臨終後、葬儀までの間、遺体を安置しておく時間が必要となります。安置の場所は自宅または安置室・安置施設を選びますが、自宅で遺体安置するなら、速やかに準備を進めなければなりません。病院の霊安室はすぐに空けなければならない場合も多く、状況によっては安置の準備にほとんど時間がないこともあります。
このような場合に備え、この記事では、自宅での遺体安置について知っておきたい内容をまとめました。安置に適した部屋、安置の手順・方法・注意点などを解説します。
大切な人を失った悲しみのなかでもスムーズに遺体を安置できるよう、必要な準備についてご確認ください。
なお、自宅以外の安置場所や費用などについては以下の記事で詳しく解説しているのでご確認ください。
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この記事を要約すると
- 自宅での遺体安置をする場合の日数は、一般的に2~3日です。
- 自宅で遺体安置する際の注意点は、「室温を18度以下に保つ」「遺体搬送までに搬入出経路を確認する」などに気をつけましょう。遺体の状態が悪くらないように涼しい環境で、直射日光が当たらないようにしましょう。また、マンションなどの場合、棺がエレベーターに入らなかったりしますので、事前に確認しておきましょう。
- 自宅で遺体安置するメリットは、いつもの空間でゆっくりと最後の時間を過ごせる点です。友人なども弔問に訪れやすい利点があります。
自宅で遺体安置をする日数は一般的に2~3日
自宅で遺体を安置する日数は、一般的に2〜3日です。これは、「墓地、埋葬等に関する法律」で「死亡後24時間を経過した後でなければ火葬・埋葬してはならない」とされているからです。
また葬儀社・僧侶・火葬場などの状況によって、必ずしも24時間経過後すぐに通夜ができるわけでもありません。適切な温度管理を行いながら自宅で安置し、多くの場合2〜3日中に通夜・葬儀へと移ります。
遺体安置を自宅でする際の手順と方法
遺体安置を自宅でする場合、部屋や備品などの準備が必要です。どの部屋でどのように安置するか、早めに決めて準備を進めましょう。ここでは、自宅での遺体安置の手順や方法を紹介します。
部屋と場所の選び方
自宅で遺体安置する場合、仏間があれば仏間に、なければ畳の部屋に安置します。和室がない場合は故人が生前使っていた部屋で構いません。故人が布団でなくベッドを使っていた場合、ベッドに安置します。また、遺体を低温に保つため、春夏はエアコンが必要です。
ほかにも、遺体に直射日光が当たらないか確認します。日差しの当たる窓際を避けられない場合、遮光カーテンや雨戸などを閉めると良いでしょう。
清潔な布団を用意する
遺体安置には、清潔な布団を用意します。布団は清潔であれば必ずしも新品である必要はなく、故人が生前使用していたもので構いません。
シーツや枕カバーは洗った清潔な物を用意します。枕が低いと体液が出てくることがあるため注意しましょう。
なお、布団は遺体を温めないよう薄いものを選び、布団は天地を逆にかけます。白い布団が基本ですが、なければ色の薄いものを選びます。
北枕・西枕どちらかになるように寝かせる
遺体の向きは、北枕か西枕、どちらかになるように寝かせます。住宅事情やベッドの位置などによって難しい場合は、無理に方角を変えなくても問題ありません。
枕の向きは、お釈迦様が亡くなった時の姿勢「頭北面西右脇臥(ずほくめんさいうきょうが)」に由来します。涅槃図でお釈迦様は、頭は北向き、顔は西向き、体の右側を下に寝そべった状態で描かれています。
顔に白い布を乗せ、胸元で手を合わせ数珠をかける
故人を布団に寝かせたら顔に白い布を乗せ、手は胸元で合掌させ数珠をかけます。数珠は故人が使用していたものでかまいません。新しい数珠を用意する場合、火葬に備え、木製の数珠を選ぶと良いでしょう。
白い布は「打ち覆い(うちおおい)」「顔かけ」「面布(メンプ)」などと呼ばれます。「万が一蘇生したときにわかりやすい」「遺体の変化をかくすため」といったいわれがあるとされます。
布団の上に守り刀を置く
故人の胸の上付近の布団の上、または枕元に守り刀を置きます。この時、刀の刃先が故人の顔ではなく足元を向くように注意しましょう。
故人のそばに守り刀を置くのは日本各地で古くから続く慣習で、浄土真宗以外の仏教や、神道でも行われます。刀は太刀ではなく短刀で、模造刀を使うのが一般的です。守り刀は、あの世までのお守りとも、穢れを払うためのものともいわれています。
枕飾りを供える
安置の最後に、故人の枕元に「枕飾り」といわれる仮祭壇を用意します。枕飾りは小さな机に白い布をかけ、以下のようなものを供えるのが一般的です。
- 線香
- 水を入れたコップ
- 一膳飯
- 団子
団子の数など枕飾りの内容は、宗教や地方などによって異なります。疑問や不安な部分は葬儀社に確認しましょう。
神棚封じを行う
自宅に神棚がある場合は神棚封じを行います。神様が「死」に触れないよう神棚を閉じることを神棚封じと呼び、手順は以下の通りです。
- 神棚へ向かい挨拶をする
- 神棚のお供えを下げる
- 神棚の扉を閉める
- 神棚の正面に白い半紙を貼る
神棚封じの期間は、忌明け(神式では50日、仏式では49日)までです。
神道では死を穢れとするため神棚封じを行います。穢れは「汚れ」ではなく「気枯れ」と書き、神道では穢れに触れると気力が失われると考えられています。
自宅で遺体安置する際の末期の水
