身内が亡くなり、親族として葬儀を執り行う際に気になるのが「葬儀費用」です。葬儀費用は故人の死亡保険金や預貯金を使用したり、遺族同士で負担したりするのが一般的です。
しかし、故人や喪主が生活保護者で預貯金がなく葬儀費用を捻出できないといった人もいるでしょう。このようなケースで利用できるのが「葬祭扶助制度」です。
この記事では、葬祭扶助制度を利用して執り行える葬儀形式や利用条件などについて分かりやすく解説していきます。死亡一時金を受け取れるその他の制度や、葬儀後の納骨についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【結論】生活保護者は「葬祭扶助制度」によって火葬式を執り行える
冒頭で解説した通り、故人や喪主が生活保護を受けており葬儀費用を捻出できない場合「葬祭扶助制度」を利用することで葬儀を執り行えます。
葬祭扶助制度とは、経済的に困窮している人が葬儀を執り行う際に、自治体が最低限度の葬儀費用を負担してくれる制度です。自治体によっては「生活保護葬」「民生葬」「福祉葬」といった名称で呼ばれています。
ただし、葬祭扶助制度は誰でも利用できるわけではありません。次章では、制度の利用条件について解説します。
葬祭扶助制度の利用条件
葬祭扶助制度は、経済的に困窮している人を助けるための制度であり、誰でも利用できるわけではありません。生活保護者であったとしても利用条件を満たしていなければ対象外となります。
ここでは「故人が生活保護者の場合」と「喪主が生活保護者の場合」の2つのケースに分けて利用条件について解説していきます。
故人が生活保護者の場合
故人が生活保護者の場合、身寄りがある人とない人で利用条件が異なります。身寄りがある場合は、ご遺体を引き取り、喪主となる人の経済状況によって葬祭扶助制度が利用できるかどうかが決まります。
身寄りがない場合、利用していた施設関係者や自治体によって葬儀が執り行われます。身寄りがなく施設関係者が葬儀を執り行う場合は、施設の経済状況に関係なく葬祭扶助制度を利用できます。
なお、故人が生活保護者で身寄りがなかったとしても、貯金や有価証券といった遺留金がある場合は、そちらから優先して葬儀費用が支払われます。
喪主が生活保護者の場合
葬儀を執り行う人が生活保護者の場合、日常生活が苦しく葬儀費用の支払いが難しいと判断された場合のみ、葬祭扶助制度を利用できます。審査は民生委員やケースワーカーによって行われます。
具体的な条件は地域によって異なるため、利用できるか不安な方は事前に福祉課へ相談しておきしましょう。
なお、疎遠になっていた親族が亡くなり「お金はあるものの費用を負担したくない」といったケースもあるでしょう。この場合、遺産相続や遺骨を引き取るのであれば、葬儀費用を負担する必要があります。
相続や遺骨を引き取らない場合は、遺体の引き取りを拒否できます。この際、該当する自治体が費用を負担し葬儀が執り行い、遺骨は合同埋葬されます。
葬祭扶助制度(福祉葬)の条件に該当せずお困りの方は、「給付金を利用する」「故人の遺産で払う」などの方法で葬儀費用を抑えることができます。また、以下の記事では、葬儀費用を安くする方法を他にも多数解説してるので、チェックしてみてください。
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葬祭扶助制度を利用した場合は「火葬式(直葬)」に限られる
葬儀形式には一般葬の他に、家族葬・一日葬・直葬といった形式がありますが、葬祭扶助制度を利用した場合に執り行える葬儀形式は、直葬形式に限られます。
直葬では、お通夜や葬儀式を省略し、火葬とお骨拾いのみを行います。一般葬のように出棺の際や火葬前に僧侶が読経することはありません。
参列する人の範囲や人数に特別な条件はないものの、火葬場に入れる人数には限りがあるため、多くの人が参列できるわけではありません。
なお、直葬は葬祭扶助制度に特化した葬儀形式ではありません。近年は一般葬ではなく家族葬や直葬を選ぶ人が増えてきています。直葬の特長や流れは、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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葬祭扶助制度の給付金額
葬祭扶助制度で支給される金額は大人の場合20万6,000円、子供の場合16万4,800円です。自治体によって金額が異なる可能性があるため、事前にチェックしておきましょう。
