に削減できます。葬儀ローンや預貯金仮払い制度の活用も有効です。
- 葬祭扶助制度や葬祭費・埋葬料など、さまざまな公的支援が用意されています。生活保護受給者なら最大20万円の葬祭扶助・国民健康保険加入者なら3~7万円の葬祭費を受け取れます。申請期限があるため、早めに手続きを済ませることが重要です。
- 葬儀費用の負担割合や香典の分配方法について、事前に親族間で話し合っておきましょう。意見の対立や不公平感を避けるため、現実的な予算を共有し、全員が納得できる方法を慎重に模索することが大切です。
親の葬儀代が払えない!一般的には誰が支払う?
まず、親の葬儀代の支払い方について、一般的なパターンや相場を解説します。ぜひ参考にしてみてください。
喪主や兄弟・故人の遺産から出すのが一般的
親の葬儀代は、喪主が支払うか、兄弟で分担するか、故人の遺産から支払うのが一般的です。喪主は、葬儀の主催者であり、多くの場合は配偶者や長男・長女が務めます。
喪主が全額負担することもあれば、兄弟姉妹で均等に分担する場合もあります。故人に預貯金や生命保険金などの遺産がある場合は、その遺産から葬儀費用を支払うケースもあるでしょう。
支払いが困難な場合は、葬儀社に分割払いを相談したり、市区町村の葬祭扶助制度を利用する方法もあります。葬祭扶助は、生活保護受給者が対象で、最低限の葬儀費用が支給される補助金です。また、故人が国民健康保険や社会保険に加入していた場合は、葬祭費や埋葬料として3~5万円程度の給付金を受け取れます。葬儀費用の負担者や支払い方法は家族でよく話し合い、無理のない範囲で故人を送ることが大切です。
葬儀費用の相場
葬儀費用の全国平均は、約119万円(特定サービス産業動態統計調査(経済産業省)をもとに算出)で、家族葬は50万円~100万円程度に抑えられる場合もあります。
具体的な費用目安は、以下のとおりです。
項目 | 費用目安 |
---|---|
葬儀一式 | 30~140万円 |
飲食接待費用 | 30~70万円 |
返礼品費用 | 1人あたりいただいた金額の1/3〜半額程度3,000〜5,000円/人 |
寺院費用 | 10~50万円 |
葬儀の規模や形式によっても費用は大きく変動します。葬儀形式による費用の違いは以下のとおりです。
葬儀形式 | 費用目安 |
---|---|
葬儀形式 | 費用目安 |
一般葬 | 100~200万円 |
家族葬 | 30~100万円 |
一日葬 | 30~50万円 |
直葬・火葬式 | 20~50万円 |
葬儀費用は決して安くありませんが、故人を送る大切な儀式として、経済状況に応じた形式を選択することが重要です。
葬儀費用については、以下の記事を参考にしてみてください。
親の葬儀代が払えないときの対処法
親の葬儀代が払えない場合の対処法として、以下の方法が挙げられます。
- 葬儀プランを見直す
- 葬儀ローンを活用する
- 預貯金仮払い制度を活用する
- 市民葬や区民葬を利用する
- 死亡保険金で支払う
- 自治体に相談する
ひとつずつ見ていきましょう。
葬儀プランを見直す
親の葬儀代が払えない場合は、まず葬儀プランを見直すことが重要です。一般葬の費用は、平均100~200万円程度ですが、プランの内容を変更すれば大幅に費用を抑えられます。
祭壇の規模を小さくしたり、花の量を減らしたりすることで数十万円の節約が可能です。会葬者への返礼品や料理のグレードを下げることも費用削減につながります。
また、家族葬や直葬といった小規模な葬儀形式を選択すれば、費用を50万円以下に抑えられるでしょう。葬儀社によっては分割払いに対応している場合もあるため、支払い方法について相談することも大切です。
親の最後を見送る大切な儀式だからこそ、経済状況に応じた無理のない葬儀を選択することが、故人への真の供養となるでしょう。
葬儀ローンを活用する
親の葬儀代が払えない場合、葬儀ローンを活用して費用の支払いを分割する方法があります。
葬儀ローンとは、銀行や信販会社が提供する葬儀費用専用のローンサービスです。一般的に、10~300万円まで借入可能で、返済期間は6ヶ月~10年ほどです。
金利は、年3~15%程度で、通常のカードローンより低めに設定されている傾向があります。申込みは葬儀社経由で行うケースが多く、即日から3日程度で審査の結果が出るでしょう。
葬儀社提携のローンなら、葬儀費用の見積もりと同時に借入額の相談もできます。葬儀ローンについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
預貯金仮払い制度を活用する
預貯金仮払い制度を利用すれば、故人の預金から葬儀費用を工面できます。本制度は、2019年7月から始まり、遺産分割前でも一定額まで故人の預金を引き出せるようになりました。
金融機関の窓口で手続きすれば、各相続人が「預金額×法定相続分×3分の1」を上限に引き出し可能です。ただし、1つの金融機関につき150万円が限度額となっています。
手続きをするには、以下の書類が必要です。
- 故人の死亡が確認できる戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本申請者の身分証明書 など
