多様化が進む現在の日本ではさまざまな葬儀の形式が広まっており、火葬のみを行うシンプルな直葬を希望する方も増えています。しかし仏事を執り行わない直葬では、火葬後の遺骨の対応に困ることも少なくありません。
宗教儀式に懐疑的だったり、金銭的な余裕がなかったりするケースでは、遺骨はいらない方や誰かに処分してもらいたいと考える方もいるでしょう。
今回は、火葬後の遺骨がいらない方に向けて遺骨の正しい処理方法について解説します。遺骨を処理する際の注意点もあわせて解説するので、直葬後の遺骨の扱いに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
なお、直葬についておさらいしたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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この記事を要約すると
- 遺骨がいらない人が増えてきている理由は、「子どもの負担を避けるために墓じまいしたい」「宗教にこだわりがない」といった背景があります。
- 火葬後の骨がいらない場合の対応策は、「火葬場に引き取ってもらう」「遺骨を焼き切る」「海洋散骨をする」などが挙げられます。しかし、地域によっては対応出来ないため、事前に確認しましょう。
- お墓以外で遺骨を整理する際の注意点は、散骨する場所は法律で定められているため、勝手に散骨せずに業者に任せるなどルールに従いましょう。また、宗教心のある親族と揉める可能性があるので、事前に確認の上進めましょう。
そもそも火葬後の遺骨がいらないと思う背景
そもそも火葬後の遺骨がいらないと思う背景としては、以下のような要因が挙げられます。
- 宗教的なこだわりがない
- 経済的に苦しい
- 故人と親しくない
- お墓がない
- お墓の納骨スペースが限られている
- 菩提寺から納骨を断られてしまった
- 墓じまいをする予定がある
具体的な内容は次のとおりです。
宗教的なこだわりがない
宗教的なこだわりがない場合、火葬後の遺骨は不要だと考える傾向が見られます。
遺骨の供養は宗教儀式にあたるため、無宗教の方にとって納骨は無意味に思えます。費用と手間をかけてまでお墓に納める必要性は感じられないでしょう。
また、遺骨がいらないと考えるのは遺族だけでなく、生前の故人が考えることもあります。納骨を拒否する趣旨の遺言を遺す方もいるようです。
経済的に苦しい
経済的に苦しいことも遺骨がいらないと思う一因です。
遺骨の供養にはお金がかかります。特に新たにお墓を建てて納骨する際にはまとまった資金が必要となるため、遺骨を不要だと感じる傾向が見られます。
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故人と親しくない
故人と親しくないケースでも遺骨はいらないと考えることがあります。
他に身寄りがない遠縁が亡くなった場合、役所や警察からの連絡でご遺体やご遺骨の引き取りを依頼されることがあります。故人と面識すらないことや、家族であっても長らく音信不通や絶縁状態だったケースもあるでしょう。
このような背景がある場合、火葬で弔いはしても、先祖代々のお墓に故人を納骨するのには抵抗を覚えるものです。新たにお墓を建てるハードルも高いため、遺骨は不要と感じることがあります。
お墓がない
菩提寺や先祖代々のお墓を持っていない場合は、故人が親しい家族であっても遺骨をどうすればよいか悩むことがあります。
費用や立地などの問題から、お墓は簡単に用意できるものではありません。予算が確保できなかった場合や故人が急逝したような場合は、対処法がわからず遺骨を不要だと感じる可能性があります。
お墓の納骨スペースが限られている
先祖代々のお墓を所有していても、お墓の中の納骨スペースが飽和状態であれば、遺骨はいらないと感じることがあります。
お墓の中の空間には限りがあり、無限に収骨できるわけではありません。これ以上の埋葬が無理なケースでは、遺骨の扱いに困るでしょう。
菩提寺から納骨を断られてしまった
なんらかのトラブルにより、菩提寺の墓地への納骨を断られてしまったケースでも、遺骨をいらないと感じることがあります。
墓地への埋葬は菩提寺の許可なしには行えません。菩提寺の機嫌を損ねて納骨を断られれば、遺骨の扱いに困窮し、処分を考えることもあるでしょう。
故人が遠方で亡くなり他の寺院に葬儀を依頼した場合には、菩提寺との関係性に注意が必要です。菩提寺に連絡せず勝手に直葬を行った場合にも、菩提寺ともめる可能性があります。
