高齢になると、「老衰」と呼ばれる状態になり、思うように体を動かせなくなったり、意識がぼんやりして会話が難しくなったりします。そして、次第に食事がとれなくなり、最期の時を迎えます。特に、食事を受け付けなくなってくると、家族としてもあとどれくらい生きられるのか心配になるでしょう。
本記事では、老衰の進行によって現れる症状や、食事がとれなくなった際の余命の目安、適切な対応方法について解説します。また、老衰が進んでいるときに家族ができることや、最期に向けて準備しておくべきことについても紹介しています。
本人が穏やかな時間を過ごし、家族も後悔のない時間をともに過ごせるよう、ぜひ参考にしてください。
この記事を要約すると
- 老衰が進むと、身の回りのことが難しくなり、食事もとれなくなって、ほとんどの時間を寝て過ごすようになります。会話がしづらくなり、反応も次第に鈍くなっていきます。
- 食事がとれなくなった場合、点滴のみでの対応では1〜2か月ほど、点滴を行わない場合は1週間ほどで亡くなることが多いといわれています。
- 残された時間を穏やかに過ごせるよう、本人の希望を聞き、積極的に声をかけることが大切です。また、亡くなった後のことを考え、葬儀や供養の準備を進めておくことも重要です。
老衰とは?
老衰とは、加齢に伴い全身の慢性的な炎症が起こり、臓器の機能が低下していくことを指します。
歩くことができないなどの運動機能の低下や、呼吸機能や代謝機能などの内臓の機能も低下、認知機能の低下などが起こります。
なお、病気や事故などの死亡原因がなく、老衰により亡くなることを「老衰死」と呼びます。
何歳くらいから老衰死になるのか?
老衰死における年齢の定義はありません。厚生労働省による「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」の年齢別の死因を見ると、80〜89歳の第3位、90歳以上では第1位が老衰です。
令和5年度の日本の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳です。平均寿命を過ぎたあと老衰死と診断されることが多いです。
また、信州大学の「老衰死亡率の季節変化」によると老衰死の場合、夏よりも冬に亡くなることが多くなります。特に高齢であればあるほど、その傾向が顕著にみられます。
老衰死は苦しいのか?
老衰死が近づいているとき、余命と同じくらい気になるのが「苦しくないのか」ということでしょう。老、脳や神経系の機能低下や感覚が低下するため、痛みなどの不快感を感じにくいといわれています。
例えば、癌の場合は腫瘍が組織に浸潤し、増大や転移することにより痛みが発生します。心臓の病気も胸の締め付け感や重苦しさが生じることもあります。病気によっては治療の副作用に苦しむこともあるでしょう。
老衰死は、病気で亡くなるよりも比較的穏やかな最期といえるでしょう。
老衰死が近づいているときの症状は?
老衰が進むにつれて、体や脳の機能が徐々に低下していきます。体を動かしづらくなり、口数が減って会話が続きにくくなることもあります。また、次第に寝ている時間が長くなるでしょう。
体が動かしづらくなる・疲れやすくなる
老衰が進むと、最もわかりやすい変化として身体機能の低下がみられます。筋力が衰え、骨がもろくなることで思うように体を動かせなくなり、歩行が困難になることもあります。また、視力の低下や聴力の衰えを感じる方も多いでしょう。
個人差はありますが、老衰が進行し、最期が近づくと寝たきりで過ごす時間が増える傾向があります。自力で服を着替えたり、トイレに行ったりすることが難しくなり、身の回りのことを自分でこなせなくなるため、介護が必要となることが一般的です。
ぼんやりする・会話がしづらくなる
老衰が進むと、身体機能だけでなく脳の機能も低下していきます。会話のスピードがゆっくりになったり、話が噛み合わなくなったりすることもあるでしょう。また、はっきりと話せるときと、ぼんやりとしているときが交互に現れることもあります。
やがて、日中もうとうとする時間が増え、肩を叩いても反応が鈍くなっていきます。疲れやすくなっていることも影響し、次第に寝ている時間が長くなっていくでしょう。
食事が摂れなくなってからの余命は?
