葬儀費用は数十万円から数百万円と高額になることが多いため、「費用を誰が払うのか」「故人の預貯金から支払えるのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。葬儀費用の支払いに故人の預貯金を活用することは可能ですが、口座凍結や相続手続きなど、事前に知っておくべき注意点があります。
今回は、これから葬儀準備を始める方向けに、葬儀費用を故人の貯金から支払う方法や故人の預貯金口座が凍結された後に現金を引き出す方法をわかりやすく解説します。故人の預貯金口座の正しい取り扱い方法を知り、適切な方法で葬儀費用を支払いましょう。
この記事を要約すると
- 葬儀費用を故人の預貯金から支払うことは可能です。ただし、金融機関が故人の死亡を確認すると口座が凍結し、遺族が現金を引き出すことができなくなることに注意しましょう。
- 故人の口座の凍結後に預貯金を引き出したい場合は、預貯金の仮払い制度・預貯金債権の仮分割の仮処分申請・銀行独自の制度などを利用するのが一般的です。また、預貯金のみ先立って遺産分割協議を終える方法も有効です。
- 葬儀費用の支払いは相続税の控除対象となるため、必ず請求書や領収書を保管しておきましょう。なお、葬儀費用の支払いは相続の単純承認の対象外ですが、必要以上に派手な葬儀を執り行うなどの行為がみられた場合、相続放棄の対象外になる可能性があります。
故人の貯金から葬儀費用を支払うことは可能
故人の葬儀費用を支払う際、故人の預貯金を葬儀費用に充てることはもちろん可能です。実際に、銀行口座やゆうちょ貯金から引き出した現金で支払うケースは多く見られます。
ただし、金融機関が口座名義人の死亡を把握すると口座が凍結され、さまざまな手続きを踏まないと自由に引き出しができなくなる点には注意が必要です。葬儀費用は葬儀後7〜10日以内に支払いを求められることが多いため、故人の口座の凍結解除を待つと手続きが間に合わないかもしれません。
いざというときにスムーズに対応するためにも、事前に葬儀に必要な費用や支払い方法を把握し、資金準備の段取りを整えておくことが大切です。
葬儀費用の相場
葬儀にかかる費用は形式によって大きく異なりますが、一般葬では100万〜200万円程度、家族葬では30万〜100万円、一日葬は30万〜50万円がおおよその目安とされています。
葬儀費用は葬儀一式にかかる費用だけでなく、参列者の飲食接待費や返礼品費用、お布施をはじめとした宗教者への謝礼なども含まれます。
| 葬儀形式 | 葬儀費用の相場 |
|---|---|
| 一般葬 | 100~200万円程度 |
| 家族葬 | 30~100万円程度 |
| 一日葬 | 30~50万円程度 |
| 直葬 | 20~50万円程度 |
葬儀費用は誰が支払う?
葬儀費用を支払う人に明確な決まりはなく、故人の資産や遺族の状況にあわせて判断するのが一般的です。
喪主が支払う
葬儀の責任者として、喪主が葬儀費用を支払うケースは多く見られます。葬儀準備に加えて費用の支払いも担う立場ですが、後から香典や相続財産で精算するケースも珍しくありません。
施主が支払う
喪主とは別に施主を立てる場合、施主が費用を負担します。施主は葬儀費用面での責任者で、喪主が高齢や若年で支払い能力がないときに、経済的に余裕のある親族が務めるケースが一般的です。
香典を支払いに充てる
喪主や遺族が参列者から受け取る香典を葬儀費用に充てる方法もあります。ただし、香典のみで葬儀費用の全額をまかなうのは難しいため、ほかの支払い方法と併用しましょう。
相続人同士で分担して支払う
相続人が複数人いる場合、葬儀費用を分担して支払うこともあります。葬儀後の金銭トラブルに発展しないよう、当事者間で事前に話し合いを行い、負担割合を決めておくことをおすすめします。
故人の相続財産から支払う
故人の預貯金をはじめとした相続財産から支払う方法も一般的です。葬儀費用は必要経費として扱われるため、相続税の控除対象になります。
葬儀費用を故人の貯金から支払うときの注意点
