葬儀の準備を進めていくなかで、祭壇選びで悩む人は少なくありません。祭壇には故人を弔ったり故人そのものを表わしたりする役割があり、複数の種類が存在します。
特に、一般葬と比べて規模の小さい家族葬を検討するにあたって「どのような祭壇が相応しいのか」「費用はどれくらいかかるのか」と、気になっている人もいるでしょう。
この記事では、祭壇の種類や費用相場を中心に解説していきます。祭壇に関するマナーやデザインを決定するポイントなども紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
また、家族葬の内容をおさらいしたい方は、こちらも併せてチェックしてください。
葬儀における祭壇の役割
お通夜や告別式の斎場に用意される祭壇は、葬儀における重要な役割を担っています。祭壇には「あの世で故人が幸せに暮らせるように願う」といった意味があり、仏式においては死後の世界を表しています。
祭壇で表現する鳳凰や龍などの架空の生き物は、現実とは異なる世界を表すためのものです。近年は、故人そのものを祭壇で表現する意味合いが強くなってきました。
仏式の葬儀では、白木で作られる祭壇が一般的でしたが、近年は華やかで美しい花祭壇を選ぶ人が増えてきています。なお、仏式以外の宗教では以下のような祭壇が準備されます。
宗教 | 準備される祭壇 |
---|---|
キリスト教 | 祭壇の一番上に十字架が置かれ、お供物はせずに生花を飾る |
神式 | 祭壇前面にお供物が並べられ、神鏡が祭壇上段に飾られる |
祭壇なしの葬儀はマナー違反?
故人の幸せを願う意味を持つ祭壇ですが、必ず葬儀で用意しなければならないわけではありません。ただし、葬儀内容によっては参列者からの印象が悪くなる可能性があります。
例えば、一般葬や一日葬における仏教儀式では、祭壇が欠かせません。遺族や親戚以外の人も多く参列するため、参列者に良く思われない可能性があります。「あそこの葬儀社は祭壇も用意していない」といった噂を避けるため、祭壇なしの一般葬を断っている葬儀社もあります。
一方で、祭壇なしでも問題ないのが家族葬における「無宗教葬儀」です。無宗教葬儀とは、宗教的な儀式を行わない葬儀のことで、形式にとらわれずに好みの内容にアレンジできます。
祭壇のデザインは自由で、いらない場合は無理に設置する必要もありません。家族葬は遺族や親戚のみ参加するため、一般の参列者から祭壇がないことについて批判される心配も少ないと言えるでしょう。
祭壇の種類と費用相場
葬儀形式が多様化するにあたり、仏式における祭壇は4種類に分かれています。具体的には、以下のような祭壇があります。
- 花祭壇
- 白木祭壇
- 折衷祭壇
- オリジナルの祭壇
ここでは、各祭壇のデザインの特徴や費用相場について解説していきます。
花祭壇
近年、スタンダードになりつつあるのが、たくさんの花で華やかに彩った「花祭壇」です。生花を使用したものは生花祭壇と呼ばれています。
従来の生花祭壇は、菊の花で模様を作るライン祭壇が主流でしたが、近年は故人の趣味や好きな色をモチーフにしたデザインにする人も増えてきています。
デザイン性が高く、仏式の葬儀でもオリジナル性のある祭壇で故人を表現できることが特徴です。花祭壇の費用は、使用する花の種類や量によりますが、20〜50万円が相場です。
白木祭壇
白木祭壇とは、仏式の葬儀で昔から用いられてきた祭壇で、装飾や漆塗りのない白木で組まれています。仏教葬を中心に、神式や自由葬でも使われる場合があります。
毎回作り直されるわけではなく、各式場に備品として設置されています。標準的なデザインに袖の部分を追加するといったカスタマイズも可能です。
白木祭壇の相場は30〜100万円で、祭壇の規模やオプションによるカスタマイズによって費用が大きく変わります。
折衷祭壇
折衷(せっちゅう)祭壇とは、白木祭壇に花をあしらったもので、厳かな雰囲気と華やかな雰囲気の両方を演出できることが特徴です。伝統的な祭壇の雰囲気を保ちつつ、個性も出したいような人におすすめの祭壇と言えるでしょう。
白木祭壇と花祭壇を合わせたものであるため、費用は高額になりやすいと言えます。ただし、葬儀社によっては供花を祭壇に組み込み、費用を抑えるといったサービスもあります。折衷祭壇の費用相場は50〜70万円です。
オリジナルの祭壇
故人や遺族の意向によって無宗教で葬儀を行う場合に用いられるのがオリジナルの祭壇です。祭壇のデザインに明確なルールはなく、祭壇の形状や素材などで自由に演出できます。
