葬儀にかかる平均費用は地域によっても異なりますが、119万円ほどといわれています。(特定サービス産業動態統計調査(経済産業省)を元に算出)
葬儀費用は、故人が加入していた保険などで支払うのが一般的ですが、喪主にとって大きな負担であることには変わりありません。
故人や喪主が生活保護を受けており、葬儀費用を工面できないといったケースもあります。ただし、費用を工面できないからといって葬儀を執り行えないわけではありません。
この記事では、生活保護を受けている場合の葬儀について分かりやすく解説していきます。葬儀の流れや注意点も紹介していますので、内容を理解したうえで準備を始めていきましょう。
生活保護受給者でも「葬祭扶助制度」を利用すれば葬儀をあげられる
冒頭で解説した通り、生活保護を受給しており葬儀費用を工面できない方でも葬儀は執り行えます。その方法としてあるのが「葬祭扶助制度」の利用です。
葬祭扶助制度とは、生活保護を受けている人など、経済的に余裕のない状況にある人々を対象に、葬儀費用を自治体が負担する制度のことです。
この制度は生活保護法第18条で規定されており、遺族が葬儀費用を負担できない場合や、介護施設といった遺族以外の人が葬儀を執り行う際に利用できます。
葬祭扶助制度を利用して行う葬儀は「生活保護葬」「福祉葬」「民生葬」と呼ばれています。葬祭扶助制度で支給される葬儀費用は、最低限の葬儀を行なえるだけの費用と決められており、故人の年齢によって支給金額の上限も定められています。(出典:厚生労働省|2024(令和6)年4月1日施行 生活保護実施要領等)
なお、福祉葬については以下の記事でも解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
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葬祭扶助制度を利用するための条件
葬儀費用の工面が難しい人が対象の葬祭扶助制度は、経済的に余裕のない人であれば誰でも利用できるわけではありません。
生活保護を受けている人であっても、所定の条件を満たしていないと判断された場合は、葬儀費用は支給されません。ここでは、故人が生活保護を受けていた場合と喪主が生活保護を受けている場合で、制度を利用するための条件について解説します。
故人が生活保護を受けていた場合の条件
故人が生活保護を受けていた場合、故人に身寄りがあり、その家族が経済的に困窮していない場合は葬祭扶助制度を利用できません。
身寄りがなく、介護施設の管理者や住んでいた物件の家主が葬儀を執り行う場合は、施主が経済的に困窮していなくても制度を利用できます。
喪主が生活保護を受けている場合の条件
喪主が生活保護を受けている場合、葬儀費用を工面できない状況であることが制度利用の条件となります。ただし、葬儀費用を賄えるだけの資産や収入があると判断された場合は、生活保護を受けていたとしても制度を利用できません。
具体的な条件は公表されておらず、制度の申請時に地域の民生委員やケースワーカーによる調査が行われた後に判断されます。制度が利用できるかどうか不安な方は、事前に役所の福祉課などへ相談しておくことをおすすめします。
生活保護葬の葬儀は直葬(火葬式)に限定される
葬祭扶助制度を利用して葬儀を行う場合、希望する葬儀形式を選べるわけではありません。制度で許可されているのは「直葬」と呼ばれる葬儀形式のみです。
直葬とは、お通夜や葬儀式を省略し、火葬のみを行う最もシンプルな形式で「火葬式」と呼ばれることもあります。火葬場にご遺体を搬送した後は、火葬が直ちに始まり、終了後に参列者が遺骨を骨壺に納める流れとなります。
一般的な葬儀のように出棺前や火葬前に僧侶による読経は行われず、葬祭扶助制度から支給される金額をお布施に使用することも認められていません。そのため、戒名の授与や葬儀後の精進落としといった儀式も行えません。
読経や戒名を希望する場合は、弊社「1日葬・家族葬のこれから」にお任せください。
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生活保護葬で支給される葬儀費用には上限がある
葬祭扶助制度を利用する場合、直葬形式で葬儀を執り行えると前述しましたが、葬儀費用にも上限が定められています。厚生労働省の2024(令和6)年4月1日施行 生活保護実施要領等によると、生活保護葬の基準額は、以下の通り定められています。
級地別 | 大人 | 子供 |
---|---|---|
1級地・2級地 | 21万5,000円以内 | 17万2,000円以内 |
3級地 | 18万8,100円以内 | 15万500円以内 |
「級地」とは、生活保護制度などで定められた地域区分の1つで、地域ごとの物価や生活水準に合わせて設定されています。東京都や大阪府といった物価が高い都市圏は、1級地となります。
