直葬はお通夜や葬儀式がないうえ、仏教儀式を行わないため僧侶を呼びません。葬儀全体が簡略化され、費用を抑えられる一方で「戒名は付けてもらった方がいいのでは?」と、悩む人もいるでしょう。
この記事では、直葬で戒名をつける必要があるケースと、つけなくてもいいケースについて解説していきます。戒名に関する世間の考え方や、つけない場合のデメリットについても紹介していますので、参考にしてみてください。
なお、直葬の流れ・費用などに関しては以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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戒名の意味や目的
戒名とは、仏弟子になった証として与えられる名前のことで、元々は出家者だけに与えられていたものです。出家していない人でも迷わず極楽浄土へ行けるようにと、亡くなった人にも戒名をつけるようになりました。
宗派によって「法名」「法号」と表わすこともあり、戒名には以下のような位号(ランク)が存在します。
- 男性の場合:大居士、居士、信士
- 女性の場合:清大姉、大姉、信女
位号は、故人の性別や年齢、社会的地位や地域への貢献度などによって決定され、高額な戒名料を用意したからといって、希望するものを付けてもらえるわけではありません。
戒名を付けてもらった場合のお布施の相場は10~15万円で、位号の高いものとなると100万円を超えることもあります。
仏教における儀式であるため、全ての宗派に戒名があるわけではなく、必ず付けなければならないわけではありません。
戒名を不要だと思っている人の割合
保険クリニックが公表した「葬儀に関する調査結果」によると、葬儀で省略してもよいと思うこととして多かったのは、以下のような内容でした。(参考:一般葬より直葬、戒名は不要・・・お墓事情の最新版!「夫と同じお墓に入りたくない妻」は、「そもそもお墓に入りたくない人」だった!?|保険クリニック)
葬儀内容・仏教儀式 | 割合 |
---|---|
精進落とし | 60% |
白木位牌 | 59% |
戒名 | 54.2% |
法要・法事・お勤め | 54.5% |
香典・香典返し | 56.3% |
※40歳から60歳の男女各300名を対象に複数回答可でアンケートを実施した結果です。
最も多かったのは、精進落としで戒名に関しては3番目に多い結果でした。解答者数の半数以上が不要だと考えていることが分かります。
なお、希望する葬儀形式は53.8%で家族葬が最も多く、次いで直葬が15.7%、一般葬が14.5%という結果でした。
家族葬や直葬など、比較的小規模な葬儀を望む人が増えている傾向があるといえるでしょう。
戒名をつける必要があるケース
戒名は必ずつける必要がないと冒頭で解説しましたが、葬儀を執り行ううえで戒名が必要となるケースもあります。具体的には、以下のような場合です。
- お通夜や葬儀式を行う葬儀の場合
- 菩提寺などへ納骨する場合
なぜこのようなケースでは戒名が必要となるのか、葬儀事情にも触れながら解説していきます。
お通夜や葬儀式を行う葬儀の場合
仏教儀式と戒名の授与はセットとなっているため、家族葬や一日葬など、お通夜・葬儀式がある葬儀形式では戒名が必要です。直葬以外の葬儀も検討している場合は、理解しておきましょう。
ただし、家族葬の形式で無宗教葬を選択した場合は、仏教儀式がないため、直葬と同様に読経や戒名なしでも葬儀ができます。故人の要望などで葬儀形式や内容に指定がある場合は、葬儀社に相談するようにしましょう。
菩提寺などへ納骨する場合
葬儀後に菩提寺へ納骨する予定の場合は、戒名を付けなければならないことがあります。納骨するうえで、戒名をつけることを条件としているお寺が多いためです。
直葬のように仏教儀式を一切行わない葬儀をNGとしているお寺の場合、納骨するのであれば火葬場で読経や戒名をつけることを条件にしているケースがあります。
先祖のお墓を管理してもらっている菩提寺がある場合は、葬儀形式を選ぶ段階で相談しておくようにしましょう。直葬で戒名を付けてもらう方法は、後ほど詳しく解説していきます。
戒名をつけなくてもいいケース
菩提寺に納骨する場合は、戒名が必要となる可能性があると解説しましたが、戒名がなくても大丈夫なケースもあります。具体的には、以下のような場合です。
- 永代供養の納骨堂やお寺に納骨する場合
- 自然葬や公営の霊園に納骨する場合
なぜこのようなケースで戒名がいらないのか、各施設の特徴にも触れながら解説していきます。
永代供養の納骨堂やお寺に納骨する場合
永代供養や納骨堂にて納骨する場合は、戒名を刻む位牌や墓石がないので、戒名は必要ありません。
永代供養とは、寺院などが遺族に代わって遺骨を管理・供養することを指します。「子供に墓守りの負担をかけたくない」といった理由から、永代供養を希望する人も増えてきています。
納骨堂とは、お墓を建てることなく指定のスペースで遺骨を管理できる屋内施設です。納骨するうえで、特別な条件はないため戒名なしでも問題ありません。利用したい場合は、自分で希望するお寺や納骨堂に連絡するか、葬儀社に相談してみましょう。
自然葬や公営霊園に納骨する場合
自然葬とは、墓地や納骨堂などで遺骨を管理するのではなく、海や山などの自然に還す葬送です。具体的には樹木葬や海洋散骨といったものがあり、戒名に関する条件はありません。費用は20~100万円ほどです。
