葬儀や法要の後に行われる精進落としは、僧侶や参列者をねぎらうための大切な会食です。しかし、具体的な流れやマナーが分からないという人がほとんどでしょう。精進落としを行う喪主側はもちろん、参加する側にもマナーがあります。
この記事では、精進落としの意味や目的、流れについて分かりやすく解説していきます。また、事前に行うべき準備の内容や会食で行う挨拶の例文も紹介しています。精進落としについて、正しく理解したうえで僧侶や参列者に感謝の気持ちを伝えられるようにしましょう。
この記事を要約すると
- 精進落としとは、火葬や初七日法要など葬儀が終わった後に行う会食のことです。仏教行事の1つで、参列者やお坊さんをねぎらうことが目的です。
- 精進落としをしない場合、お坊さんには5,000〜1万円のお食事代をお包みしましょう。また参列者には、お持ち帰り用のお弁当を用意すると良いでしょう。精進落としをしないこと自体は決して悪いことではありません。
- 精進落としの際の遺族側のマナーは、伊勢海老や鯛などお祝い事を想起させる食事をことです。また、参列者が上座に座り、遺族側は下座に座りましょう。参列者側のマナーは、遺族は葬儀の準備などで疲労が溜まっているため、長居し過ぎないように気をつけましょう。
精進落としとは?
葬儀の後に行う「精進落とし」は、単なる食事ではなく葬儀に関係する仏教行事の1つです。近年は、生活スタイルの変化とともに実施するタイミングなどが変わってきています。
精進落としの準備をする喪主はもちろん参加する人も意味や目的について正しく理解しておく必要があります。ここでは、精進落としの意味や通夜振る舞いとの違いについて解説していきます。
精進落としの意味や目的
精進落としとは、会葬者や僧侶をねぎらう目的で葬儀のあとに実施する会食のことを指します。地方によってはお斎(おとき)・精進明けといった呼び方もします。
元々は、四十九日間が終わったあとの区切りとして、遺族が久しぶりに肉や魚を食べることを精進落としと呼んでいました。仏教では、命日から四十九日目に故人が浄土へ行けるように遺族も四十九日間は肉や魚を食べない習慣があったためです。
しかし、現代における精進落としは会葬者や僧侶を労うことが目的なので、実施するタイミングなどが変化しています。例えば、離れて暮らす親族の負担を軽減させるために、火葬中や初七日法要が終ったタイミングで実施する人が増えてきています。
なお、現代の精進落としでもお祝いごとを連想させる鯛や伊勢海老などは避けるのが一般的です。
精進落としと通夜振る舞いの違い
葬儀に関する会食として、精進落としとは別で通夜振る舞いを行います。通夜振る舞いは、お通夜が終わった後に一部の弔問客に出される食事のことを指します。
精進落とし、通夜振る舞いどちらも弔問客や僧侶に対する感謝の気持ちと故人を偲ぶといった意味が含まれますが、実施されるタイミングに違いがあります。
通夜振る舞いはお通夜の後に行なわれるのに対して、精進落としは火葬後・初七日法要・四十九日法要のいずれかのタイミングで行なうのが一般的です。
また、通夜振る舞いは多くの人が気軽に食べられるように、オードブルといった大皿料理が選ばれる傾向があります。一方で、精進落としは親族と僧侶のみの少人数で行われるため、1人に一膳ずつ用意するのが基本です。
精進落としの流れ
忌明けした際に食べる精進落としは、仏教行事の1つとして流れが決まっています。具体的な流れは以下のとおりです。
- 参加者が着席後、代表者が挨拶を行い献杯する
- 合掌後に会食が行われ、最後に締めの挨拶をする
ここでは、精進落としの具体的な流れについて解説していきます。
代表者が挨拶を行い献杯する
精進落としは、参加する人が予め決まっており、席順は僧侶・会社関係者・友人・知人・親族の順番で上座に着席します。喪主や遺族は入口に近い末席に座るようにしましょう。席次表がない場合、参加者は上座と末席を意識する程度で問題ありません。
全員が着席したあとは、喪主か親族の代表者が開始の挨拶で参列者にお礼を述べます。その後、食事の前に「献杯」します。献杯とは、故人に敬意を表してささげる杯のことです。
代表者が「献杯」と発声したら、参列者も「献杯」と唱和しましょう。一般的な乾杯とは違うため、拍手したり杯をぶつけたりしてはいけません。
会食中は、故人のエピソードなどを語りながら過ごします。親族以外の人が参列している場合は、遺族はお酌しながら席を回っていきます。
会食した後に締めの挨拶をする
食事が終わった後は、頃合いを見計らって喪主が締めの挨拶を行います。会食の時間は1~2時間ほどが目安となりますが、明確なルールはありません。故人の昔話で盛り上がっていたとしても、締めの挨拶が始まったときは静かにしておくのがマナーです。