預貯金仮払い制度は、急な葬儀費用の支払いに困った際の有効な解決策となるため、まずは取引金融機関に相談することが大切です。
市民葬や区民葬を利用する
市民葬や区民葬は、自治体が提携する葬儀社を通じて行う低価格の葬儀制度です。一般的な葬儀費用が100万円以上かかることも多いなか、市民葬なら10~50万円程度で執り行えます。
市民葬や区民葬を利用するには、故人か喪主が該当自治体に住民登録していることが条件です。申し込みは、役所の窓口で行い、提携葬儀社の一覧から選んで依頼します。
基本プランには祭壇・棺・骨壺・霊柩車などが含まれていることが多いものの、内容や追加料金の有無は自治体や葬儀社によって異なります。
ただし、僧侶へのお布施や飲食代・返礼品などは別途費用が必要になる点に留意しましょう。
経済的に困難な状況でも、市民葬・区民葬を利用すれば必要最低限の葬儀は挙げられます。
死亡保険金で支払う
親が生命保険に加入していた場合、死亡保険金を葬儀費用に充てられます。死亡保険金は、被保険者が亡くなった際に受取人に支払われる金銭で、使途は自由です。
保険金の請求には、死亡診断書や保険証券・受取人の本人確認書類などが必要です。請求から支払いまでは、通常5~10営業日程度かかるため、葬儀社への支払い期限に注意しましょう。
複数の保険に加入していることもあるので、故人の書類や通帳の引き落とし履歴を確認することが大切です。
死亡保険金は、故人が残してくれた大切な財産であり、葬儀費用の有力な支払い手段となるでしょう。
自治体に相談する
親の葬儀代が払えない場合は、居住地の自治体に相談することで支援を受けられる可能性があります。自治体の補助制度を利用すると、火葬費用や棺代・骨壺代など最低限必要な費用を自治体で負担してもらえるでしょう。
支給額は、自治体によって異なりますが、一般的には20万円前後が上限とされています。相談窓口は、市役所の福祉課や生活支援課が担当しています。平日の開庁時間内に訪問するか電話で問い合わせてみましょう。
親の葬儀代が払えないときに頼れる補助金制度
親の葬儀代が払えない場合の補助金制度を最適化するには、次の4つのポイントに注目する必要があります。
- 葬祭扶助制度
- 葬祭費
- 埋葬料・埋葬費
- 死亡一時金
それぞれのポイントについて具体的な方法を解説するので、参考にしてみてください。
葬祭扶助制度
親の葬儀代が払えない場合、葬祭扶助制度という公的な補助金制度を利用できます。葬祭扶助制度は、生活保護法に基づく制度で、経済的に困窮している人が亡くなった際に葬儀費用を支給する仕組みです。
支給対象者は、生活保護受給者またはそれに準ずる困窮者で、遺族も生活に困窮している場合に限られます。支給される金額は、大人で20万6,000円以内、子どもで16万4,800円以内です。
申請は、申請者の住所地を管轄する福祉事務所で行い、葬儀前に手続きを完了させる必要があります。葬儀社への支払いは、自治体から直接行われるため、遺族が立て替える必要はありません。
葬祭扶助制度について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
葬祭費
葬祭費は、国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者が亡くなった際に支給される補助金です。支給額は、市区町村により異なりますが、おおむね3~7万円程度とされています。
申請は、故人が住んでいた市区町村の役所で行い、葬儀を行った人が受け取れます。葬祭費を受け取るための必要書類は、以下のとおりです。
- 保険証
- 死亡診断書
- 葬儀の領収書
- 申請者の印鑑
- 本人確認書類 など
申請期限は、葬儀を行った日から2年以内と定められているため、期間内に手続きを進めましょう。
ただし、支給までに1か月程度かかるため、一時的な立て替えが必要になることもあります。市区町村によっては独自の上乗せ給付を行っている場合もあるので、詳細は各自治体に確認することが大切です。
埋葬料・埋葬費
親の葬儀代が払えない場合、健康保険から支給される埋葬料・埋葬費を活用できます。故人が会社員や公務員で健康保険に加入していた場合は、埋葬料として5万円が支給されます。
必要書類は、以下のとおりです。
- 埋葬料支給申請書
- 死亡診断書のコピー
- 葬儀費用の領収書 など
故人が国民健康保険に加入していた場合は、埋葬費として1~7万円程度が支給されます。支給額は、市区町村によって異なるため、役所の国民健康保険課で確認が必要です。
故人が亡くなってから2年以内に、加入していた健康保険組合や協会けんぽあてに申請します。
申請期限は、葬儀を行った日から2年以内です。生活保護を受けていた場合は、葬祭扶助として20万円程度の支給を受けられます。
死亡一時金
死亡一時金は、国民年金保険料を3年以上納めた人が年金を受け取らずに亡くなった場合、遺族に支給される一時金です。