菩提寺から納骨を断られてしまった際には、戒名や四十九日の法要を依頼することで解決可能な場合があるといわれています。詳しい対処法は以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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墓じまいをする予定がある
墓じまいをする予定がある場合にも遺骨を不要だと感じる傾向が見られます。
家を継承する子どもがいない方や子孫の負担を軽くしたいと考える方のなかには、墓じまいを検討しているケースがあります。この場合、遺骨を引き取っても将来的には不要なものとなるため、遺骨の処分を検討することもあるようです。
お墓以外の遺骨の処理方法
お墓への納骨以外の方法で遺骨を処理したい場合には、以下のような方法が候補として挙げられます。
- 火葬場で遺骨を引き取ってもらう
- 焼き切りをする
- 散骨する
- 共同墓地に埋葬する
- 納骨堂を利用する
- 樹木葬(自然葬)を利用する
- 自宅で手元供養する
それぞれの内容を具体的に解説します。
火葬場で遺骨を引き取ってもらう
火葬後の遺骨がいらない場合、地域や火葬場にもよりますが、そのまま火葬場で遺骨を引き取ってもらえることがあります。
遺骨を持ち帰らずにすむため、その後の遺骨の処分方法に頭を悩ます心配もいりません。費用はまちまちで、無料で対応している自治体もあります。
ただし、関東圏では遺骨の引き取りに対応している火葬場は少ないといわれています。主に関西圏で利用可能な点に注意しましょう。
焼き切りをする
遺骨が不要な場合、火葬場に焼き切りを依頼できることがあります。
焼き切りとは、火葬後に骨を残さず、火力をあげて遺灰になるまで焼いてもらう方法です。遺骨ではなく、遺灰の状態にしておけばその後の処分がしやすくなるメリットがあります。
ただし、日本の多くの火葬場は焼き切りには対応していないのが現状です。技術的には焼き切りは可能なものの、宗教上や設備への負荷などの観点から、多くの施設ではあえて焼き切りには対応していないといわれています。
遺骨の焼き切りを希望する場合には、焼き切りに対応している火葬場を探し、予約しておく必要があります。
散骨する
遺骨をパウダー状に粉砕して遺灰にし、海や山などにまいて自然にかえす散骨も選択可能です。散骨すれば手元に遺骨が残らないため、葬儀後の維持管理の手間が不要なメリットがあります。
注意点としては、散骨可能な海や山には決まりがあり、好き勝手に散骨すると罰せられる可能性があることです。家庭内で遺骨を細かく粉砕すること自体が難しく、散骨場所を選定する課題もあるため、業者に依頼するのが一般的かつ無難です。
散骨には、遺族が散骨する場所まで出向く方法と、業者が代理で散骨する方法があります。現状、散骨は違法ではない扱いですが、今後変わる可能性もあるため利用を検討する際には最新の情報をチェックしておきましょう。
共同墓地に埋葬する
不要な遺骨は、共同墓地(合葬墓・合祀墓・合同墓)を利用して処理する方法もあります。
行き場のない遺骨を集めて埋葬する共同墓地では、管理者による永代供養が行われることが多く、埋葬後の維持管理の手間と費用が省けます。埋葬場所に石碑のような目印も設置されているため、参拝も可能です。
合葬墓や合祀型の納骨堂への埋葬は、自治体が無縁仏を供養する際に採用している方法でもあります。
納骨堂を利用する
本来であればお墓に埋葬したいものの、費用や立地などの理由からそれが難しい場合には、納骨堂の利用も有用です。
墓石のいらない納骨堂は、一般的なお墓を用意するより費用が抑えられるメリットがあります。個別納骨のほか、合祀に対応している納骨堂もあるため、上手に活用すれば費用を抑えられるでしょう。永代供養に対応し、納骨後の管理の手間が省ける納骨堂も多く存在します。
納骨堂は屋内にある施設が多いため、天候に左右されず参拝しやすいのも特徴です。宗教や宗派が不問な納骨堂を選べば、無宗教の方や故人の宗教が不明な場合にも利用できます。
樹木葬(自然葬)を利用する
不要な遺骨は、樹木葬(自然葬)を利用した供養も可能です。
樹木葬とは、樹木や草花など自然に囲まれた環境に遺骨を埋葬する方法です。墓石が不要な分、供養の費用が抑えられるメリットがあります。ナチュラルな雰囲気で宗教のしばりもないため、宗教的な弔いが苦手な方でも選択しやすいでしょう。
なお、埋葬方式として、個別と合祀を選択可能な樹木葬もあるため、予算にあわせた供養が可能です。
自宅で手元供養する
遺骨を自宅に置く手元供養も選択可能です。
手元供養は故人を身近に感じられる方法のため、事情によりお墓には埋葬しないものの、手厚く供養したい場合にはメリットがあります。
仏壇や祭壇、骨壺の選択肢も多様です。従来のよくあるオーソドックスなものからスタイリッシュなものまで、希望や予算にあわせて供養しやすくなっています。
遺骨ペンダントやミニ骨壺を利用すれば持ち歩きもしやすいでしょう。
