これから葬儀を控えている方や、将来的な葬儀プランを検討中の方のなかには、湯灌について悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
故人にとって最後の入浴となる湯灌には、身ぎれいにして故人を送り出すという意義があります。故人を丁重に弔いたい方にとっては、満足感の得られる儀式といえるでしょう。
しかし、湯灌の具体的な内容をふまえたうえで、そもそも湯灌が必要なのかどうかについては一考の余地があります。
今回は、湯灌の内容と必要性について解説します。立会い者や服装など湯灌のマナー全般についてもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
この記事を要約すると
- 湯灌(ゆかん)とは、棺に納める前に、湯船で遺体を綺麗にする儀式のことです。現世の穢れを洗い流す宗教的な目的があります。また、清拭(せいしき)・古式湯灌という布団の上で行う種類もあり、これらは蒸しタオルなどで拭き清めます。
- 湯灌はしなくても問題ありません。衛生面を気にされてるならば、病院で行うエンゼルケアでも補えますので、遺族がどうしてあげたいかで決断することが重要です。
- 湯灌に誰までが立ち会うかは、親族などの近親者までが一般的です。また、参加する際の服装マナーは、喪服が最適です。
湯灌(ゆかん)とは
湯灌とは、故人のご遺体をきれいに洗浄する儀式を指し、現世の穢れを洗い流すという宗教的な意義があります。
湯灌には大別すると以下の2つの方法があります。
湯灌の種類 | 概要 |
---|---|
清拭(せいしき)・古式湯灌 | 蒸しタオルやアルコールで湿らせたガーゼなどを使い、布団の上でご遺体を拭き清める |
普通湯灌 | シャワーや湯船を使い、本格的にご遺体を洗い清める |
以前は、遺族や近親者、近所の手伝いなどで湯灌を行っていました。しかし、心身への負担が大きいことから、手や顔など肌が出ている部分を清拭するにとどめるよう、徐々に湯灌が簡素化されてきた歴史があります。
現在では、葬儀社や湯灌業者が湯灌を担当するのが一般的です。葬儀のプロを頼るようになったことから、湯船を使った大掛かりな湯灌も行いやすくなり、葬儀に取り入れる人が出てきました。
そもそも湯灌は必要?
基本的には湯灌をしなくても問題ありません。
湯灌は儀式的な意味合いが強いものです。遺体の衛生を保つことについては、故人が亡くなった直後、看護師さんにご遺体を清拭してもらうエンゼルケアで補えます。
湯灌は、各家庭の事情の他、地域や家の風習などによっても重要視されるかどうかが異なります。湯灌をやるのが当たり前の土地柄ではない場合、無理をしてまで湯灌を実施しなくてもよいでしょう。
しかし、故人が最後に入浴する機会である湯灌は、遺族の満足感につながることも少なくありません。面倒そうだからと安易にやらない選択をするのではなく、後悔しないよう慎重に検討するのが大切です。
湯灌には誰が立ち会う?
湯灌には、親族や近親者が立ち会うのが基本です。
葬儀会社のプランによって、遺族が湯灌のお手伝いをする場合と、湯灌師のみで湯灌を進めていく場合があります。湯灌の形式に特にこだわりがある場合には、事前に確認しておいたほうがベターです。
遺族が湯灌を手伝う場合、湯灌師が手順を説明してくれます。当日はその指示に従って儀式を行いましょう。
湯灌に誰も立ち会わず、葬儀会社にすべてお任せしても構いません。地域によっては湯灌の後、知人や近隣の人を招いて納棺するケースもあります。
湯灌を執り行う場所
湯灌は自宅や葬儀社、葬儀会場などで行います。
湯灌用の設備がない場所で湯灌を執り行う際には、湯灌業者が専用の浴槽を持参してくれます。自宅の浴槽は使用しません。
使用済みのお湯は持ち帰ってもらえるのが一般的なので、衛生的な心配は不要です。
湯灌に立ち会う際の服装
湯灌に立ち会う際の服装は平服で構いません。
ここでいう平服とは略喪服のことで、ダークカラーの控えめなスーツや地味なワンピースなどを指します。普段着ではない点には注意しましょう。
もちろん喪服で湯灌に参加しても問題ありません。
注意点としては、自宅以外で納棺を行う際には、基本的には喪服で参列する必要があることが挙げられます。
湯灌を行った後、そのまま納棺やお通夜の流れになることもあります。その際には喪服を着用する必要があるため、自宅以外で湯灌を行う場合には、初めから喪服で参列していたほうが無難でしょう。
基本的な湯灌の作業は湯灌師が行います。特に汚れることはありませんが、シャワーや浴槽を使った本格的な湯灌のお手伝いをする際には、念のためエプロンや割烹着があると便利です。
湯灌の費用相場
