自宅で家族が死亡した場合、病院で亡くなった時とは流れが異なります。自宅でのかかりつけ医による死亡の確認ができない場合は、警察による検視が行われます。
検視は、死因にかかわらず必ず行われるもので、遺族側が拒否することはできません。検視の状況に応じてその後の手続きや葬儀の日程が変わるため注意が必要です。
この記事では、自宅で家族が死亡した場合の流れや、検視の概要を中心に分かりやすく解説していきます。検視完了後にやるべきことについても紹介しているので、参考にしてみてください。
この記事を要約すると
- 自宅で死亡した場合の検視日数について、事件性がなければ半日ほどで終わる。しかし、事件の可能性が疑われる場合、検視期間に2ヶ月ほどかかるケースもある。
- 検視の拒否について、刑事訴訟法第229条で定められているため、拒否は出来ない。
- 自宅で亡くなった場合以外で検視が必要になるケースは、「事故死」「事件性」「独居などの身元不明」「自殺」など、自然死や病死と判断できない場合に必要。
自宅で家族が死亡した場合の流れ
自宅で家族が死亡した場合、かかりつけ医に連絡して遺体の確認を行います。持病が原因で亡くなったと判断された場合「死亡診断書」が交付されます。かかりつけ医がいない場合は、警察に連絡しましょう。
救急車は生きている人の治療や搬送を目的としているため、蘇生する可能性がない限り呼ばないようにします。
警察が自宅に到着すると検視が行われ、すべての手続きが終了した後に「死体検案書」が交付されます。
死亡診断書や死体検案書は、死亡届提出の手続きや火葬・埋葬の許可を得るために必要な書類であり、書類がなければ葬儀を執り行えません。
なお、死亡診断書や死体検案書は、生命保険の受け取りや相続手続きにも必要です。役所に提出した原本は返却してもらえないため、必ずコピーを取っておくようにしましょう。
自宅で家族が死亡した場合の連絡先や注意点は、以下の記事でも詳しく解説しているので気になる方はチェックしてみてください。
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自宅で家族が死亡した際の検視とは?
検視とは、病院以外の場所で人が亡くなった際に、犯罪性の有無や身元を確認するための手続のことです。死因に関係なく実施され、遺族側は検視を拒否できません。
検視を行うのは検視官という役職の警察で、刑事として10年以上の実績があり、警察大学校で法医学を収めた警部か警視以上の人でなければなれません。
遺体の外部を確認して事件性があるかどうかを判断します。外部だけで事件性や死因を究明できない場合は、解剖を行います。
「検視」と「検死」の違いについて
検視と似た言葉に「検死」があります。検視と検死の違いは以下の通りです。
- 検視:刑事訴訟法に基づいた法律的な用語。遺体の表面的な調査にとどまる。
- 検死:法律的な用語ではなく、明確な意味もない。表面的な調査だけでなく、解剖も含めた調査といったニュアンスで使用される傾向にある。
なお「検案」は、法医学者・監察医などの医師が遺体外部の検査を行い、死亡時の状況や病気の即往歴などから、死亡時刻や死因を医学的に判定することです。
検視の流れ
自宅で検死が行われる場合、以下のような流れで手続きが進められます。
- 検視官による死亡した場所の調査および現場の証拠保全
- 自宅で事件性や死因が判断できない場合は遺体を引き取る
- 警察署が依頼した医師により死因が調査が行われ死体検案書が作成される
- 検視終了後、遺族のもとに遺体が引き渡される
検視の内容は死亡状況などによって異なります。自宅で死因がわかり事件性がないと判断された場合は、上記の2の段階で検視は終わります。
検視後は死体見分が実施され、身体の特徴や身元、死因などが記録されます。
検視の際に行われる解剖は「司法解剖」「行政解剖」「承諾解剖」の3種類
検視で遺体外部の調査を行い、死因や事件性を判断できない場合は解剖を行います。検視の際に行われる解剖は、以下の3種類に分かれています。
- 司法解剖:事件性などが疑われる場合に、死因や死後経過時間などを究明するための解剖
- 行政解剖:事件性の調査ではなく、遺体の死因を究明するための解剖