締めの挨拶が終わり退出する際は、故人の遺影に合掌して冥福を祈り別れを告げます。早めに帰る人がいる場合は車を手配し、遺族は参加者が帰る際に見送るようにしましょう。
葬儀をスムーズに進めていくためには、精進落としだけでなく葬儀全体の流れについて理解しておくことが大切です。葬儀の全体的な流れは、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はチェックしてみてください。
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精進落としで出すお弁当の選び方や相場
精進落としで出す食事は、1人1膳が基本であり、仕出し弁当・懐石料理・お寿司などを用意するのが一般的です。鯛や伊勢海老といったお祝いの席で提供される食材をメニューにすることは避けましょう。季節に応じた料理で、年配の方でも食べやすいものがおすすめです。
精進料理の費用にルールはなく、1人あたり相場は3,000〜5,000円程です。予算内で参列者が喜んでくれそうなものを選んでみましょう。僧侶が精進落としを辞退した場合は、5,000~1万円のお食事代を渡すようにします。
料理を手配する際に、故人の分について用意すべきか悩む人もいます。故人用のお膳は「陰膳」という形式で準備するのが一般的です。ただし、必要としない宗派もあるため、事前に僧侶へ相談してみましょう。
精進落としの準備内容
喪主が行う精進落としの準備は、大きく分けて3つあります。
- 精進落としに参加してほしい人を招待する
- 僧侶も誘う
- 参加者分の料理を用意する
精進落としは、親族のみを誘うのが一般的です。ただし、火葬中や火葬後に実施する場合は、火葬に参列してくれた人全員への招待を検討しましょう。親しかった友人を招待してもまったく問題ありません。事前に出席確認を取り、念のため少し多めの数を手配しておきましょう。
精進落としには、僧侶も必ず招待します。スケジュールの都合で断られた場合は、お食事代として5,000円〜1万円をお車代と一緒に渡しましょう。小さな子供が参加する場合は、子供用の食事が用意できるかどうかも事前に調べておきます。
精進落としの挨拶例
精進落としでは、会食を始める前と後に喪主か親族の代表者が挨拶をします。具体的にどのようなことを話せばよいのか分からない人もいるでしょう。
ここでは、精進落としの挨拶について例文付きで解説していきます。例文を参考に自分なりの言葉で挨拶を考えてみましょう。
精進落としを始める際の挨拶と献杯の例
精進落としを始める挨拶の例文は、以下のとおりです。
本日はお忙しい中、故〇〇〇の葬儀にお集まりいただき、誠にありがとうございました。無事に葬儀も終えることができました。
誠にささやかではございますが、皆様への慰労と感謝を兼ねまして、精進落としのお膳を用意いたしました。故人との思い出などをお話ししながら、お時間の許す限りおくつろぎ頂ければと思います。本日は誠にありがとうございました。
挨拶の後は宗派によって乾杯の代りに献杯をします。「それでは、献杯のご唱和お願い致します。献杯」といった流れで挨拶を済ませましょう。精進落としの挨拶を親族に依頼する場合は、前もってお願いしておきます。
締めの挨拶例
精進落としの締めの挨拶の例文は、以下のとおりです。
皆様、本日はお忙しいなかでご参列いただきありがとうございました。
まだまだ皆様のお話を承りたく存じますが、皆様もお疲れのことと思いますので、この辺りで終了とさせていただきたいと存じます。どうぞお気をつけてお帰りください。本日は誠にありがとうございました。
精進落としが終わった後は、参加してくれた人達を見送る流れとなります。
精進落としをしない場合
精進落としでは、僧侶や参列者への感謝を込めて料理を振舞います。そのため、精進落としを行わないのは基本的にマナー違反とされていました。しかし、遠方からの参列者が多かったり高齢の方が多かったりすることを理由に、精進落としをしないケースも少なからずあります。
精進落としをしない場合も、マナーがありますので、事前に理解したうえで周知することが大切です。ここでは、精進落としをしない場合の流れやマナーについて解説していきます。
精進落としをしない場合の葬儀の流れ
精進落としをしないからといって、葬儀の流れが大きく変わることはありません。精進落としをしない場合は、以下のような流れで葬儀を進行していきましょう。
- 精進落としをしないことを事前に伝える
- 通常通り葬儀と法要を行う
- 火葬や法要が終わった際の挨拶で、精進落としをしないことを改めて伝える
- 返礼品とは別に、精進落としの代わりとなるものを渡す
参列者のなかには、精進落としがあると思い食事を取らずに参列する方もいます。精進落としに参加する親族を中心に、精進落としをしない旨を必ず伝えるようにしましょう。参加するのは親族が中心であるため、葬儀の参加者全員に伝える必要はありません。