老衰が進み、徐々に様子が変わっていくなかで、食事がとれなくなったときに不安を感じる家族も多いようです。
口から食事がとれなくなると、点滴や経鼻栄養(鼻からチューブを入れて栄養を補給する方法)、胃ろう(胃に直接栄養を送る方法)など、血管や胃に直接栄養を届ける手段が選択されます。
食事をとらず、点滴などの処置を行わない場合の余命は約1週間、点滴のみを行う場合は1〜2か月ほどとされています。また、経鼻栄養や胃ろうを用いる場合の余命は約2年といわれています。
老衰による食事や栄養摂取の変化
食欲が低下し、徐々に口から食べ物をとることが難しくなっていきます。ここでは、実際にどのような経過をたどるのか、食事の変化について説明します。
食欲や食事の形状の変化
高齢になると食べ物を咀嚼し、飲み込む力が弱くなります。固いものが食べられなくなるのはもちろんのこと、今まで食卓に並んでいる料理も飲み込めなくなります。
そのため、食事を細かくすりつぶすなどペースト状にするのが一般的です。飲み物も水のようにサラサラしているとむせる原因となるため、ポタージュのようにとろみをつけることもあります。
誤嚥(ごえん)を起こすと肺炎になってしまう危険性があるため、ゆっくりと食べるようにし、医療従事者や家族が食事の見守りや介助を行います。
さらに、高齢者は活動量が減るだけでなく、身体が必要とするエネルギー量も少なくなります。また、食べ物が胃の中に留まる時間が長くなり、摂取した栄養素をうまく消化・代謝できなくなることもあります。そのため、食欲が低下するのは自然な現象です。
無理に食べさせようとするのではなく、本人の意思を尊重しながら様子を見守ることが大切です。
点滴
食事の代わりの栄養摂取方法として代表的なものといえば点滴です。直接血管に輸液が送られるため、食べ物のように胃や腸で消化・吸収をする必要がなく、身体への負担が少ないといえます。また、医療機関であれば、手術なども必要なくすぐにはじめることができます。
一般的に点滴と聞いてイメージするのは、腕や足の血管から投与する末梢点滴でしょう。末梢点滴は、食事の代わりになるほど栄養のあるものではなく、長期間使用されるものではありません。点滴によって投与される水分の処理も難しくなり、むくみを招くこともあります。
必要としているエネルギー量が高い場合は、中心静脈栄養が向いています。中心静脈栄養はカテーテルの挿入部から感染症を起こしやすいというデメリットもあり、管理が難しいため、医療機関や施設によっては実施できないこともあります。
経鼻栄養
口から食べ物をとることが難しくなっても、胃や腸で消化・吸収が可能であれば、胃に栄養剤を送る方法を選択することが多いでしょう。
そのひとつが経鼻栄養です。これは、鼻の穴から胃にチューブを挿入し、栄養剤を投与する方法です。
病院であれば、手術の必要はなく、ベッド上でチューブを挿入することが可能です。ただし、胃や食道からの逆流が起こることで誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、一時的な処置として行われることが一般的です。
また、食事をしていないときも常に鼻にチューブが入っているため、不快感を伴うことがあり、本人が嫌がる場合もあります。
胃ろう
胃ろうは、腹部に穴を開けてカテーテルを挿入し、胃に直接栄養剤を注入できるようにする方法です。手術を行う必要があるため、手術に耐えられるだけの呼吸機能や心機能や体力がある方に適用されます。
点滴よりもエネルギーや栄養を摂取しやすく、挿入部の不快感も比較的少ないため、長期間の使用にも向いています。栄養剤の注入も簡単で介護者の負担も少なく在宅や施設でも管理しやすい方法です。
看取りをする家族にできることや心構えは?