- 承諾解剖:監察医制度がない地域で事件性がない遺体の死因を究明するための解剖
行政解剖は、死体解剖保存法に基づいたもので監察医が行います。監察医制度があるのは大阪市や東京23区といった限られた地域だけです。監察医制度がない地域で、死因を追求するために行うのが承諾解剖となります。
死亡解剖では「血液生化学検査」「組織学的検査」「細菌検査」「薬毒物定検査」などが行われます。(参考:司法解剖の実施|警視庁)
検視にかかる日数
検視は、死因や事件性などを究明することが目的であり、内容が明らかになるまで作業が続けられます。解剖にかかる時間は、死体の状況によって大きく異なります。
警視庁が公表している「司法解剖の実施」によると、解剖にかかる平均時間は1時間ほどの機関もあれば、3.6時間ほどの機関もありました。(参考:司法解剖の実施|警視庁)
死因が病死や自然死である場合は、比較的短く済むため、早ければ半日ほどで遺族のもとへと遺体が戻ってきます。一方で、事件性が疑われており死因の特定が難しい場合、2ヵ月かかるケースもあります。
検視にかかる費用
検視にかかる費用は、地域や遺体の状況によって異なります。一般的な相場は以下の通りです。
- 検視費用:5万円前後
- 検案費用:2~3万円
- 死体検案書の発行料:5,000円~1万円
死亡解剖にかかる平均費用は、30万円前後ですが国が負担するため、死亡時に遺族が負担する必要はありません。
一方で、行政解剖や承諾解剖は遺族の意向のもと行われるため、費用を負担しなければならない可能性があります。自治体によって異なるため、解剖を希望する場合は警察に相談しましょう。
検視が必要となるケース
今回は自宅で人が亡くなった際の検視について解説していますが、他にも以下のようなケースで検死が必要です。
- 自然死や病死と判断できない場合
- 事故で死亡した場合
- 中毒や指定感染症で死亡した場合
- 災害で死亡した場合
- 治療中ではなかった病気で突然死した場合
- 診察により不審な点や異常が確認された場合
- 事件性が疑われる場合
- 独居などで身元が不明な場合
- 自殺
上記の通り、場所だけでなく死亡理由や状況によっても検視が行われます。検視が行われた場合は、死亡診断書ではなく「死体検案書」が警察署より発行されます。
検視が終わるまでにやること
検視が終わるまでは死体検案書が発行されないため、死亡届を提出したり火葬・埋葬の許可を得たりすることができません。検視が終わるのを待っている間に、以下の項目について考えておきましょう。
- タオルや着替えの準備
- 葬儀社と葬儀形式の決定
- 検視費用の準備
まずは、警察から遺体を引き取る際には、毛布や布団が用意されていない可能性があります。念のためタオルや着替えを準備しておくようにします。
葬儀は故人を送り出すための大切な儀式であり、故人が喜んでくれる葬儀を執り行ううえで、葬儀社選びは非常に重要です。葬儀社によって葬儀費用はもちろん、対応している葬儀形式やサービスの範囲が異なります。予算や希望する葬儀形式に合った葬儀社を探しましょう。
葬儀形式は、一般葬の他に家族葬・直葬・一日葬といった種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、内容を理解したうえで故人の意向に沿ったものを選ぶことが重要です。
各葬儀形式の特徴や注意点については、以下の記事で解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
検視が終わった後にやること
検視が終了すると、警察署から遺体引き取りについての連絡があります。「故人の身分証明書」「遺体を受け取る遺族の身分証明書」「印鑑」を準備して引き取りに向かいましょう。
死体検案書作成などの費用も支払うため、料金を確認しておくようにします。遺体を引き取る時点で葬儀社が決まっている場合は、葬儀スタッフに車の手配などを依頼できます。
また、葬儀社が決まっていない場合は、警察から紹介された葬儀社に遺体の引き取りだけお願いするのも1つの方法です。
遺体を引き取る際には死体検案書も渡されるため、役所で死亡届の提出や火葬・埋葬の許可手続きを進めていきます。死体検案書は、相続や生命保険の受け取りなどでも必要なので、必ずコピーを取っておきましょう。