保険料を納めた期間が36月以上180月未満なら12万円、180月以上240月未満なら14万5,000円というように、納付期間に応じて金額が決まります。
最高額は32万円で、生計を同じくしていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹の順で、死亡一時金を受け取れます。
申請は、亡くなってから2年以内に市区町村の国民年金窓口で行わなくてはいけません。必要書類は、以下のとおりです。
- 死亡一時金請求書
- 年金手帳
- 戸籍謄本
- 住民票の写し
- 振込先の通帳 など
なお、遺族基礎年金や寡婦年金を受け取れる場合は、死亡一時金は支給されません。
死亡一時金で葬儀費用の全額をまかなうことは難しいものの、納めた保険料が無駄にならないよう、該当する場合は忘れずに申請することが大切です。
親の葬儀代を払えないときにおけるトラブルの元
親の葬儀代を払えない場合に起こるトラブルには、いくつかのパターンがあります。ここでは、よくあるトラブルの原因について紹介します。
- 葬儀の形式についての意見の不一致
- 葬儀費用の負担額についての不公平感
- 香典の分配方法について
- 遺産相続の問題
それぞれのきっかけについて、具体例を交えながら詳しく見ていきましょう。
葬儀の形式についての意見の不一致
葬儀代を払えない状況では、親族間で葬儀の形式について意見が対立しやすくなります。経済的に余裕がない場合、直葬や家族葬など費用を抑えた形式を選ばざるを得ません。
しかし、親族のなかには「故人の最後なのだから立派な葬儀をすべきだ」と主張する人も出てきます。葬儀に対する意見の食い違いは、葬儀の準備段階で大きなストレスとなり、親族関係に亀裂を生みかねません。
このようなトラブルを防ぐには、事前に葬儀社から複数の見積もりを取り、現実的な予算を共有することが大切です。
また、故人が生前に簡素な葬儀を希望していた場合は、簡素な葬儀を挙げることで故人の遺志を尊重していることを反対する人に説明するとよいでしょう。
葬儀は故人を送る大切な儀式ですが、残された家族の生活を圧迫してしまっては本末転倒であることを理解してもらう必要があります。
葬儀費用の負担額についての不公平感
葬儀費用の負担割合で兄弟姉妹間の不公平感が生じると、深刻な家族トラブルに発展します。
親の葬儀では、一般的に100~200万円程度の費用がかかりますが、誰がどれだけ負担するかで揉めることは珍しくありません。
具体的には、以下のようなケースがあります。
- 長男だから多く払うべきという考えと、兄弟で均等に分けるべきという考えの対立
- 収入差がある兄弟間では、高収入の人に多く負担を求める意見が出る
- 親の介護をしていた人が葬儀費用も多く負担することに不満を持つ
- 遠方に住む兄弟が葬儀の準備に関わらないのに、費用だけ均等負担を主張することによる不公平感
- 生前に親から金銭的援助を受けていた兄弟に、多めの負担を求める意見が出る
支払い期限が迫るなかで話し合いがまとまらないと、立て替えた人が損をする状況になりかねません。そのため、事前に家族で葬儀費用の分担方法を決めておくことが、親族間の関係を守る確実な方法です。
香典の分配方法について
誰がいくら香典を受け取るかの基準が曖昧になっていると、トラブルになる恐れがあります。香典は、故人への供養の気持ちを表すお金で、通常は喪主が受け取ります。
しかし、葬儀費用を兄弟姉妹で分担した場合、香典の扱いで揉めることは珍しくありません。また、香典返しの費用を誰が負担するのかも問題になりやすいでしょう。
このようなトラブルを防ぐには、事前に家族で話し合い、葬儀費用の負担者と香典の受取人を明確にしておくことが大切です。
曖昧なまま葬儀を進めると、あとから金銭トラブルに発展し、親族関係が悪化することもあります。
香典の扱いは地域や家庭によって異なるため、全員が納得できる方法を見つけることが、円満に葬儀を進めるポイントです。
遺産相続の問題
葬儀代を払えない場合、遺産相続をめぐって親族間でトラブルが発生しやすくなります。
故人の預貯金や不動産などの遺産は、相続手続きが完了するまで基本的には勝手に使用できません。手持ち資金がない場合は、葬儀代を立て替える必要があります。
この立て替え金をめぐって、誰が負担するか、遺産から優先的に返済してもらえるかで揉めることもあります。
とくに、相続人が複数いる場合、葬儀を主催した人だけが費用を負担することに不満が生じやすくなるでしょう。
また、遺産分割協議が長引くと、立て替えた葬儀代の回収が遅れて経済的負担が増えてしまいます。相続放棄を検討している相続人がいる場合は、葬儀代の扱いがさらに複雑になるでしょう。
そのため、事前に葬儀費用の負担方法や遺産からいくら精算するのかについて、親族間で話し合っておくことが重要です。
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葬儀のプロから適切なアドバイスを受ければ、経済的な負担を軽減しながらも心を込めて故人を見送れるでしょう。
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