実際の葬儀費用が上記基準額を超える場合、火葬費や遺体運搬費などの条件を満たしていれば、一定額を基準額に追加して支給されることもあります。地域によって異なるため、詳細は住んでいる地域の福祉課に相談しましょう。(出典:厚生労働省|2024(令和6)年4月1日 施行生活保護実施要領等)
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生活保護者が亡くなってから葬儀を執り行うまでの流れ
葬祭扶助制度を利用して葬儀を執り行う場合、一般的な葬儀と流れが異なります。具体的な流れは以下の通りです。
- 役場の福祉課や福祉事務所へ連絡する
- 葬祭扶助の申請を行い葬儀社へ連絡する
- 生活保護葬を執り行う
- 葬儀費用が葬儀社に支払われる
各工程の詳細について、制度の申請方法を交えながら解説します。
役場の福祉課や福祉事務所へ連絡する
身内が亡くなり、葬祭扶助制度を利用したい場合は、役場にある福祉課や福祉事務所、または民生委員に連絡します。その際、故人の死亡が確認できる書類が必要となるため、死亡診断書を用意しておくようにしましょう。
死亡診断書は、死亡を確認した医師により発行されます。故人が亡くなる前に、福祉課や民生委員に経済的に困窮している状況や葬祭扶助を利用したい旨を相談しておくと、後の手続きを円滑に進めやすくなります。
経済状況の調査など、制度の申請には時間がかかることもあるため、できるだけ早く役場へ連絡を入れましょう。
葬祭扶助の申請を行い葬儀社へ連絡する
役場の福祉課や福祉事務所へ連絡した後は、申請を行います。申請時には以下の書類が必要です。
- 死亡診断書または死体検案書
- 申請者の身分証明書
- 生活保護受給証明書
- 故人の資産状況を示す書類(通帳の写しなど)
必要となる書類は地域によって異なり、必ずこれらの書類が必要となるわけではありません。役場に連絡した際に、必要な書類について確認しておきましょう。
指示された書類と一緒に申請書を提出すると、ケースワーカーや民生委員による調査が行われ、本当に資産がないか審査が行われます。この時点で葬儀を執り行う資産があると判断された場合は、制度を利用できません。
申請が通った後は、葬儀社に葬儀の依頼をします。葬祭扶助制度を利用する旨を伝えて、葬儀日程などについて打ち合わせを進めていきます。参列する家族や友人に葬儀の情報を伝えておきましょう。
生活保護葬を執り行う
生活保護葬は、直葬形式で行われます。葬儀社の遺体安置施設からご遺体を火葬場へと搬送し、火葬を行います。読経などはなく火葬が終わった後は収骨する流れです。
直葬では参列者の人数制限はないものの、火葬場の設備や収容人数に限りがあるため、参列者が多くなりそうな場合は葬儀社に相談するようにしましょう。
葬儀費用が葬儀社に支払われる
葬儀が終了すると、葬儀費用は自治体から葬儀社へ直接支払われます。一般的な支払い方法と内容が異なるため、葬儀社に葬儀を依頼する時点で葬祭扶助制度を利用することを伝えておきましょう。
葬祭扶助制度は、経済的に困窮しており葬儀費用を負担できない人を支援する救済措置として設けられた制度です。自己資金を加えて葬儀の中で読経や戒名をお願いすることはできません。
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生活保護葬を執り行う際の注意点
葬祭扶助制度は誰でも利用できるわけではなく、支給の対象となる葬儀内容にも細かい指定があります。制度を利用する場合は、以下の注意点について理解しておきましょう。
- 生活保護葬の申請は葬儀前に行う
- 納骨や永代使用料は費用に含まれない
- 遺留金品のある生活保護者は葬祭扶助制度を利用できない
これらの注意点の詳細について解説します。
生活保護葬の申請は葬儀前に行う
葬祭扶助制度を利用して生活保護葬を執り行う場合、必ず葬儀の前に申請を済ませる必要があります。
「親戚や友人がお金を貸してくれたから」といった理由で、申請を後回しにしてしまうと、経済的に困窮していたとしても「支払い能力がある」と判断されてしまいます。
葬祭扶助制度は、事前申請と審査を経て初めて利用が許可されるため、急いでいたとしても、必ず役場の福祉課や福祉事務所へ事前に連絡し、手続きするようにしましょう。
亡くなる前から役場へ相談しておくと、手続きをスムーズに進められます。
納骨や永代使用料は費用に含まれない
葬祭扶助制度の支給対象に、納骨や墓地の永代使用料は含まれていません。制度でまかなえるのは、骨壺や骨箱など収骨に関する最低限のものに限られます。
納骨や永代使用料は高額になることもあるため、事前に費用を把握し、必要に応じて親族間で負担を相談しておくようにしましょう。納骨せずに遺骨を自宅で保管するといった選択肢もあります。
直葬後の納骨については、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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遺留金品のある生活保護者は葬祭扶助制度を利用できない
