近年、配偶者が存命でも、高齢の場合は子どもが喪主を務めるケースが増えています。葬儀の喪主は、故人の配偶者と子ども、どちらが行うべきか疑問がある方もいるでしょう。
本記事では、喪主の選び方について優先順位やよくある質問をまとめました。喪主がやるべきことや押さえておくとよいマナーについても解説しています。喪主を務める際にスムーズに葬儀が進められるか不安な方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を要約すると
- 喪主は、故人の遺言書に指定がある場合はその内容に従い、特に指定がない場合は故人と最も縁の深い人が務めます。一般的には、配偶者が第一候補で、次いで子どもが選ばれるのが一般的です。
- 喪主は葬儀全体の取りまとめ役として、火葬場の予約や各種準備、当日の挨拶や弔問客への対応、葬儀後の香典返しなどを行います。
- 服装は正喪服または準喪服を着用しましょう。挨拶の際は忌み言葉を避ける、お布施は10〜50万円を目安に地域の慣習に合わせるなど、基本的なマナーを押さえておくことで、滞りなく葬儀を進められます。
喪主の決め方
ここでは、一般的な喪主の優先順位や、状況に応じた選び方のポイントについて解説します。
遺言書があればそれに従う
遺言書で喪主の指定がある場合は、遺言書に従うのが一般的です。ただし、遺言書で喪主が指定されているからといっても法的な効力はありません。故人の意向があっても、指定された本人が健康上の問題などさまざまな事情で喪主を務められない場合もあるでしょう。
喪主に指定された方が拒否したり、適任ではないと遺族が判断したりした場合には、他の方が喪主を務めることもあります。また、葬儀は故人が亡くなってからすぐに行うため、遺言書があっても存在に気づかないというケースもあります。
なお、祭祀承継者や被相続人について遺言書で指定されている場合は、法的効力があります。祭祀承継者とは、故人の遺骨や墓地などを管理し、法要を執り行う責任を負う人を指します。しかし、祭祀承継者が必ずしも喪主を務めなければならないということではありません。
故人と縁が深い人が行う
遺言書で指定がない場合は、故人と関係性が深い方が喪主となるため、配偶者が務めるのが一般的です。しかし、配偶者がすでに亡くなっている、高齢で健康上の理由から喪主を務めるのが難しいというケースは少なくありません。
その場合、優先的に喪主になるのは子どもで、長男、次男など直系の男子から年齢順に選ぶ傾向があります。配偶者も子どももいない場合は、故人の兄弟など親族で故人と血縁関係が近い順に決めるとよいでしょう。
なお、喪主を選ぶ際の一般的な優先順位は以下の通りです。
| 優先順位 | 故人との関係性 |
|---|---|
| 1 | 配偶者 |
| 2 | 長男・次男 |
| 3 | 長女・次女 |
| 4 | 両親 |
| 5 | 兄弟・姉妹 |
ただし、血縁関係の優先順位が高くなくても、故人と同居していたなどの関係性で喪主を選ぶ場合があります。
親族がいない場合は友人が喪主になることも
故人の身内が誰もいないという場合もあるでしょう。喪主を務める人は、必ずしも故人と血縁関係は必要ありません。親族がいないときは、友人や知人が喪主になることもあります。
付き合いの長い友人や、亡くなる前からよく会っていた友人など、故人との関わりが強い方が自ら手を挙げることがあります。喪主を務める人が、葬儀場から遠いところに住んでいると、準備が大変になります。近くに住んでいる友人が喪主を務める方がよりスムーズです。
施主と喪主の違い
喪主は、遺族を代表して葬儀全体を取りまとめる役割を担う人です。これに対して「施主」は、葬儀にかかる費用を負担する立場の人を指します。施主は葬儀社への支払いだけでなく、僧侶へのお布施などの金銭的な手続きを担当します。
喪主と施主は同一人物が兼任しても、別々の人が務めても問題ありません。たとえば、配偶者が高齢の場合は子どもが喪主を務め、配偶者が施主となるケースも一般的です。葬儀の準備や当日の進行は、喪主と施主が協力して進めることでスムーズに行えます。