公営霊園も宗教に関する条件がないため、戒名なしでも納骨できます。各自治体が管理しており、民間霊園と比べて費用も安くなりやすいと言えます。公営霊園でお墓を購入する場合は、墓石の費用・永代使用料・管理費が必要です。気になる方は近くの公営霊園で検索してみてください。
直葬で戒名をつけないデメリット
戒名は、故人が極楽浄土へ迷わず行けるようにする仏教儀式の1つであり、必ず付けなければならないわけではありません。ただし、直葬で戒名をつけない場合、以下のようなデメリットがあります。
- 仏教を信仰する親戚などに反対される可能性がある
- 菩提寺との関係が悪くなる可能性がある
- 法事ができない可能がある
宗教信仰の強さは人によって異なるため「戒名なんていらない」と考える人もいれば「成仏できなくなる」と、戒名をつけないことに反対する人もいます。特に直葬はお通夜や葬儀式といった仏教儀式もないため、強く反対される可能性があります。
菩提寺も同様に、直葬や戒名なしの葬儀を良く思っていないことがあるため、勝手に判断してしまうと、関係が悪化する可能性があります。故人の意向と喪主の事情も重要ですが、なるべく事前に了承を得ておくようにしましょう。
直葬で戒名を付けてもらう方法
直葬で戒名を付けてもらいたい場合、葬儀に僧侶を呼ぶことも可能です。具体的な依頼方法は以下の3つです。
- 僧侶の派遣サービスに依頼する
- 近くの寺院へ依頼する
- 葬儀社に相談する
僧侶の派遣サービスとは、宗派やお寺の所在地を指定したうえで、該当した僧侶のなかから選んで戒名や読経を依頼できるサービスです。僧侶を呼んだ場合、炉前室で炉前読経を行って戒名を授けてもらうことも可能です。依頼料金にお布施代は含まれているため、別で用意する必要はありません。
近くに寺院がある場合は、直接連絡したうえで事情を話してみましょう。読経や戒名のみでも対応してもらえる可能性があります。近くの寺院であれば、その後の納骨や法事も行いやすくなるメリットがあります。
自分で比較したり、依頼したりするのが面倒な場合は、葬儀社に相談してみましょう。なお、生前に戒名を授っておくといった方法もあります。
戒名を付けた際のお布施
直葬で戒名を付けてもらった際のお布施は、10〜15万円を目安に準備しましょう。
火葬場に直接来てもらう場合は、別にお車代として5,000円を目安に準備します。渡すタイミングに明確なルールはなく、火葬場に到着した時か帰えられる時に渡しましょう。
前述したとおり、僧侶の派遣サービスを利用すれば、利用料金にお布施代も含まれているため、別で用意する必要はありません。直葬におけるお布施のマナーに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はチェックしてみてください。
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戒名に関するよくある質問
最後は、戒名に関する3つのよくある質問に答えていきます。戒名の必要性や費用の工面などに関する質問に触れているので、直葬で戒名を付けるかどうかを判断するうえで参考にしてみてください。
戒名なしでは成仏できない?
戒名があれば、供養がスムーズに行われるため成仏への道を助けてくれると言われていますが、戒名なしでも成仏はできます。そのため、必ず葬儀へ僧侶を呼ばなければならないわけではありません。
なお、葬儀における読経にも故人を極楽浄土に導く目的がありますが、読経しないから成仏できないわけでもありません。ただし、成仏とは別に戒名や読経なしでは納骨できない可能性があるため、注意が必要です。
遺族や親戚の意見も取り入れながら、読経や戒名を依頼するか決めましょう。
戒名をつけるお金がない場合の対処方法は?
戒名や葬儀費用のお金がない場合は、葬儀ローンやクレジットカード支払による分割ローンを検討してみましょう。審査を通過する必要はありますが、前払いすることなく葬儀費用を工面できます。故人の生命保険を利用する方法もあります。
前払いできるのであれば、葬儀後に「葬儀費用の補助制度」を活用することで、葬儀費用の一部が返ってきます。葬儀費用のお金がない時の対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はチェックしてみてください。
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戒名は後からつけられる?
直葬で戒名をつけなかったことを後から後悔しないか悩む人もいますが、戒名は葬儀後に付けてもらうことも可能です。戒名をつける期限はなく数年経ってからでもお寺に依頼することで付けてもらえます。また、戒名の変更も可能です。
直葬を戒名なしで進めてしまい、後悔していたり周りから指摘されている場合は、お寺に相談してみましょう。ただし、全てのお寺が対応してくれるというわけではなく、断られる可能性もあります。
戒名の必要性を理解したうえで依頼するか判断しましょう
戒名は、故人が迷うことなく極楽浄土へ行けるようにするためのものですが、必ず付けなければならないわけではありません。宗教観の変化に伴い、自身の葬儀で戒名は不要と考える人も増えてきています。一方で、葬儀では読経や戒名が必要と考える菩提寺もあり、葬儀自体は問題なく執り行えたとしても、納骨を断られる可能性があります。
直葬を依頼する場合は、戒名の依頼や葬儀の内容について、親戚や菩提寺になるべく相談しましょう。どうしても理解を得られない場合は、一日葬や家族葬といった形式の検討をおすすめします。
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