自宅で家族が死亡した場合に注意すべきこと
ここまで解説してきた通り、自宅で家族が死亡した際には警察による検視が行われます。警察が到着するまでの間、以下の2点に注意しましょう。
- 勝手に遺体を動かさない
- 蘇生する可能性がない場合は救急車を呼ばない
遺体に対する対応や救急車の役割について解説していきます。
勝手に遺体を動かさない
自宅で家族が亡くなっているのを発見した場合、遺体に触れたり動かしたりしないようにしましょう。事件性がまったくない場合でも、何かを隠そうと思って動かした可能性などを疑われてしまいます。
また、検視にかかる時間が長引く可能性もあるため、注意しましょう。お風呂場で裸の状態で亡くなっていた場合も、タオルなどでで覆うような行為は避けます。
ただし、死亡が確実ではなく、状況に応じて心肺蘇生などを行う必要がある場合は、平らな場所に移動させても問題ありません。
蘇生する可能性がない場合は救急車を呼ばない
故人を発見した際に、明らかに亡くなっており蘇生する可能性がないと判断できる場合は、救急車を呼ばないようにしましょう。
救急車は生きている人の治療を行なったり、病院まで搬送したりするための車両であり、既に亡くなっている故人を運ぶことはできません。救急車が来ても警察署に連絡して返ってしまうだけになるため、注意しましょう。
ただし、倒れているだけで亡くなっているか判断できない時は、迷うことなく救急車を呼びましょう。
検視に関するよくある質問
最後は検視に関する、3つのよくある質問に答えていきます。
- 検視は拒否できる?
- 自宅で家族が死亡した時はどこに連絡する?
- 家族の死亡後に必要な手続きは?
自宅で家族が亡くなっていた際の対処方法や、死亡後の手続きに関する内容ですので、参考にしてみてください。
検視は拒否できる?
検視は刑事訴訟法第229条で「変死者又は変死の疑いのある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。」と定められているため、どのような事情があったとしても遺族が検視を拒否することはできません。
また、警察からの事情聴取に答える義務があります。
自宅で家族が死亡した時はどこに連絡する?
自宅で家族が死亡した場合、状況によって最初の連絡先が異なります。詳細は以下の通りです。
落ち着いて連絡先を判断しましょう。
発見時の状況 | 連絡先 |
---|---|
死亡が明確ではなく蘇生する可能性がある | 119番通報(救急車) |
死亡が明確でかかりつけ医がいる場合 | かかりつけ医 |
死亡が明確でかかりつけ医がいない場合 | 警察 |
家族の死亡後に必要な手続きは?
家族が死亡した後には、さまざまな手続きが必要です。死亡した直後では以下のような手続きがあります。
- 死亡届の提出
- 火葬・埋葬の許可申請
死亡届の提出は、死亡診断書・死体検案書を受け取ってから7日以内と定められているため注意が必要です。
なお、葬儀が終わった後に行う手続きは「年金受給者の死亡届」「国民健康保険の資格喪失届」「各種サービスの解約」などがあります。
死亡後の手続き詳細や申請期限に関しては、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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自宅で家族が死亡した場合は警察の指示に従いましょう
自宅で家族が死亡した場合、かかりつけ医による死亡診断ができない時には、警察による検視が行われます。自宅で警察が調査を行い、事件性がなく死因が究明された場合は、死体検案書が作成されます。
死因を究明できない場合は、遺体を引き取り必要に応じて司法解剖が実施され、死因などが判明されるまでは遺体を引き取れません。時間がかかりそうな場合は葬儀社や葬儀形式などを先に決めておくようにしましょう。
葬儀は、故人を送りだす最後の儀式となるため、故人の意向も踏まえながら予算に応じた葬儀形式を選ぶことが大切です。
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