「火葬場が混み合っていて、火葬まで数日かかる。」と葬儀の準備を進めるなかで、こう説明されて戸惑う方は少なくありません。早く送ってあげたいのに待たされ、そのうえ安置の延長料金までかかると聞けば、この説明は本当に正しいのかと不安になることもあるでしょう。
そこで本記事では、火葬場が混雑する理由や東京・大阪などの地域ごとの待ち日数の実態、安置費用の相場、そして待ちを短くする具体策まで紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
この記事を要約すると
- 高齢化が進むなか、死亡数は毎年増加しており、2024年は統計史上最多の約160万5千人に達しています。今後も2040年まで年間約166万人前後が続く見通しで、火葬の需要が一時的ではなく構造的に高まっています。
- 火葬炉の数と稼働時間は限られており、1件あたり60〜90分かかるため、1つの炉が1日にこなせるのは数件が上限です。
- 友引の前後の日や年末年始、冬季に火葬需要が集中しやすく、予約枠が先に埋まります。さらに都市部では嫌悪施設として受け止められやすく、新規の火葬場建設が難しいため、供給が増えにくいのが実情です。
火葬場が混雑するのはなぜ?
火葬場が混雑する主な理由は下記です。
- 年間の死亡数が増加しているから
- 火葬炉の数と稼働時間に限りがあるから
- 友引の前後・年末年始・冬季に集中するから
- 都市部で火葬場を新しく増やせない事情があるから
ただし、火葬場の混雑はひとつの理由では説明できません。背景にあるのは、死亡数の増加を土台とした火葬炉の制約や時期の偏り、施設を増やせない事情です。
詳細について、次章から解説していきます。
年間の死亡数が増加しているから
需要が増えても、火葬場が対応件数を大幅に増やすことは困難です。火葬には、炉に納めてから収骨まで、1件あたりおおむね60〜90分かかります。炉の数は限られており、開場時間も朝から夕方までと決まっているため、1つの炉で対応できるのは1日数件程度です。
友引の前後・年末年始・冬季に集中するから
火葬場の混雑は年間を通じて一定ではなく、特定の日に集中する傾向があります。たとえば、友引は「友を引く(あの世へ連れて行く)」と連想される六曜のひとつです。
この連想から葬儀を避ける習慣が残り、火葬場も休場日にするところが多いのが実情です。その結果、友引の前後の日に予約が集中し、待ちがさらに延びます。また、年末年始前後は多くの火葬場が休場するため、その前後は駆け込みで混み合いやすくなります。
加えて、冬(12〜2月)はもともと1年で死亡数がもっとも多い季節といわれていることも混雑に拍車をかける要因です。年末年始の休場で予約枠そのものが減り、そこに冬の需要増が重なる時期は、待ちが通常より延びやすくなります。
都市部で火葬場を新しく増やせない事情があるから
「足りないなら増やせばよい」と考える方もいるかもしれませんが、火葬場は簡単に新設できる施設ではありません。火葬場は嫌悪施設と捉えられやすく、建設計画に対して周辺住民から反対の声が上がることもあります。
都市部では、広い用地を確保しにくいという事情もあります。なかでも東京23区は特殊で、火葬場の多くを民間事業者が運営しており、公営施設はごく一部に限られます。
区部における火葬の大半を担っているのは、民間の火葬場です。そのため、料金や運営方針が各事業者の判断に左右されやすく、近年は火葬料金の値上げも続いています。
このように、火葬場の供給を増やしにくい構造そのものが、火葬待ちが慢性化する根本的な原因といえるでしょう。
混雑による火葬待ちの実態
火葬待ちの期間は、日本中どこでも一律ではありません。地域の火葬需要や火葬炉数、1日の受入可能件数、休場日などによって大きく異なります。東京23区には9か所の火葬場があり、そのうち7か所を民間施設が占めています。(参考:火葬場について|特別区長会)
ただし、火葬場の施設数だけを根拠に、現在の東京23区で火葬能力が不足しているとは断定できません。東京都が2026年に行った実態調査では、火葬場等へのヒアリングで「現時点で火葬能力に不足感はない」との意見が示されました。(参考:火葬場の運営等に係る実態調査結果(概況)の公表について|都庁総合ホームページ)
一方で、将来の死亡数増加を見据えた検討が必要との意見も示され、中長期的な火葬能力の確保は課題です。
