人が亡くなった際に行う手続きは、100以上もあると言われており、それぞれで手続き内容や必要な書類は異なります。該当する手続きの種類や優先順位が分からず、どうすればよいのか分からないと悩む人も少なくありません。
このような悩みは、優先順位や手続き内容を正しく理解することで、解消できます。この記事では、葬儀後に必要な手続きを場所別や期限別に分けて分かりやすく解説していきます。
効率良く手続きを進めるポイントも紹介していますので、負担を最小限に抑えながら作業を進めていきましょう。
身内が亡くなったらすること
身内が亡くなった場合、最初に行なうのが葬儀の手配です。具体的な流れは、病院で亡くなった場合と自宅で亡くなった場合で詳細が異なります。ここでは各ケースでどのよう対処すべきなのか、具体的に解説していきます。
病院で亡くなった場合
病院で亡くなった場合、以下のような流れで葬儀の準備を進めていきます。
- 死体検案書あるいは死亡診断書の発行を医師にお願いする
- 遺族や親族に訃報連絡する
- 葬儀社を選び、連絡する
死亡診断書は、死亡届や埋火葬許可申請に必要です。故人の逝去後、医師が作成してくれるので、失くさないように保管しておきましょう。
次に葬儀を喪主だけで進めるのは大変であるため、協力をお願いする意味も込めて、親族へ訃報連絡します。
故人の勤務先や知人に対しては、葬儀日程が決まってから連絡するため、亡くなった直後は親戚のみへの連絡で問題ありません。連絡した後は、葬儀社に連絡して葬儀の準備を進めていく流れとなります。
一般葬・一日葬・家族葬といった、葬儀形式の選択や法要の日程は、葬儀社との打ち合わせで決めていきます。葬儀社に連絡した後の流れについては、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はチェックしてみてください。
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自宅で亡くなった場合
自宅など病院以外の場所で亡くなった場合、病気を診てもらっていた主治医に連絡し、自宅に来てもらいます。不審な点がなければ、死亡診断書を作成してくれます。
故人が病気療養中ではなく、その他の理由で亡くなった場合、事件性を確認しなければなりません。ご遺体をそのままの状態で動かさないようにし、警察を呼びましょう。裸の状態などの場合、服を上から被せてあげたいと思うかもしれませんが、身内であっても勝手に遺体を動かしては行けません。
警察が到着すると現場検証が行われ、検視へと移る流れです。検視結果に基づいて死体検案書が発行された後に、葬儀社へ連絡し準備を進めていく流れです。ご遺体が戻ってくるまでは警察の指示を待ちましょう。
葬儀を執り行ううえで必要な手続き
身内が亡くなった場合、まずは葬儀に集中すると前述しましたが、葬儀を執り行ううえで必要な手続きが2つあります。
- 死亡診断書と死亡届の提出
- 埋火葬許可証の交付申請
人が臨終すると、必ず医師が死亡診断書を作成します。死亡診断書とセットになっているのが死亡届です。必要事項を記入してから役所に提出すると、戸籍上に死亡と記載され、「住民票の抹消届」も自動で処理されます。
死亡届と同じタイミングで役所へ提出するのが「埋火葬許可証の交付申請書」です。申請書の項目に遺族が記入したうえで手続きを行います。
ただし、この2つの手続きは依頼を受けた葬儀社が代理で申請してくれるため、自身で役所へ向かう必要はありません。書類への記入と押印のみを行ないます。
死亡届と埋火葬許可申請書が受理されると、火葬する際に必要となる「火葬許可証」が発行されます。
弊社では、葬儀後に行う手続きが全く分からない方に向けてのサポートも行なっています。分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。
葬儀後の手続きと優先順位(2024年版)
家族が亡くなった場合、葬儀だけでなくさまざまな手続きを行わなければなりません。手続きのなかには期限付きのものもあるため、優先順位を付けたうえで順番に進めていくようにしましょう。手続きを進める主な場所としては役所や銀行があります。
ここでは、場所別の申請内容と優先順位について解説していきます。
葬儀後の手続き(役所)
葬儀後の手続きを行う場所として最も多いのが役所です。役所で行う手続きの優先順位と期限は以下の通りです。
【死亡後7日以内】
1.死亡届、死亡診断書の提出
2.埋火葬許可証の交付申請
【死亡後14日以内】
3.年金受給権者の死亡届(厚生年金は10日以内)
4.国民健康保険の資格喪失届
5.世帯主の変更届
6.介護保険資格喪失届
【死亡後2年以内】
7.国民健康保険葬祭費支給申請
8.高額医療費支給申請