末期の水とは、臨終に立ち会った親族が、故人の口を水で潤す儀式で「死に水」ともいわれます。お釈迦様が入滅の前に水を欲したとする逸話が由来です。いつどのように末期の水を行うか確認しておきましょう。
末期の水はいつ行うか
末期の水をいつ行うかは状況に応じてさまざまで決まりはありません。臨終直後の病室や自宅安置が整った後のほか、出棺前などの場合もあるようです。
また、仏教でも浄土真宗では行わなかったり神道では榊を使用したりと、宗教宗派などによって儀式の有無や方法なども異なります。
末期の水の手順
末期の水の一般的な手順は以下の通りです。
- 割り箸などの先に脱脂綿やガーゼを巻き、糸やゴムでくくる
- お椀や小皿に水を入れ、脱脂綿を軽く浸す
- 脱脂綿で故人の口を拭うように、上唇から下唇、左から右の順へあてる
- 最後に故人の額、鼻、顎の順に拭う
末期の水は血縁順に行う
末期の水は、臨終に立ち会った人で血縁の近い順に行います。配偶者→子供→故人の両親→故人の兄弟姉妹→孫…→友人・知人の順となります。
血縁の近い子供や両親が不在の場合、到着を待つ必要はありません。
自宅で遺体安置をする際の注意点
自宅で遺体安置する際、注意すべき点がいくつかあります。スムーズに安置し、遺体の状態を保てるよう準備が必要です。
搬入から室温の調整までの流れに沿って、次の3つの注意点を確認しておきましょう。
搬入・搬出経路を確認する
遺体搬送の前に自宅までの経路を確認します。戸建ての場合、遺体を運ぶ車の通行スペース・駐車スペースが必要です。
マンションなど集合住宅の場合は、エレベーターの広さや、階段、扉など、遺体が問題なく通れるか確認しておきましょう。
ベッドの場合は防水シートを敷く
遺体から体液が漏れることがあるため、遺体をベッドに安置する場合、防水シートを利用すると良いでしょう。体液が漏れ出やすい下腹部や顔周りを中心に、防水シートを敷くと安心です。
レンタルの介護ベッドの場合は、マットの上に布団を敷いておけばマットを汚さず返却できます。
夏の遺体安置は室内を18度以下に保つ
自宅で遺体安置をする際、温度管理は重要です。とくに夏場はエアコンなどで室内を18度以下に保つようにし、遺体の状態が変わらないよう心がけます。日の当たる部屋や場所はなるべく避けましょう。
遺体安置を自宅でするメリットとデメリット
遺体安置を自宅でするのには、メリットとデメリット、どちらもあります。それぞれ確認しておきましょう。
メリット
遺体安置を自宅でする一番のメリットは、いつもの空間で故人と最後の時間をゆっくり過ごせる点です。遺族が安置施設と自宅を行き来する必要がなく、故人といつでも対面できます。近所の知人・友人が弔問に訪れた場合もすぐに面会できるでしょう。また自宅なので安置費用もドライアイスなどの備品のみです。
安置施設や葬儀社斎場で安置すると、面会時間が限られていたり料金がかかったり、不自由な部分があります。葬儀までの短い期間、日常のなかで故人と過ごせるのは大きなメリットでしょう。
デメリット
自宅で遺体安置をするデメリットは、部屋の準備、搬入経路の確保が必要な点です。住宅事情によっては自宅安置できないこともあります。エレベーターに棺が入らない、部屋に安置スペースがないといった場合は自宅で安置できません。
また家族が室温の管理や遺体の状態を確認しなければなりません。温かい季節は、室温をできるだけ低く保つよう注意が必要です。先に述べたように、遺体の状態を維持するため、室温は18度以下になるようにします。
自宅で遺体安置をする場合のよくある質問
ここでは、自宅で遺体安置をするにあたって、よくある質問をまとめたので参考にしてみてください。
自宅で遺体安置する場合、部屋の電気を消してはいけないのですか
自宅で遺体安置する場合、電気を消してもかまいません。古くから、四十九日を過ぎるまでは線香やろうそくを絶やしてはならないとされてきました。これは、故人が迷わず成仏できるように足元を照らすという考えからくるものです。
現代では無理に電気をつけっぱなしにする必要はありません。真っ暗にするのに抵抗がある方は、電気のろうそくなどを灯すと良いでしょう。
遺体安置の間、線香を絶やしてはいけないと聞きました
線香を絶やしてはいけないとする風習はありますが、現代ではずっと焚かなくても良いとする考え方が一般的です。線香を絶やさないという習わしは、線香があの世への道しるべ、または故人の食べ物であるといった考え方によるものです。
現代では健康面や防災面から、線香を焚き続けるのは推奨されていません。線香は遺族の負担のない範囲内であげると良いでしょう。
自宅での遺体安置期間中に訪問しても良いですか
遺体安置期の期間中に故人にお別れをしたい方もいますが、通夜前の訪問は控えた方が無難です。遺族は家族を失った悲しみと葬儀の準備で慌ただしい可能性が高いためです。
ただし、家族葬などで弔問や会葬ができない場合、故人と対面してお別れする機会がなくなります。どうしても訪問したい場合は必ず事前に確認するようにしましょう。
自宅での遺体安置はあらかじめ準備を整えてスムーズに
通夜までの遺体安置期間は一般的に2〜3日です。亡くなってから遺体安置まで時間がないことも多いので、場所や布団の準備など早めに備えておきましょう。自宅での安置は準備に手間がかかりますが、ゆっくり故人と最後の時間を過ごせます。
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