上記料金は上限の金額であり、故人に預貯金などがある場合は、そちらから優先的に支払われます。足りない金額だけ葬祭補助制度から支給されます。
葬祭扶助制度を利用しても香典は没収されない
葬祭扶助制度は、経済的に困窮している人に向けた制度であるため、追加で費用を支払い葬儀内容を変えるようなことはできません。
「お金がないことが条件ならば、香典も没収されるのでは」と考える人もいるでしょう。これについては、参列者からの香典を受け取っても問題ありません。葬儀費用として自治体に返却する必要もなく、故人の納骨代などに使用できます。
親族が亡くなり葬祭扶助制度を利用する流れ
親族が亡くなり葬祭扶助制度を利用する場合、以下のような流れで葬儀を執り行います。
- 役場の福祉課・民生委員で申請する
- 葬儀社に連絡する
- 火葬式を執り行う
上記のそれぞれの流れについて、注意点なども交えながら解説していきます。
役場の福祉課・民生委員で申請する
葬祭扶助の申請は、葬儀の前に行う必要があります。申請先は以下の通りです。
- 親族による申請:申請者の現住所を管轄する市区町村の福祉事務所または役所
- 扶養義務者以外による申請:故人の住所を管轄する市区町村の福祉事務所または役所
申請書は、担当窓口にてもらうか自治体によってはWebサイトからダウンロードできます。申請書のフォーマットは都道府県ごとに異なるため、違う県の申請書を使用しないようにしましょう。
申請は葬儀社への委任も可能であり、申請者の委任状や印鑑などが必要です。申請後にケースワーカーが申請者の経済状況について調査し、審査を行います。
葬儀社に連絡する
葬祭扶助制度の申請に通ったあとは葬儀社に依頼します。全ての葬儀社が葬祭扶助制度に対応しているわけではないため注意が必要です。
役所が葬儀社を紹介してくれることもあるため、申請時に相談してみましょう。葬儀社に葬儀費用を支払ってから申請すると、制度を利用できません。
葬儀社には葬祭扶助制度の利用を伝えたうえで、先に申請を済ませるようにしましょう。葬儀日程が決まったら、他の親族や故人の知人などに連絡します。
火葬式(直葬)を執り行う
火葬式当日は、遺体を安置している施設から火葬場へと向かいます。手順は葬儀社によって異なるものの、出棺前にはご遺体を清め棺に納める「納棺の儀」を執り行うのが一般的です。
火葬場に到着すると、火葬を行い収骨する流れです。火葬にかかる時間は1〜2時間ほどです。火葬が終わるとお骨を拾い骨壺に納める「収骨」を行い葬儀が終わります。
なお、葬祭扶助制度を利用する場合、葬儀が終わった後の精進落としは実施できません。また、葬祭扶助制度を利用した場合、役所や福祉事務所から直接葬儀社へと費用が支払われます。喪主が支給金を受け取って支払いを済ませることはありません。
また、以下の記事では直葬の流れの詳細を解説していますので、参考にしてみてください。
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葬祭扶助制度を利用する際の注意点
葬祭扶助制度を利用する場合、事前に理解しておくべき注意点が4つあります。
- お布施や納骨、お墓の費用は適応されない
- 僧侶を読んだり戒名を付けてもらうことはできない
上記2つの注意点について対処法も交えながら解説していきます。
お布施や納骨、お墓の費用は適応されない
葬祭扶助制度の支給金は、葬儀に関することであれば何でも使えるわけではありません。生活保護法第18条において、以下の通り定められています。
⚫︎検案 ⚫︎死体の運搬 ⚫︎火葬または埋葬 ⚫︎納骨その他葬祭のために必要なもの 引用:厚生労働省「生活保護法 第十八条」 |
具体的には、納棺の儀で使用する棺や仏衣一式、火葬料金などが該当します。葬儀費用が支給額の上限を超えていないからといってお墓への納骨や墓地への永代使用料には充てられません。遺骨を受け取ったあとのことも考えておきましょう。
僧侶を読んだり戒名を付けてもらうことはできない
葬祭扶助制度で行える葬儀形式は、直葬(火葬式)に限定されており、お通夜や葬儀式はありません。僧侶による読経や戒名も付けてもらえないため注意が必要です。
「葬祭扶助制度を利用しながらも、戒名を付けてあげたい」と考えている場合は、葬儀が終わってから近くの寺院に相談してみましょう。葬儀が終わった後でも戒名を付けてもらうことは可能です。
ちなみに、葬祭扶助制度を利用せずに直葬を行う場合は、僧侶の派遣サービスや近くの寺院へ依頼することで火葬前に読経したり戒名を付けてもらえたりします。