9.介護保険高額介護サービス費支給申請
10.国民年金死亡一時金請求書
【死亡後3年以内】
11.相続登記
役所で行う手続きは9種類ほどありますが、7~10の項目は該当する人のみが対象であり、申請することで支給金の交付を受けられます。
各種手続きのチェックリストは以下からダウンロードできるので、ぜひご活用ください。
葬儀後の手続き(銀行・その他)
葬儀後の手続きを行う場所は、役所のほかにも複数あります。場所別の手続き内容と期限は以下のとおりです。
【銀行で行う手続き】
・銀行の預貯金払い戻しや名義変更(期限なし)
【年金事務所で行う手続き】
・厚生年金の手続き(期限なし)※故人が加入しており未受給者の場合
・年金受給権者死亡届
・加給年金額対象者の不該当届
【役所・銀行以外で行う手続き】
・携帯やクレジットカードなど(各契約先へ連絡)
・運転免許証(運転免許センター・警察署)
・雇用保険受給資格者証の返還(ハローワーク)
・埋葬費支給申請(全国健康保険協会か労働基準監督署)
・死亡保険金の請求(生命保険会社)
年金関連の手続きは、種類によって役所と年金事務所のいずれかで手続きすることになります。種類が多いため、すべてまとめて役所で相談したうえで説明を受けることから始めていきましょう。次章では、ここまで紹介してきた各種手続きの詳細について期限別で解説していきます。
死亡してから10日以内に行う手続き
葬儀が終わったあとは、年金などの手続きを中心に進めていきます。優先して行う手続きは以下の2つです。
- 年金受給権者の死亡届
- 加給年金額対象者の不該当届
一口に年金と言っても、厚生年金・国民年金・共済年金などの種類があり、手続き方法が異なります。故人と関係のあるものだけ手続きを進めていきましょう。
年金受給権者の死亡届
故人が年金受給者であった場合、年金受給権者の死亡届を年金事務所へ提出します。期限は厚生年金受給者の場合は10日以内、国民年金の場合は14日以内となります。ただし、日本年金機構にマイナンバーを収録している人は、原則届出は不要です。
手続きの際には年金証書の年金コード・基礎年金番号が必要です。なお、亡くなった日の翌日以降に受け取った年金は、後日返納しなければなりません。
加給年金額対象者の不該当届
加給年金の支給対象である場合は「加給年金額対象者の不該当届」の手続きが必要です。
加給年金は、老齢基礎年金や障害基礎年金の受給者で、扶養している配偶者や子供がいる場合に支給されます。必要書類の準備や記入方法は、お住いの住所を管轄している年金事務所へ相談しましょう。
該当しているか分からない場合は、市役所の年金窓口で調べられます。なお、届出期限について「日本年金機構」に問い合わせたところ「10日以内という期限はあくまでも目安であり、多少過ぎても手続きは可能」とのことでした。
死亡してから14日以内に行う手続き
ここでは、死亡してから14日以内を期限とする手続きについて解説していきます。具体的には以下の3つが該当します。
- 国民健康保険の資格喪失届
- 世帯主の変更届
- 介護保険資格喪失届などの手続き
健康保険は、加入している内容によって申請先や内容が異なります。加入機関にまずは相談したうえで手続きを進めていきましょう。
国民健康保険の資格喪失届
自営業で国民健康保険に加入している場合、14日以内に役所で手続きを進めます。手続きの際に本人の保険証も提出しましょう。会社員で社会保険に加入していた場合は、資格喪失の届出書を提出し、健康保険証は返還します。
社会保険の手続き期限は死亡から5日以内となっており、基本的に事業主が手続きを進めます。自営業以外の場合は会社へ確認しましょう。なお、亡くなった人の扶養に入っていた場合は、自分自身で新たに保険加入する必要があります。
世帯主の変更届
亡くなった人が家の世帯主だった場合、死亡日から14日以内に役所で世帯主の変更手続きを行います。ただし、世帯主の変更手続きはすべての人が対象となるわけではありません。
【世帯主の変更手続きが必要なケース】
・世帯に15歳以上の人が2人以上住んでおり、新しい世帯主が分からない場
【世帯主の変更手続きが不要なケース】
・生前1人で暮らしており、亡くなったことで誰も住まなくなった場合
・15歳未満の子供を除き、世帯に残ったのが1人だけの場合
手続きが必要なケースに該当する場合は、本人確認書類・委任状・印鑑などを用意して役所の担当窓口で相談しましょう。
介護保険資格喪失届などの手続き
故人が生前に要介護状態にあり、介護保険資格の認定を受けていた場合は、介護保険資格喪失届の手続きが必要です。
手続き期限は、死亡日から14日で親族であれば誰でも手続きできます。届出する際に「介護保険被保険者証」などが必要ですが、市区町村によって具体的なルールが異なるため、まずは担当窓口で確認しましょう。