葬儀費用の支払いにあたって故人の預貯金を利用する場合は、手続き上のさまざまな注意点を理解しておく必要があります。
口座名義人が亡くなると口座が凍結される
金融機関は口座名義人の死亡を確認すると、預貯金口座を凍結するという決まりがあります。これは相続トラブルを防ぐための措置であり、故人の相続人や遺族からの申告や残高証明書の発行のほか、新聞のお悔やみ欄や葬儀案内などから把握されるケースがあります。口座の凍結後は預貯金を自由に引き出せなくなることに注意が必要です。
相続放棄ができなくなる可能性がある
相続では、預貯金や不動産といった資産だけでなく、借金や未払い金などの負債も引き継ぐことになります。故人が負債を抱えて亡くなった場合、遺族が負債を相続することを避けるために「相続放棄」という制度を利用できます。これは相続人が故人が遺した一切の遺産を受け取らない意思表示を示すものです。
また、相続にあたって気をつけるべき制度に、「法定単純承認」」というものがあります。これは相続放棄や相続の限定的な承認を行う前に故人の遺産に対する利用・売却などの行為を行った際に、故人の遺産を相続することを承認したとみなす制度です。
故人の預貯金を利用した葬儀費用の支払いは原則として単純承認には該当しませんが、葬儀内容によっては単純承認とみなされる場合があるため注意が必要です。
<葬儀費用の支払い関連で単純承認とみなされるケース>
- 豪華な葬儀を執り行った
- 預貯金の仮払い制度を利用した
- 遺産分割協議書に署名・捺印をした
- 葬儀費用の支払い以外に遺産を使用した
葬儀費用のすべてが相続税控除にはならない
遺産相続を行うにあたり、相続者は受け取った財産に対する相続税を支払う義務が発生します。ただし、葬儀費用を故人の預貯金をはじめとした遺産から支払った場合、支払った金額の一部は相続税からの控除対象になります。
相続税の控除対象となるのは、遺体の搬送費用・火葬費用・お通夜や葬儀告別式の費用などです。一方で、墓石や仏壇の購入費用や香典返し、葬儀以降に行われる法要費用は控除の対象外となるため注意が必要です。どこまでが相続税控除の対象かを正しく理解し、適切に申告しましょう。
<相続税控除の対象となるもの>
- 死亡診断書の発行手数料
- ご遺体の搬送費用
- お通夜・葬儀告別式費用
- 飲食接待費用
- 火葬料・埋葬料
- 宗教者への謝礼(お布施など)
<相続税控除の対象にならないもの>
- 喪服の購入費用
- 遠方の親族の宿泊費用
- 墓石や仏壇の購入費用
- 裁判に必要なご遺体解剖費用
- 香典返しの品物の購入費用
- 初七日法要や四十九日法要にかかる費用
領収書や証明書を紛失すると証明ができなくなる
葬儀費用を故人の預貯金から支払った場合は、領収書や請求書などの証明書を必ず保管しておく必要があります。これらの証明書は故人の遺産を私的に使用していないことの証明となり、相続人間のトラブル防止に役立ちます。
また、相続放棄を検討する際の証拠や相続税控除を受けるための資料としても使用します。領収書や請求書を紛失すると遺産に関する証明ができなくなるため、支払いの内訳がわかる書類は必ず後から確認できるように整理しておきましょう。
葬儀費用以外の支出は相続トラブルにつながる
故人の預貯金は、葬儀費用以外の目的で使用しないよう注意が必要です。生活費や私的な支出に充ててしまうと、相続財産の不正使用とみなされ、相続時のトラブルにつながる可能性があります。また、葬儀と関係のない支出は相続税控除の対象にもなりません。あくまで葬儀に必要な費用のみに限定して使用し、相続の透明性を確保することが重要です。
故人の貯金を引き出す方法
故人の預貯金を引き出す際は、状況に応じて適切な手続きを選ぶことが求められます。
口座凍結前に引き出す
故人の口座が凍結される前に現金を引き出す方法は有効ですが、相続人全員の同意を得ておく必要があります。
また、この時点で引き出した預貯金も相続税の対象となることに注意が必要です。葬儀費用以外に使用すると相続トラブルの原因となるため、引き出す際は葬儀費用分のみに限定し、必ず領収書を保管しておくことが重要です。