湯灌にかかる費用の相場は、5万~10万円が目安です。
湯灌の費用は内容によっても異なります。清拭と身支度だけの古式湯灌なら相場は低めですが、シャワーや湯船を使った本格的な湯灌は高めな傾向があります。
予算をふまえ、希望にそった方法を選びましょう。
湯灌のタイミングと所要時間
湯灌を行うタイミングは、棺に納める前です。一般的な所要時間は、1~1.5時間程度です。この所要時間には、死装束や死化粧をほどこす時間も含みます。
仕事など外せない用事がある場合には、湯灌の途中で退出したり、途中から参加したりしても問題ないといわれています。その際には、スムーズに儀式を進行するためにも、あらかじめ葬儀社や湯灌師に相談しておきましょう。
湯灌のおおまかな流れ
葬儀社や湯灌師によっても異なりますが、一般的な湯灌のおおまかな流れは以下のとおりです。
工程 | 概要 |
---|---|
準備 | 浴槽を室内へ搬入し、湯船に逆さ水を用意する |
ご遺体のマッサージ | 湯船の準備と並行して湯灌師がご遺体をもみほぐし、硬直をゆるめる |
ご遺体の移動 | ご遺体の肌が見えないようタオルや布をかぶせたうえで、ご遺体を湯船まで移動する |
儀式の説明 | 湯灌師が儀式の内容を説明 |
お清め | 逆さ水でご遺体を清める |
洗髪・洗顔 | 故人の髪をシャンプーで洗い清めたり、洗顔したりする髭剃りや顔のうぶ毛剃りも行う終わったら髪をドライヤーで乾かす |
洗体 | シャワーで全身を洗浄する |
逆さ水は、ご不幸があった際に行う逆さ事の一種です。通常とは逆の順序で物事を行い、生と死をはっきり区別する趣旨があるといわれています。死者の着物のあわせが左右逆だったり、北枕にしたりするのは、代表的な逆さ事です。
浴槽にお湯を張る際の逆さ水では、まずは水を入れてからそこに熱いお湯を加えてぬるま湯を作ります。日常では、熱いお湯に後から水を加えてぬるま湯を作るため、逆さの順番になっています。一方、お清めの際の逆さ水は、左手にひしゃくを持ち、足元から胸元へ向かってお湯をかける慣わしです。
洗体が終わったら白装束に着替えさせ、ヘアセットや死化粧をほどこした後に棺に納めます。葬儀社によっては、洗体後にアロマを用いることもあるようです。
納棺までの全体的な流れを知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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納棺とは?立ち会わなくていいかや服装などを徹底解説
湯灌を行う際の注意点
湯灌を行う際には以下の点に注意が必要です。
- 湯灌費用の負担がかかる
- 葬儀社によっては湯灌に対応していないことがある
具体的な内容は次のとおりです。
湯灌費用の負担がかかる
湯灌をする際には、まとまった費用がかかる点には注意が必要です。
一般的な葬儀プランには、湯灌の費用は含まれていない傾向が見られます。基本プランとは別に5~10万円程度のオプション費用がかかるため、思った以上に葬儀費用がかさんでしまう可能性があります。
特にシャワーや浴槽を使用する本格的な湯灌では、10万円以上の費用がかかる場合もあるようです。
湯灌をすれば、故人を身ぎれいにしてからあの世へ送り出せます。故人との最後のふれあいの機会を設けられる意義もあり、遺族の満足感にもつながりやすいものです。
しかし、どんなケースでも本格的な湯灌を行うことが必ずしも正解とはいえません。宗教的な儀礼は重んじるものの、経済的な余裕がない場合には、費用を抑えられる清拭のみの古式湯灌も選択肢の一つになります。
無理のない範囲で丁重に故人を弔うことが大切です。
葬儀社によっては湯灌に対応していないことがある
葬儀社によっては、湯灌に対応していないことがある点にも注意が必要です。
本格的な湯灌には大掛かりな装置や人手が必要なため、経費や人員の不足などから湯灌のサービスを提供していないこともあります。
せっかく良心的な葬儀社を見つけても、湯灌を希望することで選べなくなってしまう可能性がある点には注意しましょう。弊社「1日葬の家族葬のこれから」では、湯灌に対応していますので、ご安心くださいませ。
湯灌をするか迷っている方は、以下の記事で湯灌のメリットやデメリットを確認のうえ、判断材料の一つにしてみてください。
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湯灌(ゆかん)は必要?メリットやデメリットについて解説
湯灌に関するよくある質問
最後に、湯灌にまつわるよくある質問をいくつか紹介します。
故人の知人が湯灌に立ち会いたいと希望した場合はどうする?