精進落としをしない場合のマナー
精進落としをしない場合も、僧侶や参列者に対して感謝の気持ちを伝える必要があります。実施しない理由に関係なく、精進落としの代わりに僧侶に対して5,000〜1万円程度のお食事代を白い封筒に入れて渡します。
参列者には、お持ち帰り用のお弁当やその他の返礼品を用意します。夏場にかけては食中毒の心配があるため、カタログギフトなどがおすすめです。
精進落としのマナー
精進落としの内容や流れについて解説してきましたが、開催側と参加側の双方にマナーが存在します。具体的なマナーは以下のとおりです。
- 喪主や遺族は下座に座る
- 挨拶を依頼する場合は事前に声掛けしておく
- 会食で長居しすぎない
- 喪主や家族が悲しむような話題は避ける
上記4つのマナーについて、精進落としでよくある失敗を踏まえながら解説していきます。
喪主や遺族は下座に座る
精進落としに参加する場合、席順では上座と下座を意識する必要があります。席順は上座から僧侶・会社関係・友人・知人の順番で座るのがマナーです。喪主や遺族は入口に近い末席に座るようにしましょう。席に指定がない場合、多少前後しても問題ありませんが、上座と下座を意識するようにします。
親族以外の人が参加する場合は、喪主や親族から積極的に案内しましょう。
挨拶を依頼する場合は事前に声掛けしておく
精進落としの前と後に行う挨拶は、必ず喪主が行わなければならないわけではありません。親族に挨拶をお願いする場合は、その場でいきなり指名するのではなく、事前のお声がけしておくようにしましょう。喪主以外の親族が挨拶する場合、故人との間柄を先に話すようにします。
精進落としの挨拶を親族に依頼する場合、挨拶の際に納骨や法要の日程も一緒に伝えてもらうようにお願いしておきましょう。
会食で長居しすぎない
精進落としでよくある失敗が「会食で長居しすぎる」ことです。お酒が提供されることもあり、故人との思い出話が盛り上がり、長居しすぎてしまうといったケースがあります。
遺族は葬儀の準備などで疲労が溜まっています。楽しく話すこと自体は問題ありませんが、最低限の気配りを忘れないようにしましょう。
レストランなど周りに人がいる場合は、話す声の大きさにも注意が必要です。
喪主や家族が悲しむような話題は避ける
精進落としでは、故人との思い出などを話しますが、喪主や家族が悲しむような話題はさけましょう。具体的には、故人の最後の様子や病気の内容などがあります。また、死因などについての質問も避けましょう。
ただし、気を使いすぎて静かになりすぎるのもよくありません。故人とお別れするための会食でもあるため、昔話しなどを取り入れながら故人を偲びましょう。
精進落としに関するよくある質問
最後は、精進落としに関する2つのよくある質問について答えていきます。
- 日本食以外を出しても大丈夫?
- 精進落としをレストランなどで行う場合の注意点は?
精進落としで提供する料理や会場に関する内容を解説しているので、準備を進めるうえで参考にしてみてください。
日本食以外を出しても大丈夫?
精進落としで提供する食事は、仕出し弁当や懐石料理などが主流ですが、提供する食事に具体的なルールが存在するわけではありません。専門業者に手配する際に、日本食以外のメニューがあった場合は候補の1つとして検討してみましょう。
参加する側も、精進落としの会場で日本食以外を頼んだからといってマナー違反にはなりません。
精進落としをレストランなどで行う場合の注意点は?
精進落としは、自宅や斎場で仕出し弁当を用意するほかに、レストランや料亭を予約するケースもあります。専用会場ごと予約するため、葬儀と関係のない人が隣で食事をしているようなことはありません。
ただし、別の人たちが利用している可能性はあるので、大きな声で騒ぎすぎたりしないようにしましょう。喪主側は、葬儀場所からすぐに向かえるように、車の手配なども含めて準備しておきます。
精進落としを正しく行い故人を偲びましょう
精進落としとは、忌明けした際に親族全員で食べる食事のことで、精進期間が終わった後に執り行います。しかし、近年は生活スタイルの変化とともに、火葬中や初七日法要の後に行うケースが一般的になりつつあります。
会食を始める前に、親族の代表者は挨拶をし、僧侶や参列者に感謝の気持ちを伝えます。諸事情で精進落としをしない場合は、事前に周知したうえで代わりとなる返礼品を準備しましょう。
執り行う側・参加する側ともにマナーについて理解し、故人の思い出話に花を咲かせることも故人の供養の1つとなります。
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