戒名が必要となるケースや、僧侶にお願いした場合のお布施については、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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葬祭扶助制度以外で受け取れる死亡一時金
ここまで葬祭扶助制度について解説してきましたが、他にも複数の死亡一時金があります。具体的な種類は以下の通りです。
- 寡婦年金
- 遺族(補償)年金
所定の条件を満たすことで受け取れるため、該当する場合は申請を行いましょう。
寡婦年金
寡婦(かふ)年金とは、老齢基礎年金の資格期間を満たした夫が、年金を受けずに亡くなった際に、妻が代わりに60〜65歳になるまで支給される年金です。受給条件は以下の通りです。
- 亡くなった夫に国民年金の第1号被保険者として、25年以上の保険料納付期間があること
- 亡くなった夫と10年以上の婚姻期間があること
- 亡くなった夫と死亡時に生計維持関係があること
- 亡くなった夫が障害基礎年金、老齢基礎年金を受けていないこと
ちなみに、寡婦年金ではなく「死亡一時金」を選択することも可能です。詳しくは、役所の国民年金課に相談してみましょう。
遺族(補償)年金
遺族(補償)年金は、労災で亡くなった人の収入で生計を立てている家族などに対して支払われる年金のことです。給付金額は持続の人数によって異なり、遺族(補償)年金は、1回のみ前払い申請も可能です。
受給対象者は、労働者の年収によって生計を立てていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。この順番で最優先の順位者のみが受け取れる仕組みです。
遺族(補償)年金に関する相談は労働基準監督署でできるので、該当する方は早めに手続きなどについて相談しましょう。
ちなみに、被災労働者が死亡した当時に遺族(補償)年金を受ける遺族がいなかったり、需給が始まってから3年以内に受給者が死亡したりした場合は、他の遺族に対し遺族補償一時金が支払われます。
生活保護者の葬儀に関するよくある質問
最後は生活保護者の葬儀に関する、2つのよくある質問に答えていきます。
- 生活保護者が亡くなった場合の納骨はどうすればいい?
- 戒名は後からでも付けてもらえる?
葬儀が終わった後に関する内容ですので、参考にしてみてください。
生活保護者が亡くなった場合の納骨はどうすればいい?
葬祭扶助制度を利用し直葬を執り行った場合、費用を負担してもらえるのは火葬後の収骨までとなります。その後の納骨は、以下の4つの方法から選びましょう。
- 納骨堂に骨壺を安置する
- 散骨する
- 永代供養する
- 手元で保管する
納骨堂とは個人単位で骨壺を安置できる施設のことです。街中にありお参りしやすく、お墓を立てるより費用を抑えられるため、人気が高まってきています。
自治体運営の「公営納骨堂」や法人運営の「民営納骨堂」の他に寺院が運営する納骨堂もあります。費用は納骨堂によるものの数万円ほどで納骨できます。
散骨とは、遺骨を海や山などに撒く自然葬の1つで、近年は散骨を希望する人も増えてきています。ただし、自分で遺骨を埋めるような行為は違法行為となります。必ず専門業者に依頼したうえで行うようにしましょう。
永代供養とは、霊園の管理者や寺院が供養と清掃管理を全て引き受けてくれるサービスです。個別でお墓を用意しない合祀(ごうし)であれば、費用も抑えられます。
戒名は後からでも付けてもらえる?
戒名とは、仏弟子になった証として授けられる名前のことで、仏門に入ることを意味します。仏教に関する「戒律」を守る人の「名前」から「戒名」と呼ばれるようになりました。
故人が授かるものという認識が一般的ですが、生前や亡くなってから時間が経ってからでも付けてもらえます。ただし、菩提寺へ納骨する場合を除き、必ず戒名が必要というわけではありません。
戒名で悩んでいる場合は、近くの寺院へ相談してみましょう。
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故人や喪主が生活保護者で、葬儀費用の捻出が難しい場合でも「葬祭扶助制度」を利用することで、葬儀を執り行えます。ただし、葬祭扶助制度は経済的に困窮している人をサポートするための制度であるため、貯金などがあり葬儀費用を捻出できると判断された場合は利用できません。
葬祭扶助制度で執り行える葬儀は直葬(火葬式)に限られており、給付金額の上限は大人の場合で20万6,000円までとなります。制度を利用したい場合は、葬儀前に役場の福祉課や民生委員で申請しましょう。
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