「納棺の儀」を聞いたことはあるものの立ち合う人の範囲やマナーについて理解している人はほとんどいないでしょう。納棺の儀は故人が旅立つ支度をするためのもので、葬儀の1つとして欠かせない儀式のひとつです。
納棺に立ち会う際は、最低限のマナーと儀式の意味を理解しておくことが重要です。この記事では、納棺に立ち会う人の範囲や服装、通夜までの流れについて解説していきます。正しく故人を送り出してあげるためにも、事前に理解しておくようにしましょう。
納棺の目的や流れについて
納棺(のうかん)とは、通夜の前に行われる儀式のことを指し、故人が旅立つための支度を目的としています。棺に故人を納めるまでの作業が納棺に該当し、基本的にお通夜の前に実施されます。
納棺は仏教が由来であるものの、宗教を問わずに日本の葬式では広く行われています。故人を棺に納める前には「末期の水」や「死化粧」といったことを行います。
納棺は故人と直に接することのできる最後の時間でもあり、安らかに故人をあの世へ送り出すための大切な儀式です。
納棺の内容とお通夜までの流れ
納棺の儀式では、故人が安心して旅立てるように複数の手順を踏みます。それぞれの行為には意味があるため、事前に理解しておくことで故人を正しく送り出せます。
納棺の儀式は、一般的に以下の4つの手順に分けられます。
- 末期の水
- 湯灌で故人を清める
- 死化粧して死装束を着せる
- 故人を棺に納めて副葬品を入れる
それぞれの時間に明確な基準はなく、儀式全体にかかる時間は30分〜2時間が目安です。お通夜は18時頃に開始となるため、休憩や打ち合わせを踏まえて14〜15時に納棺が行われます。
末期の水を行う
末期(まつご)の水は、茶碗に入れた水で故人の唇を濡らしてあげます。故人が喉の渇きで苦しまないようにするといった意味があります。以前は亡くなった直後やご遺体を安置した際に行っていましたが、近年は納棺の一環となりつつあります。
一般的には割り箸の先にガーゼを括りつけたものを使用しますが、地域によっては菊の葉っぱを用いたり指で直接濡らしてあげたりします。基本的に立ち会った人全員が行います。順番は配偶者・親族・友人・知人の順です。
湯灌で故人を清める
湯灌(ゆかん)では、硬く絞った布で故人の顔や手などを拭いていきます。故人の体を洗うことでこの世のけがれを落とす意味が込められています。また、来世でも穏やかで平和に暮らせるように願う意味もあります。以前は水をお湯で薄めてつくる「逆さ水」で体をきれいにしていましたが、近年はアルコール布を用いることも増えてきています。
洗い清める手順は顔・手・足の順番で、1人ずつ故人の体を拭いて清めていきます。細かい手順があり時間もかかることから納棺師にお願いする人も多い傾向があります。よりきれいに洗い清められるシャワーや浴槽での湯灌や、お化粧付きプランといったさまざまなオプションを弊社ではご用意しております。
死化粧して死装束を着せる
死化粧では、故人が美しく安らかに眠っているようにしていきます。病気でやつれている場合は、頬に綿を含ませて必要に応じてヒゲを剃ったりします。感染症を予防するといった目的もあり、近年は「エンゼルケア」と呼ぶ業者も増えてきました。
死装束とはあの世への旅で身に着ける服装のことで、僧侶の姿になぞらえられたものです。地域によっては愛用していた服を着せてあげたうえで、経帷子(きょうかたびら)という白い着物をかけることもあります。
故人を棺に納めて副葬品を入れる
最後は、故人を全員で棺に納めてから、副葬品を入れていきます。主な副葬品には故人が愛用していたものや好きな食べ物があります。のちほど詳しく説明しますが、何でも入れてよいというわけではないため、事前に葬儀業者に確認しておきましょう。
地域によって副葬品には指定があり、故人が寂しがらず周りの人を道連れにしないようにと、家族の爪や髪を入れることもあります。副葬品のサイズが大きい場合は写真にして入れるといった方法もあります。
納棺が終ると棺をお通夜会場へ移動させる
故人を棺に納めて副葬品を入れたあとは、棺のふたを閉じてから最後に合掌します。地域によっては棺のふたに釘打ちすることもあります。ここまでが納棺の儀式となり、全て終ったあとはお通夜に向けた準備を進めていく流れです。
葬儀場で納棺した場合は、そのまま祭壇前までスタッフが移動させます。自宅の場合は車で搬送するため迎えの時間がくるまで安置しておきます。
なお、ここまでは納棺のマナーなどについて解説してきましたが、手順などに関しては納棺師が詳しく説明してくれるため、全て覚えておく必要はありません。
今回は納棺の流れを中心に解説していますが、以下の記事では臨終・葬儀打ち合わせ・納棺・お通夜・葬儀・火葬といった葬儀全体の流れについての記事もあります。気になる方はこちらもチェックしてみてください。
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納棺に立ち会う人の範囲
納棺に立ち会う人の範囲には、基本的なルールがあり誰でも参加できるという分けではありません。これまでに参列したお通夜で納棺に立ち会った経験は少ないはずです。しかしながら、棺に納められる前の故人を見る最後の機会であるため、関わりのあった人になるべく見てもらいたいと考える人もいるでしょう。
ここでは、納棺に立ち会う人の範囲などについて解説していきます。納棺に立ち会うべきか悩んでいる方は参考にしてみてください。
納棺に参加するのは親族のみが基本
納棺は、基本的に故人の家族や兄弟、孫など、親族のみが立ち会います。具体的に何親等まで参加するといった明確な基準は存在しません。親族のみ立ち会う主な理由としては、故人の体を洗って清めたり服を着せたりする際に肌の露出が多いことがあります。