お墓以外を利用して遺骨を整理する際の注意点
お墓以外を利用して遺骨を整理する際には、以下の点に注意が必要です。
- 遺骨を勝手に処分すると法律違反になる
- 親族とのトラブルに発展する可能性がある
- 収骨拒否・焼き切り希望の場合は事前に許可を取っておく
- 自分の死後にお墓への埋葬を希望しない場合には準備しておく
それぞれの内容について詳しく説明していきます。
遺骨を勝手に処分すると法律違反になる
遺骨を家の庭や山などに勝手に埋めたり捨てたりすると、刑法190条の遺骨遺棄罪や墓埋法の第4条に抵触し処罰の対象となります。遺骨は基本的に、墓地や納骨堂などの定められた場所に納めなければなりません。
散骨する場合、粉砕せずに遺骨の状態のまま実行すると法律違反となるため注意が必要です。散骨可能な場所のルールも存在するため、自己判断せず事前にしっかりリサーチしたり、業者に相談したりするのが大切です。
親族とのトラブルに発展する可能性がある
遺骨をお墓に埋葬しない場合、親族から理解が得られずトラブルに発展する可能性があります。
親族のなかには信心深く、古くからの風習を尊重する方もいるものです。特に菩提寺がある場合や遺骨の処理方法として散骨や火葬場での処分を選択する際には、抵抗を感じて反対を受ける場合も少なくありません。
親族とのトラブルを避けるためには、事前にしっかり説明して了承を得ておくのが肝要です。場合によっては、お互いの妥協点を探る必要もあるでしょう。
収骨拒否・焼き切り希望の場合は事前に許可を取っておく
収骨拒否や焼き切りを希望する場合には、事前に火葬場の許可を取っておきましょう。焼き切りや遺骨の処分に応じている火葬場であっても、当日いきなり申し出た場合には対応してもらえません。
焼き切りの場合には事前に予約日を調整し、火葬場で遺骨を処分してもらう場合には事前に手続きを完了しておきます。
火葬場選びや手続き方法に迷った場合には、葬儀会社に相談してみましょう。
自分の死後にお墓への埋葬を希望しない場合には準備しておく
自分の死後、遺骨をお墓に埋めてほしくない場合には、事前の準備が肝要です。死後の葬儀は自分で直接取り仕切れないため、事前に家族の理解を得ておかないと実現が困難です。
樹木葬や散骨など、自分で気に入ったプランを探して生前契約しておけば、スムーズに事が運びやすいでしょう。家族がいない方は、自分の希望の葬儀が行えるよう、死後事務委任契約を結んでおくのも一つの方法です。
遺骨の処分にまつわるよくある質問
ここからは、遺骨の処分にまつわるよくある質問をいくつか紹介します。
遺骨を処分した後に不要になった骨壺の扱いは?
散骨などで遺骨を処分した後、不要になった骨壺や骨箱は、自治体のルールに従い通常のゴミとして処分可能です。大きなものは無理のない程度に分解する方法がおすすめです。ただし、基本的には市町村管轄のゴミ捨てルールに従ってください。
葬儀社やお寺に処分を依頼できる場合もあるので、ゴミとして処分するのに抵抗がある場合には問い合わせてみましょう。
なお、魂入れしている仏具の処分時には閉眼供養が必要とされるため注意してください。
引き取り手がいない遺骨はどうなる?
どうしても引き取り手が見つからない遺骨については、最終的には管轄の自治体で無縁仏として供養します。その地域の条例にのっとり、一定の期間を経て無縁塚などに埋葬するのが一般的です。
引き取り手が不明な例としては、遺棄されている遺骨が見つかったり、アパートで孤独死しているのが発見されたりするケースが挙げられます。孤独死の場合、まずはアパートの管理人やオーナーが家族や保証人に連絡しますが、場合によっては音信不通なこともあります。
遺骨の処理は祭祀承継者しか行えないため、他人は勝手に埋葬できません。そのため遺族に連絡がつかない場合は、役所や警察に相談することになります。
反対に部外者が火葬後の遺骨をもらうことはできる?
遺骨の引き取り手以外の方が遺骨をもらうには、基本的には分骨手続きが必要です。事前に協議し葬儀会社に相談しておけば、火葬場でのお骨上げと同時の分骨も可能です。
遺骨である以上、不要になったからと勝手に処分はできないため、その場の雰囲気に流され安易に遺骨をわけてもらわないように注意しましょう。
火葬後の遺骨の扱いに配慮し希望の方法でご供養しよう
お墓への納骨以外にも、多様な方法で遺骨の処理が可能です。費用を抑えつつ手厚く供養できる方法から思い切って処分してしまう方法まであるため、事情に合ったやり方を検討しましょう。
ただし、遺骨がいらないからと勝手に処分したり、場所を選ばず散骨したりすることは違法行為です。ルールにのっとって故人をご供養するよう配慮しましょう。
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