病院で亡くなった場合、末期の水・ご遺体の処置・清拭などの一連の流れを終えたら浴衣に着替えるのが一般的です。
今回は、病院で亡くなったときの着替えについて知りたい方向けに、亡くなった後の浴衣の着方やエンゼルケアについて詳しく解説します。いざというときに冷静に対応できるよう、身繕いやエンゼルケアの流れを知っておきましょう。
この記事を要約すると
- 病院で臨終を迎えたら、ご遺体の処置を行った後に病院が用意した浴衣に着替えさせるのが一般的です。着替えの際は、浴衣の襟は右前にして着付けるようにしましょう。
- 遺族や故人の希望があれば、浴衣ではない衣服を身につけさせることも可能です。病院のスタッフに事前に相談のうえ、衣服を持ち込むようにしてください。
- 病院で亡くなった後は、着替えのほかにも傷跡の処理・清拭・死化粧などのさまざまなケアを施します。遺族が参加できる処置もあるので、故人への生前の感謝を込めて行いましょう。
なお、以下の記事では病院で亡くなってから納棺までの流れや葬儀前に必要な手続きについて解説しています。こちらもあわせて参考にしてみてください。
病院で亡くなったら浴衣に着替える
入院中の方や搬送された方が病院で亡くなったら、ご遺体にさまざまな処置を施した後に浴衣に着替えさせるのが一般的です。
こちらの浴衣は、ご遺体を安置所へ搬送する際から納棺の際に死装束へ着替えさせるまでの間に着用させるもので、浴衣一式は病院側が用意してくれます。浴衣は病院から買い取る形になるため、退院時に精算されます。
浴衣の襟は右前にして着せる
亡くなった後に身につける浴衣は、男女を問わず襟を右前にするのがマナーです。こちらは、一般的な浴衣や着物の着付けと同じ向きになります。
右前とは、右の襟が上になるように重ねるのではなく、相手から見たときに右側の襟が上になるように重ねるという意味です。そのため、故人の体に近いのは故人からみて右側の襟になります。
なお、納棺の際に身につける死装束は襟を左前にするため、こちらと混同しないように注意しましょう。
好きな服を着せられる場合もある
亡くなった後に身につける衣服は、必ずしも浴衣でなければいけないという決まりはありません。遺族が希望すれば、故人が生前愛用していた服を身につけさせることも可能です。
ただし、病院によっては遺族の持参した服装に着替えさせることができないケースもあるため、浴衣以外の服装を希望する場合は事前に相談しておくことをおすすめします。
納棺のときは死装束を着せる
病院からご遺体安置所に搬送される際は浴衣を身につけますが、納棺の際にあらためて白い死装束に着替えるのが一般的です。死装束は仏教における装いで、あの世への旅立ちのための服装とされています。
死装束にはさまざまな副葬品や備品があり、着方にも作法があるため、葬儀社スタッフの先導の元着替えを行うようにしてください。
また、故人や遺族が希望すれば、死装束以外の服装を身につけることも可能です。近年は故人が生前に身につける服装を選んでおき、愛用していた服や着物、華やかなエンディングドレスなどを着用する人も増えています。宗教にこだわりのない方は、浴衣を身につけたままというケースもあるようです。
なお、納棺時の服装に明確なルールはありませんが、殺生を連想させるレザーや毛皮を用いた服や火葬の際に燃えずに残ってしまう素材の服は好ましくありません。
エンゼルケアとは
エンゼルケアとは、病院で亡くなった直後に看護師によって施される一連のご遺体の処置を指します。医療器具の取り外し・傷と体液の処理・清拭・着替え・死化粧などを遺族の立ち会いの元行い、故人が安らかに旅立てるよう丁寧なケアを行います。
エンゼルケアは保険適用外の処置となるため、退院時に5千円〜2万円程度の費用が請求されます。なお、エンゼルケアは病院だけでなく葬儀社で依頼することも可能ですが、葬儀社で行うエンゼルケアは病院よりも割高になるため注意が必要です。
エンゼルケアの目的
エンゼルケアには、故人の身だしなみを整えて尊厳を守る目的のほか、感染症予防や遺族の心のケアなどの意味合いも込められています。
故人の尊厳を守る
エンゼルケアの目的として1番に挙げられるのが、故人の尊厳を守るということです。長い闘病生活を送っていた方のなかには、頻繁に入浴や着替えができない事情を抱えていた方も珍しくありません。
遺族とのお別れの前に一度体をきれいに整えることで、清潔な状態で葬儀に臨むことができます。エンゼルケアには、故人が気持ちよく旅立てるようにという想いが込められています。
遺族の心のケア
故人の体を清潔にし、身だしなみを整えることは、遺族の心のケアにも繋がります。エンゼルケアでは、故人が元気だった頃の姿や表情に近づけられるよう、痩せた頬に脱脂綿を詰めたりメイクを施したりします。エンゼルケアを行った後は、故人の懐かしい姿を久しぶりに見られるかもしれません。
