家族葬は、遺族や親戚のみで執り行う小規模な葬儀であること以外に、一般葬との大きな違いはありません。食事を提供するタイミングとしては、通夜振る舞いや精進落としなどがあります。
どのような食事を用意するのが最適なのかが分からず、悩む人も少なくありません。また、食事を用意しない場合に関しても、知っておくべきマナーがあります。
今回は、家族葬における食事の種類やマナー、提供する料理の定番メニューを中心に解説していきます。飲食接待費の相場なども紹介していますので、参考にしてみてください。
また、家族葬のおさらいをしたい方は、併せて以下の記事も参考にしてみてください。
家族葬で提供する食事形式にルールはない
結論から述べますと、家族葬における食事形式に明確なルールはなく、自由に設定できます。主な食事形式の例としては、以下のような内容があります。
- 故人が好んでいた食材や料理を提供する
- 故人がよく行っていたお店に行く
- 個々で作った料理を葬儀に持ち込む
故人が生前によく食べていた料理を提供することで、料理に関する思い出話に花を咲かせられます。よく行っていたお店に行くのも1つの方法です。お店であれば、各々で好きな料理を頼むことも可能です。
式場に各々で作った料理を持ち込むことも可能です。自分たちで作って持ち寄ることで、金銭的な負担も軽減できます。ただし、料理を持ち込むことを禁止している葬儀社もあるため、事前に相談しておくようにしましょう。
食事の内容には注意が必要
家族葬における食事形式に明確なルールは存在しないものの、提供する食事の内容には注意が必要です。あくまでも弔事の席であるため「おめでたいことを連想させる食材」は避ける必要があります。
具体的には鯛や伊勢海老などがあります。このほかにも、各地域の祝い膳で提供される料理などがあれば、避けるようにしましょう。
精進落としは、生き物の殺生を避けて作られた料理が本来の内容であり、肉・魚・卵・五葷は避けるべきとされています。仏教由来の考えであり、宗派や葬儀内容によっては気にする必要はないものの、念のため覚えておきましょう。
一般的な葬儀で用意する食事の名称と意味
日本では仏教葬が一般的であり、葬儀で提供される食事には「通夜振る舞い」と「精進落とし」があります。各食事の意味や提供するタイミングなどを理解しておくことで、食事に関する失敗を防げます。
葬儀における食事マナーの変化も交えながら解説しているので、食事を準備する際に参考にしてみてください。
通夜振る舞い
葬儀1日目に執り行われる通夜の後に提供される料理を通夜振る舞いと言います。通夜振る舞いは、遺族からの僧侶や参列者への感謝を表すとともに、みんなで思い出話などをしながら、故人と最後の食事を楽しむ意味合いがあります。
飲み物に明確な決まりはないものの、清める意味を兼ねてアルコールを用意するのが一般的です。通夜振る舞いは、どれくらいの人が参加するか事前に分からないため、個別で用意せずに大皿にのった料理を提供すると良いでしょう。
以前は一晩中続くこともありましたが、近年は1〜2時間ほどで締めるようになってきています。通夜振る舞いは僧侶にもお声がけしますが、参加を辞退された場合は「御膳料」として5,000円〜1万円を包み「お車代」として渡すようにします。
家族葬のお布施に関するマナーや相場については、以下の記事で解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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精進落とし
精進落としは、四十九日の忌明けの際に食べる食事のことで、地域によっては精進上げ・お斎(おとき)といった呼び名があります。
仏教の考えでは、亡くなった人が四十九日目に浄土へ行けるように、遺族は忌明けするまで肉や魚を食べないようにしていました。四十九日の法要を済ませ精進期間が終わった際に、遺族が食べる料理を精進落としと呼ぶようになっています。
しかし、近年では火葬の後に「繰り上げ法要」で初七日法要を行い、精進落としを提供する流れが一般的になりつつあります。
冒頭で解説したとおり、食事の形式に明確なルールはなく、食事を手配せずに外食するケースもあります。精進落としは参加者がある程度決まっているため、大皿ではなく個別でお弁当などを用意するのが一般的です。
精進落としを食べるのは、葬儀の流れからしてお昼を過ぎてしまうため、火葬中に簡単な軽食を出すこともあります。
家族葬で振る舞う定番メニュー
家族葬で振る舞う定番メニューには、以下のような内容があります。
- お寿司
- オードブル
- 仕出し弁当
- 懐石料理
- 煮物や天ぷら
通夜振る舞いでよく提供されるメニューには、お寿司やオードブルがあります。さまざまなネタがあるため、子供から大人まで食べやすく、食べる料も各々で調整できます。
仕出し専用のお店で事前に手配する必要もなく、近くのスーパーやお弁当屋さんで簡単に頼めることも魅力といえるでしょう。
精進落としは、参列人数がある程度分かっているため、仕出し弁当や懐石料理を出すのが一般的です。仕出し専用のお店では、複数のプランが用意されているので、予算に応じたものを選んでみましょう。
親族で外食する際の注意点
精進落としを用意せずに、外食で済ませる場合は以下のような内容に注意しましょう。
- 参加人数が多い場合は事前に予約しておく
- なるべく個室を選ぶようにする
- 予算内に収まるかメニューやプランを確認しておく
- 移動手段やバリアフリーかどうかを確認しておく
外食する人数にもよりますが、10人を超えるような場合は混雑により待ち時間が発生しやすくなります。なるべく事前に予約しておくようにしましょう。
喪服で外食すること自体マナー違反ではないものの「線香の匂いが嫌」「縁起が良くない」といった考えの人もなかにはいるため、個室を選ぶなど周りへの配慮が必要です。
高齢者が多い場合は、アクセスの良さやバリアフリーな環境にも配慮しましょう。
家族葬で食事なしにする場合の注意点
