近年、葬儀には一般葬のほか一日葬や家族葬、直葬など多様な形式が登場し、故人や遺族の希望に即した選択ができるようになりました。一日葬は葬儀を一日で終えるスタイルで、進行が比較的簡単ですが、喪主の対応や挨拶は一般葬とは少し異なる点もあります。
慣れない中で戸惑いやすい場面もあるため、流れや内容を事前に把握しておくことが大切です。この記事では、一日葬における喪主の必要性や役割、場面別の挨拶内容をわかりやすく解説します。
この記事を要約すると
- 葬儀形式にかかわらず喪主は欠かせない存在であり、一日葬でも全体の流れを把握し、式の進行を管理する立場として参列者の対応などを担います
- 喪主挨拶は、告別式の閉式時・出棺時・火葬前・収骨後と各場面で行うのが一般的で、それぞれの挨拶には固有の意味と役割があります
- 喪主挨拶では、話が長くなりすぎないよう注意しつつ、忌み言葉を避けながら故人への想いと感謝の気持ちを丁寧に伝えることが大切です
そもそも一日葬に喪主の挨拶は必要?
一日葬は、お通夜を省略し、葬儀と告別式を一日で執り行う葬儀形式です。時間的・体力的な負担を抑えられる一方で、喪主の挨拶が不要になるわけではありません。特に同居していない親族や親族以外の方が参列する際には、挨拶で感謝の気持ちを伝えることが求められます。
少人数の身内のみで行う場合でも、数名以上であれば短い挨拶を添えるのが一般的です。喪主挨拶は、参列者へのお礼とともに、故人との別れを伝える大切な場面です。一日葬でも告別式と出棺は通常通り行われるため、挨拶のタイミングは一般葬と同様に出棺直前となります。
一日葬の喪主の役割は一般葬と同じ。ただし、準備と進行管理に違いがある
一日葬は一般葬と比べてお通夜がなく規模は小さくなりますが、喪主としてやるべきことは基本的に変わりません。挨拶だけでなく葬儀進行の決定や参列者への対応なども喪主の大切な役割です。
ただし、一般葬では、お通夜と告別式の二日間を使って僧侶との打ち合わせや親族への案内を進めますが、一日葬ではそれらを当日の朝までに調整しなければなりません。参列者への対応も短時間で完結するため、段取りよく進める意識が求められます。
もちろん、葬儀社のスタッフがサポートしてくれるため、すべてを一人で対応するわけではないものの、遺族の代表として葬儀に関わる場面は多いといえます。
一日葬の流れと喪主が担う役割
一般葬と一日葬では葬儀の流れが異なるため、喪主として行う準備や当日の対応にも違いがあります。一日葬ならではの進行に合わせて、あらかじめ全体の流れや喪主の役割を把握しておくことで、落ち着いて対応できます。
ここでは一日葬の流れに沿って、場面ごとのポイントも踏まえながら、喪主が担う役割を解説します。
葬儀前の準備と打ち合わせ|式形式・供花・受付係の決定
故人が亡くなった場合、喪主はまず葬儀社を選びます。見積もりの詳細やプラン内容を確認したうえで、葬儀形式を決定しましょう。
その後、ご遺体の搬送と安置場所を手配し、僧侶への連絡や宗派の確認も行います。葬儀社の打ち合わせでは「式の形式・宗派・参列人数・供花の有無・受付や司会の有無」などを順に整理していく流れです。
なお、こうした内容の多くは葬儀社スタッフが質問形式で導いてくれるため、過度に構える必要はありません。ただし、予算や式の進め方に希望がある場合は、喪主として明確に伝えておくことが大切です。
会式前の対応|僧侶にお布施を渡し会葬者への案内確認を行う
会式前の対応では、僧侶への挨拶やお布施の受け渡し、参列者への案内確認などを喪主が行います。
まずは、僧侶に「本日はありがとうございます」と一礼し、袱紗に包んだお布施を切手盆にのせて丁寧に渡しましょう。お布施を渡すタイミングに厳密な決まりはないため、あらかじめ葬儀社に確認しておくと安心です。
その後は、受付や案内が問題なく進んでいるかを確認し、式が始まるまで待機します。会場内での誘導や席順、焼香の流れなどを実際に指示するのは葬儀スタッフであるため、全てを細かく把握しておく必要はありません。ただし、喪主として全体の流れを頭に入れておくと安心です。
変更や気になる点がある場合は、早めにスタッフへ伝えるようにしましょう。
閉式時の喪主挨拶|感謝の一言を簡潔に述べる
喪主挨拶は、告別式の閉式直前、全員の焼香が終わったタイミングで行います。ここでのあいさつは、参列者への感謝を伝えるとともに、故人に替わって締めくくる意味合いがあります。会葬者全体に向けて話すため、あらかじめ内容を整理しておくと安心です。
話す内容に決まりはありませんが、故人との関係や生前の様子に軽く触れながら「お忙しい中起こしいただきありがとうございました」と感謝の言葉を添えるのが一般的です。長く話す必要はなく、2〜3分程度で簡潔にまとめるのがよいでしょう。
うまく話せるか不安な場合は、メモを用意してもマナー違反にはなりません。
出棺時の対応|位牌携行・出棺前のまとめ挨拶を行う