喪主がやること
ここでは、葬儀の準備から当日の対応まで、喪主が担う主な役割について解説します。
すべての作業を喪主が1人で行う必要はありませんが、葬儀全体の流れを把握し、遺族や葬儀社と連携を取りながら指揮をとることが求められます。喪主は、家族の意向と故人の希望を踏まえ、葬儀が円滑に進むよう全体を取りまとめる重要な役割を担います。
書類の手続きや葬儀の準備
故人が亡くなると、まず喪主が最初にする手続きが死亡届の提出です。医師から死亡診断書を受け取り、亡くなったことを知った日を含めて7日以内に役所に提出します。
次に、ご遺体の安置場所と搬送方法を決めて、火葬場の予約と葬儀の日程を取り決めます。葬儀までご遺体は自宅か葬儀場の霊安室で安置するのが一般的です。なお、地域や時期によっては火葬場が混み合っていることもあるため、いつ火葬できるかを含めて日程を決める必要があります。
葬儀に来ていただく僧侶とも日程を調整します。普段からお世話になっている菩提寺がある場合は、菩提寺に相談しましょう。
故人の親族や友人、知人に訃報連絡を行い、葬儀の案内状を出します。葬儀社と相談して、葬儀の場所や形式など具体的なことを決めましょう。
当日の葬儀の対応
当日は、早めに葬儀会場に行き供花を並べる順番や席次を確認します。実際の進行などで疑問点や不安なことがあれば、葬儀社に聞いておきましょう。
僧侶が来られたら、お出迎えして、供養いただくことへのお礼を伝えます。お布施はお出迎えしたときか、葬儀が終わったタイミングで渡します。
参列者が来られたら、遺族と協力して受付を行い、挨拶をします。弔辞や香典をいただくこともあるため、丁寧にお礼を伝えましょう。
葬儀中は遺族代表としての喪主の挨拶や、焼香などの宗教的な儀式を行います。慣れていないと手順がわからないこともあるため、事前に確認しておきましょう。
葬儀後の対応
葬儀が終わった後も、法要や香典返し、納骨など重要な役目があります。葬儀後は、参列できなかった方が自宅に弔問されることがあるため、その対応や、挨拶回りを喪主が行います。
また、仏教では、亡くなってから7日ごとに故人が極楽浄土に行けるように供養するという考え方があります。特に、亡くなってから7日目の初七日や、忌明けとなる四十九日には、遺族や親戚で集まり、僧侶を呼んで法要を執り行います。喪主や遺族は、法要の準備や当日の対応をします。
お墓への納骨は、四十九日法要の際に行われることが多いです。四十九日法要の後は、忘れずに香典へのお返しもしましょう。
喪主が気にしておきたいマナー・注意点
喪主が必要な準備や対応を行う際に、気をつけたいマナーや注意点についても解説します。宗派は地域で大切にされている考え方に沿って、僧侶や参列者に対しても失礼のない行動を心がけましょう。
挨拶のタイミング
喪主にとって欠かせない役割のひとつが、通夜や告別式での挨拶です。
挨拶では、「死」や「苦」などの忌み言葉を避け、簡潔にまとめることが大切です。宗教や地域の慣習に合わせるのが基本ですが、形式にとらわれすぎると堅苦しい印象になってしまいます。故人がお世話になった方々への感謝の気持ちを込めて、温かみのある言葉を心がけましょう。
主な挨拶のタイミングは次のとおりです。
- 通夜や告別式の開始
- 通夜・告別式の終了時
- 出棺前
- 通夜振る舞いや精進落としなど会食の前後
このタイミング以外にも、会食のときなどは個別に挨拶に周り、お礼を伝えます。
服装と身だしなみ
喪服には、「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3種類あります。喪主は「正喪服」「準喪服」を着用するのが望ましいとされています。
男性の場合は、紋付羽織袴やモーニングスーツ、女性の場合は黒無地か紋付着物、黒い無地のワンピースかツーピースがよいでしょう。
冬場にコートを着用する場合は、黒やダークカラーのものを着用します。殺生を思い起こすようなレザー生地のものや、毛皮がついているものはフェイクでも望ましくありません。