具体的には、以下のような祭壇があります。
テーマ | デザイン |
---|---|
自然がテーマの祭壇 | 花だけでなく植物もふんだんに使用し、石や木といった自然素材も取り入れたデザイン |
趣味がテーマの祭壇 | 音楽好きであれば、花で音符を表現したり、楽器や楽譜を飾ったりする。旅行が好きな場合は、好きな旅先を花などで表現する |
地域の特色がテーマの祭壇 | 故人が好きだった地域の伝統工芸品や名産物を花などで表現する |
過去に行った無宗教葬儀の例を紹介している葬儀社もあります。オリジナル祭壇の費用は、内容によって大きく異なるので、葬儀社に問い合わせてみましょう。
家族葬における祭壇を選ぶポイント
家族葬で祭壇の設置を検討しているものの、どの種類が良いのか迷う人もいるでしょう。祭壇を選ぶ際は、以下のポイントを意識してみてください。
- シンプルにしたい場合は白木祭壇がおすすめ
- 華やかさや明るさを希望するなら花祭壇
- 費用を抑えたい場合はアレンジを加えない
各祭壇の特徴や注意点も交えながら、3つのポイントについて解説していきます。
シンプルにしたい場合は白木祭壇がおすすめ
なるべくシンプルな祭壇にしたい場合は、白木祭壇がおすすめです。厳格な雰囲気の演出にも適しています。サイズは、葬儀の規模(会場の広さ)によって決まるので、おおよその参列者を葬儀社に伝えたうえで祭壇を選んでみましょう。
祭壇にアレンジを加えたい場合は、オプションの有無も確認しておく必要があります。伝統的で精巧な彫刻が施されている祭壇は価格が高額になるため、事前にある程度の予算も伝えておきましょう。
華やかさや明るさを希望するなら花祭壇
華やかな雰囲気やアットホームな雰囲気を希望する場合は、花祭壇がおすすめです。以前は菊や百合といった落ち着いた雰囲気の花が主流でしたが、近年は明るい色味の花も選べます。
花を使って愛用品や趣味をモチーフにしたデザインにもできます。ただし、要望が細かくなるほど費用が高額になるため、注意が必要です。また、生花は匂いが強く花粉が飛散することもあるためアレルギーへの配慮も求められます。
アレルギーへの配慮や価格の安さを優先したい場合は、造花の祭壇も検討してみましょう。
費用を抑えたい場合はアレンジを加えない
費用をなるべく抑えたい場合は、花の種類や量にアレンジを加えずに、用意されたデザインから選ぶようにしましょう。
必ず対応してもらえるわけではないものの、コスト重視の方向けに造花の祭壇を用意している葬儀社もあります。ただし、造花の祭壇は安っぽい雰囲気になってしまう可能性があるため注意が必要です。
なお、オリジナルのデザインは祭壇を完成させるのに時間がかかるため、葬儀直前でお願いすると断られてしまう可能性があります。希望のデザインがある場合は、生前から打ち合わせておくことをおすすめします。
自宅葬における祭壇について
近年は減少傾向にあるものの、自宅で葬儀を執り行う「自宅葬」でも祭壇は設置されます。部屋の大きさに応じたものとなるため、斎場で設置する祭壇と比べると小規模なサイズ(半畳〜2.5畳分)になります。
祭壇の費用は3万円〜が目安ですが、規模や祭壇の種類によって金額は異なるため葬儀社に確認しましょう。
自宅葬に関しても故人や遺族の宗教概念によって、祭壇を設置しないことがあります。祭壇を準備しない場合、一般的にお仏壇またはご本尊様を用意します。これらの用意は葬儀社に相談してみると良いでしょう。
費用にこだわるなら祭壇不要の直葬もおすすめ
費用を最小限に抑えたい場合は、祭壇を設置しない直葬も検討してみましょう。直葬とは、お通夜や葬儀式といった仏式行事を省略した葬儀形式です。納棺後に出棺し、火葬と骨上げを行う流れです。
直葬であれば祭壇を設置する必要がなく、遺族と親戚のみ参列する小規模な葬儀となるため、費用を最小限に抑えられます。葬儀内容にもよりますが、直葬の費用相場は20~50万円です。
仏式行事を行わない直葬は、親戚や菩提寺からの理解を得られない可能性があるため、事前に了承を得ておくようにしましょう。必要に応じて読経や戒名のみお願いすることも可能です。
直葬の特徴・流れ・注意点については、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はチェックしてみてください。
あわせて読みたい!