大阪市には複数の市立斎場があり、なかでも瓜破斎場は標準炉27炉・大型炉3炉の計30炉を備える大規模な火葬施設です。(参考:市立斎場のご案内|大阪市)
しかし、炉数が多ければ常に火葬待ちが短いとは限りません。大阪市では2025年1月から3月に火葬需要が急増し、火葬まで長期間待つ状況が発生したため、その後は受入件数を増やす対策が進められています。
火葬待ちは、人口の多さや炉数だけでは決まりません。地域の火葬需要に対して、どの程度の受け入れ能力が確保されているかが重要です。
火葬場の混雑で「待ち」になると発生する費用
火葬待ちが延びるほど、日数に比例して積み上がる費用がいくつかあります。主なものは、遺体を安置する場所の使用料、遺体を保全するドライアイス代、そして基本日数を超えたときの延長料金です。火葬待ちで発生する費用を、項目ごとに分けて確かめます。
遺体を安置する場所の使用料
待機中にまず発生するのが、ご遺体の安置場所にかかる費用です。金額は安置する場所によって大きく異なります。自宅に安置する場合は施設使用料がかかりませんが、葬儀社や斎場の安置施設を利用すると、1日ごとに料金が発生します。
安置施設の利用料は、1日あたり5,000〜1万5,000円程度が相場です。設備が充実した施設では、3万円程度かかることもあります。火葬待ちが5日、1週間と長引けば、その日数に応じて費用も積み上がります。
| 安置先 | 場所の使用料(1日あたり) |
|---|---|
| 自宅 | かからない |
| 葬儀社の安置施設 | 約5,000〜15,000円 |
| 民間の安置施設 | 施設により3万円程度まで |
自宅安置なら施設使用料を抑えられますが、室温管理や安置スペース、搬入経路などの確認が必要です。費用を比較する際は、次に説明するドライアイス代も含めて考えましょう。
自宅で遺体を安置する場合については、以下の記事を参考にしてみてください。
遺体を保全するドライアイス代
次に必要となるのが、ご遺体の傷みを防ぐためのドライアイス代です。
費用は1日あたり8,000〜1万円程度が目安ですが、必要な量や交換頻度は、季節やご遺体の状態、安置環境によって異なります。火葬までの日数が延び、ドライアイスの追加が必要になれば、その分だけ費用も増えていきます。
たとえば、火葬まで1週間待つ場合、ドライアイス代だけで7万円前後かかる計算です。安置施設の利用料とドライアイス代が別料金の場合は、1日あたりの負担が合計で数万円にのぼることもあります。
火葬待ちが延びると発生する延長料金
3つ目は、葬儀社に支払う延長料金です。多くの葬儀プランでは、基本料金に含まれる安置日数が「◯日まで」と定められています。火葬場の混雑によって規定の日数を超えると、超過した日数に応じて延長料金が加算されます。
追加料金には、ドライアイス代だけでなく、安置施設の利用料などが含まれている場合もあるため、内訳を確認する必要があります。火葬待ちに伴う追加料金は珍しいものではありませんが、何に対していくらかかるのか、契約前に項目ごとの内訳と単価を確認することが大切です。
料金は施設や地域によって幅があるため、実際の金額は依頼先の見積もりで確認しておきましょう。
なお、弊社の家族葬プランでは、セットプランの料金内に「会館でのご安置料金」「ドライアイス料金」が3日分があらかじめプラン内に含まれておりますので、ご安心ください。
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火葬場の混雑による待ち時間を短くするための対策
火葬の待ち時間は、条件をひとつ変えるだけで数日縮むことがあります。時間帯やエリア、そして葬儀の形が、その主な手がかりです。
火葬の時間帯とエリアを柔軟にする
火葬までの待ち時間を短くするには、時間帯やエリアを柔軟に検討することが大切です。火葬場の予約状況は、時間帯によって異なります。
午前中に告別式を終え、午後の早い時間に火葬する流れが好まれるため、正午前後の予約枠は埋まりやすい傾向があります。一方、朝一番や夕方の遅い時間帯は空いていることもあり、早めに予約できる可能性があります。
最寄りの火葬場に空きがなくても、隣接する市区町村の火葬場なら予約できるケースも珍しくありません。ただし、市外・区外の火葬場を利用すると、住民以外の火葬料金が適用され、費用が高くなる場合があります。火葬を待つ間に発生する安置費用と比較し、どちらの負担が少ないかを判断しましょう。