老衰が進むと、最期の時間をどのように過ごすかを考えることが大切になります。どこで最期を迎えるのかを決め、会いたい人に会うなど、悔いのない時間を過ごすためには、家族の協力が欠かせません。本人の希望を尊重しながら、穏やかに過ごせる環境を整えることが大切です。
最期の過ごし方を考える
点滴など比較的身体への負担が少ない処置に限らず、胃ろうや人工呼吸器、人工透析などの延命処置を選択する場合もあります。老衰では、できるだけ自然なかたちで最期を迎える傾向がありますが、状況によっては選択を迫られることもあるでしょう。
そのため、できるだけ早い段階で本人の意思を確認し、家族で相談しておくことが大切です。事前に話し合っておくことで、後悔の少ない選択がしやすくなります。
また、病院・施設・自宅など、どこで最期を迎えるかも考えておくことが重要です。身体の状態や家族が介護できるかどうかによって選択肢は変わります。家族の負担をできるだけ軽減しながら、本人の希望に沿えるよう、介護サービスを活用するなど工夫することも大切です。
本人と積極的にコミュニケーションをとる
本人とは、できるだけ顔を合わせ、積極的にコミュニケーションをとることが大切です。目が見えにくくなったり、反応が薄くなったりしても、聴力は最後まで残ることが多いため、返事がなくても家族の声が届いている可能性があります。
死に向かう恐怖は、本人にしかわからない深いものですが、これまでの人生を振り返り、感謝の気持ちを伝えることで希望につながることもあります。長い時間を共に過ごしてきた家族だからこそ、伝えられる思いがあるしょう。
身の回りのお世話をする
本人が自分で身の回りのことをできなくなると、周囲の人が介助をする必要があります。自宅で過ごす場合、食事やトイレ、お風呂、着替えなどの日常的な介助を家族が担うことになります。
また、生活環境を整えることも重要です。本人がリラックスできるよう、好きなテレビ番組や音楽を流すのもよいでしょう。
さらに、転倒やベッドからの転落によるケガを防ぐために、床に不要なものを置かない、ベッドの高さを低くする、柵をつけるなどの工夫をすることも大切です。
家族も無理しないようにする
大切な人を失うことは大きな悲しみであり、家族も深い心の傷を負うものです。さらに、介護による心身の疲労や、仕事を休むことによる経済的な負担を感じることも少なくありません。
しかし、家族が無理をしすぎることで、本人との最期の時間がつらい思い出になってしまうのは悲しいことです。同じ思いを持つ家族同士で悲しみを分かち合い、気持ちを整理することが大切です。
ときには好きなことをしたり、別のことに意識を向けたりして、心をリフレッシュする時間を持ちましょう。
亡くなった後に備えることは?
ご本人が最期の時間を過ごしているときに、亡くなった後のことを考えるのは不謹慎だと感じる方もいるかもしれません。しかし、葬儀や供養について早めに準備しておくことで、家族の負担を軽減し、トラブルを防ぐことができます。
また、事前に話し合っておくことで、本人の意思に沿った形で執り行うことができるでしょう。ここでは、亡くなった後に備えて家族ができることについてご紹介します。
葬儀の準備をする
まずは、どの宗教や宗派で葬儀を行うかを決めましょう。また、親しい友人や知人、家族、親戚のどの範囲まで参列してもらうかも考えることが大切です。参列者の人数が多くなると、葬儀会場の規模も大きくなり、それに伴い予算も変わってきます。
近年では、親族を中心とした「家族葬」を選ぶ方が増えています。また、喪主や参列者に高齢の方が多い場合は、体力的な負担を考慮し、短時間で執り行える「一日葬」などの選択肢もあります。
なお、弊社「1日葬・家族葬のこれから」では、必要なものを含み、相場より価格を抑えたセットプラン料金でご用意しております。事前の相談から無料で承っておりますので、お気軽にご連絡ください。
お墓の準備など供養の方法を考える
最近では、終活の一環として、生前に自分のお墓を準備する方が増えています。特に老衰で亡くなる場合は、配偶者がすでに他界していることが多く、入る予定のお墓がすでに決まっているケースも少なくありません。
家族が定期的にお墓参りを続けられるか、お墓の管理費用を誰が負担するのかも確認しておくことが大切です。また、近年はお墓を持たず、遺族に代わって霊園や寺院が供養や管理を行う「永代供養」という選択肢を選ぶ方も増えています。
財産や遺言書の確認をする
本人が亡くなったあとにトラブルになりやすいのが、家財や不動産、預貯金などの財産分与です。
エンディングノートや遺言書を本人が準備していたとしても、家族がその存在に気づかないことや、どこに保管されているかわからないケースもあります。そのため、生前に確認しておくことでスムーズな手続きを進めやすくなります。
また、保険会社は老衰死を病死として扱うことが多く、生命保険の受取が可能なケースがほとんどです。ただし、生命保険は自動的に支払われるものではなく、受取人が請求しなければなりません。必要な書類や手続きを事前に把握し、速やかに対応できるよう準備しておくと安心です。
葬儀の準備が必要になったら葬儀社に相談を
老衰が進み、食事が摂れなくなったり、歩けなくなったりする姿を見守ることは、家族にとってつらいことかもしれません。しかし、老いることは自然な流れであり、長い人生を全うすることは「大往生」ともいわれるほど誇らしいものです。
最期の時間をできるだけ後悔なく過ごせるように、身の回りのケアをしながら、積極的にコミュニケーションをとることが大切です。また、亡くなった後に家族がトラブルなく過ごせるよう、早めに葬儀や供養の準備を進めておくことをおすすめします。
弊社では、価格を抑えたプランパックでの葬儀をご用意しています。参列人数に応じた広さの式場で、現代に合わせたシンプルな葬儀を行えます。依頼・相談は24時間365日受け付けているので、興味をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。
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