生活保護を受給していた人が亡くなり、葬祭扶助制度を利用する場合、遺留金品の有無に注意が必要です。遺留金品とは、故人が残した現金や有価証券、物品などの資産が該当します。
これらの遺留金がある場合、経済的に困窮していたとしても、葬儀費用を自分たちで賄えると判断されてしまい、審査に通らない可能性があります。制度を利用する場合は、故人の資産を確認し、申請時に役所へ正確に報告しましょう。
費用をなるべく抑えたい場合は一日葬や家族葬もおすすめ
ここまで葬祭扶助制度を利用した葬儀について解説してきましたが、制度を利用せずに費用を抑えて葬儀を執り行うことも可能です。近年、葬儀形式は多様化しており、一般葬の他に家族葬や一日葬、直葬などのプランが用意されています。
葬儀費用は葬儀会社や依頼内容によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
葬儀形式 | 費用相場 |
---|---|
一般葬 | 140万円前後 |
家族葬 | 70万円前後 |
一日葬 | 30~50万円 |
直葬 | 20~50万円 |
生活保護葬と同じ葬儀内容となる直葬プランであれば、20万円ほどで葬儀を執り行えます。要望に応じて火葬前に読経や戒名をお願いすることも可能です。
葬儀費用を抑えながら、葬儀内容にもこだわりたい方は、葬祭扶助制度を利用せずに一般葬以外の形式を検討するのも1つの選択肢です。各葬儀形式の費用の詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。
生活保護受給者の葬儀に関するよくある質問
「生活保護 葬儀」とネット検索すると、さまざまな噂が見受けられます。どの情報が正しいのか分からず不安に感じる方もいるでしょう。
ここでは、生活保護を受けている人の葬儀に関する、4つのよくある質問について応えていきます。葬祭扶助制度の利用を検討するうえで参考にしてみてください。
葬儀でもらった香典は没収されるって本当?
葬祭扶助制度を利用した生活保護葬で、参列者から受け取った香典は没収されません。香典の使用目的についても定められていないため、故人のお墓や納骨代に充てても問題ありません。
また、香典は収入の扱いにならないため、葬儀後に生活保護が外れるといった心配も基本的にありません。例外として、香典の金額が非常に多く生活保護葬の費用を大幅に上回るような状況の場合は、一部のみ遺族の収入とみなされる可能性はあります。
具体的な判断基準は自治体によって異なります。なお、香典は原則として非課税であるため、所得税はかかりません。
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生活保護者が亡くなった場合に死亡一時金は受け取れる?
生活保護を受けていた人が亡くなった場合、所定の条件を満たしていれば死亡一時金を遺族が受け取れます。受け取りの条件は以下の通りです。
- 故人が国民年金の第1号被保険者であり、保険料を36ヶ月以上納付している
- 障害基礎年金・老齢基礎年金を受けることなく亡くなっている
どちらも該当していれば、死亡一時金を受け取れます。ただし、死亡一時金が葬儀費用に充てられると判断される可能性もあるため、事前に福祉課へ相談しましょう。(出典:日本年金機構|死亡一時金を受けるとき)
生活保護葬では戒名を付けてもらえる?
生活保護葬の費用の中に戒名は含まれていないため、葬儀の際に僧侶を呼び戒名や読経を依頼することはできません。
ただし、葬儀が終わったあとに、自費でお寺に依頼し戒名をつけてもらうことは可能です。戒名を受けるタイミングに明確なルールはなく、数年経ってからでもお寺に依頼できます。
生活保護受給者が亡くなった場合のアパート退去費用は誰が払う?
アパートなどの賃貸物件に住んでいた生活保護受給者が亡くなった場合、アパートの退去費用は、賃貸契約を行った際の連帯保証人が支払います。
連帯保証人がいなかったり、支払い能力がなかったりする場合は、相続人あるいは物件所有者が負担することとなります。ただし、物件の契約内容や地域の習慣によって対応が異なるため、物件所有者と遺族で話し合うことが大切です。
正しい手順で生活保護葬を執り行おう
生活保護受給者が亡くなった場合や、喪主が生活保護受給者で葬儀費用の負担が難しい場合、葬祭扶助制度を利用することで自治体に葬儀費用を負担してもらえます。
この制度を利用するには、所定の条件を満たし、事前に役所への申請を行う必要があります。また、執り行える葬儀形式にも指定があるため、内容を理解したうえで利用を検討しましょう。
葬儀費用をなるべく抑えたい場合は、葬祭扶助制度を利用せずに葬儀社の「直葬プラン」や「一日葬プラン」を利用するのもおすすめです。
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