ちなみに、介護保険料は月割で再計算され、保険料が変更になった場合は「介護保険料変更決定通知書」が送付されます。
死亡してから1ヵ月以内に行う手続き
故人が就職活動中で失業手当を受け取っていた場合には、資格を証明する「雇用保険受給資格者証」の返却が必要です。
返却期限は死亡日から1ヵ月以内で、居住エリアを管轄しているハローワークで手続きをします。手続きの際は、住民票や故人の死亡事実を確認できる書類(死亡診断書・死体検案書など)が必要です。
雇用保険受給資格者証が見つからない場合は、死亡の旨をハローワークに連絡しましょう。
死亡してから3年以内に行う手続き
2024年4月から死亡してから3年以内に「相続登記」を行うことが義務化されました。相続登記とは、故人が所有していた不動産の名義を相続人の名義に変更することです。期限は不動産を相続したことを知ってから3年以内で、違反した場合は10万円以内の過料が発生します。
相続登記は不動産のある地域を管轄している法務局で手続きができます。ただし、戸籍謄本といった複数の書類が必要なうえ、ルールに沿って申請書を作成しなければなりません。相続登記する場合は、司法書士や弁護士へ相談してみましょう。
司法書士に相続登記を依頼した場合の費用は、不動産の内容によるものの15~30万円が相場です。ただし、相続する土地の固定資産税評価額が高いほど、費用は高くなる傾向があります。
死亡してからなるべく早めに行う手続き
手続き期限はないものの、人が亡くなった際に行う手続きはほかにも複数あります。
- ガス・水道・電気などの契約者名義変更
- クレジットカード・携帯電話・その他サービスの解約手続き
- 運転免許証やパスポートの返納
手続きをしないと、利用料金を請求されたりサービス更新などの案内が届いたりします。なるべく早めに手続きを済ませましょう。ここでは、各手続きの詳細や連絡先などについて解説していきます。
ガス・水道・電気などの契約者名義変更
亡くなった人が1人暮らしだった場合、公共料金は親族が代わりに解約の手続きをします。同居しており、その後も家族が住み続ける場合は、名義変更の手続きが必要です。手続きの流れはガス・水道・電気ともほぼ同じです。まずは契約会社に連絡しましょう。
具体的な手続き方法に関しては、契約会社から案内があります。名義変更する場合は、今後の生活スタイルの変化に合ったプランに変更することも検討しましょう。
クレジットカード・携帯電話・その他サービスの解約手続き
クレジットカードは「使用しなければ料金がかからないから」とそのままにする人もいますが、年会費などを請求される可能性があるため、早めに解約の手続きをしましょう。引き続き利用したいと考える人もいますが、クレジットカードは相続できません。
利用明細などを探したうえでカード会社に連絡し、契約者が亡くなったことを伝えて必要書類を送ってもらいます。携帯電話やそのほかのサービスに関しても、基本的に運営会社へ連絡を行い、必要書類に記入したうえで解約手続きを進めます。
運転免許証やパスポートの返納
運転免許証に関しては、基本的に返納の義務はありません。ただし、有効期間を満了していない場合、更新通知書のハガキが届いてしまいます。通知の停止を希望する場合は運転免許センターでの手続きが必要です。免許証と亡くなったことを確認できる書類を提出して、手続きを済ませましょう。
パスポートは、最寄りのパスポートセンターでの返納手続きが必要です。故人のパスポート・亡くなったことを確認できる書類・届出人の身分証明書を用意して窓口で手続きを進めましょう。なお、手続きの際に希望すればパスポートを形見として残すこともできます。
該当者のみが行うそのほかの手続き
ここまでは、基本的にすべての人を対象とした優先順位の高い期限がある手続きを解説してきましたが、以下のような一定の条件を満たした人のみが該当する手続きもあります。
- 中高年寡婦加算の申請
- 寡婦年金の申請
申請することで年金を支給してもらえる手続きであるため、忘れずにチェックしましょう。ここでは、該当する人の詳細や申請の条件などについて解説していきます。
中高齢寡婦加算の申請
中高齢寡婦加算は遺族厚生年金の1つで、厚生年金の加入者が亡くなった際に、その配偶者が加算給付で年金を受け取れます。寡婦加算には2種類あります。
- 中高齢寡婦加算:厚生年金の被保険者が亡くなったときに、その配偶者が40~64歳の間は遺族厚生年金に加算される形で支給される
- 経過的寡婦加算:遺族厚生年金を受けている配偶者が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受け取り始めたタイミングで、中高齢寡婦加算の代わりに加算される
