直葬とは、ごく身近な親族や友人などだけで火葬を行うコンパクトな葬送形式のことです。
親族の葬儀について考える時、優先させるものはひとそれぞれです。しっかりと弔いたいものの、負担の大きな葬儀にはためらってしまう方は少なくありません。これまでの葬儀は2日間かけて多くの弔問客を迎えるのが一般的でしたが、最近ではよりシンプルでコンパクトな葬儀を望まれる方が増えてきています。
この記事では、葬儀を最小限まで省いた「直葬」について解説しています。直葬はほかの葬儀とは少し異なる葬儀形式であるため、メリットやデメリットをしっかり把握しておくことが肝心です。具体的な葬送のイメージを掴み、納得のいく葬儀を行うための手がかりとしてください。
この記事を要約すると
- 直葬(ちょくそう)とは、通夜や告別式を省き、火葬のみを行う葬儀形式です。経済的・身体的負担を軽減したい方におすすめです。
- 直葬の費用相場は「20〜50万円」と、約119万円とされている葬儀費用の相場より、大幅に抑えることができます。また、直葬の流れは、「通夜」「告別式」を省いてるのみで、一般的な葬儀と変わりません。
- 直葬を行う際の注意点は、「菩提寺に事前に確認する」「24時間は安置する場所が必要」などが挙げられます。お坊さんの中には十分に供養できないと考え、納骨を断れることもありますので、事前に直葬で行う確認をしましょう。また、通夜や告別式がないとはいえ、法律で死後24時間は火葬を行えないため、安置場や自宅で安置するなどが必要です。
直葬(火葬式)とは
直葬(ちょくそう)とは、通夜や告別式といった儀式をせずに、火葬のみを行う葬儀形式です。亡くなった後、24時間の安置期間を経たのち出棺し、火葬を行います。火葬のみを行うため、火葬式とも呼ばれます。
直葬が選ばれる主な理由は以下のとおりです。
- 費用を抑えやすい
- 手続きや儀式にかかる時間が短縮できる
- 派手な儀式を避けて、シンプルなお別れができる
- 身内だけで静かに執り行える
高齢化や核家族化、葬儀に対する考え方の変化によって、これまで行われてきた葬儀の形式が合わないケースが増えています。儀式に対するこだわりがない場合や金銭的・身体的な負担を軽減したい場合は、直葬を選択肢に入れてもよいでしょう。
直葬と家族葬・一日葬との違い
直葬と家族葬・一日葬の主な違いは以下のとおりです。
形式 | 通夜 | 葬儀・告別式 | 参列者の範囲 |
---|---|---|---|
直葬 | なし | なし | ごく身近な親族・友人 |
家族葬 | あり | あり | ごく身近な親族 |
一日葬 | なし | あり | 限定しない |
直葬の場合、参列者の範囲は限定せず、喪主のほか近親者や友人などで見送ることがほとんどです。直葬にかかる時間は、通夜を行わない一日葬よりさらに短くなります。
直葬と家族葬の違いは、以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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直葬の費用
直葬の費用の相場は20万~50万円が目安です。特定サービス産業動態統計調査(経済産業省)のデータをもとに算出した葬儀費用の相場の約119万円と比較すると掛かる費用が少ないといえるでしょう。
直葬では、一般的な葬儀では必要な宗教者への謝礼・葬儀場使用料などが必要ありません。直葬の費用には主に以下のものがかかってきます。
- 寝台車・霊柩車
- ドライアイス
- 棺・骨壷など
- 運営スタッフ
このほかご遺体安置を安置施設など別の場所で行ったり、火葬場手続きの代行を依頼したりする場合、別途費用がかかることもあります。プランに含まれるものは葬儀社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
なお、直葬の費用については、以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてみてください。
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直葬のメリット
通夜や葬儀をしない直葬には、3つのメリットがあります。一つずつ解説します。
1.経済的な負担を減らせる
直葬のメリットの1つ目は、費用を必要最小限に抑えられるので、経済的な負担を減らせることです。
