臨済宗で故人を見送ることになったけれど、作法やマナーがよく分からないという方は多いのではないでしょうか。
臨済宗の葬儀は禅宗ならではの考え方に沿って行われ、ほかの宗派では見かけない儀式もあります。死生観や儀式の意味を理解することで、故人とのお別れの時間をより豊かにできるでしょう。
この記事では、臨済宗の葬儀の基本から、焼香・数珠・香典などのマナーまで、具体的にまとめています。より理解しやすいよう、他宗派との比較も記載しました。
事前に知っておくことで、慌てず丁寧に故人を送れるでしょう。
この記事を要約すると
- 臨済宗は、念仏を唱えれば救われるとする宗派とは異なり、座禅や禅問答を通した修行を重視します。葬儀は「授戒」「念誦」「引導」の考え方を基本に行われます。
- 臨済宗の葬儀では、線香は1本、焼香は1回が基本です。焼香では摘まみ上げた抹香は額に押し頂かずそのまま香炉にくべます。香典のマナーは他の宗派と同じです。
- お布施の相場は15~50万円です。お布施以外に、戒名料、お車代・お膳料などが必要となります。
臨済宗とは?葬儀の背景にある教えと考え方
臨済宗は、曹洞宗・黄檗宗と並ぶ、三大禅宗のひとつです。鎌倉時代に栄西によって伝えられ、以降、武家を中心に広がり、14もの宗派があります。
念仏を唱えると救われるとする浄土宗・浄土真宗などとは異なり、悟りを開くための座禅を重んじるのが特徴です。
禅宗の一派としての臨済宗
禅宗のひとつである臨済宗は、仏教のなかでも精神修行を重んじる宗派です。形式よりも、自らの内面からの気付きを重視します。
「公案(こうあん)」といわれる禅問答を通して行われる修行も臨済宗を代表する特徴のひとつです。課題について問答を重ね深く考察します。
また、すべての人が生まれながらに仏性を持つと考えることから、特定の本尊を立てません。釈迦の悟りの体験を重視し、己の仏心に気付くことこそを目的としています。
臨済宗の死生観と葬儀の意味
仏教では、成仏や極楽浄土への往生を願って念仏や供養を行うことが一般的ですが、臨済宗では座禅や公案を通じて、生を見つめることに重きを置いています。
臨済宗の葬儀では、「引導」といわれる儀式が特徴です。読経によって浄土へ送るのではなく、「導師」と呼ばれる僧侶が故人を仏の世界へと導きます。
臨済宗の葬儀の特徴
臨済宗の葬儀は、「授戒(じゅかい)」「念誦(ねんじゅ)」「引導(いんどう)」という3つの考え方を基本に行われます。
授戒 | 故人が仏弟子となるために戒を授かる。戒名授与の基礎となる |
念誦 | 故人の冥福を祈るための読経。参列者の心を整える側面もある |
引導 | 臨済宗の葬儀で最も重視される。導師が一喝し、太鼓などを打ち鳴らす |
形式的な葬送の儀式ではなく、故人を仏の道へと導く精神的な修行の場と考えられているのが特徴です。特に引導で、導師が大声で一喝するのが他の宗派との大きな違いです。
葬儀の構成としては、まず故人を仏弟子として送り出す「出家」の儀式を行い、その後に冥福を祈る「葬送」の儀礼へと続く、二つの段階で構成されます。
臨済宗の葬儀の流れ
臨済宗の葬儀も通夜から火葬までの大まかな流れは他の葬儀と変わりません。ここからは、各儀式の概要とともに、臨済宗ならではの葬儀・告別式当日の流れなどについて、具体的に紹介します。
通夜から葬儀・告別式までの一般的な流れ
臨済宗の葬儀も、他宗派と同様に「通夜」「葬儀・告別式」「初七日法要」の3段階で行われるのが一般的です。
それぞれの儀式に込められた意味や所作には、禅宗ならではの精神性が反映されています。
通夜
通夜は故人との最後の夜を静かに過ごす儀式です。導師が読経を行い、遺族や関係者が参列し、故人の冥福を祈ります。
葬儀・告別式(本葬)
葬儀・告別式は、仏弟子となるための「授戒」、冥福を祈るための読経(念誦)、故人を送り出す引導法語の3つの要素が中心となります。
引導は、導師が大声で「喝」と唱え、太鼓やシンバルのような打楽器を鳴らします。会葬者は焼香をし、故人とお別れをします。
初七日法要
亡くなった日を1日目として、6日後を初七日とするのは他宗派と同様です。初七日法要は本来死後7日目に行うものですが、葬儀当日に繰り上げて行うケースが一般的です。
葬儀・告別式での流れ・式次第
臨済宗の葬儀・告別式の、導師入場から出棺まで、一般的な流れは以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
導師入場 | 僧侶(導師)入場。儀式の開始 |
剃髪(ていはつ) | 故人の頭を剃ることで仏弟子としての出発を象徴(形式のみであることが一般的) |
懺悔文(さんげもん) | 生前の罪を悔い、浄化を祈る言葉を唱える |
三帰戒文(さんきかいもん) | 仏・法・僧の三宝に帰依することを誓う文言 |
三聚浄戒(さんじゅうじょうかい) | 戒律の中心となる三つの戒めを誓う |
入龕諷経(にゅうがんふぎん) | 故人を棺に納める儀式で唱えられる経 |
龕前念誦(がんぜんねんじゅ) | 棺の前で行う読経。故人の冥福を祈る |
鎖龕諷経(さがんふぎん) | 棺を閉じる際に唱える経 |