銀行に申請して凍結口座から引き出す
金融機関によっては、必要書類を提出することで凍結口座から葬儀費用分の預貯金を引き出せる場合があります。対象の金融機関に口座を開設していた場合は、必要な書類を揃え、金融機関指定の依頼書を記入して申請を行えます。なお、手続きには時間がかかる場合があるため、事前に銀行へ確認の上、余裕を持って対応しましょう。
<申請に必要な書類の例>
- 死亡診断書または死亡届の写し
- 戸籍謄本(相続人を証明できる書類)
- 葬儀費用の請求書または領収書
- 銀行指定の依頼書
預貯金の仮払い制度を活用する
2019年7月に施行された「遺産分割前の預貯金の払い戻し制度(仮払い制度)」を利用することで、遺産分割協議前でも故人の口座から一定額の預貯金を引き出せるようになりました。この制度は相続人代表の申請によって利用できますが、家庭裁判所で遺産分割の調停や審判が行われていないことが条件となります。
なお、引き出せる金額には上限があり、「預貯金残高×3分の1×法定相続分」または150万円のいずれか低い金額が適用されます。たとえば、預金が600万円で法定相続分が2分の1の場合、600万円×1/3×1/2=100万円となるため、この場合は100万円までを引き出せます。
<申請に必要な書類の例>
- 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍・除籍謄本
- 申請者の印鑑証明書
- 金融機関所定の申請書
<引き出せる金額の上限>
①相続開始時の預金額×3分の1×払い戻しを行う相続人の法定相続分
②150万円
→①②のいずれか低い金額
預貯金債権の仮分割の仮処分を申請する
故人の口座から150万円を超える預貯金を引き出したい場合は、家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申請する方法があります。
この手続きは、遺産分割調停や審判の申立てが行われていることが前提となり、他の相続人の利益を害さないことや、葬儀費用や生活費の支払いが必要であることが条件となります。必要書類を揃えて申請し、家庭裁判所が必要性と妥当性を認めた場合に限って預貯金の一部を引き出せます。
<申請に必要な書類の例>
- 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 申請者の印鑑証明書
- 遺産分割調停または審判の申立書
預貯金だけ先立って遺産分割協議を行う
葬儀費用が高額になる場合や、相続人同士で話し合いが可能な場合は、預貯金のみ先に遺産分割協議を行う方法もあります。葬儀費用は必要経費として優先的に支払えるため、預貯金の分配を先に決めることでスムーズに資金を確保できます。
申請にあたっては銀行に連絡して残高証明書を取得し、相続人全員で分割内容を決定したうえで遺産分割協議書を作成します。その後、戸籍謄本や印鑑証明書とともに金融機関へ提出することで、預貯金の払い戻しが可能になります。
<申請に必要な書類の例>
- 故人の戸籍謄本
- 印鑑証明
- 遺産分割協議書のコピー
<手続きの流れ>
- 金融機関に申請して残高証明書を発行する
- 相続手続き用紙を手配する
- 協議で相続割合を決定する
- 遺産分割協議書を作成する
- 金融機関に提出する必要書類を手配する
- 金融機関へ申請を行う
相続手続きをすべて完了させる
故人の相続手続きをすべて完了させると、預貯金は正式に相続人の名義となり、現金を自由に引き出せるようになります。銀行への申請後、1〜2週間程度で払い戻しが行われるのが一般的です。ただし、相続全体の手続きには時間がかかるため、葬儀費用の支払い期限に間に合わない可能性があります。そのため、緊急性がある場合は他の方法を利用する方が確実といえます。
故人の預貯金以外で葬儀費用を用意する方法
故人の預貯金以外にも、葬儀費用を準備する手段はいくつかあります。
生前に預貯金を引き出しておく