遺族や親戚を中心に少人数で執り行う家族葬では、食事を用意しないケースも増えてきています。「通夜振る舞いがあるから」と、食事をとらずに参列する人もいるため、食事を用意しない場合は、予め伝えておくようにしましょう。
また、子供が参列する場合は、長時間の葬儀の中で空腹を我慢できない可能性があるため、サンドイッチやおにぎりといった軽食を用意しておきましょう。
精進落としを省略する場合も、あらかじめ食事がないことを伝えておきます。火葬はお昼を過ぎてしまう可能性があるため、火葬中に食べられる軽食を別で準備するか、近くで食べられるお店を調べて案内しましょう。
スケジュールの都合で食事の場を設けられない場合は、精進落としに変わるお持ち帰り用のお弁当を用意するのも1つの方法です。お弁当の手配を省略したい場合は、お食事代を個別で渡しても問題ありません。
家族葬の食事にかかる費用
家族葬の食事にかかる費用は、通夜振る舞いの場合は1人あたり2,000円前後、精進落としでは1人あたり3,000~5,000円を目安にしましょう。
葬儀形式に明確な基準がないため、目安より安くなっても問題ありません。通夜振る舞いでアルコールを提供する場合は、さらに高くなる可能性があります。
このほかでは、火葬中に提供する軽食代などが必要ですが、前述した通り食事の提供をなしにしても問題ありません。
家族葬における食事のマナー
身内ばかりで執り行う家族葬でも、食事に関する最低限のマナーは守りましょう。食事に関するマナーは喪主側と参列者側で異なります。気を使いすぎるのもよくありませんが、マナーを理解したうえで参列しましょう。
喪主側が注意すべきこと
通夜振る舞いを始める際には、喪主から挨拶するのが一般的です。あらかじめ挨拶の内容を考えておきましょう。通夜振る舞いに一般の参列者が参加する場合は、上座に案内して喪主や遺族は下座に座るようにします。
精進落としでは、懐石料理や仕出し弁当を用意するのが一般的ですが、鯛や伊勢海老といった祝いごと向きの食材は避けるようにします。
なお、参列者だけでなく故人へのお供え物として影膳(かげぜん)が必要なので、忘れないようにしましょう。影膳は、参列者に出す食事と同じもので問題ありません。
参列者側が注意すべきこと
参列者として通夜振る舞いに参加する場合、食事の場で故人と関係のない話ばかりするのは避けましょう。思い出話で盛り上がること自体は問題ないものの、大声で渡ったり騒いだりするのはマナー違反です。
喪主は次の日の準備などやることが多くあるため、閉式の挨拶が終わったあとは、長居しすぎないようにします。食事マナーとは少し異なりますが、会食の際には「忌み言葉」にも注意が必要です。
具体的には「ますます・再び」といった不幸が繰り返されることを連想させる言葉があります。また「死・四・迷う」といった不吉な言葉を連想させる言葉も使わないようにします。
家族葬で食事がない場合も香典は用意する
喪家の急な出費を助け合う意味合いを持つ香典ですが、家族葬で食事が提供されない場合も準備するのがマナーです。ただし「香典返しなどの手間を省きたい」といった考えで家族葬を選択する人も少なくありません。
ほかの葬儀形式と同様に喪主側から「香典辞退」の意向が伝えられた場合のみ、香典は用意しないようにします。なお、香典を用意する場合は2や4などの割り切れる数字や、4(死)や9(苦)といった縁起の悪い数字は避けましょう。
香典に関するマナーやお金の包み方については、以下の記事で解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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家族葬の食事に関するよくある質問
最後は、家族葬の食事に関する2つのよくある質問に答えていきます。家族葬を執り行ったり、葬儀に参加したりする際に役立つ内容を解説しているので、参考にしてみてください。
火葬場の食事はお持ち帰りしていい?
火葬には時間がかかり、お昼を過ぎることもあるため、火葬中に食事を提供するケースもあります。用意した量が多く食事が余ってしまった場合、料理を持ち帰ってもマナー違反にはなりません。
食べ残さないようにすることで、故人への供養にもなります。ただし、近年は新型コロナウイルス感染のリスクもあるため、持ち帰らないのが一般的です。夏場であったり持ち帰りに時間がかかったりする場合は、食中毒に注意が必要です。
なお、通夜振る舞いで出された料理は、持ち帰らないのがマナーです。遺族は通夜振る舞いのあとも故人と最後の夜を過ごします。その際に、余った料理を夜食として食べることもあるため、持ち帰らないようにしましょう。
葬儀後の食事会の名前は?
近年は、繰り上げ法要として初七日法要や、四十九日法要を葬儀当日に執り行うケースが増えてきています。火葬が終わった後に斎場へと戻り、法要を行ったあとに会食するのが一般的な流れです。
この会食の名前は「精進落とし」といいます。本来であれば四十九日法要が終わった忌明けのタイミングで食べる料理です。家族葬の内容や流れについては、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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家族葬の食事は自由に決めて問題ありません
家族葬における食事の形式には明確なルールがなく、遺族や故人の希望に沿って自由に決められます。仕出し専門のお店に依頼するだけでなく、故人が好んでいた食材や料理を提供したり、故人が通っていたお店で会食したりすることも可能です。
食事を用意しない場合は、参列者に事前に伝えておくようにしましょう。子供が参列する場合は軽食を用意するなどの配慮が必要です。食事に関するマナーで迷った場合は葬儀社に相談してみると良いでしょう。
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