起龕念誦(きがんねんじゅ) | 棺を動かす(出棺する)前に唱える読経 |
山頭念誦(さんとうねんじゅ) | 火葬場へ向かう前に唱える経(地域により異なる) |
引導 | 導師、引導法語の読み上げ。一喝し、故人を送る。鳴り物を使うこともある |
焼香・出棺 | 会葬者焼香。最後の別れを告げた後、喪主の挨拶、出棺 |
導師退場 | 導師退場、終了 |
臨済宗の葬儀における作法とマナー
臨済宗の葬儀での作法やマナーを解説します。以下の表は、線香や焼香を、同じ禅宗である曹洞宗と、最も葬儀数が多いとされている浄土真宗と比較したものです。
臨済宗 | 曹洞宗 | 浄土真宗 | |
---|---|---|---|
線香の本数 | 1本を立てる | 1本を立てる | 1本を折って寝かせる |
焼香の回数 | 1回が基本(3回の場合もあり) | 2回が一般的 | 本願寺派(西本願寺)は1回、真宗大谷派(東本願寺)は2回 |
焼香の所作 | そのまま落とす | 1度めは押しいただき、2度目はそのまま落とす | そのまま落とす |
数珠の形状 | 108玉の二重の念珠 | 臨済宗の念珠と同様二重金属の輪が特徴 | 蓮如(れんにょ)結びと呼ばれる房が特徴 |
ただし、地域や宗派によっても作法は異なるので、注意が必要です。
焼香の作法
臨済宗の焼香は、通常1回です。三本の指で摘まみ上げた抹香はそのまま香炉にくべ、額に押しいただく作法は行わないません。これは「形より心を重んじる」という禅宗の教えに基づいています。地域や寺院によって異なることもあります。
線香
臨済宗では、線香は1本をまっすぐ立てて供えるのが基本です。葬儀や法要の際は、儀式が始まる前に線香に火を灯してお供えします。
火はろうそくでつけ、手であおぐか、線香を軽く振って消すのが作法とされており、息を吹きかけて消すのはマナー違反とされています。
数珠
臨済宗では、看経念珠(かんきんねんじゅ)と呼ばれる108個の玉をつないだものが正式な念珠です。参列の際、違う宗派の数珠を持って参列しても、マナー違反とはなりません。
香典
臨済宗の香典のマナーは、ほかの宗派と同じです。表書きは、通夜・葬儀では「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」とします。葬儀の場合は薄墨で、水引きの下段には名前を書きます。香典には新札を使わないのもマナーです。
そのほか、香典の金額や送り方など、以下の記事でさらに詳しく解説しています。必要な方はぜひご確認ください。
臨済宗のお布施と戒名の相場
臨済宗の葬儀では、お布施と戒名料が大きな費用項目となります。ここでは、それぞれの相場や考え方についてご紹介します。
お布施の相場
臨済宗のお布施の相場は15~50万円が一般的とされています。
お布施は、葬儀を執り行う導師(僧侶)への感謝を表す謝礼であり、決まった金額があるわけではありません。葬儀を行う際には、お布施のほかに、お車代やお膳料、戒名料などが別途必要になることがあります。
葬儀を葬儀社に依頼する場合、葬儀社に支払う費用と導師(僧侶)へ渡すお布施は別のものです。
弊社、「1日葬・家族葬のこれから」では、臨済宗の葬儀にも対応しており、不要なものを省いたお得なセットプラン料金で全国に葬儀を提供しています。事前のご相談から24時間365日無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
なお、お布施の金額相場、マナーなどについて詳しくは以下の記事で紹介しています。
戒名の相場
臨済宗では葬儀の際に故人に戒名が授けられます。戒名をいただくことによって、故人が仏弟子となることを表わします。
戒名にはランクがあり、文字数や使われる漢字によって金額が異なります。戒名の費用相場は以下のとおりです。
戒名のランク | 費用の相場 |
---|---|
信士・信女 | 30~50万円 |
居士・大姉 | 50~80万円 |
院居士・院大姉 | 100万円以上 |
戒名の内容やランクは、故人の生前の人柄や希望、家族の意向などによって変わります。事前に菩提寺に相談しておくと安心です。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」では、菩提寺などお寺とのお付き合いがない方に、全国一律価格で僧侶を手配いたします。戒名、お車代や心付けなども全て含まれた定額の手配料金ですので、安心してご依頼ください。
戒名の考え方や、ランクの違いなど、さらに詳しくは以下の記事で解説しています。
臨済宗の葬儀を理解し、不安なく故人を見送ろう
臨済宗の葬儀では、表面的な形式ではなく、「心のこもった祈り」や「故人を仏道へ導くこと」を重視します。授戒・念誦・引導といった重要な要素には、深い宗教的な意味が込められています。
また、線香の立て方や焼香の作法、数珠の使い方など、他宗派とは異なる点もあるため、これらを理解しておくと、安心して臨めます。不安な点がある場合は、葬儀社や菩提寺に相談するとよいでしょう。
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