生前に仲の良かった知人などから納棺の立ち合い申し出があった場合、断っても失礼には当たりません。どうしても会いたいとお願いされた場合は、納棺師やスタッフに相談したうえで納棺の儀式が始まる前や納棺前などに時間を設けてもらうのもひとつの方法です。
親族でも必ず立ち会う必要はない
納棺に立ち会うのは親族のみと解説しましたが、必ず立ち会わなければならないといったルールはありません。気持ちの整理が付いていなかったり遺体を見るのがどうしても辛かったりする人もいるでしょう。
無理に立ち会うと後のお通夜などに影響が出てしまいかねないため、辛いと感じた場合は納棺師に相談してみましょう。近年は儀式の前後のみに立ち会い、実際の作業は業者スタッフに全て任せる人も増えてきています。
葬儀業者によっては「立ち会い不要プラン」などが用意されているケースもあるので、事前に確認しておきましょう。
納棺の参加に関する明確なルールはない
前述したとおり納棺に立ち会うのは親族のみが一般的ではあるものの、明確なルールはありません。納棺は故人の旅立ちに向けた身支度であるのと同時に棺に納められる前の最後の時間です。会わせてあげたい人がいる場合には、親族でなくても立ち会えます。
納棺前に一目でも会わせてほしいという知人がいる場合は喪主に相談してみましょう。なかには、どうしてもお通夜に出るのが難しく、納棺時に会って最後の別れを告げたいという人もいます。
納棺に立ち会う際の服装
納棺に立ち会う際の服装は、お通夜と同様に喪服が基本です。近年は、斎場で儀式を行うことが多く、納棺後にはそのままの格好でお通夜に参加します。ただし、自宅で納棺する場合は平服で立ち会っても問題ありません。
平服とは略礼装のことで色は黒や濃いグレー、柄のない無地のものを選びます。あくまでも私服ではないので注意しましょう。
【喪服・男性の格好】
黒のスーツ黒のネクタイ黒の靴と靴下
【喪服・女性の格好】
装飾のない黒のスーツかワンピース黒いバッグ黒のパンプスとストッキング(肌色のストッキングでも可)
スーツは光沢のないものを選び、派手な柄のあるものは避けましょう。子供が立ち会う際は、学校の制服で問題ありません。未就学で制服がない場合は、黒・紺・グレーの洋服で光沢のないものを選びます。
棺に入れる副葬品
故人との思い出を偲び、棺の中に入れる副葬品ですが、何でも入れてよいわけではありません。副葬品として選ぶものにはおおまかな指定があり、禁止されているものもあります。何も考えずに入れてしまうと、火葬時にトラブルを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
とはいえ棺に入れられる副葬品には限りがあるため、何を入れるべきか判断できない人もいるでしょう。ここでは副葬品の具体例や注意点を解説しているので、事前に理解しておくようにしましょう。
故人の趣味に関する物やお菓子などを入れるのが一般的
副葬品は故人の趣味に関する物やお菓子などが一般的です。趣味以外では仕事熱心だった故人の場合、仕事着を入れることもあります。お菓子やたばこといった嗜好品でも問題ありません。
故人に伝えたいことがある場合は、お別れの手紙を入れる人もいます。ほかには、「あの世で故人を導いてくれるように」と願いを込めて折り鶴を入れる地域もあります。子供でもその場で作れて、棺内を色鮮やかにしてくれるでしょう。生前に犬やネコを飼っていた場合は、折り紙で折ってあげるのもおすすめです。
火葬炉の設備に影響が出るものは入れない
以下のような火葬炉の設備に影響が出るものは入れないように注意しましょう。
【副葬品として入れてはいけないものの例】
- メガネや腕時計、ジュエリー類
- 骨董品やガラス製品
- プラスチックや革製のもの
- スイカなどの大きな果物
- お金やメダルなど
これらのものは、火葬炉の設備に影響を及ぼす可能性があります。また、革製品やプラスチック製品は燃やした際に有害物質が発生する恐れがあり、危険です。果物を入れる場合は、小さく切ってからいれるなど工夫しましょう。
キリスト教や神式の納棺について
ここまで解説してきた納棺の儀式は仏教が由来のものですが、神式やキリスト教にも納棺は存在します。
神式の場合、仏式とほぼ同じ手順で進められますが、死装束が神衣であることと儀式に神官が立ち会うことが主な違いです。キリスト教でも湯灌や死化粧は行います。エンゼルケアの際には、胸の上で手を組ませてロザリオや十字架を持たせてあげます。
生前に葬儀について指示があった場合には、信仰していた宗教に合わせた納棺の儀式を検討してみましょう。
納棺に関するよくある質問
納棺に関するよくある質問として「儀式に立ち会う際の持ち物と香典の準備」があります。
持ち物に特別な指定はなく、納棺後に必要となる数珠などだけ用意していれば問題ありません。香典に関しても同様ですが、納棺に立ち会う場合は先に渡しておくとよいでしょう。
ほかにも何か不安があったり分からないことがあったりする場合は、葬儀業者に相談してみてください。
故人が安心して旅立てるように、納棺を通じて最後のお別れをしましょう
納棺とは故人があの世へ旅立つために身支度する儀式のことを指し、末期の水や湯灌、死化粧などを行います。肌の露出が多いこともあり、基本的に親族のみが立ち会いますが、明確なルールはなく親族が合意した場合は知人なども立ち会えます。
納棺後は故人を棺から出すことはありません。故人が安心してあの世へ旅立てるように、なるべく儀式に立ち合い、みんなで故人を弔ってあげましょう。
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