一般的な葬儀は、通夜・告別式と2日間にわたって行われます。会場の設営、宗教者や弔問客へのお礼・もてなし、香典返しなど、一般葬には多額の費用が必要です。直葬ではご遺体を安置したあと葬儀をせずに出棺・火葬となるため、儀式やもてなしの費用は発生しません。
2.時間的な負担を減らせる
直葬のメリットの2つ目は、時間的な負担を減らせることです。
24時間の安置時間が過ぎると、ご遺体を火葬場へ搬送し火葬します。通夜・告別式を2日間かけて行う一般的な葬儀と比べると、直葬にかかる時間は搬送・火葬の数時間だけです。直葬では、遺族の時間的な負担を最小限に抑えられます。
3.精神的な負担を減らせる
直葬のメリットの3つ目は、近親者のみで行うため精神的な負担を減らせることです。
葬儀社・宗教者とのやり取りから参列者の席順決めまで、大小多くの不慣れな作業は遺族の負担となります。直葬は葬儀を行わないため、宗教者や会葬者との接触もありません。直葬では、葬儀に伴う精神的な負担を減らせるといえるでしょう。
直葬のデメリット
時間も費用もコンパクトな直葬ですが、デメリットもあります。ここでは、主な3つのデメリットを解説します。
1.親族・菩提寺などの理解が得られないことがある
直葬のデメリットの1つ目は、親族や菩提寺などの理解が得られないことがある点です。
日本でこれまで行われてきた一般的な葬儀では、2日間かけて通夜・葬儀を行います。そのため、故人を送る儀式を省略するのは弔いの気持ちが足りないという見方をする人もいるでしょう。
また納骨のためには葬儀や戒名の授与を必須と考えるお寺もあるため、菩提寺がある場合は要注意です。
2.弔問対応に時間がかかることがある
直葬のデメリットの2つ目は、個別の弔問対応に時間がかかることがある点です。
一般的な葬儀では、通夜・告別式で故人とのお別れができますが、直葬では正式に故人とのお別れをする場がありません。故人と親しかった親戚・知人などが、後日お別れをしたいと弔問に訪れ、何度も対応が必要となるケースもあります。故人の交友関係が広かった場合などは注意しましょう。
3.故人とのお別れの時間が少ない
直葬のデメリットの3つ目は、故人とお別れする時間が十分にとれない点です。
通常2日間かけて行う儀式を短縮して火葬のみを執り行うため、親族や知人と思い出話などをする時間も限られます。直葬を行う場合は、以上のデメリットがあることを念頭におき、後悔のないよう望みましょう。
なお、直葬のデメリットについては、以下の記事でさらに詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
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直葬の注意点
直葬は一般的な葬儀と異なる部分があるため、注意すべき点がいくつかあります。思わぬトラブルにつながることもあるので、直葬を選ぶ際は事前に準備しておきましょう。
24時間は安置場所が必要
直葬でまず気を付けたいのは、安置場所の確保です。
日本の法律では、死後24時間たたないうちは火葬も埋葬もできません(参照:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律|第3条」)。また病院で亡くなった場合、病院の霊安室から、ご遺体をなるべく早く出なければなりません。そのため、火葬までの間、ご遺体を安置できる場所が必要となります。
通常、安置場所として利用されているのは、自宅や民間の安置施設などです。夏場や火葬場が混雑して火葬までに時間がかかるケースでは、ドライアイスの準備も必要です。
親族の理解を得る
直葬をするにあたり、親族の理解を得ておくことが重要です。
直葬は広く行われてきた葬儀の形式とは異なります。そのため先に述べたように、直葬に対するネガティブなイメージを持っている人も少なくありません。
直葬を選ぶことで不満を抱く人が出ないよう、直葬にする理由を説明し、理解を得るようにしましょう。
菩提寺の承諾を得る
菩提寺がある場合、直葬を選ぶにあたって菩提寺の承諾を得ておきましょう。
直葬では葬儀を行わないため、「戒名がない」「十分な供養が行えない」などの理由で、菩提寺から納骨を断られる恐れがあります。菩提寺への納骨を考えている場合は、事前に菩提寺への確認を行いましょう。
