神式葬儀の流れやマナー｜香典袋や服装の正しい選び方を解説

日本では仏教葬が一般的ですが、日本古来の宗教である神道をもとにした神式による葬儀が執り行われることもあるでしょう。神道とは自然や先祖を敬う日本固有の宗教で、八百万の神々を崇拝対象としています。

神道と仏教では崇拝対象や考え方が異なるため、葬儀の流れやマナーにも違いがあります。神式での葬儀に参列予定で「参列マナーや作法が分からない」という方もいるのではないでしょうか。

この記事では、神式による葬儀の流れや参列マナーを中心に解説します。儀式の作法や香典袋のルールを理解し、心を込めて参列しましょう。

神式（神葬祭）とは

神式の葬儀である「神葬祭（しんそうさい）」とは、亡くなった方を先祖とともに家庭の守り神として祀るための儀式です。神道は自然や先祖を敬う日本固有の宗教であり、あらゆる自然物や現象を「八百万（やおよろず）の神々」として崇拝します。

この考えに基づき、神葬祭では故人を神の世界に送り出し、家族を守る神として迎え入れます。葬儀は自宅や式場で行うのが一般的で、神社で執り行われることは基本的にありません。

葬儀の内容は仏教葬とは大きく異なり、特徴的な儀式の1つに「玉串奉奠（たまぐしほうてん）」があります。榊（さかき）の枝に紙垂（しで）がついた玉串を祭壇に捧げ、祈りを故人や神に届ける儀式です。

故人には「諡（おくりな）」という名前が授けられ、神の世界で使う名前となります。神式は神道の理念に基づいた独特の形式を持ち、故人を守り神として祭る深い意味を持つ儀式です。

神式（神葬祭）の流れ

前述の通り、仏教と神道では崇拝の対象などが異なるため、一般的な仏教葬にあるお通夜や告別式は行われず、流れにも違いがあります。

ここでは、逝去した日から葬儀が終るまでの流れについて「逝去した日・神式1日目・神式2日目」に分けて解説します。

逝去した日の流れ

神道に基づいた神葬祭では、逝去した日から儀式が始まります。逝去した日は「故人の死を神に奉告し、故人を敬い送り出すための儀式」が行われます。

1.帰幽報告（きゆうほうこく）

故人の逝去を受けて、神棚や祖霊舎（仏教でいう仏壇）にその死を奉告します。神棚は神封じとして扉を閉じ、白い半神を貼ります。これは神棚に穢れが及ばないようにするための措置です。

2.枕直しの儀

ご遺体に白い小袖を着せて北枕に寝かせます。この際に、祭壇を設けてお米、水、酒を備えます。これは故人を敬い、神道のしきたりに基づいて準備を整えるための儀式です。

3.納棺の儀

ご遺体を棺に納め、白い布で覆った後に拝礼を行います。この拝礼により個人に対する感謝と祈りを捧げます。

納棺の儀は、仏教葬でも行われますが、目的が異なります。仏教では故人の魂が仏教の教えに基づいて極楽浄土に旅立つ準備を整えるための儀式である一方、神道では、故人が家庭の守り神として祀られる準備を整えるための儀式です。

仏教における納棺の目的や流れについては、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。

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神式1日目の流れ

神式葬儀の1日目は、仏教式のお通夜に相当する「通夜祭り」と、故人の霊を霊璽（れいじ）へ移す「遷霊祭（せんれいさい）」が行われます。具体的な流れは以下の通りです。

1.通夜祭（つやさい）

通夜祭では、故人の魂を敬い遺族や参列者が祈りを捧げます。神職が祭詞を奏上し、遺族や参列者は玉串（たまぐし）を祭壇に奉って礼拝を行います。玉串奉奠と呼ばれ、仏教式の焼香に相当する儀式です。

2.遷霊祭（せんれいさい）

通夜祭の後は遷霊祭が執り行われます。故人の霊を霊璽（仏教でいう位牌）へ移す儀式で、御霊移し（みたまうつし）とも呼ばれます。部屋を暗くして、神職の祈りの中で霊璽が神聖なものとして扱われ、儀式以降は、霊璽が故人を祀る対象となります。

神式2日目の流れ

神式葬儀の2日目は、仏教式の告別式に相当する「葬場祭（そうじょうさい）」が執り行われ、火葬や埋葬、帰家祭（きかさい）まで進められます。具体的な流れは以下の通りです。

1.葬場祭（そうじょうさい）

故人に別れを告げる主儀式で、神職が祭詞を奏上し、参列者は玉串を奉り拝礼します。弔事や弔電の読み上げも行われ、故人を偲ぶ時間となります。

2.火葬祭（かそうさい）

火葬場で行われる儀式で、神職が祭詞を奏上し、参列者が玉串を奉り故人への祈りを捧げます。

3.埋葬祭（まいそうさい）

遺骨をお墓に納める儀式で、銘旗や花を供えて故人を先祖とともに祀ります。

4.帰家祭（きかさい）

帰宅後、家族が穢れを祓い、神棚に神葬祭の終了を奉告します。その後、神職の方や葬儀を手伝ってくれた方の労をねぎらう直会（なおらい）という宴を振る舞います。

逝去した日に閉じた神棚の封印は、納骨を済ませた後、没日から50日目に解かれます。

神式で行われる「手水の儀」の作法

「手水の儀（ちょうずのぎ）」は、参列者や遺族が儀式に参加する前に身を清めるためのものです。神道では穢れを祓い、清浄な状態で神事に臨むことが重視されます。手水の儀は式場に手水舎や用意された水がある場合に行います。