葬儀の基礎知識
直葬とは?トラブルにならないよう費用・流れ・注意点を解説
祭壇に関するよくある質問
最後は、祭壇に関する3つのよくある質問に答えていきます。花祭壇を選ぶときに知っておくべき注意点や、花の種類・お供物に関して解説しているので、参考にしてみてください。
花祭壇のメリット・デメリットは?
デザイン性が高く、華やかな雰囲気を演出できる花祭壇のメリット・デメリットは、以下の通りです。
花祭壇のメリット |
故人の趣味や愛用品などに合わせたデザインにできる花の種類によってさまざまな雰囲気を演出できる規模を縮小すれば費用を抑えやすい |
花祭壇のデメリット |
オリジナルのデザインにするには話し合いが必要デザインにこだわると高額になる可能性がある温度や温風に弱い花粉症など、アレルギーへの配慮が必要 |
花祭壇を検討しているものの、具体的なデザインが思い浮かばない場合は、葬儀社が過去に設置した事例などを参考にしてみましょう。予算を伝えてデザインを提示してもらうことも可能です。
花祭壇に使う花の種類は?
花祭壇に使う花に特別なルールはなく、花言葉なども気にする必要はありません。近年は、故人の好きだった花だけで埋めつくしたり、季節に応じてひまわりなどを採用したりする祭壇もあります。
花祭壇で最も多いのは白色の花で、特に人気な種類は以下の通りです。
人気な花祭壇 | 花祭壇の印象 |
---|---|
白菊 | 王室の紋章に使われており、高貴な印象を演出できる。切り花にしても長持ちしやすく、主張しすぎないサイズでほかの花とも合わせやすい |
蘭 | 咲き方が独特で存在感があるため、白を強調しやすい。故人の棺に添える献花としても好まれている |
百合 | 白菊に次いでよく使用される花で、仏教だけでなくキリスト教の祭壇でも多く用いられる |
カーネーション | フリルのような花弁が美しく、色の種類が多彩であるため、個性を演出する際に使用される |
故人が好きだった花がある場合は、祭壇に使用できるか相談してみましょう。
祭壇には何をお供えする?
祭壇のお供物は、故人への感謝や遺族への弔意を表しています。仏教の祭壇では線香・生花・ロウソク・果物・千菓子・缶詰・お茶などを用意します。肉や魚といった生ものは避けましょう。
果物は「丸→円→縁」といったように解釈されていることから、故人との縁を大切にするという意味で、リンゴ・メロン・桃といった果物が一般的です。ただし、故人が好きだった果物が別である場合は、形は関係なく選んで問題ありません。
近年は、故人が好きだったタバコやお酒などの嗜好品をお供えする人も増えてきています。
費用相場を踏まえて最適な祭壇を選んでみましょう
祭壇には故人があの世で幸せに暮らせるように願うといった意味があり、家族葬でも基本的に設置します。ただし、祭壇は宗教に関するものであるため、無宗教葬儀では祭壇を用意しないこともあります。
祭壇には花祭壇や白木祭壇といった複数の種類があり、それぞれで相場が異なります。オリジナルのデザインや、花を取り入れるほど高額になるため注意が必要です。葬儀社が過去に設置した事例なども参考にしながら、予算に応じた祭壇を考えてみましょう。
費用にこだわる場合は、祭壇を設置しない直葬やお通夜を省略する一日葬もおすすめです。
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