靴やバッグは黒色のものにし、光沢のある素材は避けましょう。ハンカチは、白色または黒色の無地のものを準備します。
お布施は感謝の気持ちを込めてお渡しする
葬儀に来ていただく僧侶にお渡しするお布施を準備しましょう。喪主と別に施主がいる場合は、施主が準備します。
お布施は、通夜や告別式の読経などに対して感謝の気持ちを込めてお渡しするものです。そのため、金額について明確に決まっているものではありません。相場も、10〜50万円程度と言われており、幅があります。宗派や地域によっても差があるため、わからなければ親戚や葬儀社に聞いてみてもいいでしょう。
また、別途僧侶が葬儀場に来ていただくための移動費として、お車代や会場に参加されない場合の御膳料が必要になります。
お布施の包み方や渡すタイミングについても決まりがあります。詳しく知りたい場合はこちらの記事も参考にしてください。
香典返しを準備する
参列者からいただいた香典には、お返しの品をお渡しするのがマナーです。いただいた金額の半分から3分の1相当の品物を準備します。香典を辞退する場合は、あらかじめ案内状に記載してお知らせしましょう。
香典返しは、四十九日法要の後、1か月以内に郵送でお送りすることが多いですが、当日に全員に同じ品物をお渡しするケースも増えています。その場合、高額な香典をいただいた方には、改めてお返しをします。
なお、施主と喪主が別の場合は、施主宛に香典を準備しましょう。
喪主の決め方でよくある質問
実際、喪主を決めるときになると、喪主に適任の人がいない、1人で喪主を務められる自信がないなど、さまざまなパターンが想定されます。
ここでは、喪主の決め方に関して、よくある質問をまとめました。
配偶者がいない場合、喪主は複数人で行ってもいい?
喪主は、必ずしも1人で務めなければならないわけではありません。たとえば、故人の配偶者が高齢の場合に子どもと共同で喪主を務めたり、複数の子どもが協力して喪主を担うケースもあります。
民法上、お墓や仏壇などを引き継ぐ「祭祀承継者」は1人と定められていますが、その人が必ず喪主を務める必要はありません。
葬儀では、準備や決定事項、当日の進行など喪主の役割が多岐にわたります。そのため、家族の中で適任の人がいれば分担し、複数人で協力して進めることで、精神的・体力的な負担を軽減できるでしょう。
配偶者も子どももいない場合は?
故人に配偶者や子どもといった近親者がいない場合でも、葬儀を行うことは可能です。
遠縁の親戚が喪主を務めるケースもありますが、生前の交流が少ないと対応が難しい場合もあります。 そのようなときは、故人が生前に手続きを行っておくことで、第三者が喪主を務めることもできます。
たとえば、信頼できる福祉関係者や行政書士などの専門家に依頼し、「死後事務委任契約」を結んでおくことで、葬儀や火葬などの手続きを任せることができます。
喪主を頼まれたら断ってもいい?
喪主は、頼まれたり遺言書で指定されていたとしても、必ず引き受けなければならないものではありません。葬儀全体を取り仕切る喪主の役割は責任が重く、精神的・体力的な負担も大きいものです。故人との関係が希薄だったり、体調面で不安がある場合などは、無理に引き受ける必要はありません。
ただし、故人の希望や家族構成によっては、他に適任者がいないこともあります。その場合は、遺族間でよく話し合い、断る際には周囲が納得できるような説明を用意しておくとよいでしょう。どうしても難しい場合は、代理人を立てて対応してもらう方法も検討できます。
喪主を務める上で不安なことは経験豊富な葬儀社に相談を
喪主は、遺族の代表として葬儀全体を取り仕切る重要な役割です。血縁関係が近いからと安易に決めるのではなく、遺族でよく話し合って決めましょう。
ただし、葬儀は喪主が1人で進められるものではありません。遺族で役割を分担しながら、当日の進行などは経験豊富な葬儀社にお任せするとよいでしょう。
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