中高齢寡婦加算の対象となるのは、夫が亡くなった時点で40歳以上65歳未満の妻で、生計を同じくしている子供がいない人です。経過的寡婦加算の対象は、夫を亡くした妻で昭和31年4月1日以前に生まれており、遺族国政年金の受給権がある人です。
詳しくは役所の年金窓口で相談してみましょう。
寡婦年金の申請
寡婦年金とは、亡くなった人が国民年金の第1号被保険者で特定の条件を満たした場合に、その配偶者が受け取れる年金のことです。条件の内容は以下のとおりです。
- 故人が保険料を納めた期間と国民年金保険料免除期間が10年以上ある
- 10年以上婚姻関係(事実婚を含む)にある
この2つの条件を満たしている場合、60~65歳までの間、寡婦年金を受け取れます。寡婦年金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から5年間です。詳しくは役所の年金窓口で相談しましょう。
給付金を受けられる各種手続き
年金以外にも、条件を満たしたうえで申請手続きを行うことで、各種費用を負担してもらえる制度が複数存在します。制度の種類とその詳細は以下のとおりです。
制度の種類 | 制度の詳細と手続き窓口 |
埋葬費支給申請 | 健康保険の加入者が亡くなり、葬儀を行う際に5万円が支給される。健康保険組合や全国健康保険協会で手続きする |
葬祭費支給申請 | 国民健康保険の加入者が亡くなり、葬儀を行う際に数万円が支給される。役所で手続きする。 |
死亡一時金の請求 | 国民年金の第一号被保険者として、指定の期間内で保険料を納付しており、老齢基礎年金等を受給しないまま亡くなった場合が対象。申請することで一時金が支給される。役所で手続きする |
高額療養費の支給申請 | 病院でかかった医療費が一定額を超えた場合に、超えた額を申請することで払い戻してもらえる。対象者が死亡した場合も、相続人が代理人として手続きできる。健康保険組合や役所で手続きする |
葬儀後の手続きを効率よく進めるためのポイント
ここまで、葬儀後に必要な主な手続きについて解説してきましたが、それぞれ手続き方法や必要な書類が異なります。また、残された家族の家族構成などによっても、さらに細かくルールが分かれています。これらの手続きを効率良く進めるために、以下のポイントを意識しましょう。
- 郵送物はすべて確認して捨てずに持っておく
- 関連書類はすべて管理しておく
- 紙に書き出すなどして頭のなかを整理する
死亡後の手続きに必要となる書類はすべて保管しておく必要があります。なるべくジャンル別に分けて管理しておくことで、再発行などの手間を軽減できます。故人が利用していた各種サービスに関する書類も同様に保管しておきましょう。
手続きの優先順位は、頭のなかだけで整理するのは難しいため、なるべく紙に書き出してリスト化しながら整理することも大切です。
葬儀後の手続きに関するよくある質問
最後は、葬儀後の手続きに関する、2つのよくある質問に答えていきます。
- 各種手続きを代行してもらうことはできる?
- 各種手続きは誰がするの?
すべての手続きを1人で進めるのが大変な場合の代行依頼や、代行できる人の範囲に関する内容を解説しているので、参考にしながら手続きを進めてみてください。
各種手続きを代行してもらうことはできる?
葬儀後の各種手続きは、専門業者に代行を依頼することも可能です。すべて任せられるわけではないものの、特に手続きの難しい以下のような作業は代行をお願いできます。
- 死後実務の処理
- 銀行口座凍結に関する連絡
- 遺産分割協議書の作成
- 入出金履歴や残高証明書の取得
- 相続税の申告
- 法定相続情報の一覧図作成
何の代行を依頼するかにもよりますが、主な依頼先としては弁護士・税理士・行政書士・司法書士があります。
各種手続きは誰がするの?
葬儀後の各種手続きを行う人に関しての規定はなく、遺族であれば誰でも代理人として手続きを行えます。どうしても1人で作業できそうにない場合は、家族で手続きを分担しながら進めましょう。前述したとおり、第三者に代行を依頼する方法もおすすめです。
優先順位を付けて最小限の負担で手続きを終わらせましょう
葬儀が終った後に行う手続きは、役所で行うものがほとんどです。手続きによって7日間・10日間・14日以内など期限付きのものもあるため、今回紹介した優先順位を参考に効率よく作業を進めていきましょう。
また、申請することで葬儀費用が一部戻ってきたり、年金を加算してもらえたりする制度も存在します。今回紹介した制度に当てはまる場合は、役所で申請について相談してみましょう。
弊社では、参列人数や予算に応じてさまざまな葬儀プランを用意しています。告別式のみの1日葬であれば、32万8,900円〜執り行うことが可能です。葬儀中や葬儀後の手続きに関するサポートも行なっていますので、お気軽にご相談ください。