故人が生前のうちに、葬儀費用に相当する金額の預貯金を口座から引き出しておく方法も有効です。本人や家族の同意を得て現金化しておけば、口座凍結の影響を受けずにスムーズに支払いができます。ただし、相続時にトラブルにならないよう、いくら引き出したかを記録し、相続時に説明できるようにしておくことが重要です。
タンス預金から支払う
自宅に保管している現金、いわゆる「タンス預金」を葬儀費用に充てる方法もあります。金融機関への預貯金とは異なり、残高を公的に証明する術がないため、金額を正確に数えて把握し、証明書や記録を残しておく必要があります。
相続時にはタンス預金も故人の遺産として申告する必要があるため、金額を誤魔化さずに適切に計上しなければなりません。
自治体の葬祭サポートを活用する
自治体が提供する葬祭支援制度を利用することで、葬儀費用の負担を軽減することも可能です。代表的なものに市民葬や区民葬があり、自治体と提携した葬儀社によるシンプルな葬儀プランを低価格で利用できます。
また、国民健康保険の加入者が亡くなった場合は、自治体から葬祭費が支給される制度があります。支給額は自治体によって異なりますが、数万円程度が一般的です。大きな金額ではありませんが、葬儀費用の一部を補う手段として活用できるでしょう。なお、利用条件や支給額は自治体によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
葬儀保険や生命保険へ加入する
葬儀費用の備えとして、葬儀保険や生命保険に加入しておく方法もあります。これらの保険は被保険者が亡くなった際に保険金が支払われるため、保険金を葬儀費用に充てることができます。
特に生命保険は比較的早期に保険金が支払われるケースが多く、葬儀費用の支払いに間に合いやすい点がメリットです。生前から計画的に準備しておくことで、いざというときの経済的負担を大きく軽減できるでしょう。
互助会や葬儀信託へ加入する
互助会や葬儀信託も、葬儀費用を準備する有効な手段です。互助会は特定の葬儀社に対して毎月一定額を積み立てることで将来の葬儀費用に充てる仕組みで、依頼する葬儀社や葬儀内容が決まっている場合に役立ちます。
一方、葬儀信託は金融機関に費用を預け、葬儀後に金融機関から葬儀社へ葬儀費用が直接支払われる仕組みです。互助会と異なり、葬儀社の倒産リスクを避けられる点がメリットです。
葬祭扶助を受ける
故人や遺族が生活保護を受給している場合は、葬祭扶助制度を利用することで葬儀費用を公的に負担してもらうこともできます。
これは直葬や火葬式のみの最低限の葬儀を対象としており、葬儀や必要な手続きなどにかかる費用が支給されます。利用にはさまざまな条件がある上、事前に福祉事務所へ申請する必要があります。
葬祭ローンを組む
遺族が葬儀費用を用意できない緊急時には、資金調達手段として葬祭ローンを利用する方法もあります。金融機関や葬儀社が提供している葬祭ローンを利用すれば、葬儀にかかる費用を分割払いで支払うことができます。ただし、金利や返済計画を十分に確認し、無理のない範囲で利用することが重要です。
遺族が費用を立て替える
遺族が一時的に葬儀費用を立て替え、後から相続財産や保険金で精算する方法も一般的です。最近ではクレジットカードで支払いが可能な葬儀社も増えており、現金が不足している場合でも対応しやすくなっています。相続手続きが完了するまでの一時的な対処方法として有効です。
故人の預貯金を引き出す際のルールに注意しましょう
故人の預貯金から葬儀費用を支払うことは可能ですが、口座凍結や相続手続きの影響を受けるため、事前に利用方法と注意点を理解しておくことが重要です。特に、口座凍結後の預貯金の仮払いや相続放棄への影響、葬儀費用の税務上の扱いには注意が必要です。葬儀費用を支払う際は、状況に応じて最適な方法を選び、トラブルを避けながらスムーズに葬儀を進めることが大切です。
弊社では、価格を抑えたプランパックでの葬儀をご用意しています。参列人数に応じた広さの式場で、現代に合わせたシンプルな葬儀を行えます。依頼・相談は24時間365日受け付けているので、興味をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。