必要に往じて後日弔問の機会を作る
故人に親族が多い場合や交友関係が広い場合、お別れができないことに不満を感じる人が出てくるケースがあります。
後日弔問の機会を設けるなどして、故人に縁のある人たちがきちんとお別れできるようにしましょう。
葬祭費の補助金制度を確認する
国民健康保険や各種社会保険などでは、被保険者が亡くなった時に「葬祭費」「埋葬費」として、葬儀費用の一部を補助する制度があります。(参考:国民健康保険 葬祭費(目黒区役所))
しかし、一部の自治体では、直葬を葬儀とみなさず、葬祭費の補助金が支給されない場合もあります。直葬を葬儀とみなすかどうか、補助金支給の有無については、自治体によって異なるため、受給を考えている場合は事前に自治体に確認をとりましょう。
直葬の流れ
前述のとおり、直葬が一般的な形式の葬儀と異なるのは、通夜や葬儀・告別式がない点です。ここでは、ご逝去から収骨(お骨上げ)までの直葬の流れを紹介します。
ご逝去~ご遺体搬送
病院で亡くなった場合、医師が死亡を確認すると死亡診断書を発行します。自宅で亡くなった場合は主治医に連絡し、死亡が確認されると死亡診断書が発行されます。
病院の場合、ご遺体を霊安室に長時間保管できないため、安置施設への搬送が必要です。葬儀社や専門業者に連絡し、搬送を依頼します。場所にもよりますが、お迎えの車が到着するまでの時間は、およそ1時間です。自宅で亡くなった場合は、そのまま自宅安置となることがほとんどです。
ご遺体安置
ご遺体を安置施設に搬送したら、出棺までの間、安置時間が必要となります。日本の法律では死亡後24時間は火葬・埋葬ができません。また火葬場が混雑している場合も、火葬まで時間がかかることがあります。
自宅で安置する場合はご遺体の状態の変化を防ぐために、ドライアイスで冷やします。安置場所の室温の目安は18度とされています。温かい季節や、冬場でも安置期間が長引く場合は、ご遺体の状態に注意しましょう。
葬儀社との打ち合わせ
ご遺体を安置したあと、必要に応じて葬儀社との打ち合わせを行います。直葬では基本的に葬儀を行いませんが、納棺から火葬までをすべて個人で行うのは難しいため、葬儀社に依頼するのがおすすめです。
打ち合わせでは、以下の内容を確認します。
- 施主を誰が務めるか
- 納棺を誰がどのように行なうか
- 読経や祈祷などを行うか
- 衣装をどうするか
- 参列者を案内するか
- 火葬場の予約はいつか
- オプションを利用するか
- 全体費用がいくらになるか
直葬の場合、参列者に対する挨拶なども基本的にはないため、必ずしも喪主を立てる必要はありません。ただし、葬儀社と契約をしたり打ち合わせをしたりする代表者は決めておいた方がいいでしょう。
また、プラン内容の詳細は葬儀社によって異なりますが、お花をはじめとしたオプションを用意していることもあります。希望があれば、打ち合わせで葬儀社に確認しましょう。
納棺
出棺までに納棺を行います。ご逝去から24時間が過ぎたら、葬儀社または親族で、故人を棺に納めます。故人の愛用品など、お別れの品を一緒に棺に納めてもよいでしょう。
出棺
納棺が済んだら霊柩車に棺を乗せ、出棺となります。火葬場へ同行する家族・親族が複数人いるものの自家用車がない場合は、火葬場までの交通手段の用意が必要です。
火葬
火葬場に到着したら火葬を執り行います。遺族の要望に合わせて僧侶が読経などを行う場合もあります。火葬の所用時間は1~2時間です。
収骨(お骨上げ)
火葬が終わったらお骨を拾い骨壷に納める「収骨(お骨上げ)」を行います。血縁の近い順に二人一組になり、長い箸でお骨を拾い上げ、骨壷に入れていきます。最後に喉仏を納めて終了です。
直葬に関するよくある質問
ここからは直葬を考える時に気になる点をQ&A形式で解説します。直葬を選ぶ際の参考としてください。
直葬でお骨が不要な場合はどうすればよいでしょうか。
お骨が不要な場合の火葬場の対応は、自治体によって異なります。
収骨の慣習は地域によって異なり、関東地方の場合はお骨のすべてを引き取る「全収骨」、関西地方の場合は一部だけを引き取る「部分収骨」になるのが一般的です。
自治体によっては、お骨の受け取り拒否が認められなかったり、焼骨の処分に費用がかかったりすることもあります。収骨する地域や火葬場によって異なるため、事前の確認が必要です。
直葬を選ぶと後悔するのでしょうか?