また、一連のエンゼルケアの処置のなかには、遺族が手伝えるものもいくつかあります。故人の体を整えながら、生前の感謝を伝えたり思い出を振り返ったりする時間を過ごせるでしょう。
感染症の予防
エンゼルケアでは全身の消毒や清拭を行うため、ご遺体の腐敗や感染症も予防できます。
ご遺体をそのままにしておくと、鼻や口から体液が漏れ出たり、腐敗によって病原菌が活発化したりすることが考えられます。遺族や参列者が安全に葬儀に参加するためには、葬儀を行うまでの間ご遺体が清潔に保たれるよう、丁寧にケアをすることが大切です。
エンゼルケアの流れ
ここからは、病院で亡くなった際のエンゼルケアの流れを詳しく解説します。エンゼルケアでは、はじめに体にある傷の処置やケアを行い、清拭や着替えによって体を清潔な状態へと整えていきます。
医療器具を外す
故人が臨終を迎え、死亡確認がなされたら、治療のために装着していた点滴・ドレーンチューブ・心電図モニター・人工呼吸器・ペースメーカーなどの医療器具を看護師が取り外します。
傷・治療痕・体液・内容物の処置
医療器具を取り外したら、体にある傷や治療痕を縫合したり、ガーゼで覆ったりする処置を施します。
また、亡くなった後は口腔・鼻腔・肛門などから体液や内容物が漏れ出る可能性があります。ご遺体を清潔に保つために、口腔・鼻腔内に詰まっている体液の吸引や胃の中の内容物や便・尿の排出も行います。
口腔内のケア・綿詰め・口を閉じる
続いて、周期を防止するために口腔内のケアを行います。スポンジやガーゼにアルコールを含ませて歯や口腔内を消毒し、口腔から体液が漏れ出ないように消毒液を含ませた脱脂綿を喉の奥に詰めます。
亡くなった方の口元はそのままにしておくと開いてしまうため、専用の器具を用いたり頭の角度を調整したりして、口を閉じた状態にします。
清拭
清拭(せいしき)は、故人の体をアルコールを含ませたタオルやガーゼで拭き清める儀式です。こちらの処置は遺族が参加できる場合も多いため、故人への感謝の気持ちを込めながら丁寧に拭き上げましょう。
全身を清めてきれいにしたら、鼻腔・耳・肛門などから体液が漏れ出るのを防ぐために、それぞれの穴に脱脂綿を詰めます。
着替え
全身を清潔に整えたら、納棺までの間に着用する衣服へと着替えを行います。下半身にはオムツを着用させ、病院が用意した浴衣や遺族が持ち込んだ衣服に着替えさせます。
亡くなってから数時間以上が経過すると死後硬直によって着替えが難しくなるため、できるだけ早く着替えを済ませられるとスムーズです。
死化粧
死化粧はエンゼルメイクとも呼ばれ、故人の顔にメイクを施すことで生前の明るく安らかな表情を作り出す目的があります。
はじめにシャンプーやブラッシングで髪を整えたり髭を剃ったりした後に、ファンデーション・チーク・リップなどを用いて自然な血色感を引き出します。長い闘病生活によって頬がやつれている場合は、頬に脱脂綿を詰めてボリュームを出します。
なお、遺族の希望があれば、故人が生前愛用していたメイク道具を使用してメイクをすることも可能です。事前に病院のスタッフに相談をして、最後のメイクをきれいに施しましょう。
手を整える・冷却
最後に、故人の手元を固定して体をドライアイスで冷却します。爪を短く整え、「合掌バンド」という固定器具で手を胸の前で合掌する形に固定します。
手元を整えたら、ご遺体の腐敗が進まないよう、首・腹部・腕の胴の間の数カ所にドライアイスを置きます。ご遺体の安置期間や季節にもよりますが、ドライアイスは葬儀社のスタッフが定期的に交換し、清潔な状態を保ちます。
布をかける
エンゼルケアにおける一連の処置がすべて完了したら、体を白いシーツで覆い、顔の上に白い布をかけます。こちらの工程をもって、エンゼルケアが終了します。
よりしっかりとした処置を行いたい場合はエンバーミングを
長い闘病生活によって顔がやつれてしまったり、体に大きな損傷や外傷があったりする場合は、「エンバーミング」という処置を施すこともあります。エンバーミングでは、ご遺体の消毒・殺菌に加え、損傷部分の修復も行います。
亡くなる前後で大きく見た目が変化してしまった方でも、エンバーミングによって元気だった頃の姿へと近付けることができるでしょう。こちらの処置は専門のエンバーミング業者や湯灌師によって行われるため、追加の費用が発生します。
亡くなった故人をいたわりながらお別れの準備をしましょう
入院中の方や搬送された方が病院で亡くなったら、病院が用意した浴衣に着替えるのが一般的です。亡くなった後は着替えのほかにも清拭や死化粧などのさまざまなケアを施し、ご遺体を清潔な状態へと整えます。
これらのエンゼルケアのなかには遺族が参加できる儀式もあるため、故人への感謝を伝える場として参加してみてはいかがでしょうか。
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