参列者全員が儀式に臨む前に行うのが習わしですが、近年では設備が用意されず省略されることもあります。

神式で行われる「玉串奉奠」の作法

神式の中で行われる「玉串奉奠（たまぐしほうてん）」は、故人や神に祈りを捧げる重要なものです。玉串とは、榊（さかき）の枝に紙垂（しで）がついたもので、神と人を結ぶ象徴とされています。

玉串奉奠は通夜祭や火葬祭りなどで行われ、その意味が異なります。ただし、作法に違いはありません。

神式の参列マナー

神式と仏教葬では考え方が異なるため、参列する際のマナーにも違いが異なります。具体的には以下のポイントに注意が必要です。

• 礼拝とお悔やみの言葉に関するマナー
• 服装のマナー

これらの内容を理解したうえで参列するようにしましょう。

礼拝とお悔やみの言葉に関するマナー

礼拝に関しては、神式葬儀の流れで解説した通り「玉串奉奠（たまぐしほうてん）」という儀式の作法を覚えておくことが大切です。また、近年は省略されることが多いものの「手水の儀（ちょうずのぎ）」も葬儀前に行われるため、作法を覚えておきましょう。

お悔やみの言葉に関しては、神道では故人は家の守り神になると考えられており「成仏」や「供養」といった仏教用語は適切ではありません。そのため「ご冥福をお祈りいたします」ではなく「御霊（みたま）の御平安をお祈りいたします」と表現しましょう。

ちなみに、神道に限った話ではありませんが「忌み言葉」にも注意が必要です。

• 不幸が重なることを連想させる：重ね重ね・次々・ますます
• 不幸が続くことを連想させる：再び・引き続き・追って
• 不幸や別れを連想させる：終わる・四（死）・九（苦）

これらの言葉は使わないようにしましょう。

服装のマナー

神式葬儀の服装は、仏式と特に変わりはありません。一般的な葬儀の服装マナーだけ理解しておくようにしましょう。喪服に関する主なマナーは以下の通りです。

男性の服装	⚫︎黒や濃紺のスーツに白いシャツ、黒いネクタイを着用する ⚫︎靴は黒色の革靴で、光沢のあるデザインは避ける
女性の服装	⚫︎黒や濃い色のワンピース、スーツにする ⚫︎露出が少なく、袖やスカートの丈が長いものにする ⚫︎靴は黒のパンプスで、ストッキングも黒色のものを着用する
アクセサリー	⚫︎過度な装飾は避け、シンプルなものを選ぶ ⚫︎身につける場合は、パールのネックレスやイヤリングなどの控えめなものを選ぶ。2連のパールは不幸が重なることを意味するため、避ける

葬儀の服装マナーは、下記記事で詳しく解説していますので、気になる方はチェックしてみてください。

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神式における香典袋の種類や表書き

神式の葬儀では、仏式の香典にあたる「玉串料」を持参します。この玉串料は、故人への祈りを込めた金銭を包むもので、仏式の香典と同じく親族や関係性によって金額が異なります。

• 会社関係者や友人：5,000円
• 祖父母：1～3万円
• 兄弟姉妹：3～4万円
• 親：5～10万円

神式における香典袋は無地の袋を選び、水引は黒白・双銀・双白のものを使用しましょう。蓮の花が描かれたものは仏式となります。

香典袋の表書きは「御神前」が一般的ですが「御玉串料」「御榊料」なども使用可能です。葬儀以外の霊祭や式年祭も同様の表書です。

神式（神葬祭）の葬儀費用相場

神式の葬儀である神葬祭の費用相場は、80〜140万円とされています。特別なオプションを依頼しない限り、仏教式の葬儀と大きな差はないといえるでしょう。

この費用には、葬儀を行うための基本的な費用（祭壇・棺・ドライアイス・搬送料）やおもてなし費用（料理・返礼品）が含まれています。これとは別に、神式では宮司に対する謝礼が別途必要です。

神式の葬儀費用は地域差があり、葬儀社によって葬儀プランのサービス範囲や内容が異なります。できるだけ事前に複数の葬儀社から見積もりを取り、比較検討したうえで決めるようにしましょう。