直葬を選んだことで後悔する場合もあります。直葬ではいくつかの儀式を省くため、親族や菩提寺の理解が得られないことによるトラブルが起こったり、弔問対応に時間がとられたりする場合があります。
気持ちの整理などの点でも後悔のないよう、直葬を選ぶ前には周囲ともよく相談し、入念に検討しましょう。
直葬の場合、服装はどうすればよいですか?
直葬での服装は、親族も参列者も葬儀と同じで問題ありません。
男性 | ブラックスーツ、黒ネクタイ、白シャツ、黒靴下、黒革靴 |
女性 | 黒ワンピース・アンサンブル、黒ストッキング、黒パンプス |
直葬で儀式は行いませんが、火葬場には他家の参列者などもいるため、同じ印象の服装が無難といえるでしょう。喪服を用意できない場合は、ネイビーやダークグレーなど喪服に近い色調のスーツなどを選んでください。
直葬のマナーについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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直葬の場合、戒名をどうすればよいでしょうか?
直葬の場合、葬儀を行わないため戒名を授かるタイミングがありません。一方で、菩提寺への納骨を考えている場合は戒名が必要です。戒名の授与には葬儀が必要と考えるお寺もあるため、菩提寺へ確認しましょう。
なお以下の場合は戒名が不要です。
- 納骨せず手元供養とする
- 無宗教の公営墓地や民営墓地を利用する
- 墓石のない海洋散骨などの自然葬をする
直葬を選ぶ際の戒名の問題については、以下の記事でさらに解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
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親族が直葬をする場合、香典は必要でしょうか?
直葬における香典は、喪主の考え方次第です。喪主が「葬儀を行わないので香典も不要」と考える場合は香典は不要です。また葬儀にまつわる負担を軽減するために直葬を選ぶことも多いため、香典を負担に思う喪主もおられるでしょう。
とはいえ、香典は弔いの気持ちを表わすものでもあります。事前に喪家から香典の受け取りを辞退する連絡がなければ、香典の準備をしておくとよいでしょう。
香典をいただいた場合、どうすればよいでしょうか?
直葬で香典をいただいた場合、香典返しが必要です。
香典返しは、エリアによって「当日返し」「後返し」に分かれます。後返しは、忌明けとなる四十九日から1か月以内が目安です。いただいた金額の1/3~1/2のものを返しましょう。
直葬はデメリットをよく理解して選ぶことが大切です
この記事では直葬の費用やメリット・デメリットなどを解説しました。直葬は火葬式とも呼ばれ、通夜・葬儀を行わない葬送形式のことです。費用は一般葬の半分程度で済む場合もあり、時間も費用もコンパクトに収められます。
しかし、親族・菩提寺などの理解が得られない場合があったり、後日の弔問対応に時間がかかることがあったりするなどデメリットもあります。亡くなった方の葬儀は一度きりなので、メリットとデメリットをよく理解し、悔いが残らないよう最善の方法を選びましょう。
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