故人の知人が湯灌に立ち会いたいと申し出てきた場合には、基本的にはお断りして構いません。湯灌はごく身内で行う儀式です。部外者の立ち会いを辞退しても失礼にはあたりません。
ただし、故人や遺族の意向があれば、あまり一般的ではありませんが知人に立ち会ってもらうこともできます。湯灌の性質上、故人はほとんどタオルしか身につけていないようなデリケートな姿であるため、事前に説明しておくなどの配慮は必要です。
湯灌と納棺の違いは?
湯灌と納棺の違いは、儀式の内容やフェーズです。
納棺とは、ご遺体を棺に納めることを指します。湯灌をした流れで、最終的に納棺するのが一般的です。
湯灌を納棺の儀の一部ととらえることもあります。
湯灌とエンゼルケアの違いは?
湯灌とエンゼルケアの大きな違いは、その目的にあります。
湯灌の大きな目的は、宗教的な儀式を果たすことです。故人の体を清めてから送り出すことで、遺族の満足感を得る意味合いもあります。
一方のエンゼルケアの主な目的は、遺体の衛生を保つことです。故人が亡くなった直後、故人の尊厳を守るために行われる医療的な処置全般をエンゼルケアと呼びます。
エンゼルケアの際には清拭したり、体液のもれを防ぐためにお尻や鼻、のどなどに脱脂綿の詰め物をほどこしたりします。医療機関で亡くなった場合には看護師に、自宅で亡くなった場合には葬儀会社や専門業者にエンゼルケアを依頼するのが一般的です。
万が一事件性があり、ご遺体が警察に引き取られていたようなケースでは、亡くなった直後にはエンゼルケアは行いません。葬儀社が警察までご遺体をお迎えに行く段階で納棺師を手配し、エンゼルケアの処置をするのが一般的です。
エンゼルケアの細かな内容は、病院や業者などによって異なります。最低限の清拭や体液の処理にとどめるものから、死化粧をほどこすものまで多様です。
湯灌と死化粧の違いは?
湯灌と死化粧は、実施する内容が異なります。
湯灌が故人の身を清める儀式であるのに対し、死化粧は故人の顔にメイクアップをほどこす行為です。湯灌のように全身を清めることはしません。
湯灌から納棺までの一連の儀式の流れのなかで死化粧をするのが一般的です。死化粧の前に湯灌をしなくても問題ありません。
湯灌とエンバーミングの違いは?
湯灌とエンバーミングでは、目的と実施内容が大きく異なります。
エンバーミングは、ご遺体の腐敗を防いだり、生前の姿に近づけたりするための処置です。ご遺体を消毒したうえで防腐や傷の修復、化粧などを行うため、長い期間ご遺体が腐敗せずきれいな姿を保てます。ご遺体から感染症が広がるのを防止する役目もあります。
湯灌でもご遺体の外観は整えられますが、エンバーミングのような防腐効果は期待できません。湯灌師になるのに資格は不要ですが、エンバーミングを行うには特別な資格(エンバーマー)が必要です。
エンバーミングは、火葬まで日数が空いてしまう場合や、海外からご遺体を搬送する場合など、ご遺体の防腐処理が必要な場合に実施します。また、事故でご遺体の損傷が激しいときや、病気で相貌が変わってしまったときに、生前の元気な姿に修復したいケースでも利用します。
希望に合わせて湯灌を活用し、後悔のないお見送りをしよう
湯灌は行わなくても構いません。しかし、丁重に故人を弔えば、残された遺族の満足感につながりやすいのもまた事実です。
無理のない範囲で上手に湯灌を活用し、後悔のないお見送りをしましょう。
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