神式が終った後の法要

神式では、仏教の法要に変わる儀式として「霊祭」と「式年祭」を行います。霊祭は命日から1年未満に行われる儀式の総称で、翌日祭や五十日祭などがあります。

式年祭は命日から1年以上経過した後に行われるもので、一年祭や三年祭などがあります。これらの儀式は故人の霊を慰め、家族が故人を偲ぶための重要な機会です。

神式では、故人が氏神となり子孫を守る考えから自宅や葬祭会場でお子遭われるのが一般的で、神社では行われません。

霊祭の種類

神式の「霊祭」には以下のような種類があります。

霊祭の名称	法要の概要と特徴
翌日祭	葬儀を無事に執り行えたことを報告する儀式
十日祭	仏式の初七日に相当し、神職を招いて儀式を執り行う
二十日祭／三十日祭／四十日祭	一般的に家族のみで行い、省略される場合がある
五十日祭	仏式の四十九日に相当する儀式で、忌明けになる重要なもの。神職を招いて、神棚や祖霊舎の白い紙を剥がす「清祓いの儀（きよはらいのぎ）」が行われる
合祀祭	故人を祖霊舎に移し、家の神々として祖霊と合祀する儀式。五十日祭と一緒に行われることが多い
百日祭	一般的に家族のみで行い、省略される場合がある

霊祭は、故人を敬いその魂を祀るために行われる儀式で、節目ごとに実施されます。特に五十日祭は忌明けを示し、神棚や祖霊舎の扱いが変わる重要な儀式です。

また、霊祭は故人を偲びつつ家族の絆を深める場でもあり、それぞれの儀式に特有の意味があります。

式年祭の種類

神式の「式年祭」には以下のような種類があります。

式年祭の名称	法要の概要と特徴
一年祭	仏式の年忌法要に相当し、神官を招いて祭詞を奏上してもらう。親族や友人などを招いて行う
三年祭	一年祭と同様に、神官を招いて祭詞を奏上してもらう
五年祭	身内だけで行うのが一般的で、神官を招いて執り行う
十年祭	五年祭と同様の形式で、身内のみで執り行う
五十年祭	弔い上げとして終了する場合が多い。式年祭を続けてきた場合、この節目で祖霊が完全に家の神として祀られることを意味する

法要に参列する際にも「冥福・成仏・供養」といった仏教用語は避けるようにしましょう。また、神式の儀式では数珠は必要ありません。

神式（神葬祭）に関するよくある質問

神式の葬儀「神葬祭」について解説してきましたが、まだまだ疑問に感じていることがある方もいるでしょう。

ここでは、神式に関する5つのよくある質問に答えていきます。作法やマナーに関する内容ですので、理解したうえで参列するようにしましょう。

挨拶などで使ってはいけない言葉はある？

人の死後に関する考え方は神式と仏教で異なります。そのため、葬儀で身内に挨拶する際は「ご冥福をお祈りいたします」「お悔やみ申し上げます」といった内容は避けるようにしましょう。

神式では「御霊（みたま）の御平安をお祈りいたします」が適切な挨拶です。また「冥福・供養・成仏」といった仏教用語の使用も避けましょう。

神式で焼香はある？

神葬祭では、仏式のように焼香やお線香はあげずに「玉串奉奠」を行います。玉串を捧げたあとに、二礼・二拍手・一礼します。神葬祭における拍手は音を立てないように手を合わせる忍び手にしましょう。

神式の葬儀における「献米」のやり方と作法は？

神葬祭では、御神前に玉串をお供えしますが、近年は式進行の都合などにより、遺族は玉串、一般参列者は献米をお供えする傾向にあります。

斎場に洗米が入ったお皿が用意されており、参列者は右のお皿から少しつまんで左のお皿へと移し、二礼二拍手一礼します。

神式の葬儀で用意するお供え物のマナーは？

神道におけるお供え物は「神饌（しんせん）」と呼ばれ、代表的なものとして、酒や米、塩があります。また、故人が好きだったもののお供えもできます。ただし、トゲのある花や香りの強い花などは、マナー違反になるため避けましょう。

神道では、神様の力を分けてもらう意味も込めて、一度神様にささげたものをみんなで分けて食べる「直来（なおらい）」といった行事があります。

神主へのお礼はどうしたらいい？

神式の葬儀を執り行った場合、神主へのお礼として「祭祀料（さいしりょう）」を渡します。祭祀料の相場は、神主を1人呼んだ場合は20〜30万円、2人の場合は30〜50万円が相場です。

葬儀後の霊祭に関しては、3〜5万円が相場です。白無地の封筒で郵便番号が印字されていないもので、のしが付いていない封筒を選びます。香典ではないため、薄墨を使用せずに濃い墨の筆ペンで記入しましょう。

表書きには「御祭祀料」や「御祈祷料」などと記載するようにします。神主と神官がいる場合は、別々で用意するのがマナーです。

神式の流れやマナーを事前に理解しておくことが大切

日本古来の神道では、故人を神の世界に送り出し、家族を守る神として迎え入れる考えがあり、日本で一般的な仏教葬とは葬儀に対する考えや内容が異なります。

神道の儀式は、故人が逝去した日から始まり、神葬祭は2日に分かれて執り行われます。儀式に参加する前の手水の儀や、焼香にあたる玉串奉奠には、決まった作法があるため、今回紹介した内容を覚えておくようにしましょう。

また、お悔やみの言葉などにもマナーがあります。神道の考えを理解したうえで正しく故人を弔えるようにしておきましょう。

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