出棺の場面では、喪主が位牌を持って霊柩車まで同行するほか、会葬者への最後の挨拶を行います。出棺前の挨拶は閉式時とは異なり、故人を見送る場に集まってくださった方々へ、最後に直接語りかける機会です。
会葬のお礼に加えて、葬送の節目に立ち会ってくれたことへの感謝や見送りのお願いなどと一言添えるとよいでしょう。
挨拶後、遺族は一礼し、順に火葬場へ移動します。車両や移動順は事前に決めてあるうえ、当日はスタッフが誘導してくれるので、喪主は全体の流れを確認しながら落ち着いて進めれば問題ありません。
火葬に同行する人数が変わった場合などは送迎の段取りが変わることもあるため、気づいた時点で早めにスタッフへ伝えるようにしましょう。
火葬場到着時の対応|係員と会葬者への案内調整を担う
火葬場に到着した後は、葬儀社のスタッフが火葬許可証を提出し、火葬炉前での納めの式へと案内します。
喪主は位牌を持って同行し、最後のお別れに立ち会います。ここでは、僧侶の読経後、喪主・遺族・親族の順で焼香を行います。
納めの式が終わった後は、骨上げまで1〜2時間ほどあり、控室で待機する流れです。控室では、同行者へお茶や菓子を振るまうこともあり、精進落としの人数確認なども行われますが、いずれも世話役や葬儀社が主体となって進行してくれます。
収骨と散会|収骨順の把握と最後の挨拶を行う
火葬が終わると、遺骨を骨壺に収める「収骨(骨上げ)」が行われます。喪主は位牌を持って香炉に進み、参列者と共に順番に骨を拾います。
一般的には足から頭の順で納め、喉仏の骨は喪主が拾います。収骨後は埋葬許可証が交付され、骨壺と一緒に受け取ります。
その後、控室などで最後の挨拶を行います。この挨拶は、葬儀全体を締めくくる言葉となるため、参列者への感謝とともに、無事に葬儀を終えたことの報告を述べるのが基本です。
閉式時や出棺時の挨拶と異なり、見送り後の労いや今後の関係を大切にしたいという思いを込めるとよいでしょう。
各場面における喪主挨拶の意味と例文
一日葬の流れと喪主が担う役割で解説した通り、喪主は閉式時や出棺前など、各場面で遺族を代表して参列者へ挨拶を行います。これらの挨拶は、故人との別れの場において、参列者への感謝とともに最後の想いを伝える大切な言葉となります。
閉式時の挨拶|感謝と生前の御礼を伝える
葬儀の閉式時は、故人を見送る式の締めくくりであり、喪主が遺族を代表して参列者へ感謝の意を伝える場面となります。この挨拶では、故人が生前にお世話になったことへのお礼と、参列者が多忙のなか、足を運んでくださったことへの感謝を述べるのが一般的です。
さらに、喪主自身の立場や故人との関係に触れながら、式が滞りなく終えられたことを報告することで、式全体の区切りとしての意味も持ちます。
【閉式時の喪主挨拶の例文】
本日はご多忙の中、〇〇(故人の名前)の葬儀にご参列いただきまして、誠にありがとうございました。長男(長女)〇〇でございます。遺族を代表し、心より御礼申し上げます。
皆様のおかげをもちまして、滞りなく告別式を執り行うことができました。生前中は、ひとかたならぬご厚情を賜り、本日このようにお見送りまでいただきましたこと、故人もきっと感謝していることと存じます。
〇〇は、(故人の趣味、性格、思い出などを一言)…といった人柄で、家族にとっても多くの思い出を残してくれました。
今後とも、故人同様、私どもに変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。簡単ではございますが、御礼のご挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
出棺前の挨拶|火葬に向かう旨とお別れを述べる
出棺の際は、火葬場へと向かう直前に喪主が挨拶を行います。この挨拶では、参列者への感謝を述べるとともに、これから故人を火葬場へお連れする旨、そして最後のお別れであることを静かに伝えるのが基本です。
また、故人が生前に受けたご厚情に立ちする御礼と、今後も遺族への変わらぬ支援をお願いする言葉を添えて締めくくるのが一般的です。
【出棺時の喪主挨拶の例文】
本日はご多忙の中、〇〇(故人の名前)のためにご会葬いただきまして、誠にありがとうございました。長男(長女)の〇〇でございます。遺族を代表し、厚く御礼申し上げます。
皆さまのおかげをもちまして、滞りなく告別式を終えることができました。生前中は故人に対し、ひとかたならぬ温かいお付き合いを賜り、そして本日こうして最後のお見送りまでいただきましたこと、家族一同心より感謝申し上げます。
これより、火葬場へと向かい、最後の別れをさせていただきます。どうぞ引き続き、見送りのほどお願い申し上げます。簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
火葬場での挨拶|同行への感謝と案内を伝える
火葬場での挨拶は、納めの式の締めくくりとして喪主が参列者へ向けて行うものです。この場面は、故人との最後の別れとなるため、言葉にも一層の配慮が求められます。