また、別の地域や通常とは異なる時間帯を選ぶ場合は、遠方から来る親族の到着時間や忌引きの日数も考慮する必要があります。
住民票以外の火葬場を使う場合については、以下の記事を参考にしてみてください。
葬儀の形態や日程で調整する
時間帯やエリアを調整しても早い日程で予約できない場合は、葬儀の形式を見直す方法もあります。
たとえば、通夜を行わず1日で葬儀を執り行う一日葬や、儀式を最小限にして火葬を中心に行う直葬(火葬式)です。いずれも日程の自由度が高く、空いている火葬枠に合わせやすくなります。
また、混雑しやすい友引明けを避け、あえて友引の日に火葬することで、待機日数と安置費用の両方を抑えられる場合もあります。ただし、どの方法を選ぶかは、故人や家族が望む見送り方とのバランスを考えて判断することが大切です。
直葬や一日葬は費用を抑えやすい一方、後になって親族から「きちんとお別れをする場がなかった」と思われる可能性もあります。近しい家族や親族の意向も確認しながら、皆が納得できる葬儀形式を選びましょう。
このほか、先に火葬を済ませ、遺骨を前に葬儀や告別式を行う「骨葬」という方法もあります。骨葬であれば、まずは空いている火葬枠を優先して押さえ、その後に葬儀の日程を調整できます。
一日葬や直葬・骨葬については、以下の記事も参考にしてみてください。
火葬場の混雑・火葬待ちに関するよくある質問
火葬待ちをめぐっては、手続きの進め方で迷う場面が出てきます。ここでは、火葬場の混雑や火葬待ちをめぐって、多くの人が抱く疑問をまとめました。
火葬場の予約は誰がどう取る?
火葬場の予約は、葬儀社による代行が一般的です。予約方法は施設によって異なり、遺族が直接予約できる火葬場もあります。葬儀社に依頼する場合は、火葬場の空き状況を業者が確認し、利用可能な日程を遺族と調整するのが通常の流れです。
火葬場の予約と死亡届の提出順序は、自治体や施設の運用で異なるため、葬儀社や火葬場の案内に従う必要があります。なお、法律上は原則として、死亡後24時間を経過するまで火葬できません。(参考:墓地、埋葬等に関する法律|e-Gov)
利用できる火葬場や時間帯に選択肢があるなら、複数の候補で空きを確認してもらうと、早い火葬枠が見つかることもあります。
直葬・一日葬にすれば待たずに火葬できる?
「儀式を省けば、すぐに火葬できる」と思われがちですが、直葬や一日葬を選んでも、火葬までの待ち時間そのものが大幅に短くなるわけではありません。
葬儀の形式にかかわらず、火葬できる日程は火葬場の空き状況に左右されます。また、原則として死亡後24時間を経過するまで火葬できないという法律上の決まりも同じです。ただし、直葬では通夜や告別式、一日葬では通夜を行わないため、一般葬よりも空いている火葬枠に日程を合わせやすい場合があります。
直葬や一日葬のメリットは、「待ち時間がなくなること」ではなく、日程の自由度が高まり、費用も抑えやすくなることです。
病院で紹介された葬儀社に、そのまま頼んで大丈夫?
病院から葬儀社を紹介されても、必ずその葬儀社と契約する必要はありません。
紹介された葬儀社には搬送と安置だけを依頼し、葬儀は別の葬儀社に任せることもできます。ただし、深夜などで早急な搬送が必要となり、ほかに依頼先が見つからない場合は、ひとまず紹介された葬儀社に搬送と安置を依頼してもよいでしょう。
葬儀社を見極めるポイントは、次の3つです。
- 契約を急がせないか
- 見積書に費用の内訳を項目ごとに示しているか
- 複数の火葬場や時間帯から、最短で利用できる枠を探してくれるか
これらの点を確認したうえで、信頼できる葬儀社を選びましょう。
火葬場が混雑する背景を知れば、慌てずに準備できます
火葬場が混雑する背景には、まず死亡数の増加があります。加えて、地域によっては火葬炉数や1日の受入枠を短期間で増やしにくい事情もあります。また、休場日の前後や年末年始、死亡数が増えやすい冬季などは、予約が集中しがちです。
東京や横浜などの都市部では、実際の予約状況によって火葬まで数日待つこともあり得ます。火葬待ちが延びると、契約内容によっては安置施設料やドライアイスなどの保冷費用、安置期間の超過料金が追加されます。
火葬場が混雑する背景を把握しておけば、家族にも根拠をもって説明でき、故人を落ち着いて見送る準備につながるでしょう。
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