喪主挨拶では、火葬に立ち会ってくださった方々への感謝を述べるとともに、故人への想い、そしてこれからの遺族としての決意を短く、丁寧に伝えることが大切です。
火葬場での挨拶は、簡潔なもので3分以内を目安に、落ち着いた口調で話すようにしましょう。
【火葬場の喪主挨拶の例文】
本日は最後まで〇〇(故人の名前)をお見送りいただき、誠にありがとうございました。
長男(長女)〇〇でございます。遺族を代表して、あらためて深く御礼申し上げます。生前はひとかたならぬお付き合いをいただき、本日こうして最後の別れの場にもお立会いいただきましたこと、家族一同感謝の念に堪えません。
父(母)は(人柄や趣味、思い出など)…という人柄で、私たちにとって大切な存在でした。今は静かに見守ってくれていることと思います。
皆さまには、今後とも変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げ、これをもちまして御礼の挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
収骨後の挨拶|最後までの付き添いに感謝する
火葬が終わり、収骨を持って一連の葬送の儀が完了するタイミングで、喪主から参列者に向けて最後の挨拶を行うのが一般的です。
この場面では、火葬場まで足を運んでくださった方へ感謝を伝えるとともに、今後の法要などについて簡単に触れることもあります。
【収骨後の喪主挨拶の例文】
本日は最後まで〇〇(故人の名前)のためにお時間をいただき、誠にありがとうございました。長男(長女)の〇〇でございます。遺族を代表し、御礼申し上げます。
皆さまのおかげをもちまして、葬儀から火葬、収骨まで滞りなく終えることができました。故人もきっと、皆様の温かなお気持ちに感謝していることと存じます。
今後は、〇月〇日に四十九日法要を予定しております。あらためてご案内を差し上げますが、ご都合がよろしければご参列いただければ幸いです。これをもちまして、本日の儀をすべて終了とさせていただきます。長時間にわたりご同行いただき、誠にありがとうございました。
喪主挨拶を準備する際に意識しておきたいこと
喪主挨拶は、何よりも気持ちが大切ですが、伝えるべき内容をしっかり整理し、適切な表現で伝えることも欠かせません。挨拶を行う場面によって多少の違いはあるものの、共通して意識しておくべきポイントがあります。
ここでは、一日葬で喪主挨拶を考える際に気をつけたいポイントについて解説します。
伝える内容を絞って話が長くなりすぎないようにする
喪主の挨拶では、伝えたいことが多くなるものですが、話が長くなりすぎると参列者の負担になることもあります。明確なルールはないものの、2〜3分程度に収まるよう要点を絞って話すことが大切です。
内容を整理してから話すことで、感謝の気持ちや故人への想いもしっかり伝わります。緊張する場合は、メモを見ながら話しても問題ありません。
故人との関係や思い出を自分の言葉で表現する
喪主挨拶では、故人との関係性や思い出を、自分の言葉で率直に伝えることが大切です。形式にとらわれすぎず、どんな人だったのか、どのような場面が印象に残っているかを短く添えるだけでも、聞いている人の心に残ります。
例文を参考にしつつも、ありのままの気持ちを言葉にすることで、より温かみのある挨拶になります。完璧な言い回しよりも、真心のこもった言葉を大切にしましょう。
忌み言葉や不適切な表現を使わないよう注意する
喪主挨拶では「たびたび」や「ますます」などの重ね言葉や「落ちる」「消える」といった忌み言葉を避けるのが基本です。また「死ぬ」や「亡くなる」など直接的な表現も「ご逝去」「急なことで」など別の表現に置き換えるのが一般的です。
さらに、宗教によって避けるべき言葉も異なるため、不安がある場合は葬儀社に相談してみましょう。
すべてを一人で抱え込まず支えてくれる葬儀社を選ぶことが大切
一日葬は通夜を行わず、告別式と火葬を同日に行う葬儀形式で、シンプルでありながらも丁寧なお別れができることが特徴です。喪主は式全体を通じて、関係者への対応や挨拶などを行う必要があり、一日葬だから不要というわけではありません。
特に同居していない親族や親戚が参列する場合などは、各場面での喪主挨拶も省略しないのが一般的です。一日葬においては、閉式時・出棺前・納めの式(火葬前)・収骨後といった場面で喪主挨拶を行います。故人への想いや参列者への感謝を形にするものであり、言葉遣いや長さに配慮しながら話すようにしましょう。
弊社「1日葬・家族葬のこれから」では、価格を抑えたプランパックでの一日葬を全国一律価格で提供しています。参列人数に応じた広さの式場で、現代に合わせたシンプルな葬儀を行えます。依頼・相談は24時間365日受け付けているので、興味をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。